あ な た

















逢えない時間は気づくとあなたの事ばかり考えていた。

あなたの話し方とか、低い声のト−ンとか思い出しては胸が千切れそうになった。

いつからこんな気持ちになったのだろう。

あなたに逢えないと今にも泣き出してしまいそうな自分がいる。

一緒にいる時は、伝えられない想いに胸の中が苦しくなるのに・・・。

でも、それでも逢いたい・・・。

秒針が進む限り、地球が回り続ける限り、あなたといたい。

他の人はいらない。あなたが欲しい。あなただけが傍にいてくれればいい・・・。

どうしよう。もう、あなたの事以外考えられない。
































瞼を閉じるとあなたの瞳と出会う。

私を見つめる瞳。他の人を見つめる瞳。遠くを見つめる瞳・・・。

あなたは時々寂しそうにどこか遠くを見ていた。

"ねぇ、一体何が寂しいの?"

そんな言葉がいつも喉の奥に止まる。











「うん?」

私があなたを見つめていると、あなたはいつもそう返事をする。
それは、まるで何でもないよ。大丈夫だよ。と言っているように。

「ううん」

私は俯いて首を振りながらいつもそう口にする。
あなたはそんな私に苦笑を浮かべていた。

「じゃあ、また」

駅に着くと、いつもあなたの方から別れる。
こんな瞬間、堪らなく感じてしまう。あぁ。私だけがあなたの事を好きなんだなと。

「待って。今日は友達の所に行くの」

少しでもあなたと一緒にいたくて、嘘をつく。

「だから、今日は同じ電車に乗る」

立ち止まったあなたに言い、一緒に改札を通った。
ホームに降りて、電車を待つ。
あなたの隣に立ち、他愛もない話にいつも以上の笑顔を作った。
笑いすぎてはいけないと思いながらも、ついついあなたといる事が嬉しくて、
笑い声が止まらない。
できる事なら、ここで時間を止めて欲しい。電車なんて来ないで欲しい。
永遠に二人一緒にいられたら・・・。
ありもしない馬鹿げた事を考える。

「あっ、ごめん」

偶然に触れた手にあなたが謝る。
心臓が止まるかと思った。たった一瞬、触れただけなのに。
笑い声が止まる。どうしていいのかわからなくなる。

「・・・ううん」

左右に首を振って線路を見つめた。
顔が熱い・・・。胸の鼓動が早くなる。たったそれだけの事なのに・・・。



















































「・・・手、大きいね」

あなたの手に視線を落とし、小さく呟く。

「えっ?・・・そう?」

不思議な事を言われたように、あなたが言う。

「ほら」

そう言い、あなたの前に右手を広げて掲げた。
あなたはクスリと笑って、私の手と自分の手を重ね合わせる。

「・・・本当だ。小さい」

二人視線を合わせて小さく笑った。

"間もなく一番線に電車が参ります"

ホ−ムに響くその声に二人の手が離れる。
それからあなたは到着した電車に乗った。
あなたの後ろから私も・・・。














空いている席を見つけあなたが座る。そして、私も座る。
さっきよりも近いあなたとの距離に胸が弾む。

「明日は晴れるかな」

電車が動き出してすぐにあなたが口にする。
いつもよりも近くで聞くあなたの声に鼓動が強く胸を揺らした。

「・・・どうだろう。天気予報聞かなかったなぁ」

真向かいの窓に映る夕陽を見つめ、言葉を続ける。

「でも、晴れるんじゃない?綺麗な夕陽だよ」

オレンジ色に包まれた空が普段よりも眩しく見えた。

「・・・うん。そうだね」

そう呟いたあなたの横顔に小さな感動が浮かぶ。
何でもない日常の風景なのに、あなたと見る夕陽に涙が浮かびそうになる。
それから、暫く二人で窓の外の夕陽を見ていた。
心の中があなたで満たされていく。

そして、またどちらからともなく他愛のない話をした。

「じゃあ、また明日」

電車が止まると、あなたは私に声を掛け、椅子から立ち上がった。


「・・・うん。またね」

笑顔を浮かべて、軽く手を振り、あなたを見送った。
ドアに向かって歩くあなたを見つめ、胸の中が寂しくなる。
一瞬振り返ったあなたは笑顔を残して電車を降りた。
扉が閉まって、進む電車の窓から階段を上るあなたの姿が見える。
何でもない事なのに胸が締め付けられた。
泣いては駄目と自分に言い聞かせても勝手に涙が瞳を占領する。
逢いたい・・・。あなたに逢いたい・・・。あなたともっと一緒にいたい・・・。
あなたの傍に行きたいと心が泣き始める。
まだ離れて一分も経たぬうちに、胸が引き裂かれそうだった



















































どうしてこんな気持ちになるのだろう。

いつからこんな気持ちになったのだろう。

気づけば私の心の中はあなたでいっぱいだった・・・。











Music by AI"忘れえぬ想い"




【後書き】
何て乙女チックなものを書いてしまったんでしょう(笑)何か書かなくてはとPCに向かって二時間。
お粗末様でございました(笑)

2002.8.20.
Cat

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