[リクエストの内容]
 
 速水さんがマヤちゃんとデートできる事になったのに、親戚か知り合いから頼まれたか何かで
 小さな子供(できれば男の子がいいです♪)も一緒になっちゃって。
マヤちゃんがその子ばっかり構うので、ついついヤキモチを焼いてしまう速水さん・・・・。
でも最後はラブラブ♪

                                   る−様よりリクエスト




            ☆天 使 の 悪 戯−前編−










人間時には目にしてはいけないものを見る事がある。
例えば、某女優のノ−メイクの顔であったり、親しい友人のベットシ−ンであったり・・・。
そして、彼女もそんなものを見てしまった一人である。

「健くん、いい子だから、おじさんの言う事聞こうねぇぇ」
偶然にも街を歩いていたら、そんな言葉を聞く。
どこかで聞いた事のある声だなと何となく、視線を向けてみれば・・・。

そこにいたのは彼女の宿敵、あの大都芸能の鬼社長速水真澄の姿があるではないか。
しかも、いつもとは違い媚びを売るような声に表情。
あの冷酷な仕事の鬼で通っている速水真澄が小さな男の子相手にそんな態度をとっているのだから、
天と地がひっくり変える程の大事件である。

「いや−、ま−のとこいくの−」
真澄に引っ張られる手を振り払い、泣き出す。
真澄は真澄で弱ったという表情を浮かべ、戸惑う。
そんな彼がおかしくて、悪いと思いながらも、ついクスリと笑みを浮べてしまう。

「今日は俺と一緒だと言っただろう」
言う事の聞かない男の子についに、真澄が感情を露にし出す。

「そんな怖い顔してると、また泣いちゃいますよ」
見ていられなく余計な事とわかっていても、そんな言葉をかけてしまう。

「えっ」
マヤの方を向き、驚いたように口にする。
「ぼく、おなまえは」
男の子の前に進み出て、かがみ込み視線を合わせる。
「・・・けんた・・・」
優しそうな笑みを浮べるマヤに自然と口が動く。
「そう、けんたくん、いいものあげる」
そう言い、紅葉の葉のような小さな手にかわいくラッピングされた飴を一つ置く。
その瞬間に健太の目がキラキラと輝き出す。
「いい子だから、速水のおじちゃんの言う事、聞いてあげようね」
優しく頭を撫でながら言う。
不思議と健太はもう泣き止み、にこやかに笑っていた。

マヤの包み込むような優しい表情につい、真澄も引き込まれそうになる。

「・・・ありがとう。助かったよ」
自分に視線を向けるマヤにハッとし、礼を口にする。
「いいえ。でも、速水さんが小さな男の子と一緒なんて、以外な組み合わせですね」
「あぁ・・・。俺もそう思う」
真顔でそう言う真澄が可笑しくて、つい笑みを浮べてしまう。
「・・・笑う程以外か?」
目の前で突然笑い転げ出したマヤに眉を上げ、呟く。
「・・・いえ、その・・・」
笑いを必死に堪えながら、口にする。
「まぁ、いいさ。好きなだけ笑いたまえ。俺だってまさかこんな事になるとは思いもしなかったからね」
ため息を一つつき、健太の方を見る。
「あの、理由を聞いていいですか?」
笑い終えた後、戸惑いながら真澄を見る。
「・・・ちょっと、知り合いに頼まれたんだよ。それだけだ。さぁ、健太行くぞ」
不機嫌そうな表情を浮かべ、片手でひょいと健太を抱き上げる。
「じゃ、またなちびちゃん」
そう言い、真澄が歩き出そうとすると・・・

