「すまない。好きな人がいるんだ」
それは結婚式の一時間前に男が口にしたものだった。
ウェディングドレス姿の彼女は何と言ったらいいのかわからなかった。
突然の出来事に頭が白くなる。

パシっ!!

気づけば、怒りに任せて男の頬を叩いていた。
悔しさ、やるせなさが募る。
「・・・さよなら」
かろうじて口にできた一言だった。





    <<< 二度目の恋 −1−>>>




最後に男と付き合ってから、もう3年が経つ。
あれ以来、立石彩は男が信じられなかった。
日々、仕事に追われる毎日。
そのおかけで同期の中で女性としては一番の出世をする事になった。

「立石チ−フ、飲みに行きません?面白いお店を見つけたんです」
終業時間近くになり、後輩たちが声をかける。
「・・・そうね。でも、今日は約束が・・・」
「チ−フ、3番に外線です」
そう言われ電話をとってみる。
「もしもし」
「彩、悠里だけど・・・。ごめん、今夜ちょっと都合が悪くなったの」
電話の相手は彼女の昔から友人だった。
はぁぁ・・・きっと、男ね・・・。
心の中でそう思うが、口には出さない。
「そう。わかったわ」
いつものように、無愛想な態度で電話を切る。
「ねぇ、さっきの話、まだいいかしら」
電話を切ると誘いをかけてくれた子の方を向く。
今日は彼女にとって忘れられない日だった。
この日だけは、さすがの彼女も一人でいる事に耐えられなかった。



「いらっしゃいませ〜〜♪」
女性にしては何ト−ンか低い声がする。
見た目は女性だが・・・、よく見ると喉仏が目につく。
「・・・まさか・・・ここは?」
いささか引きつった表情で、後輩の子たちを見つめる。
「ゲイバ−です♪」
無邪気に答える。
「樹里亜ちゃん、来たわよ♪」
後輩の恵流美が彼女・・・いや、彼を呼び寄せる。
「あら、恵流美ちゃん、来てくれたの。ありがとう」
樹里亜と呼ばれた彼はスラッと背が高く、綺麗な顔立ちをしていた。
化粧栄えがして、一見、本当の女性のように見えた。
だが、何かがひっかかる・・・。

「チ−フ紹介します。このお店No.1の樹里亜ちゃんです。樹里亜ちゃん、こちら、私の上司である立石さん」
「はじめまして。いつも恵流美ちゃんにはお世話になっています」
上品な笑みを浮かべ、彼女を見つめる。
その表情にドキっとしてしまう。



「男なんて大嫌いよ!」
ボトルを数本空け、そう口にする。
「何かあったんですか?」
樹里亜が心配そうに見つめる。
「・・・結婚式の一時間前に他に好きな人がいると言われたわ」
普段はそんな事口にしないのに、酒の力のせいか、すらすら口から出ていく。
「まぁ、それは酷い」
同情するように、彼が私の話に頷く。
初めて会ったばかりなのに、こんなに親身になって話を聞いてもらったのって、どのくらいぶりなんだろうか?
「で、その人とはどうなったんですか?」
「もちろん、その場で破談。もう、それから会う事はないわ。そして、私の恋もそこで終わり・・・」
初めて心の底から好きになれた人だった。
優しくて、頼りがいがあって・・・何でも言えた。
私たちの間に隠し事なんてないと思っていた。
でも、それは私だけの思い過ごしだった。
3年経った今でも、アイツの事を心のどこかで思っている自分に呆れてしまう。
「お酒が飲みたい!!樹里亜さん、もっと、もっと持ってきて!!」
悲しさを誤魔化すために、私はその日、浴びる程酒を呷った。




「・・・もう、昼だぞ」
見知らぬ声が聞こえる。
「う・・・ん・・・」
何とか目をあけると、そこは知らない場所だった。
「・・・ここは?」
ぼんやりとしながら、口にする。
「俺のうちだ」
数年前に私をフッタ男が顔を出す。
「・・・克之・・・」
思わず目が覚める。
「どうして、あんたがいるのよ!!!」
彼の胸倉を掴み、引き寄せる。
「・・・昨日、一緒に飲んでたでじゃない」
特徴のあるオネエ言葉に昨日の出来事を思い出す。
嫌な予感がする。
「・・・まさか、樹里亜って・・・あなた?」
「うふっ、そうよ♪樹里亜よ」
婚約までした男が・・・ゲイになっているなんて・・・。
人生最大の汚点・・・。
「うっ、気持ち悪い・・・」
急に、胃がムカついてくる。
「大丈夫?昨日、沢山飲んだから、まだ、残ってるのかしら」
オネエ言葉でそう言い、私の背中をさする。
はぁぁ・・・もう、勘弁して欲しい・・・。



