Endless night
AUTHOR bluemoon



(1ヶ月、か・・・)
社長室の机にあるカレンダーを見て、真澄はぼんやりと思った。
マヤからの突然の別れの言葉を言われてから、1ヶ月が過ぎようとしていた。
でも真澄自身は、昨日の事の様に全て思い出してしまう。
(「別れたいの、速水さん。あなたと。」)
(「・・・今度会うときは、社長と所属女優として会いますから。・・・もう帰って!」)
あの時、泣きながら、時には涙を堪えて自分に訴えて来たマヤの顔が、浮かんで
は消え、また浮かんでは消えていった。
(マヤ・・・!何故あんな事を言うんだ・・・?君の本当の心が知りたい・・・ )
そう思った途端に、真澄は拳で自分の机を思いっきり叩いた。
(マヤ・・・!)
真澄は、心の中で声を上げて泣いていた。
その時、ドアを叩く音がした。
真澄は、今の自分の心が悟られないように一息ついてから、
「どうぞ。」と、言った。
「失礼します。」と言う声と同時に、入ってきた女性は・・・。
何を隠そう、この世で求めて止まない魂の片割れ。
世界中を敵に回してもいい、愛おしい女。
マヤが居た。
真澄は、驚きを隠せない顔をしていた。
マヤは顔色を変えずに、「ご相談があって・・・お時間よろしいですか?」と、
言った。
「相談って・・・?ああ、そこに掛けなさい。話を聞こう。」
真澄は、冷静に言ったつもりだが、戸惑いを隠すことは出来なかった。
マヤは、黙ってソファーに座り、そして、「私、暫く休みを頂きたいんです。今
まで、走り続けてきましたから。一息つきたいんです。」と、静かに言った。
「休みって、どの位だ?1ヶ月位か?」
真澄は、煙草に火をつけ、吸いながら言った。そして、その行為は、今の自分の
心を落ち着かせるための事でもあった。
そんな真澄の胸中も知らずに、マヤは、「心の底から仕事したいと思える日まで
。」と、切り出した。
「?」
真澄は、マヤの言葉がどういうことを言っているのか分からない。
そんな真澄の様子に、マヤは一息ついてからハッキリと、「早い話、無期限で休
みたいんです。」と、言った。
まるで決心を鈍らせないように。
マヤの言葉に、真澄は声を荒げた。
「何を馬鹿な事を言っている!?そんなことが許されると思っているのか!!」
それでも、マヤはピクリともしない。
「君は、この大都の看板女優だ!そんなこと許せると思っているのか!?それに
、無期限だなんて・・・!無期限ってな、引退と同じ事だぞ!君は、分かって言
っているのか!?それに、この世界から君は離れて生きていける人間じゃない! 」
真澄の言葉に、マヤはただ黙っていた。
そんなマヤの態度に対して、真澄は苛立ちも憶えた。
が、更に怒りを表に出したら、収まるものも収まらなくなってしまう。
そう考えた真澄は、穏やかな声で、「マヤ、君は先月の事といい、今日の事とい
い、一体何を考えている?黙っていないで、答えてくれないか?」と、聞いた。
マヤは、真澄の目を見ることも無く、「考えているって何をですか?私が考えて
いることは、無期限の休みを貰いたい、ただそれだけの事です。それに、私は、
この世界を離れても生きることはできます。」と、冷たく言った。
(無期限の休み・・・ただそれだけ・・・?何故そんなことを言う?マヤ、一体
何を考えて居るんだ!!)
真澄は、マヤの言葉に驚きを隠せない。
だが、フッと頭にある言葉が過ぎってきた。
(・・・紅天女)
そうだ、紅天女!マヤは、それさえも放ってしまうのか?
あれは、マヤにとって命そのものだ。
月影から貰った、そして一生をかけて護っていくと誓った、あの天女をマヤが離
すとは思えない。
真澄は、意を決してマヤに言った。
「・・・紅天女は、どうするんだ?誰が、あの天女をやるんだ?」
その時初めて、マヤはビクッと体が動いた。
(・・・やっぱり、思った通りだ!マヤが、放っていくとは思えない!)
真澄はマヤの態度を見て、確信した。
だが、返ってきた言葉は、違っていた。
「・・・亜弓さんが居るじゃないですか。亜弓さんにお願いしてください。」
マヤの、「亜弓に頼んでくれ」と言う言葉に、押さえていた怒り、苛立ちを爆発
した。
「なに馬鹿なことを言っている!?あれは、君にしか出来ないんだぞ!それとも
、君は、先生の誓いを破る気か!?そんないい加減な奴だったのか!マヤ!」
そう言うと、力を込めてマヤの肩を掴んだ。
そう、二度と離すものかと言わんばかりに。
それでも、マヤはその手を無理矢理払った。
そして、「・・・とにかく、何と言われようとも、私の考えは変わりません。軽
蔑してもらってもかまいません。それに、私がいいって言うんだから、何も問題
ありません。私の方から、亜弓さんにこの件は連絡しておきます。そして、もし
も、もしもですけど。心から仕事したいと思う日が来た時は、水城さんの方へ連
絡を入れます。我が儘言って申し訳ありません。首にしたければ首にしていただ
いても結構です。失礼します。」
と、早口でそう言いい、真澄と目を合わそうとはせずに部屋を出ていった。
バタンと、マヤが出ていくドアの音を、そのまま聞いていた。
追いかけようとすれば追いかけることも、この手に掴もうとすれば掴むことも出
来たのに、ただマヤが出ていく後ろ姿を見ていることしか出来なかった。
まるで金縛りにでもあったかのように。
「くそっ!」
そう言って、机に全ての怒りをぶつけた。

