〜素直になれたら〜
(石川…泣かなくったっていいんだよ)
そう言ってあげたいのに……。
「めそめそするんじゃないの! 左の足首をちょっと捻挫し
ちゃっただけなんだから」
……素直じゃないなあ、わたし。
それでも石川は、鼻をグスグスいわせながらコクンと肯く。
石川は本当に素直な娘。だね。
わたしと正反対。あんたと話してると、何だかイライラし
てくるんだよ……素直になれない自分に対して。
ほかのメンバーといる時は、そんなことないのに。
なぜだろう?
あんたの前では、素直な自分でいたくなる。
でも……ダメなんだ。
強いわたしじゃいられなくなりそうで……。
あんたに情けないとこ、見せられないもんね。
「早く治さないといけないんだから、もうちょっと寝てな」
「はい……」
石川がじっとわたしを見る。
「保田さん……」
「何よ」
そんなすがるような目で見つめないでよ。
「もう少し…一緒にいてくれますか?」
胸が苦しい。
深呼吸しなきゃ、声も出ないじゃない。
「……いいよ」
ベッドの横から、石川の手が伸びてくる。
それを両手で包むようににぎって……石川の体温を感じて
いた。
(続)
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