〜どうでもいいことなのに……〜

 石川とレッスンの打ち合わせをしようと控え室に寄ると、辻が石川に
おねだりしていた。
「梨華ちゃん、なぞなぞしようよ。なぞなぞ〜」
「ええ〜?……あ、保田さん」
 何だか嬉しそうな顔をして石川が駆け寄ってくる。
 ほら、辻がつまらなそうにしてるじゃない。
「いいよ、石川。時間はあるから、辻の相手をしてやりな」
「え…でも……」
「やった〜! 梨華ちゃん、なぞなぞ〜」
 はしゃいだ辻が、石川の袖をもって左右にブンブンと振り回す。




「え〜……辻ちゃん、今度にしてくれない?」
「いいじゃん。保田さんもOKなんだから遊ぼうよ〜」
 駄々をこねる辻を、石川は持て余し気味。
「…今度にしてよ」
「なぞなぞがダメだったら…10回10回クイズでもいいよ?」
 辻もなかなか引き下がらない。
「…お願いだから……今度にして」
「じゃ、辻も、梨華ちゃんと保田さんと一緒にお話し合いする」
 けわしい顔になった石川が大きく息を吸い込んで、それから……。
「邪魔だから、今度にしてって言ってるでしょ!!」




 …石川がだれかを怒鳴りつけるとこなんて初めて見た。
「…ふぇ…ふぇ〜〜ん」
 ありゃりゃ。辻、泣いちゃったよ。
「石川…あんな言い方はひどいんじゃない?」
「…どうしてですか?」
 両手をギュッと握り締めて、うつむいたまま、まだ息を荒げている。
「どうしてって……辻はまだ子どもなんだからさあ」
「………」
「…辻に謝りな」
「いやです」
 相変わらずうつむいて、激しく首を左右に振る。




 こんなに反抗的な石川なんて……どうしちゃったわけ?
 辻は泣きっぱなしだし。
 何だか無性に……む〜か〜つ〜く〜。
「辻に謝りな!」
「いやです!」
 石川の返事と同時に、考えるよりも先に手が出ていた。
 バチ〜ンッ!
 左の頬を押さえて、口をへの字にしてわたしをにらむ石川。
 そのまま石川は、走って部屋を飛び出していった。




 わたしは……わたしは右手を開いたり閉じたり…自分の右手に残った衝撃に
不快感を感じながら、辻をなだめるのが精いっぱいだった。
「辻…辻、ジュース飲む? おごってあげるから、一緒に買いにいこっか?」
 辻の手を引いて廊下へと出る。
 どうでもいいことなのに……。
 石川、何であんなに意地を張ったんだろう?
 わたしは…何でこんなに腹が立ったんだろう?
 何にも…何にも分からなかった。
                               (続)



続く

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