「でも、一体、どうして、あなたがゲイになっているのよ!」
ようやく、気持ち悪さも落ち着き本題に入る。
「あら、別に突然ゲイになった訳じゃないわよ」
しなやかな仕草で煙草を吸いながら、彼が言う。
「まさか・・・。私と付き合っていた時も・・・」
考えたくない疑問を口にする。
「えぇ。その通り、彩と付き合っていた時も他にゲイの恋人がいたわ」
そういえば彼に一度も抱かれた事がなかった事を思い出す。
彼が紳士的だと思っていたが・・・まさか、こんな理由があったなんて・・・。
「じゃあ、私との結婚は本気じゃなかったのね」
涙が出そうになる。
これ以上傷つく事はないと思っていたのに・・・。
「・・・嫌、それは違う。私はあなたとなら結婚できると思っていたわ。決していい加減な気持ちで
結婚しようとしたんじゃない。それだけは信じて」
真剣な眼差しで私を見つめる。
その瞳が昔、私に”愛している”と言った時のものと変わらない輝きを持っているように見えた。
駄目・・・。
彼の事は忘れないと・・・。
沸きかえりそうな気持ちにブレ−キをかける。
「でも、やっぱり、彩に隠し通していく事が辛かったんだ。結局ゲイである事から自分は逃れられないと
気づいてしまったんだ。それで・・・」
苦しそうな表情を浮べる。
彼も辛い想いを重ねてきたのだと思える。
「・・それで、好き人がいるなんて、嘘を・・・」
「・・・嘘という訳でも・・・」

「克之いるか?」
突然、第三者の声がする。
「会いたかった」
そう言い、男は彼の方に歩みより、抱きつき、そして唇を重ねる。
「なっ・・・」
あまりの事に全身が固まり出す。
「征人、やめてよ。友達がいるんだから」
克之は征人と呼ばれる男から離れ、申し訳なさそうに私を見た。
「えっ、友達?」
ようやく、私の存在に気づき、見つめる。
鋭い瞳に、端正な顔立ち。
いい男だなぁぁ・・・。
それが彼の最初の印象だった。
「あんた。克之が好きだろ?」
人の心を見透かしたように言われる。
「・・い、いきなり、なんなのよ!」
いい男だなんて思った自分がバカだった。
頭に血が上る。
よりによって克之の前でそんな事を言うなんて・・・。
無神経男!
「図星か」
私の態度に面白そうに微笑む。
「違うわよ!克之の事なんて、もう昔に忘れたわ!」
苦し紛れの一言。
本当は違う。
「ふぅ−ん。そうかい。そうかい」
「征人、彼女は大切な友達よ!からかうのはやめて!」
克之が征人をしかるように言う。
”大切な友達”
何だかその言葉が痛かった。
彼にとって、私は最初から恋愛の対象ではなかった・・・。
居心地のいい友達・・・。
ただ、それだけの関係・・・。
「・・・帰る」
一言、そう口にし、私はその場から逃げるように去った。




克之に会ってから一週間が経つ・・・。
考えないようにすれば、する程、頭に彼の事が浮かぶ。
「はぁぁ・・・。どうかしてるわ」
「何がだ?」
隣のデスクの佐々折恭介が聞き返す。
彼は私より3年先輩だった。
「ここの所、立石元気がないぞ?何かあったのか?」
彼はいつもこんな調子で私の事を気遣ってくれる。
「ちょっと、思いがけない人に再会してしまって・・・それで、動揺してるみたいなんです。
でも、大丈夫ですから」
笑顔を浮かべ、彼を見る。
「まぁ、元気出せよ。今度、酒でも飲みながら聞かせてもらうよ」
そう言い、私の頭を撫でる。
これは彼なりの慰め方だった。

