ZOIDS 
〜勇気ある獅子と正しき邪竜〜

第2話「出会い」


ここはリバーサイド基地。
川を挟んで両岸に基地を立ててあるためこう呼ばれている。
そしてその基地に近付く一つの影があった。
ブレードライガーMk−Uだ。
少し損傷が目立っているようだった。



「ふぅ、やっと戻れた……」
祐一の基地へ帰還しての第一声はこれだった。
「疲れたね、祐一……」
「あぁ……」
「まったく、何であんなことに……」
そうつぶやき落胆する祐一。



時は数時間前

あの後、祐一たちは調査班に後を任せ基地へすぐ帰還しようとしたのだった。
だが、
「ん?あれは何だ?」
「えっ?あれは……砂嵐だよ!!」
「なにっ!?」
この時の祐一たちの位置は砂漠の真っ只中に位置していた。
当然、砂漠なので砂嵐は珍しくないのだがさすがに陸上ゾイドとはいえ砂漠の直撃は避けたい事態であった。
直撃を受ければ砂嵐の影響で磁場が乱れセンサー類が一時使用不可になってしまったり、下手をすれば機体内部に砂が入り込み活動に支障をきたすことがあるのだ。
「ぐはっ、こっちに向かってきやがる!!」
「どうするの!?」
「逃げるしかないだろ!!」
そう言い放ちライガーを反転させて駆け出す。
ゾイド同士の戦いでは作戦内に指示がなければ絶対に逃げたりしない祐一だが、砂嵐が相手では祐一でも逃げることを選択するしかないのだ。
「祐一、向こうも速いよ!?」
「ちょっと待て!こっちだって全速力で走ってんだぞ!?」
「だけど追いつかれてきてるよ!?」
名雪にそう言われコクピット内で後ろを振り返る祐一。
振り向いたときには砂嵐はすぐ後ろまできていた。
「嘘だろ・・・・」
そう呟いたときブレードライガーMk−Uは砂嵐に飲み込まれた。
「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ガアァァァァァァァッ
砂嵐の中で二人と一匹(?)の叫び声が木霊した……


砂漠の砂丘がいくつも連なっている。
その中の一つが動いた。
ズシャァァァァァァァァァッ
砂丘の中からブレードライガーMk−Uが出てきた。
砂嵐のせいでブレードライガーMk−Uは砂の中に埋もれていたのだった。
ガアァァァァァッ
吼えて身震いするライガー。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「うにゅう……」
コクピットでは祐一が荒い息を上げ、名雪が気絶していた。
砂嵐が直撃したときの衝撃はものすごいものだったのだ。
そんな中でも祐一は気を失わなかった。
「はぁ……早く戻ろう……」
そう呟きライガーを進める祐一。



数時間前にこんなことが起こっていたのだった。
「名雪、お前は部屋に戻って休んでていいぞ。俺は司令室に報告しに行くから……」
「ありがとう……」
そう伝えて祐一は司令室に向かった。
そんなこんなで二人は酷く疲れていた。



−司令室−

コンコン
「相沢祐一少尉、入ります」
ノックをした後、一礼して入室する。
「どうでした?祐一さん」
中には青く長い髪を後ろに三つ編みでまとめた若い女性が一人椅子に座っていた。
なんとなく雰囲気が名雪に似ている、そんな女性だった。
それもそのはず、この女性は水瀬名雪の母親、水瀬秋子大佐。
このリバーサイド基地の総司令官なのだ。
「報告をどうぞ」
祐一にそう勧める。
「はい」
そう返事を返し説明を始める。
「まず、遺跡について報告します。遺跡の内部は地表にでていた部分は老朽化が進んでおり調査は困難だと思われます。ですが、地下に存在していた部分は保存状態がよかったので問題は無いと思われます。それと壁面には大量の古代文字と思われるものが記されていました」
そういいながら部屋で遺跡内部で録画してあった画像を再生する。
「それと、遺跡で複数のスリーパーゾイドと交戦しました。人の手を離れスリーパー化したゾイドを惹きつける何かが存在しているものと思われます」
そういい報告を終わる。
「ご苦労様でした。ところで、名雪はどうしました?」
ここに報告に一緒に来るはずの我が子がいないことに彼女は疑問に思った。
「名雪でしたら疲れているようだったので先に自室に戻らせました」
「そうでしたか、ありがとうございます」
祐一の返答に丁寧に礼を返す。
「夕飯の頃には起こしてあげてください」
「はい」
すでに二人の間では名雪が寝ているのは決定済みのようだ。