その夜、真澄は行きつけのバーに行った。
紫織から夕方連絡が入ったものの、こんな思いのまま、あの牢獄には帰れない。
とっさに「仕事が片づかない」と、嘘をついた。
いつも、思う。
紫織の電話を切った後。
電話なんて、来なければいい。
それに、あの紫織の疑り深い話し方も、いい加減にして欲しい。
(・・・もう、うんざりだ!)
心の中で、叫んだ途端、真澄は自分の首を振った。
そして、(でも、そんな風にしたのは俺のせいだな。自業自得って奴か・・・)
と、思った途端、フッと自嘲的な笑みがでた。
本当は、紫織の気持ちも分かる。寂しい気持ちも。愛して欲しい気持ちも。
だが、こうなることは納得していた筈だ。
婚約する際に、「マヤしか愛せない。永遠に君を愛すことはない。それでもよけ
れば、紫織の言うことを聞く。結婚もしてやる。」と、はっきり断言したのに。
紫織は、それでも結婚さえしてしまえば、自分に振り向くだろうと考えたのだろう。
だが、紫織に対して、愛おしいとも、側に居て欲しいとも、何とも思わない。
紫織も本当は、「愛している」と言うよりも、自分に対する執着の方が強いので
はないのかとも、思ってしまう。
(でも、あの大人しく優しい深窓の姫君を、嫉妬の鬼に変えたのは俺だな。)
真澄は、飲みかけのバーボンのグラスを見ながら、そう思った。
そして、クッと一気に飲み干した。

閉店まで飲み続けた真澄は、店を出てフラフラと街を彷徨っていた。
(まだ家には戻りたくない・・・こんな想いで!何より、マヤ!君に逢いたい!!)
真澄の心は、マヤを探し求めていた。
そしてハッと気付くと、いつもマヤと待ち合わせをしていた公園に来ていた。
何かに呼ばれるかの様に、フラフラと深夜の公園へ入っていった。
目の前のベンチに腰掛け、空を見ると、いつもなら見えない星が満天に輝いている。
「珍しいなあ・・・こんなに見えるなんて。あの梅の里じゃないのに。」
空を見つめたまま、ポツリと呟いた。
暫く満天の星空を見ていると、少しずつ雲が出て、星を隠し始めた。
まるで、マヤの心のように。
「・・・俺の一人よがりだったのだろうか?」
「二人の時間を沢山分け合っていけば、永遠を繋ぐことは出来ると思っていたのに。」
「二人の想いが堅く結ばれているはずなのに・・・永遠に一緒だと・・・」
真澄は、ポツリポツリとマヤに対する想いの丈を言い始めた。
「・・・俺が君の体を抱きしめる度に、君は哀しみを増やしていってしまったのか?」
「君の寂しさを、俺は解っているつもりでいただけなのか?」
「本当は、全く解っていなかったのか!?俺は!」
と、言った途端、雲が全ての星を隠してしまった。
そして真澄は、空に向かって叫んだ。
「マヤ、君の心が知りたい!」
まるで、その雲がマヤで在るかのように。
そして、曇った空を見つめ、
「もしも、この世界に神がいるのなら・・・」
と、呟いた。

・・・自分がどうなってもかまわない。
マヤの心、マヤの真実を知ることが出来るのなら、どんな犠牲があろうとも・・・!
もう一度、君と一緒に居ることが出来るのなら・・・!
神様!どうか、マヤを自分の元へ返してください!
彼女は、俺の大事な人であり、俺の体の一部なんだ!
希望も、夢も、何もかも・・・失ってしまう。
マヤと逢えなくなるのなら、マヤと一緒に居ることが出来なくなるのなら・・・ 。
俺はもう生きていけなくなってしまう!
この命、捨ててもかまわない!
だから、どうか、マヤを・・・!

真澄は、空を見つめながら、自分の想いの全てを祈っていた。
そんな想いが届いたのか、覆っていた雲が消えていき、また一面星空に埋め尽くされた。
真澄は、何が何でもマヤを離すものか、マヤを護ってやる、自分の全てを懸けて!
と、強く心に誓った。



              
                           THE END


【Catの一言】
bluemoonさん、この後どうなるの?どうなるの?まさかここで終わりじゃないよね(T−T)
今回も真澄様が切ないですねぇぇ。マヤちゃんの真意は一体どこにあるのかしら?
続きがとっても気になります♪という訳で、まだまだ書いて下さいね(笑)

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