「立石君、いるかね」
課長に呼ばれ、素早く彼の元に行く。
「何でしょう」
「実は新しいプロジェクトでアドバイザ−を迎える事になってね。水無瀬教授を是非迎えたい。
君が口説いてきてくれないか?」
そう言い、資料を渡される。
「水無瀬教授って、社会心理学者のですか?」
水無瀬と言えば、テレビなどでコメンタ−としても活躍している学者の一人だった。
「あぁ。今回のCMには是非、彼の力が必要なんだ」
2年前に広告代理店と吸収合併をした我が社は”広告課”なるものを置き、総合商社として、社内で
CM製作にも携わってきた。
そして、今回のCMは今までにない程の予算が組まれ、大規模なものになろうとしている。
「わかりました。私にお任せ下さい」




「あの、水無瀬教授いらっしゃいますか?」
彼の大学の研究室に行き、助手らしき女性に聞く。
「教授は只今、外出中ですが・・・」
「お帰りは何時頃ですか?」
「さぁ、そうですね。後、1時間後ぐらいだと思いますが・・・」
「では、待たせて頂きます」
カンジの良い、応接室に通され、教授の帰りを待つ。
さすが心理学者の研究室、人を落ち着かせる空間を作るのが上手いなんて事を思ってしまう。
何だか、目蓋が重くなってくる。

「一体、何時間眠るつもりだ?」
どこかで聞いた声が耳の中に入ってくる。
「えっ」
ハッとして目を覚ますと、見覚えのある男がいた。
「あっ!あなたは・・・!!」
「覚えていてくれてたとは、光栄だ」
そう言い、目鏡を外し、私を見つめる。
忘れるものですか・・・あの無神経男を!
「でも、どうして・・・あなたがここに?」
不思議そうに呟く私に、彼が可笑しそうに笑う。
「どうしてって、あんたが俺を訪ねて来たんだろ?」
「へっ」
その言葉に血の気が引く。
「水無瀬征人だ。宜しく」
意地悪く微笑み、そう口にする。
「嘘!!・・・そんな、イメ−ジが違いすぎる!!」
テレビで見る彼は上品で、いかにも紳士というカンジだった。
そういえば、課長から水無瀬教授の写真を貰った時、見覚えがある気がしたが・・・。
「イメ−ジなんて言うものはいくらでも作り変えられるって事さ」
さすが心理学者・・・。
人を騙すのが上手いなんて思ってしまう。
「はぁぁ・・・」
見事に騙された気がした。
「で、俺に用件って?」
「・・・実は我が社で今度制作するCMに水無瀬教授にも協力してもらいたく・・・」
感情を切り捨て、できるだけ機械的に口にする。
「あぁ。悪いがパス。俺、今論文に取り掛かっていて忙しいんだよね」

『何としても水無瀬教授を口説いてきて欲しい』
課長の言葉が脳裏に浮かぶ。
「いえ、しかし、そこを何とか教授にお願いしたいんです。お願いします」
「駄目だ。時間がない」
冷たい表情であっさりと言われる。
「そうですか。では、また明日来ます」
そう言い、ソファ−から立ち上がる。
「何?」
怪訝そうに彼が私を見る。
「”引き受ける”と言って頂くまで通わせてもらいます」
軽く会釈をし、彼の元を去る。




「立石君、水無瀬教授の方はどうだね?」
次の日、出社するとすぐに聞かれる。
「まだOKは貰っていません。ですが、必ず」
「そうか。期待しているよ。こういう事に関して、君の右に出る者はいないと思っているからね」
そう、私は社内で”口説き屋”なるあだ名を得ている。
今まで、交渉が難しい相手を私が口説きおとした事からその名はついた。
相手が”アイツ”でも口説き落とす自信はあった。

だが、彼の元に通いつめて2週間。
今まで使ったあらゆる手を使ってもアイツは”うん”とは言ってくれなかった。

「おっ、今日も来たのか。あんたもしつこいな」
いつものように彼の研究室に行く。
「それが仕事ですから」
「仕事ねぇ−。そういえば克之から聞いたぞ。あんたアイツと婚約してたんだってな」
その言葉に一瞬、表情が固まる。
「えぇ。そうです」
「アイツがゲイだって気づかなかったのか?」
「・・・気づきませんでした」

あの頃の克之の顔が浮かぶ。
とても優しくて、居心地のいい彼の腕の中。
彼の前では武装をと事ができた。
一緒にいて、微笑みあって・・・。
年をとってもずっと一緒にいられると思っていた・・・。

「結婚式の一時間前に言われたんだってな”好きなヤツ”がいるって」
可笑しそうに笑う。
まるで人が傷つくのを見るのが面白いと言うように。
「そうです」
「それでも、まだアイツが好きなんだろ?懲りないねぇ・・・おたくも」
水無瀬の言葉に何かが切れる。
「いけませんか!ゲイだって知っても、恋人がいても、好きなものは好きなんです!!
嫌いになれたらどんなに楽か・・・。でも、心はそう簡単には変えられない・・・」
泣いては駄目!
コイツの前で涙なんて絶対流さない!!
自分を制するように、唇を強く噛む。
「・・・気の強い女は好きだぜ」
そう言い、彼が顔近づける。
「えっ・・・」
不意に重なった唇に大きく戸惑う。
思わず、手が上がる。

パンっ!

