あ な た
逢えない時間は気づくとあなたの事ばかり考えていた。 あなたの話し方とか、低い声のト−ンとか思い出しては胸が千切れそうになった。 いつからこんな気持ちになったのだろう。 あなたに逢えないと今にも泣き出してしまいそうな自分がいる。 一緒にいる時は、伝えられない想いに胸の中が苦しくなるのに・・・。 でも、それでも逢いたい・・・。 秒針が進む限り、地球が回り続ける限り、あなたといたい。 他の人はいらない。あなたが欲しい。あなただけが傍にいてくれればいい・・・。 どうしよう。もう、あなたの事以外考えられない。 |
瞼を閉じるとあなたの瞳と出会う。 私を見つめる瞳。他の人を見つめる瞳。遠くを見つめる瞳・・・。 あなたは時々寂しそうにどこか遠くを見ていた。 "ねぇ、一体何が寂しいの?" そんな言葉がいつも喉の奥に止まる。 |
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「・・・手、大きいね」 あなたの手に視線を落とし、小さく呟く。 「えっ?・・・そう?」 不思議な事を言われたように、あなたが言う。 「ほら」 そう言い、あなたの前に右手を広げて掲げた。 あなたはクスリと笑って、私の手と自分の手を重ね合わせる。 「・・・本当だ。小さい」 二人視線を合わせて小さく笑った。 "間もなく一番線に電車が参ります" ホ−ムに響くその声に二人の手が離れる。 それからあなたは到着した電車に乗った。 あなたの後ろから私も・・・。 |
空いている席を見つけあなたが座る。そして、私も座る。 さっきよりも近いあなたとの距離に胸が弾む。 「明日は晴れるかな」 電車が動き出してすぐにあなたが口にする。 いつもよりも近くで聞くあなたの声に鼓動が強く胸を揺らした。 「・・・どうだろう。天気予報聞かなかったなぁ」 真向かいの窓に映る夕陽を見つめ、言葉を続ける。 「でも、晴れるんじゃない?綺麗な夕陽だよ」 オレンジ色に包まれた空が普段よりも眩しく見えた。 「・・・うん。そうだね」 そう呟いたあなたの横顔に小さな感動が浮かぶ。 何でもない日常の風景なのに、あなたと見る夕陽に涙が浮かびそうになる。 それから、暫く二人で窓の外の夕陽を見ていた。 心の中があなたで満たされていく。 そして、またどちらからともなく他愛のない話をした。 「じゃあ、また明日」 電車が止まると、あなたは私に声を掛け、椅子から立ち上がった。 「・・・うん。またね」 笑顔を浮かべて、軽く手を振り、あなたを見送った。 ドアに向かって歩くあなたを見つめ、胸の中が寂しくなる。 一瞬振り返ったあなたは笑顔を残して電車を降りた。 扉が閉まって、進む電車の窓から階段を上るあなたの姿が見える。 何でもない事なのに胸が締め付けられた。 泣いては駄目と自分に言い聞かせても勝手に涙が瞳を占領する。 逢いたい・・・。あなたに逢いたい・・・。あなたともっと一緒にいたい・・・。 あなたの傍に行きたいと心が泣き始める。 まだ離れて一分も経たぬうちに、胸が引き裂かれそうだった。 |
どうしてこんな気持ちになるのだろう。 いつからこんな気持ちになったのだろう。 気づけば私の心の中はあなたでいっぱいだった・・・。 |
【後書き】
何て乙女チックなものを書いてしまったんでしょう(笑)何か書かなくてはとPCに向かって二時間。
お粗末様でございました(笑)
2002.8.20.
Cat