<Assassin−5−>





29
「写真ができたわ」
厳しい表情で、冴子が槙村に言う。
「・・・やっぱり」
拡大され、画像を調整された写真は”僚”の横顔が写っていた。
「でも、どうして・・・」
冴子が呟く。
「きっと、今回の僚の雇い主が奴のオヤジだからだろう」
ぼそっと槙村が口にする。
「えっ?オヤジ?」
冴子は訳がわからないように槙村をみる。
「噂で聞いた事があるんだ。戦場で育ったヤツを育てた日系人の話を・・・」

槙村には予感があった。
冴子から調査資料を渡された時、香を狙っていたのが海原の組織だと知ってから・・・。
「これからどうするの?」
心配そうに槙村を見つめる。
「相手がヤツだろうと・・・。俺は香を守らなければならない。この命に代えてもな」
そう言い、鋭い眼光を浮べた槙村の表情は、初めて目にするものだった。



30
「新宿の街を歩いてみたい」
香にそう言われ、僚は彼女と一緒に街に繰り出していた。
香は街並みを眩しそうに見つめていた。
そして、自分の知らない場所を見つけては、子供のように純真な喜びを浮べていた。
そんな香が僚にはかわいく見えた。
僚も今日一日だけは仕事の事を忘れて、香に付き合った。
今日だけは、何も考えず、裏の世界の事も忘れたかのように、無邪気に笑い合っていた。

「風が気持ちいいわ」
都庁の近くの公園を歩きながら、香が言う。
「あぁ・・・そうだな」
風になびく香の横顔を見つめながら答える。
「平和だな・・日本は」
何かを思い出したように、淋しそうに香が呟く。
「君が見て来た国はどうだったんだい?」
楽しそうに遊ぶ子供たちを見つめる香に聞く。
「私が見てき来た国は皆、戦争によって豊かさを失っていた。考え方の違い、人種の違いで人がわかり合えないのは辛い・・・。
私は人々のかけ橋になりたかった。人と人は話し合えばわかり合えると信じたかったから」
「・・・信じるって事は何よりも難しい事だ」
過去を振り返るように口にする。
「人の気持ちは必ず揺れる・・・。人は弱い生き物だから」
僚は悲しそうに瞳を伏せた。
「私は僚を信じられるわ。絶対、揺れたりはしない」
彼の手を強く握り、香が口にする。
「また、あなたに笑って会えるって信じる」
真剣な香の瞳に、僚の心がぐらつく。
「・・・香・・・」


31
「頼みがある」
冴子を呼び出し、僚が口にする。
いつになく辛そうな表情がそこにはあった。
「その前に、答えて、どうしてあなたが海原の依頼を受けたのか!」
厳しい口調で冴子が言う。
「知ってたのか。という事は槙村にも、もうバレてるという訳か」
僚はさほど驚いた様子ではなかった。
いつかこうなる事を知っていたような・・・そんな様子だった。
「あなたワザと写真に写ったのね」
冷静な僚に向けて、冴子が口開く。
その言葉に僚は苦笑を浮べるだけだった。
「海原に言われた。槙村の命を助けたければ、香をヤレと・・・」
もはや、冴子には隠しておけないとわかると、僚は静かに告げる。
あまりの事実に言葉を失う。
「・・・明日で、期限が切れる。そして、全てが終わる」
悲しそうに呟く僚に冴子の胸は痛かった。

「で、私に何をしろと言うの?」



32
「起きてたのか」
深夜僚がアパ−トに戻ると、槙村がリビングのソファ−に座っていた。
「どうして・・・海原の依頼を受けた」
ゾッとするような厳しい表情で僚を睨む。
「俺のオヤジだからな・・・一応」
余裕たっぷりに苦笑を零し、答える。
「その依頼を撤回する気にはならないのか」
「・・・例え、おまえの頼みでも、無理だな」
威圧するような瞳で槙村を見る。
「なら、ここで、おもえを撃つまでだ」
槙村は手にしていた銃を僚に向けた。
「好きにしろ」
そんな槙村に僚は無防備に背を向けた。

長い沈黙が流れる・・・。

時計が秒針を刻む音だけが静かに聞こえていた。

「・・・明日だ。明日の調印式で俺は決着をつける」
静かに告げると僚は自分の部屋に向かって歩き出した。
槙村はついに僚に引き金を引く事ができなかった。

「くそっ・・・どうしてなんだ・・・」
力なくソファ−に座り、口にする。


33
「香、防弾チョッキを着るんだ」
調印式の一時間前槙村が香に詰め寄る。
香は首を横にふる。
「・・・いらないわ。私は信じているから」
「香、信じるって何を信じるんだ!」
「・・・アニキを信じてる。私を守ってくれるって。そろそろ行かないと」
そう言うと、香は待ち受ける公用車に乗った。


34
「・・・いい表情だ」
スコ−プ越しに香を見つめ、僚が呟く。
何かを覚悟したようなそんな表情だった。

そして、不意に、香が僚の方を向く。
まるで。目の前に彼がいるかのように瞳を細め、見つめる。

あなたに狙われた最初の夜から知ってた。
誰に狙われているのか・・・。
私の心をかき乱すのは誰なのか・・・。

あなたに出会えて短かったけど、楽しかった。
私が死んでも、意志は受け継がれる。

さあ、撃って・・。
あなたの守りたいものの為に・・・。

覚悟はできている。

香は思いを巡らせると、僅かに笑みを浮べた。

「さよならだ・・・香・・・」
僚はその笑顔を見つめると今度こそ引き金を引いた。
次の瞬間銃弾が香の胸を貫く。
真紅の血を流し、香が宙を舞う。

「香!!!!」
槙村が駆け寄り、彼女を支える。
「救急車だ!!救急車を呼べ!!」
狂ったように声をあげ抱きしめる。



35
「・・・見つけたぞ」
行き着けのバ−で酒を飲んでいる僚を見つけ、槙村が口にする。
「香は今死んだ・・・」
そう言い、僚に銃口向ける。

そして、静かに引き金を引いた・・・。






                         <assassin6>





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