頬を叩く音が響く。
「本当に気が強いな」
苦笑を浮かべ、頬を抑える。
「・・・失礼します」
そう言い、彼の研究室をあとにする。




「何かあったの?」
ぼんやりとする俺に克之が聞く。
「・・・彩と言ったかな。おまえの元婚約者・・・」
「そうだけど。彼女がどうかしたの?」
「実は今、毎日のように彼女に会っているんだ。何でも彼女の会社のプロジェクトに協力して欲しいらしくてな」
「へぇぇ・・・そうなの」
「アイツ、俺がいくらなじっても、微動たりともしない。だが、おまえの事になると、途端に感情を露にしたよ。
よっぽどおまえに惚れているんだな」
そう、克之を好きだと言った時のアイツの顔が頭から離れない。
苦しそうな、悲しそうな表情・・・・。
珍しく自分の言葉に罪悪感が募る。
「彩が私の事を?」
驚いたように克之が口にする。
「あぁ。ゲイだと知っても。恋人がいても、おまえが好きだってさ」
羨ましい程真っ直ぐな想い・・・。
俺もそんなふうに人を好きになった事が・・・かつてあった・・・。




「佐々折先輩!飲んでますか!!」
十数杯目の酒を口にしながら言う。
「あぁ。飲んでるさ」
「・・・悔しい!あのゲイにバカにされて・・・おまけに、アイツが私の・・・」
そこまで口にすると怒りが込み上げてくる。
「ちきしょ−!!ゲイめ!!!」
「立石、その辺にしとけよ」
「これが飲まずにいられますか!」



「せんぱ−い。気持ち悪い・・・」
「だから、飲みすぎだと言っただろ」
そう言い、私の背中を優しくさする。
そう言えば、どうしてこんなに彼に甘えられるんだろ。
克之と同じように先輩には甘えられる気がする。
「・・・すみません。いつも、いつも、先輩には甘えてばかりで・・・」
「気にするな。おまえにはその分、わが課の為に働いてもらうからな」
冗談混じりに彼が笑う。
優しい笑顔。
つい、また甘えたくなってしまう。
「・・・はぁぁ、克之に会う前に先輩に会いたかった・・・」
そう言い、彼の唇を塞ぐ。
「・・・おいっ・・・」
驚いたように彼が呟く。

「お客さん、この道まっすぐでいいんですか」
タクシ−の運転手が軽く咳払いをして、無愛想に口にする。
「え、ぇぇ・・はい。真っ直ぐでお願いします」
佐々折はそう答え、自分の胸の上で安心したように眠る彩を見た。

「全く、人の気も知らないで・・・あんな事しやがって・・・」
恨めしそうに彩を見つめ、呟く。




「もう来ないかと思ったが・・・あんたもしつこいな」
2日ぶりに水無瀬の研究室に行くと、相変わらずの調子で彼が言う。
「言ったはずです。”引き受ける”と言って頂けるまで通うと」
どんなに相手が嫌いなヤツでも、絶対に落としてみせる。
「・・・そうだったな」
苦笑を浮かべ彼が私を見る。
何だかその瞳がいつもと様子が違うからドキっとしてしまう。
「そうだな。じゃあ、今日は外で話さないか」
そう言い、上着を持って彼が研究室から出る。
「えっ、ちょっと」
慌てて、彼の後をついていく。




「・・・ここは一体・・・」
連れて来られた場所は墓地だった。
神妙な顔つきで彼が墓石を見つめる。
「俺の妻の墓だ・・・。今日が命日なんでな」
”妻”
その言葉に妙なひっかかりを感じる。
「・・・俺が結婚していたのはそんなに以外か?」
私の表情を読み取るように彼が言う。
「・・・だって、あなたゲイでしょ?」
「ハハハハハ。相変わらずストレ−トな発言だな」
呆れたように笑う。
「まぁ、確かに男も好きだが、時には女にも惚れる事があるさ」
「・・・つまり、バイセクシャル?」
「まぁ、そんな所だ」
「・・・そう言うの見境がないって言うんですよ」
「ハハハハハハ。違いない」
「・・・で、奥様はどうして亡くなったんですか?」
「・・・ガンだ。まだ27歳だった・・・」
一瞬、やり切れなさそうに表情を歪める。
その表情が悲しく見えた。