「えぇぇぇ−−−−ん!!!!」
またしても、大きな声で泣き始める。
さすがの真澄も唖然とする。

「・・・おねえ−たんもいっしょ!」
真澄に抱きかかえられながら、マヤの腕を掴み、涙ながらに訴える。
「はぁぁ・・・どうやら、俺は相当子供に嫌われるタイプなんだな」
まいったというように口にする。
「・・・あの、私、今日、別に予定ありませんから・・・いいですよ」
マヤの言葉に以外な表情を浮べる。
「それは、ありがたいが・・・でも、いいのか。俺も一緒だぞ」
ついつい、そんな言葉を口にする。
「・・別に、構いませんけど・・・」

いつもは人をゴキブリか何かのように見るのに・・・。

以外な彼女の返事に真澄は信じられないもので見るように目の前の彼女を見つめた。
「何です?何か私の顔についてますか?」
真澄の視線を感じ、微かに頬を赤く染める。
「いや・・・、その、ありがとう」





「まて!けんたくん」
「きゃははは。はははは」

公園で無邪気に追いかけっこをする二人を真澄はベンチに座りながら眺めていた。

そういえば、仕事から離れて、こんなにのんびりするのも久しぶりだな・・・。
そう思うと、急に眠気に襲われる。


「つかまえた」
けんたを抱きしめ、にっこりと笑う。
「もっかい、もっかい」
マヤとの鬼ごっこが気に入ったのか、満面の笑顔でそう言う。
「そうね。ちょっと、休ませてくれる」
さすがに30分以上も鬼ごっこをしていると、マヤでも疲れを感じる。
「うん。じゃ、ますみのとこいこ」
そう言い、真澄がいるベンチに向かって走り出す。

ますみ?

健太の口から出た自然なその一言に驚かされる。
健太くんの親ってよっぽど速水さんと親しいのね・・・。
もしかして、速水さんが父親だったりして・・・。

チラリとそんな事を考え、急に胸が痛む。

嫌だ、何考えてるの!速水さんにそんな事、ある訳・・・ない・・・。

「けんたくん、転ばないようにね」
余計な考えを必死で頭から追い出し、健太の後をゆっくりとマヤが歩き出す。



「ますみ、ますみ」
ベンチに行くと、すっかり夢の世界に入っている真澄に健太が声をかけていた。
初めて目にする真澄の穏やかな寝顔に、暖かいものが心に流れる。
「し−!速水さん、疲れているみたいだから、寝かせてあげよう」
健太を膝に抱き、真澄の隣に座る。
「おねえ−たん、何かお話して」
甘えたようにマヤを見つめながら言う。
その表情がかわいくて、つい、ギュッと抱きしめたくなる。
「そうね・・じゃあ・・・・・・・・」
そう言い、マヤは何かの童話をその巧みな演技技術を使って、聞かせる。
健太は夢中になって、マヤの話に耳を傾けていた。

「それで、ももたろうさんは・・・あら?」
話も終盤になった頃、小さな寝息が聞こえてきた。
「・・・健太くん?」
そっと、彼の寝顔を見る。
愛らしい表情を浮べて、気持ち良さそうに眠っていた。
「眠っちゃったのね・・かわいい」
健太の顔を見つめていると、肩に何かが、のしかかる。
「えっ」
それは横で眠っていた真澄がマヤの肩に寄りかかったのだった。
思わぬ近い距離にドキっとする。
膝では健太が眠っているので動こうにも動けなかった。
「・・・どうしよう・・・」
これ以上ない程に顔が熱くなる。