−名雪自室−
「くー」
名雪は予想通り寝ていた。

「それではお願いしますね」
「わかりました」
彼女の言葉に返事を返し退室し自室に戻る祐一。
「俺も夕飯まで寝て過ごすか…」
祐一はそう決め込むのだった。





−1時間後−

ビィィィィィッ、ビイィィィィィッ
基地内に騒がしい警報の音が鳴り響く。
「なんだっ!?」
いきなりのことで祐一は飛び起きた。
「敵襲なのか!?」
素早く状況を確認し軍服を来て部屋を飛び出していく。



−管制室−

「はぁはぁ、一体何が起こったんです!?」
警報が鳴り響き慌しくしている基地の中をここまで走ってきたのだ。
そのせいか少し息が乱れている。
「祐一さん、これを見てください」
先に管制室へ移動していた秋子がモニターを見るよう指示する。
そこには地上をホバー走行で進む一体のゾイドが映し出されていた。
「えっ、これが何か?」
わけがわからず秋子に聞き返す。
一体のゾイドの敵襲ぐらいでこの基地がここまでの警戒態勢をとる理由がわからなかった。
このリバーサイド基地は他の地域の基地に比べ圧倒的に大きく、要塞クラスの大きさを誇っていた。
そんな基地が一体のゾイドの敵襲でここまでの警戒態勢をとる。
普通では考えられないことだ。
「モニター、拡大してください」
秋子がオペレーターに指示を出し拡大表示させる。
そこには新緑の色をした大型で恐竜型のゾイドがこの基地に向かってくるのが映し出されていた。
「こいつは!?」
祐一は驚いた。
何故このゾイドがここにいるのか、と。


祐一も一度だけこのゾイドについての資料を見たことがあった。
訓練生のときの教本に載っていたのだ。
ティラノサウルス型ゾイド、「ジェノブレイカー」。
このゾイドは第2次デスザウラー大戦の最中に各地の基地を破壊して回ったゾイドだ。
武装は両肩に装備された「フリーラウンドシールド」。
その内側に内蔵された接近格闘戦兵器「エクスブレイカー」。
頭部に「レーザーチャージングブレード」
両脚部に「ウェポンバインダー」。
シールドライガーやブレードライガーに代表される「E(エネルギー)シールド」。
そして高速移動を目的とした背部の「ウイングスラスター」。
荷電粒子コンバーターからのエネルギー供給で連射が可能になった
口腔内にある「荷電粒子砲」。


「何故こいつがここに!?ジェノブレイカーは大戦中にオーガノイドの力によって強化されたジェノザウラーのはず!! そのせいでワンオフの機体だったはずだ!!」
あまりの出来事の凄さに祐一が取り乱す。
「ですが、今こうしてここに向かってきています。ここを攻撃させるわけにはいきません。祐一さん、出撃してもらえますか?」
「了解しました、どこまでやれるかわかりませんが」
「お願いします」
命令を受け、管制室を飛び出していく。



−格納庫−

「ブレードライガーMk−U、整備完了しているか!?」
「機体内部の砂の排出は完了していますが修理と補給は終わっていません!!」
祐一の問いかけに近くの整備兵が答える。
「ちっ、このままでいい!!」
舌打ちしコクピットに滑り込む。
「ブレードライガーMk−U、出るぞ!!」
ガアァァァァァァァッ
格納庫内にライガーの雄叫びが響き渡る。
そして祐一を乗せたブレードライガーMk−Uは出撃した。



