注意
このFICに出てくる僚(この漢字で表記させて頂きます)と香の設定は原作の設定から大きく離れています。






                  
< Assassin −1− > 






1.
「悪いなこれが俺の仕事なんだ」

男は一言、スコ−プの中の人物に呟くと、引き金をひいた・・・。

バン!

硝煙の匂いが男の鼻を掠める。
1KM先の標的は額を打ち抜かれ、ゆっくりと床に崩れ落ちた。
標的が倒れるのを確認すると、男はビルを後にした。



2.
彼女は新宿の街を歩いていた。
数年ぶりの日本・・・。
過去の思いが少しずつ胸を締め付ける。

ドンっ

突然、何かにぶつかる。
「すみません」
当たったものが人だった事に気づくと、彼女は相手を見た。
長身の体格に、鋭く、そして悲しそうな瞳・・・。
それがその男への第一印象だった。

「・・・いや」
男は一言、呟くと雑踏の中に消えていった。



3.
彼はぼんやりとグラスを眺めていた。
今夜の仕事の事・・・人ゴミの中でふづかった女・・・。
すべてを見透かすように彼を見たあの瞳・・・。
ただの一瞬の出会いなのに、なぜか彼の胸にひっかかっていた。

「あ〜ら、僚ちゃん、どうしたの?今日は大人しいじゃない」
行き着けのキャバクラのママが僚に話し掛ける。
「・・・ふふふ。それはママに話し掛けてもらうのを待っていたからさ」
いつもの自分に戻り、ママに襲いかかる。
「えっ、ちょっと、僚ちゃん」
ふいの僚の攻撃にママはそばにあったトレ−を持って構えた。

バキっ!
僚の顔に見事トレ−が的中する。
「あはは・・・ママさんってば・・・シャイなんだから・・・」
僚は静かに床に倒れた。

彼は仕事の後はこうしてバカ騒ぎをしていた。
全てを忘れるように・・・。
血生臭い現実から逃れるように・・・。
彼の住む世界は闇に支配され、彼は一人孤独の中にいた。



5.
<新宿某公園内>

「さすがだな、僚」
ベンチに座っていると、男は新聞を僚に見せた。

『麻薬カルテルのボス、何者かに暗殺される』

新聞の一面には大きくそう書かれていた。
それを見て、彼は微動たりとも表情を崩さなかった。

「報酬は?」
彼の言葉に男はジュラルミンケ−スを一つ差し出した。
ケ−スの中身を確認すると、彼は男を見た。
「で、あんたが直々に俺に会いに来るのだから、何かあるんだろう?」
「フッ、勘がいいな」
男は口の端を微かに上げ、応えた。
「次の仕事だ」
男はファイルを僚に渡した。
ファイルの中身を見ると、僅かに彼の表情が固まる。
「悪いが、この依頼は引き受けられない」
そう言うと、彼はケ−スを持ち、ベンチから立ち上がった。
「対象が”女”だからか?」
立ち去ろうとする彼に、男が言う。
彼はその問いに静かに頷いた。
「相変わらず、甘いな」
男は軽く笑った。
「だが、僚。私からの仕事を簡単に断れるとは思っていないだろうな?」
威圧的な男の言葉に彼は表情を強張らせた。
「どういう意味だ?」
振り向き、男を睨む。
「おまえにNOと言う権利はないということさ」







槙村香 26歳
国連職員。現在事務総長の秘書官補佐を務める。

僚はファイルを見つめた。
資料に添付されている写真にはショ−トカットの似合う気の強そうな美人が写っていた。

「くそっ!」
軽く舌打ちし、ソファ−に横になって、天井を見つめた。
公園での会話が頭の中によぎる。




「彼女が事務総長について日本にいるのは一週間。失敗すればおまえの親友はこの世を去る事になり、おまえは麻薬カルテルの組織の連中に
命を狙われるようになる」
男の声が冷たく響く。
「俺に選択の余地はなし・・・という訳か・・・」
「その通り、おまえに選択肢はない」
「相変わらず、汚いやり方だ。海原」
男を鋭く睨む。
男は僚の視線に軽く笑い、ベンチから立ち上がり、僚に背を向けた。
「いや、選択肢はあるさ、俺がここでおまえをやるというな」
そう言い、懐に手を伸ばす。
「・・・おまえに”父親”が撃てるかな?」
僚に背を向けたまま海原が挑戦的に言う。
「私は”息子”を信じているよ。武器も持たない無防備な人間を後ろから撃つような奴ではないとね」
そう言い捨て、海原はゆっくりと歩き始めた。
僚は自分の甘さを実感しながら、男の背中をじっと見つめていた。



6.
<国連大使館>

外は雨が降っていた。
突然の夕立に彼女は雨が止むまで残業でもしているかと思い、自分のオフィスに遅くまで残る事にした。
今回、彼女は事務総長のお付として、三年ぶりに日本に帰国した。
しかし、連日の過密スケジュ−ルに彼女に日本を懐かしむ余裕などなかった。
いや、余計な事を考えないようにあえてそうしていたのかもしれない・・・。
彼女にとって日本は辛い思い出ばかりしかなかった・・・。
イギリスで生まれ、日本で育った彼女には国籍が2つあった。
国連職員の規定にホ−ムリ−ブ休暇の義務がある。
それは数年に一度母国に一ヶ月程帰らなければならないというものだった。
彼女はイギリス国籍を選んだ。
なのに、仕事で日本を訪れる事になろうとは・・・。
彼女にとって予想外な出来事だった。

「はぁぁ・・・」
自分しかいないオフィスに過去の自分が現れる。
考えないようにしていた事が次から次へと頭の中に浮かびあがり始める。

「・・・雨とこの国のせいね」

酷く感傷的になっている自分に呟く。
ため息を一つつくと、書類に目を向けた。




7.
スコ−プの中に映るのはどこか悲しそうな彼女の姿だった。
僚は躊躇っていた。
頭の中で引き金をひいたのはこれで100回目だった。
しかし、どうしても現実に指を動かす事などできない・・・。
軽く力を入れるだけなのに、この一撃で親友の命は助かり、自分も麻薬カルテルになどに狙われる事もなくなる。

なのに・・・。

撃てなかった・・・。

容赦なく振付ける雨が彼の体を覆う。
スコ−プ越しの彼女がふいにこちらを向く。

彼女の瞳が彼を捉える。

その瞬間、彼の中に何か
暖かいものが流れ込む。。。
生まれて初めて感じた感情に胸が熱くなる。
彼の心に火がつく・・・。



8.
何かに惹かれるように彼女は窓の側に立った。

視線を感じる・・・。

彼女の視界を何かが捕らえる。
しかし、外は真っ暗でその視線の先は何も見えなかった。
それでも、その視線から目を逸らす事ができなかった。
胸の鼓動が早く打ち始める。
言葉にはできない感情が胸を締め付ける。


「・・・誰・・・誰なの・・・?」

見えない相手に彼女の胸は大きく脈をうっていた・・・。






                                        <assassin2>




後書き
このficはCatの初CHficです(照)某所に投稿させてもらったものを今回、少し手を加えました。
原作の設定を大きくかけ離れ、狙われる者と暗殺者という香と僚の関係が書いてみたく書き始めました。
某所で投稿させて頂いたものとは違う結末を書くつもりです。




2001.7.31

Cat

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