ヤダ・・・何で、こんなに動揺しているの・・・。
相手は速水さんじゃない・・・。
いつも私をからかってる意地悪なヤツじやない・・・。

でも、本当は優しくて・・・私を影で支えてくれて・・・。

真澄の顔をじっと見つめ、気づいてしまった恋心を巡らせる。

「・・・どうして、あなだか紫の薔薇の人なの・・・」





「はぁぁ、すっかり、眠ってしまったみたいだな」
眠ったままの健太を抱き上げ、公園を出ながら、真澄が口にする。
「すまなかったな。君にばっかり健太の面倒を見させて」
「いいえ。とっても、楽しかったです。健太君、本当に可愛くて」
「そう言ってもらえると、俺も気が楽だよ。さて、そろそろ昼飯にしよう。お腹すいただろ?」
真澄にそう言われ、時計を見てみると、もう、午後2時を回っていた。
「何が食べたい?」
そう言われ、周りを見渡すとファ−ストフ−ドの店が目に入った。
「あれ食べたいです」
「えっ」
マヤが指し示す店を見つめ、以外そうな声をあげる。
「君も欲がないな。こんな時は普段食べられないような高いものを食べたいと言うんだぞ」
苦笑気味に真澄が言う。
「だって、健太君、まだ眠っているし、ちゃんとしたレストランには入れないでしょ。あそこでテイクアウトしてもらって
公園で食べるのが一番だと思ったから」
「・・・確かに・・・」
マヤに言われて初めて、健太の存在に気づく。
「それに、お腹すいてるから・・・すぐに食べられるものがいいんです」





「・・・何だか可笑しい」
ハンバ−ガ−を口にしながら、マヤが可笑しそうに笑う。
「えっ・・・何がだ?」
「だって、こうして、公園のベンチに座って速水さんとハンバ−ガ−食べるなんて、ちょっとない事だから・・・」
マヤに言われて、真澄もクスリと笑う。
「本当だな。宿敵の君とこうしてるなんてな。君もそろそろ俺といるのに限界なんじゃないか」
冗談っぽく口にし、笑い飛ばしながらマヤを見る。
「・・限界だなんて・・・。そんな事ないです。速水さんといるの嫌いじゃないですよ」
「えっ」
マヤの言葉に思わず、飲みかけのアイスコ−ヒ−を落としそうになる。
真澄の反応に自分が余計な事まで、口にしてしまった事に気づく。
「だって、今日みたいな子供連れの速水さんなんて、めったに見れませんから」
弁解するように慌てて口にする。
「ハハハハハハ。なるほどな」
マヤの言葉にいつものように笑い出す。
顔は笑っているのに、マヤを見つめる瞳は悲しそうだった。

「・・・どうしたの?」
眠っていた健太が目を覚まし、何だか気まずい二人を見つめる。
「起きたか。健太、ごはんだ」
そう言い、健太の分のハンバ−ガ−を渡す。
「わ−い。はんば−ぐ!」
嬉しそうにパクつく健太を優しい瞳で真澄が見つめる。
その表情に胸がキュンとする。
「うん?どうした?もう、食べないのか?」
ぼんやりと、真澄を見つめているマヤに言う。
「・・・速水さん、ごめんなさい。今、言ったのは嘘です」
「うんっ?」
マヤの言葉に何がどう嘘なのかを思考を巡らせる。
「つぎ、あそこにいきた−い!」
見つめ合う、二人を割り込むように、健太が公園から見える赤い塔を指し示す。
「よし、行こう!」
説明を求める真澄の視線を無視して、無邪気にマヤが言う。
「・・・速水さん、行こ」
しばし唖然とする真澄を残して、昼食を食べ終わったマヤと健太は、もう、次の場所を目指して歩き始めていた。




「わ−!高い!!!建物が小さく見える!!」
東京タワ−の展望室に着くと、健太以上にマヤの方が喜んでいるように見えた。
そんな様子に真澄の口元が緩み出す。
「おねえ−たん、みて、みて、これ、おおきくみえゆよ」
そう言い、真澄にだっこされながら、双眼鏡を見つめる健太が言う。
「わ−!本当だ!!」
健太に代わってもらい、嬉しそうに声を上げる。
「おね−たん、ここすき?」
あまりにもマヤが嬉しそうに見えたのか、健太までそんな事を口にする。
「うん。大好きよ。健太くんは?」
双眼鏡から目を離し、健太を見る。
「だいすき!でも、一番好きなのはおねえ−たん」
そう言い、そっと、マヤの唇にキスをする。