−恐竜型ゾイドコクピット内−

そこには年端も行かない一人の少年が座り操縦していた。
「あそこに基地があるね。理由を話して休ましてもらおうか?」
誰かに話す口調で恐竜形ゾイドに乗っている少年は話し出した。
その直後、
ガァゥ
どこからともなくコクピット内に肯定するような感じのゾイドのような声がした。
「それじゃ、行こうか」
そう言って少年はゾイドを走らせていた。
そのとき基地からは一体のゾイドが出撃してきた。
「あれ?出撃してきたけど何かあったのかな?」
その様子を見て少年はゾイドをその場で待機させた。



−基地前方−

「見えたっ!!」
祐一は前方に鎮座したまま動かないジェノブレイカーを確認した。
(どうしたんだ、攻撃してこないぞ?)
そう考えながらジェノブレイカーの正面でライガーを停止させた。
その直後、正面のジェノブレイカーから通信が入ってきた。
(何、どういうことだ!?)
祐一は突然の相手からの通信要請に戸惑った。
少し考えてとりあえず通信回線を開いてみることにした。
『よかった、開いてくれた。基地から出撃してきたみたいですけど、何かあったんですか?』
祐一は驚いた。
正面にいるジェノブレイカーからの通信を受信したら自分よりいくつも年下といった感じの少年が映し出されたからだ。
しかも、友好的に話し掛けてくるので戸惑っているのだ。
(こいつ、何者だ!?一体何が目的なんだ!?)
そう思いながら祐一はその少年の様子を見ていた。
『あのー、どうかしましたか?』
とりあえずはすぐ攻撃してくる様子は無いので話に応じることにした。
「お前、姓名と所属、階級を言え!」
『えっと、名前は高峰 竜聖です。軍属ではないので階級はありません♪』
目の前の少年の素直さに戸惑いながらも次の質問を続けた。
「なら、目的は何だ!?」
これが一番重要だった。もしここで基地を攻撃することだと言われたら即座に攻撃するべきなのだが相手は最初からそのつもりでいるだろうから言うと同時に攻撃してくる可能性が高いのだ。
そうなったらこちらはそのまま撃墜されて沈黙してしまう可能性があるのだ。
なぜなら今のブレードライガーMk−Uでは大型ゾイドクラスの攻撃だと一撃で仕留められそうなほどの状態なのだ。
そして、今、目の前にいるのは大型ゾイドでトップクラスの攻撃力を持つジェノブレイカー。
祐一は凄まじい危機感を胸に秘めながら対応しているのだ。
ついに、少年が目的を告げる。
『そこの基地で休憩させてもらうことです♪』
「はい?」
少年の返答に間抜けな声を上げる祐一。
『ですから、あなたの後ろにある基地で休憩させてもらうことです♪』
目の前の少年が無邪気で陽気な笑顔を見せて答えたので祐一は呆然とした。
開いた口が塞がらないと行ったところだろうか。



