Can you see what I see?
AUTHOR bluemoon



その日、雨が降り続いていた。
真澄は、傘も差さずに街の中を歩いていた。
何処をどう歩いているのか。
歩いているのかさえも、疑いたくなってきている。
真澄の心の中は、ただ一つ。
世界を敵に回しても、誰にも渡したくない女。
一番愛おしい女。
(マヤ・・・)
そう、真澄の心の中は、マヤを想う気持ちでいっぱいだった。
だが、今は悲しみも一緒に溢れて止まらない。
それは、今から1時間ぐらい前に遡る。

「・・・速水さん。忙しい中、お呼び立てをしてしまってごめんなさい。」
日比谷にある帝国ホテルのラウンジに、マヤは真澄を呼びだしたのである。
「いいや。君こそ今日、撮影があったんじゃないのか?」
真澄は、マヤと久しぶりに会うって事で嬉しさを隠せない様子だった。
が、マヤは顔を強ばらせたまま、
「いいえ、今日、雨で中止になりましたから・・・」
と、言った。
「そうか。ならいいんだ。何か頼んだのか?」
マヤの様子を気付かないまま、真澄は優しくマヤに聞いた。
「もう、私は頼みましたから。」
と、マヤは静かに言うと、真澄はそうかと言って側にいたウエートレスを呼び、
コーヒーを頼んだ。
さて、この後どうしようかと、真澄はデートのコースを考えていた。
マヤは、真澄を見ようともしない。
そして、
「あの」
「マヤ」
二人同時に声を出した。真澄はビックリしたが、笑って、
「マヤからでいいよ。」と、優しく言った。
マヤは首を横に振り、「速水さんからでいいです。」と、俯いたまま言った。
真澄は、この時になって初めてマヤの様子がおかしい事に気が付いた。
「マヤ、何かあったのか?」
心配そうに真澄は聞いた。
そもそも二人は不倫の関係でもあったのだ。
真澄は、紅天女の公演後、予定通り紫織と結婚をした。
でも、心は君と共にある、それに紫織にはマヤしか愛せないと話してあると言っていた。
マヤは、真澄が自分を本当に愛してくれている事が分かっていたから、このままでいいと
言った。不倫の関係でもいいと、それよりも関係が無くなってしまうのが怖いと真澄に言
った。
二人の関係は、水城と影の部下である聖、そしてマヤが姉のように慕っている麗しか知ら
ない事だった。
でも、マヤの様子はどう見ても何かあったとしか思えない。
いつも会うたびに、愛おしいように自分を見て、そして自分の名を呼んでくれるのに、
今日は顔を俯かせ、強ばらせたままだ。
それに、自分の今の問いにも答えようとはしない。
「マヤ、何があった?」
もう一度、マヤに聞いた。それでも、マヤは黙ったままだ。
真澄は、そんなマヤが、じれったくなってきた。
そして、
「黙っていないで、何か言え!」
と、真澄は怒鳴った。
マヤは、そんな真澄を待っていたかのように、キッと睨み返した。
そして、「私、あなたと別れたいの。」と、言った。
真澄は、マヤの言葉が信じられなかった。
(今、別れたいと言ったか?そう言ったか?)
真澄の頭の中は、その言葉ばかり回っていた。
そして、
「・・・今、何て言ったんだ?」
と、やっとの思いで、その言葉を吐いた。
マヤは、青ざめたまま、もう一度同じ言葉を言った。
「別れたいの。速水さん、あなたと。」
(「別れたいの。あなたと。」)
真澄の頭の中で、マヤの言葉が響いていた。
ショックを隠しきれない真澄を見て、マヤは続けていった。
「速水さん。私、あなたとの1年、とても幸せだった。でも、所詮、あなたは奥様の所へ
帰ってしまう。ずっと私の側に居てくれる訳ではない。あなたの心が私の所にあると言っ
ても、側に居てくれないってとても寂しいし、自分が惨めなの。」
真澄は黙ったまま、マヤの言葉を聞いている。
「速水さん、私はこのままでもいいと思う反面、あなたを独占したい気持ちでいっぱいなの。でも、それだとあなたを苦しめてしまうから、だから・・・」
そう言って、マヤは次第に泣き始めた。
真澄は、どうすることも出来ずに、ただマヤを見ていた。
マヤは、くっと泣くのを堪えて、
「だから、さよなら・・・」
と、言って席を立った。
真澄は、追いかける事も出来ずに立ち竦んでいた。