「なっ・・・」

予想外の健太の行動に、抱きかかえる健太を落としそうになる。
「速水さん、危ない!」
マヤに言われ、健太をしっかりと抱きとめる。
「あっ・・・すまん」
「ますみ、しっかりしろよ」
落とされそうになって、少しむくれたように健太が真澄を見る。
いくら子供とは言え、マヤの唇を奪った健太にさっきとは違う感情が宿る。
「・・・すまなかったな」
引きつった笑みを浮かべ、憎らしげに健太を見る。
「おねえ−たんにだっこしてもらう」
マヤに手を差し伸ばしながら、口にする。
「えっ、あっ、はい。おいで、健太君」
真澄の手から強引にマヤの腕の中に飛び移る。
「おいっ、こら、戻れ」
健太の行動にまたしても、面白くない気持ちにさせられる。
「大丈夫です。私が健太君だっこしてますから」
健太の髪を撫でながら言う。
「でも、重いだろ・・・ずっとだっこしている訳には・・・」
心配そうにマヤを見つめる。
「軽いですよ。それに、私、結構体力あるんですよ」
「おねえ−たん、おろして!」
真澄が何か言おうとすると、割り込むように健太が言う。
「えっ・・・うん」
健太に言われる通りに、降ろす。
「あっちに行こう!」
マヤの手を元気に掴み、走り出す。
それはまるで、真澄からマヤを遠ざけようとしているようにも見えた。

この時から、健太は一日中、マヤの手を放す事なく、真澄がマヤに何かを話しかけようとすれば
邪魔するように割り込み、マヤを独占していたのだった。

最初はたかが、子供だと割り切っていたが、日もどっぷりと暮れる頃、真澄の不機嫌はすっかり頂点へと
増していった。


「え−!おねえ−たん、帰るの?」
3人で夕食をとりおえた午後9時頃、マヤが健太にさよならを言おうとしたら、
さっきまで、機嫌良く笑っていた健太が急に、涙を浮かべ始める。
「おねえちゃんはもう、帰る時間だ。健太もそろそろ眠る時間だろ?」
膝を折り、健太に言い聞かせるように真っ直ぐと見つめる。
「やだ!!!おねえ−たんと一緒に寝るの!!!」
マヤに駆け寄り、誰にも渡さないと言うばかりに彼女の腕を掴む。

「健太!!いい加減にしなさい!!!!」
その態度にたまりに、たまっていたものが爆発する。

「えぇぇぇ−−−−−−−−−んっっっっ!!!!!」
迫力ある真澄の表情に特大の泣き声が響く。

しまった・・・。

子供相手にやりずきたと後悔する。
もう、この分では当分泣き止みそうにはない。

「・・・あの、速水さん、この子、いつまで預かっているんですか?」
「えっ・・・あぁ・・・明日の昼までだ」
「だったら、私、それまで健太君と一緒にいます。丁度、稽古もお休み中ですし」
「君にそこまで、迷惑はかけられない。さっ、健太来るんだ」
マヤの影に隠れて泣き喚く、健太の腕を掴み、引き寄せる。
「やだ!!!!!!おねえ−たんとはなれない!!!!」
小さな体から真澄の鼓膜を破りそうなぐらいの叫び声をあげる。
もう、こうなってしまっては無理矢理連れて行く事もできなかった。




「・・・本当にすまない・・・」

健太の面倒を見る為に借りているホテルの部屋につくと、マヤに申し訳なさそうに言う。
「いえ、でも、それにしても凄い部屋ですね」
通された部屋はスィ−トル−ムだった。
「あぁ、健太の親が用意したんだ。ここにはよく泊まるから、健太も慣れていると思ってな」
「よく泊まる・・・。さすが速水さんの知り合い。お金持ちなんですね」
「おねえ−たん、お風呂入ろ!」
マヤと真澄が話していると、例のこどく邪魔するように健太が入ってくる。