−基地格納庫内−

「僕の勝手な要求を許可して下さってありがとうございます」
「いえいえ、この程度のことでしたら」
笑顔で話す秋子と高峰 竜聖と名乗った少年。
本当にこの少年はこの基地を攻撃するつもりは無いようだ。
今もこうして目の前で話し合っている。
さっきまで鳴り響いていた警報や人々の慌しさが嘘のようだ。
祐一が考え込んでいると後ろから肩を叩かれた。
「ねぇ、祐一。あの子、誰?」
目の前で自分の母親と仲良く話している少年に興味を持ったようだ。
「あぁ、あいつならさっきまで敷かれていた厳重警戒態勢の原因だ」
「それだけじゃわからないよ」
名雪は訴えるような感じで頬を膨らませた。
「あいつは高峰 竜聖。あっちにあるジェノブレイカーのパイロットだ」
「えっ!?ジェノブレイカー!?」
祐一が指した方を見て驚く名雪。
さすがの名雪もジェノブレイカーと聞いて驚かずにはいられないようだ。
「あの子があのジェノブレイカーに!?」
「そうだ」
名雪の質問にもうどうでもいいといった感じでこたえる。
「すごいね」
「言うのはそれだけかよ?」
「他に何かあるの?」
わからないといった感じで聞き返してくる。
「もういい」
疲れたのか話すのをやめることにした。
名雪は終始、疑問顔である。
「なぁ?」
「何ですか?」
なんでもどうぞといった様子で聞き返してくる。
「このジェノブレイカーはどこで手に入れたんだ?」
祐一は当たり前の疑問といえるものを聞いてみた。
「この機体ジェノブレイカーと言うんですか?知りませんでした♪」
「なにっ!?お前、これをジェノブレイカーと知らずに乗っていたのか!?」
「はい♪」
竜聖はさも当然といった感じで答えた。
「はぁ……じゃあ、どこで手に入れたんだ?」
祐一は話を元に戻した。
「僕の住んでた村の裏手の山の中でゆっくりしていたら、こいつが奥のほうから出てきたんです」
「山の中にジェノブレイカーが!?」
祐一は驚いた口調で聞き返し、水瀬親子は黙って聞き入っているようだ。
「はい。後ろから聞こえてくる足音に気づいて振り返ったらこいつがいて屈みこんで僕に向かってコクピットハッチを開けていたんです」
「マジかよ」
驚きの連続で祐一は呆気に取られていた。
竜聖はそのまま話を続ける。
「それでこいつに乗って村に戻ったらみんな驚いて大騒ぎになったんです」
「わかるぞ、村の人たちの気持ちが」
なぜか納得する祐一。
「そして、こいつをどうするかということになって村に置いておくわけにはいかないという結論に至ったわけです」
「なるほど、確かにこんな物騒なものを置いてたらどんな奴らがこれを狙って村を襲うかわからんしな」
祐一も肯定しながらも感心しながら聞き入っている。
「それで、じゃあどうするかとなったときに見つけた僕がこいつと一緒に旅に出ることにしたんです」
「なんで、旅に出ることにしたの?」
今度は名雪が質問してきた。
「僕も男です、村の外の世界というのに興味があったからちょうど良かったんですよ」
「そうなんだ、祐一もそうなの?」
「何で俺に振るかわからんが、確かに自分が知らないところというのは興味があるな」
祐一も自分もそうだと言った感じでうなづく。
「そして、夜になってから村のみんなに黙って出てきたんです」
「そうだったんだ……」
その返答に名雪は感慨深く聞いていた。
「一人で大変だったんではありませんか?」
今度は秋子が質問してきた。
「村を出るときにこれといったものを持って出なかったもので最初は苦労しました、特に生活物資が」
「それでは、今まではどうしてたんですか?」
「途中ある村や街で困っている人を助けたりしてその御礼として少し分けてもらったりもしました」
「そうですか」
「あとは時たま賞金首を捕まえたりもしてましたね」
懐かしむように竜聖は話を続けた。
「どのくらいの間旅をしてきたんだ?」
当然といえる質問を祐一が投げかけてきた。
普通、少年の単なる一人旅だったらそう長いものではないだろうからだ。
「村を出て半年ぐらいだと思います」
竜聖はあっさりと答えた。
「お前、結構たくましいな」
「そうですか?」
竜聖の意外な答えに素直な感想をいう祐一。
一方の竜聖は何が「たくましい」のかわからないといった感じだ。
「山の中でジェノブレイカーを見つけたのか、奇妙なものだな」
「確かにそうですけど、最初はこいつジェノザウラーだったんですよ」
「なんだって!?どういうことだ!?」
竜聖の一言に驚き聞き返す。
「最初はジェノザウラーだったていうのはどういうことなんだ!?こいつが勝手にジェノブレイカーに進化したのか!?」
祐一は驚いていた。
たしかにゾイドは進化する。
だが、進化するためにはゾイド自身に膨大な量の経験と刺激が必要なのだ。
進化に十分な経験と刺激の量はそう簡単に得られるものではない。
だから祐一は驚き、納得がいかないのであった。