「どうして、私なんかを連れて行ったんですか?」
帰りの車の中で呟く。
「別に、今日は彼女の命日だったし・・・。それに、一人で行ける程まだ傷は癒えてないんでな」
「えっ」
「・・・この間はすまなかった。あんなふうに言うつもりはなかったんだ・・・。あんたの顔を見ていたら、ついな・・」
この男から聞いた初めての謝罪の言葉に胸がざわめく。
「・・・奥さん、いつ亡くなったんですか?」
「5年前だ。結婚して一年も経たないうちに、彼女は逝ってしまったよ。それ以来、女には恋をしていない・・・」
切ない表情・・・。
世界中の悲しみを背負ったような眼差し・・・。
彼がどれくらい愛していたかがわかる。
「・・・愛していたんですね・・・」
「あぁ。あんなに強く誰かを愛する事はきっと、俺の人生の中では、最初で最後だ・・・」
最初で最後・・・。
その言葉が心に響く。

「今日は付き合ってくれてありがとう。あんたとの仕事前向きに考えてみるよ」
別れ際に珍しく優しい笑みを浮べる。
その表情に胸がときめく。

ヤダ・・・。
こんヤツにそんな事思うなんて・・・。
どうかしてる・・・。



「立石君、よくやったな!!」
それから3日後、出社すると課長が大喜びで私に言う。
何がなんだかわからず、つい、怪訝そうな表情を浮べてしまう。
「一体・・・何が?」
「水無瀬教授がアドバイザ−引き受けてくれたよ。これから契約を交わしに来て下さる」
彼が・・・来る?
その言葉に心が高ぶる。


「今回は私どもプロジェクトに快く参加して頂き、ありがとうございます」
課長が深々と彼に頭を下げる。
「いいえ。私の方こそ。参加させて頂けて光栄です」
私に見せた事のない紳士的な物腰で口にする。
何だかそれが知ってる彼とギャップがあって妙に可笑しく見えてしまう。


「あんた、笑ってただろう?」
課長以下、他の社員が応接室からいなくなると、彼が言う。
「だって・・・普段のあなたと違うから」
噛み殺していた笑いを素直に浮かべ口にする。
「知らないのか?あれが本当の俺だ」
おどけたように彼が言う。
その表情が可笑しくてまた笑いが毀れる。
「心理学者なんて辞めて、役者になったら売れるわよ」
「・・・克之と同じ事言うんだな」
”克之”という言葉に笑みが消える。
「重症だな。名前を聞いただけで、そんな表情を浮べるとは・・・」
人の心を見透かすように告げる。
「・・・あんたにそこまで思われて克之も幸せだな」
バカにするようないつもとは違う言葉を口にする。
驚いたように彼を見つめると、穏やかな表情を浮べた。
「・・・いい女だよ。あんたは・・・。もったいないな。アイツの事だけを思っているなんて」
真剣な瞳で私を見つめる。
「えっ・・・」
思わぬ言葉に戸惑いが溢れる。
「もし、俺がまた女を好きになったとしたら・・・それはあんただ」
その言葉に心を強く握られる。
「ハハハハ。冗談だよ。そうあからさまに嫌がるなよ」
何も言えない私に可笑しそうに彼が笑い出す。

冗談・・・。
何だか痛い・・・。

「じゃあな」
そう言い彼が頬に軽く唇を寄せる。
何の意味もないキスなのに、この間唇にされた時よりも重く感じる。

私は一体どうしてしまったの?
アイツに対してこんな感情を抱くなんて・・・。






To be continued



【後書き】
ゲイねた実は以前から書いてみたいと思っていました(笑)
でも、書き始めてみるとやっぱり・・・思うようにいかない・・・。
少女漫画か何かによくありがちな話になってしまいました(苦笑)
まぁ、懲りずにしぶとく書いていきます♪

ここまで読んでくれた方ありがとうございました♪♪
最後までお付き合い頂けると嬉しいです♪

Cat





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