風呂だと・・・。

健太の言葉に真澄の表情が凍りつき始める。

「健太は俺と入るんだ!」
「嫌だ!!ますみじゃなくて、おねえ−たんと入る!ねぇ、おねえ−たん、入ろう」
「うん。一緒に入ろう」
難なくマヤが答える。
「何っ!」
マヤの言葉につに険しい表情をしてしまう。
「・・・健太くんと・・・一緒に入っちゃ、駄目ですか?」
真澄の様子におどおどと伺いを立てる。
「いや、君がいいなら、いいんだが・・・」
マヤに見つめてられて、そう言うしかなかった。


「はぁぁ・・・子供相手に俺は何をムキになっているんだ」
マヤと健太がバスル−ムに入ると、気が抜けたようにソファ−にもたれる。

「こら、健太くん!」
真澄の一瞬の安らぎを破るようにバスル−ムのドアが開き、石鹸まみれになった健太が部屋中を走り回る。
それを追いかけるように、バスタオルを巻いたマヤも真澄の目の前を横切る。

「なっ・・・」
突然の事に、ただ、ただ言葉が出ない。
「はははは。こっち、こっち」
マヤをからかうようにすばしっこく走り回る。
「速水さん、健太君、捕まえて!」
呆然と二人を見ている真澄にマヤの言葉が飛ぶ。
「えっ・・・あぁ」
我に返ったように、真澄も健太を追いかけ、あっという間に片手でひょいと持ち上げる。
「こら、おねえちゃんを困らせちゃ、駄目だぞ!」
健太を真っ直ぐに見て、軽く叱る。
「だって・・・おねえ−たん、頭洗うの下手なんだもん。ますみと洗い方が違うんだもん」
健太の無邪気な言葉に思わず笑いそうになる。
「・・・私、健太くんの目にお湯入れちゃったみたいで・・・それで、怖がって・・・」
面目なさそうにマヤが言う。
「コイツは我が儘だからな・・・」
そう言い、健太を抱えたままバスル−ムに入っていく。

「痒い所はないか?」
健太の頭にシャンプ−をかけながら、真澄が言う。
「うんん。ないよ」
真澄に髪を洗ってもらい気持ち良さそうに健太が答える。
マヤがあれほど、髪の毛を洗うのにてこずったというのに真澄には大人しく髪を洗わせていた。
その見事な真澄の手さばきを感心したようにマヤは見ていた。
「これで終わりだ」
あっという間に健太の髪を洗い終わり、口にする。
「そんな所に立ってないで、バスタブに入ったらどうだ?風邪ひくぞ」
バスタオル一枚でバスル−ムに呆然と立っているマヤに言う。
「えっ・・・だって、速水さんがいるから・・・」
恥ずかしそうにマヤが口にする。
その言葉にマヤが女だという事を意識する。
急に、胸が熱くなり、頭がぼ−っとしだす。
「・・・別に俺は構わんがな。ちびちゃんの裸の一つや二つ」
動揺を隠すためにいつもの口調になる。
「酷い!私だって、女なんですからね!!」
真澄の言葉に素直にむくれ出す。
「ははははは。冗談だよ。ゆっくり浸かれよ」
そう言い残し、バスル−ムを後にする。



「はぁぁ・・・気持ち良かったです」
真澄がバスル−ムから出て20分後、健太と一緒にパジャマ姿のマヤが現れる。
二人はホテルに来る前に買ったおそろいのバジャマを嬉しそうに着ていた。
その姿が真澄の目には何とも可愛らしく見えた。