「ちがいますよ、『龍牙』がジェノザウラーに合体したらこうなったんです」
「リュウガ?」
「そうです。いいよ、出ておいで」
竜聖はジェノブレイカーに呼びかけた。
その呼びかけに答えるかのようにジェノブレイカーから一条の光が伸び祐一たちの前に落ちてきた。
光の中から一体のティラノサウルス型の小型ゾイドが現れた。
「グアァ」
「オーガノイド!?」
祐一たちの目の前に現れたのはジェノブレイカーと同じく新緑の色をしたオーガノイドだった。
頭部には一位の枝分かれした角が伸び、背中には折りたたみ式の翼がついていた。
「祐一、私オーガノイド見るのはじめてだよ!」
興味津々といった感じで龍牙を見つめる。
「いや、俺もだって」
こちらはもう驚くことをやめたらしい。
「私も今日がはじめてですね」
秋子さんはいつもの笑顔に手を添えている。
三者三様の驚き方だ。
「グァァ」
初めて会ったというのに龍牙はもう祐一たちになついてきた。
「私は水瀬 名雪、よろしくね龍牙」
「俺は相沢 祐一だ」
「私は水瀬 秋子です、この基地の総司令で名雪の母親です」
自己紹介の仕方も三者三様だった。
「オーガノイドか、こいつのおかげでジェノザウラーからジェノブレイカーに進化したのか?」
祐一が龍牙を見ながら質問する。
「えぇ、2ヶ月ぐらい前に龍牙を立ち寄った遺跡で見つけてからそのすぐ後の交戦中にこいつがいきなり合体して」
そういいながら竜聖は龍牙の首もとに手をおく。
「これで進化の仕方については納得がいった」
ビィィィィィッ、ビイィィィィィッ
祐一たちが話していると再び基地内に警報が鳴り響いた。
「今度は何だ!?」
祐一が叫ぶと同時に館内放送が聞こえてきた。
『基地前方に一個中退程度の盗賊と思われる集団が接近中、繰り返します』
「盗賊だって、盗賊が何だってこの基地に攻め入って来るんだ?」
盗賊がこの基地を攻めて来る意図がわからず考え込む。
盗賊というものは大概は目的あってこそ行動する集団である。何の理由もなく軍の基地に襲撃してきたりするものではないのだ。
つまり、ここには盗賊が襲撃してくる『何か』があるということだ。
祐一の中でこういう結論にたどり着いた。
だが、盗賊が狙う『何か』についてはまったく見当がつかない。
そう、ここは基地こそ大きいものの盗賊が狙うようなものは保管されていない。
たとえ保管されてあったとしてもこれほどの基地だ、目的を達成する前に失敗する可能性が高い。
再び考え込んでいると祐一はあることに気づいた。
「もしかして……」
「多分、相沢さんが考えているとおりだと思いますよ」
「やっぱりか」
「ねぇ、どういうこと?」
わけがわからず名雪が聞いてくる。
「つまりこういうことだ。さっき竜聖は困っている村や町があるとその悩みの種を解決して生活物資をもらっていると言ったろ?」
「うん」
「その悩みの種が盗賊だったらどうなる?」
「あっ、そっか竜聖君がやっつけた盗賊が逆恨みして襲ってきたってことなんだ」
「そういうことです」
肯定する竜聖。
「一週間ぐらい前に一つの盗賊団のアジトを破壊しましたから」
「それだな」
「はい」
盗賊団は竜聖がこの基地に来る前に破壊してきたアジトのことで逆恨みを起こし、竜聖がこの基地に立ち寄っていることを知り襲ってきたのだ。
早い話が仕返しである。
「それでは私は管制室に行きます」
そう言い残し秋子は管制室へ向かった。
「よし、俺が出撃して片付けてきてやる」
「だめだよ」
出撃しようとする祐一を名雪が止める。
「何でだ?」
「ライガーは整備中で出撃できないよ」
「ぐぁっ、忘れてた……」
そう祐一の愛機のブレードライガーMk−Uは今この格納庫で整備中で出撃できる状態ではないのだ。
先ほどの竜聖との話で祐一はこの事をすっかり忘れていたのだ。
「くっ、どうする?」
「僕が出ます」
「なっ、お前は軍属じゃないんだからでなくていいんだぞ?」
出撃しようとする竜聖を呼び止める。
「確かに僕は軍人ではないですけど盗賊を呼び寄せたのは僕です、やはりここは呼び寄せた原因が出るべきでしょう?」
「うっ、そうだが……」
「だから僕が出ます」
そう言って愛機のジェノブレイカーに乗り込む。
「一人で大丈夫なの?」
『大丈夫です、格納庫のハッチを開けてください』
格納庫のハッチが開く。
『ジェノブレイカー、出ます』
格納庫のハッチが開き、ジェノブレイカーはホバー走行で飛び出していく。
「本当に大丈夫かな?」
名雪はやはり心配になり祐一に話し掛けた。
「半年間、旅を続けてきたあいつの腕を信じるしかないだろ?」
「うん……」
祐一の返答でもまだ納得いかないようだ。
「グァァ」
そのときの二人の後ろからゾイドの鳴き声が聞こえてきた。
「龍牙!?お前行かなくていいのか!?」
「グァ」
そう鳴き頷く龍牙。
「竜聖君を信じてるんだね?」
「グアァァァ」
名雪の言葉に嬉しそうに龍牙は鳴いた。