(マヤ、どうして・・・)
真澄は、マヤがいるマンションを見上げながら思った。
ラウンジを何とかでてから、何処をどう歩いて来たのかは分からぬまま、いつの間にか
愛しいマヤが住んでいるマンションの前へ来たらしい。
(君は、俺のことがもう嫌いになったのか?)
(それとも、俺とのことは遊びだったのか?)
(愛しているって言う言葉は嘘だったのか?)
真澄は、心の中でマヤに問いかけていた。
(マヤ、それでも俺は君をまだ愛している・・・!)
降りしきる雨の中、真澄は天を見上げて、マヤの心の中へ聞こえるように叫んでいた。

そんな真澄の様子をマヤは、自分の部屋から真澄に気付かれないように見ていた。
(速水さん・・・!何故・・・?私、あなたに酷いこと言っているのに!どうしてここに
居るの!?)
マヤは、そう思った途端に涙がどんどん溢れてきて、止まらなかった。

(マヤ・・・!)
真澄は、まだマヤのマンションから動こうとしなかった。
もしかしたらマヤは自分の存在に気付いて居るんじゃないのか?
マヤは、出てくるかも知れない。
そんな希望を持ちつつ、そのまま居続けた。
すると、手にタオルと傘を持ったマヤが、マンションから出てきた。
「速水さん!何やって居るんですか!こんなに濡れて・・・!」
「マヤ・・・!」
真澄は、マヤの言葉を遮るかのごとく、マヤを抱きしめ口づけた。
それは、いつもマヤにしてくれる、甘くて優しい口づけだった。
(速水さん・・・)
マヤは、心の中で愛おしいように真澄の名を呼んでいた。

「マヤ、さっきの事は嘘なんだろ?俺と別れるなんて・・・なあ。」
真澄は、マヤに懇願するように言った。
マヤは、本当は違うと叫びたかった。
私は、本当は別れたくないと、あなたの側にいたいと言いたかった。
でも、それを言うことはできない。
言ってはいけないのだ。
何故なら数日前に、マヤの前に紫織が現れて、「真澄と別れてくれ。でなければ、真澄を
苦しめてやる。」と、言ったからだ。
(マヤ、がんばるのよ。速水さんが紫織さんに苦しめられるの、見たくないでしょ!
今まで速水さんは、私のこと助けてくれて、見守ってくれていたんだから。
今度は私の番よ!)
マヤは、自分を奮い立たせた。
そして、真澄に言った。
「嘘じゃないわ。本当よ。今度会うときは、社長と所属女優として会いますから。
お願いです。傘は返さなくて良いです。もう帰って!」
マヤは、そのまま走り去っていった。
その時、マヤの頬には一筋の涙が流れていた。
「マヤーーーーーーーーーーっ!!」
真澄は、走り去るマヤに向かって叫んでいた。

真澄は、またトボトボと歩き出した。
無意識のうちに、このままここに居ても仕方ないと思ったからだろう。
マヤから貰った傘を差して。
手には、マヤが濡れた自分の体を拭いてくれたタオルを持って。
でも、家に帰りたいとは思わなかった。
愛してもいない形だけの妻という紫織のいる家なんて・・・
あの家は、生き地獄だ。
でも、そうしているのは、俺のせいなんだろうな・・・
真澄は、自分を嘲笑うかのようにフッと溜息をついた。
すると、小さい公園が見えた。
真澄は、何かに呼ばれるかのように、公園の中へ入っていった。

雨のせいで、誰も居ない公園の中を一人、真澄は歩いていた。
そして、ベンチに腰掛けてふうーっと溜息をついた。
(マヤ・・・!)
真澄の頭の中は、マヤだけでいっぱいだった。
想えば想うほど、愛しさが強くなる反面、切なさと悲しさが溢れてきた。
(何で、君はあんな事を言ったんだ?)
(本心から、俺を嫌っているのか?)
(でも、君は、本心から俺を嫌っているとは思えない。)
(君の心が、そう言っているかのように、さっき抱きしめたとき感じたんだ。)
(でも、何故・・・?)
真澄は、また降り続く雨を見上げた。
(マヤ、君の心は何を見ている・・・?教えてくれ、マヤ・・・!)
真澄は、心の中でマヤに向かって叫んでいた。

そんな真澄の心を見透かすかのように、雨は止もうとはしなかった。





                               THE END



【Catの一言】
切ないですぅぅぅ〜〜〜。キ−−!シオリ−め、真澄様とマヤちゃんを引き裂くなんて!!闇討ちじゃ!(笑)
bluemoonさん、この後の二人はもちろん、もちろん、幸せになってくれるのよね(うるうる)続き待ってます♪

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