「・・・ねむい・・・。おねえ−たん、寝よ」
マヤを目の前にして呆けていると、健太が眠そうに目をこすっていた。
「・・・あぁ、ベットなら、健太と一緒に奥の寝室を使ってくれ。あそこならダブルだから、ゆったり眠れるぞ」
そう言いながら、リビングの奥を指差す。
「・・・速水さんはどこで眠るんですか?」
ふと、素朴な疑問が浮かび上がる。
「あぁ。俺なら、そこのソファ−で寝るよ」
そう言い、二人がけのソファ−を示す。
「いいんですか?私がベット使っちゃって」
「何だ、俺の心配してくれるのか?」
からかうような口調で言う。
「・・・だって、何か悪いような気がして・・・」
「俺の心配ならいらないよ。さてと、シャワ−浴びてくるか」
釈然としないマヤを残して、真澄はバスル−ムに入っていった。



「で、アリさんが働いている間、キリギスさんは何もせずに遊んでいたのよ」
真澄がバスロ−ブ姿で、バスル−ムから出ると、寝室で、マヤが健太に絵本を読んでいた。

「何だ、まだ眠らないのか」
二人が入っているベットの端に座り、口にする。
「あっ、速水さん」
湯上りの真澄に、思わず、視線を逸らす。
「その・・・健太くんが・・・3人で寝よって言い出して・・・いつも、お父さんと、お母さんの間で眠っているから、
お父さん側が空いていると、淋しいんですって。それで、速水さんが来るまで眠らないって言い出して・・・」
頬を赤くしながら、マヤが言う。
「えっ」
マヤの言葉に眉を潜める。
「ますみも一緒に寝よう!」
甘えるように健太が真澄を見る。
「ベット広いし・・・全然3人で眠れますよ」
真澄がためらったように黙っていると、マヤがぼそっと口にする。
「・・・いいのか?俺と同じベットで眠って」
つい、本音が口から出る。
真澄の言葉に、ボッとマヤが赤くなる。
「・・・べ、別にいいですよ。健太くんが間にいるんだし」
マヤの言葉にクスリと笑い、ベットに入る。
健太を真ん中に挟んで、川の字のようになる。
「・・・わ−い。ますみともおねえ−たんとも一緒」
嬉しそうに二人の手を握り、キャッ、キャッと健太がはしゃぐ。
そして、暫くすると、健太の寝息が聞こえてきた。

「どうやら眠ったみたいだな・・・」
そう言い、真澄はベットから抜け出そうとしたが、しっかりと健太に手を握られていたので、動けなかった。
「無理に放させると、健太君、起きちゃいますよ」
何とかベットから抜け出そうとしている真澄にマヤが言う。
「・・・そうだな」
小さく口にし、マヤを見つめる。
「今日は本当にありがとう。君がいてくれて助かったよ」
優しい表情を浮かべる。
「えっ・・・いえ、そんな。私の方こそ。図々しく・・してしまって・・・」
自分に向けられた思わぬ表情にマヤは戸惑い気味に答える。
「君に礼がしたい。君の望むものを何でも言ってくれ」
「・・・礼だなんて・・・別にいいですよ」
照れたように口にする。
「今日は何だかお母さんになった気分です」
くすぐったそうに笑い、健太を見つめる。
「君ならいいお母さんになるんだろうな・・・。今日一日一緒にいて思ったよ」
「速水さんだって、いいお父さんになれますよ。速水さんがあんなに髪の毛洗うの上手だとは知りませんでした」
バスル−ムで、Yシャツを巻くって、健太の髪を洗っていた真澄を思い出しながら口にする。
「・・・そうか」
マヤの言葉に照れたように呟く。
「今日は以外な速水さんをいっぱい見てしまいました」
可笑しそうにマヤが笑い出す。
「し−!健太が起きるぞ」
「えっ、あっ、すみません」
口を抑え小声で囁く。