−基地前方−

ここで竜聖のジェノブレイカーと盗賊団のゾイドたちが対峙していた。
『へっ、やっと出てきたな』
待ちくたびれたといった感じで盗賊団のリーダーが話し掛けてくる。
『アジトを破壊されたのにまだ盗賊をやめようと思わないんですか?』
竜聖も負けじと言い返す。だが、その言葉の中は少しあきれたような感情が込められていた。
『ふん、いまさら盗賊をやめる気なんざねぇよ。野郎共、やっちまえ!!』
リーダーの掛け声を合図に一斉に攻撃を仕掛けてくる。
何十発ものミサイルやビーム、銃弾が飛んでくる。
そして、ジェノブレイカーに命中して爆発を起こした。
『やったか!?』
盗賊のリーダーが爆発で巻き上がった噴煙が晴れるのを待たず叫んだ。
徐々に噴煙が晴れていく。
フオォォォォォォォォン
完全に噴煙が晴れたときそこにはEシールドを張り無傷で立っているジェノブレイカーが存在していた。
『なっ、あれだけの攻撃を耐えたのか!?』
目の前のジェノブレイカーの凄さに驚き、盗賊たちは自分たちのゾイドの動きを止めていた。
『今度はこちらが行きますよ』
そう言うと竜聖はジェノブレイカーの前腕を打ち出し、盗賊団のゾイドの一体だけを捕まえ背部のウィングスラスターをふかし機体を回転させ、その遠心力で勢いのついたまま捕まえたゾイドをハンマーのようにして他のゾイドたちへ当てて薙ぎ払った。
当てられた衝撃で一気に半数以上のゾイドはコンバットシステムがフリーズしたようだ。
『なんて戦い方をしやがるんだ!?おい、攻撃しろ!!』
盗賊のリーダーは仲間たちに命令し援護射撃をさせ、自らは突っ込んできた。
自分が乗っているダークホーンで力にまかせ体当たりするつもりだ。
『喰らいやがれ!!』
真っ直ぐに突っ込んでくるダークホーン。
だが、ジェノブレイカーはその体当たりを少し横にずらすだけでかわしてしまう。
『くそっ!!』
盗賊のリーダーはそのまま行くわけにもいかず停止して反転しようとしたがその動きは遅すぎた。
ジェノブレイカーが攻撃するまでには十分な時間だった。
「おそい!!」
竜聖はそう叫ぶと躊躇わず反転する最中のダークホーンの横から全速力で体当たりをした。
ダークホーンは最高時速345km/hに達するジェノブレイカーの体当たりをまともに受け吹っ飛び、何回か地面の上を回転し、その回転が止まって横倒しになったままシステムフリーズを起こし沈黙した。
中にいた盗賊のリーダーも気絶しているようだった。
残っていた他の盗賊たちのゾイドはその強さに怯んだのか後ずさり始めていた。
「逃がしません!!」
そう言い放ち、残った敵の中に突っ込んでいく。
一体のゾイドの前で止まると高速で回転しジェノブレイカーの尾で叩き伏せる。
残った数機の足元を狙ってウェポンバインダーのミサイルを打ち出す。
打ち出されたミサイルは敵機の足元で爆発するとそのまま吹き飛ばしシステムフリーズを起こさせた。
これでジェノブレイカーを除く全てのゾイドが沈黙した。
開始からものの数分で戦闘は終了した。