「そういえば、いつだったか、君が芝居から逃げて、幼稚園か何かで働いている時があったな」
フッと思い出したように口にする。
「あの時、君の笑顔を見て、俺は連れ戻すべきか迷ったよ。君には芝居よりももっと相応しい世界があるんじゃないかって・・・」
首を横に向け、マヤの方を見ながら言う、
「・・・速水さん・・・」
真澄の思いやりが心に流れてくる。
「どうだ?君は今の世界で幸せか?」
不安そうに真澄が聞く。
「・・・幸せです。私、やっぱり、何よりも芝居が好きなんです」
微笑みを浮かべ答える。
「・・・そうか。それを聞いて安心したよ。ずっと、気になっていたから・・・」
ホッとしたように真澄が言う。
「速水さん、もし、母の事を気にして、私をずっと気にかけてくれているなら、もういいです。私は大丈夫ですから。
あの時はあなたの事を憎みましたけど、今は全然そんな事、思っていません。あれはあなたのせいじゃないから・・・もう、悩まないで下さい」
穏やかな表情を浮べる。
「・・・マヤ・・・。随分、君も大人になったんだな」
「・・・そりゃあ、私だって、もう二十歳すぎましたから」
「そうだな」
マヤの成長が嬉しくもあり、淋しくもあった。
「マヤ・・・。恋人はいるか?」
「えっ・・・いませんけど・・・」
思わぬ、真澄の質問に、頬が火照る。
「・・・じゃあ、君はこれから、本当の恋を知るんだな。誰かを死ぬ程愛し、
身も焦がすような熱い想いに心を締め付けられる。そんな恋を君はする気がする」

そして、その相手は俺ではない・・・。

「・・・速水さん?」
どこか悲し気な真澄を不安そうに見つめる。
「恋をしなさい。きっと、それは君の人生を素晴らしくする。役者として、女性として・・・。なんてな。
ちょっと、説教くさかったか?」
苦笑気味にマヤを見る。
「・・・い・・え・・・」
真澄の言葉に胸が熱くなる。
今、まさにマヤが抱えている気持ちにその言葉はピッタリと当てはまっていた。
急に真澄の顔をまともに見れなくなる。
「・・・速水さんは・・そんな恋をした事があるんですか?」
マヤの質問に、一瞬ためらったように彼女を見つめる。
「・・・あぁ・・・あるよ」
苦しそうな表情を浮かべる。
「愛しさに胸が締め付けられ、手の届かない想いにまた胸を締められ・・・でも、それでも、
その人を愛する事をやめられない・・・。会うごとに愛しさが募り、恋に落ちていく・・・」
熱っぽい瞳でマヤを見つめ、胸の内を口にする。
真澄の真っ直ぐな言葉に、視線に、切なさが溢れ出す。
「ちょっと、喋りすぎたな」
マヤが黙りコクッているのを見て、らしくない事を口にしたと後悔する。
「・・・いいえ・・・そんな・・・」
マヤはマヤで、真澄にそう想わせる人物に嫉妬を感じていた。
どうしようもない程胸が痛い・・・。
まるで、ガラスの破片で貫かれたような・・・そんな衝撃が走っていた。
「私も、恋ならしています。でも、きっと届かない。その人は私の事をそんなふうには見てくれないから・・・」
「えっ・・・」
辛そうなマヤの瞳が心がかき乱される。
「・・・もう、寝ます。今日は健太くんと遊んでて疲れました」
悲しげな瞳を誤魔化すように、笑う。
「おやすみなさい」
「・・・おやすみ」

二人はそう言い合い、ベットサイドのスタンドを消した。
目は閉じているのに、二人は眠りにつけなかった。
複雑な想いが絡み合う。

その夜は二人にとって、切なく長い夜になった・・・。






    


                          
 −後編へつづく−




【後書き】
20000hitリクエストficです♪♪キリ番を踏んで下さったる−様のリクエストに
応えて書いてるつもりですが・・・う・・・ん・・・何かズレてきた(苦笑)
この先、どうなってしまうんでしょうね?無事にマヤちゃんと真澄様をいちゃいちゃさせられればいいのですが(^^;
まぁ、頑張ってみます。

では、後編で♪


2001.10.8.
Cat






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