−管制室−

格納庫から移動してきた祐一たちはここで戦闘の全てを見ていた。
「見事だな」
「すごい………」
「グァ」
祐一は称賛し、名雪に至ってはあまりの凄さに絶句しているようだ。しかし龍牙はさも当然と鳴く。
たしかに機体の性能差という面もあるかもしれないがこれだけのことを数分でこなすにはパイロットにもそれ相応の技量が必要だ。
そして竜聖はこれをなんなくやってのけたのだ。
「名雪、よく見てみろ。あいつはあれだけの戦闘を繰り広げたのに敵のゾイドのシステムフリーズを起こさせるだけで
 たいした損傷を負わせていない」
「ほんとに!?」
「あぁ」
たしかにパイロットと一緒に引き上げられてくるゾイドの損傷は微小だ。
酷いものでも装甲が軽くひしゃげる程度で、軽いものにいたっては装甲にかすり傷程度で済んでいる。
「信じられない………」
「事実だ」
「ガアァァ」
龍牙がその隣で自慢げに吼える。
ジェノブレイカーは最後に引き上げられてくるゾイドの後ろに続いている。
「祐一さん、彼のことどう思いますか?」
秋子は先ほどの竜聖の戦闘を見て祐一に竜聖のことをどう思ったか聞いてきた。
「わかりません、ただ凄い操縦の腕を持っているのは確かです」
祐一はただそれだけ言って黙ってしまった。
「……そうですか、それでは格納庫に出迎えに行きましょう」
「わかりました」
「待って、私もいく」
「グアァ」
管制室を出て行く秋子に続く二人と一体。



−格納庫−

「ふぅ」
ジェノブレイカーから降りてくる竜聖。
ちょうどそこへ格納庫にむかっていた祐一たちがやってきた。
「お前の戦闘、見させてもらったぞ。すごいな」
「ははは、恥ずかしいですね」
祐一たちに戦闘をしているところを見られたのが恥ずかしかったのか顔を少し赤らめて照れている。
「グアァァ」
「お前も褒めてくれるのかい?」
「グァ」
「はは、ありがとう」
礼を言い龍牙の首をなでてやる。
「それにしてもすごいね♪ あれだけの戦闘をしたのに相手のゾイドを全然傷つけないなんて」
「俺もそれは同意見だ、お前あれは狙ってやってただろ?」
「わかりました?」
「まぁな」
「えっ、そうだったの?」
名雪は気づいていなかったのか祐一に聞いてくる。
「あぁ、戦い方にそういう意思が感じ取れた」
竜聖の戦い方に対して感じたことを素直に言ってきた。
「私もわかりましたが何故あのようなことを?」
今度は秋子が質問してきた。となりで祐一もそうだといわんばかりに頷く。
「ジェノブレイカーに搭載されている武器を使えばもっと早く戦闘が終わっていたはずだ」
二人とも何故このような戦い方をするのかと疑問に思ったようだった。
「僕は本当は人もゾイドも傷つけるのが嫌なんですよ、だからそう考えてるうちにあんな戦い方をするようになっていったんです」
「やさしいんだね」
名雪は竜聖に向かって笑顔でそう言った。
竜聖はまた顔を赤くして照れているようだ。
「そういう戦い方をするやつもいるってことか」
「祐一さんもどうですか?」
「考えてみるよ」
「祐一もゾイドのこと好きなんだからそういう戦い方しなくちゃ♪」
「そうだなぁ」
名雪と竜聖にすすめられ祐一も本気で考えているようだった。

(3人とも楽しそうですね)
秋子は二人と楽しそうに話す竜聖を見てあることを決心した。

「竜聖さんいいですか?」
「はい、何ですか?」
自分に尋ねてくる秋子に何かと尋ね返す。
「ガーディアンフォースに入隊しませんか?」
秋子は笑顔で竜聖に提案してきた。









NEXT
ZOIDS〜勇気ある獅子と正しき邪竜〜
第3話「就任」

獅子と邪竜は平和を望む………

続く
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