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金曜日だからだろうか？
渋滞にはまってしまい、なかなか前に進まない。 「良かったわ・・・」
明日は真澄とマヤの結婚式。
『お二人ともお幸せそうで、何よりだわ。 まったく、ここまでなるのに人の手を焼かせて。』 ・・・でも、こんな時に胸の奥につっかえているものはなんなんだろう？
窓の外を彩る、赤いテールランプの列が急にぼやける。 やっと、進み始めた夜のタクシー中で一人俯く。
不意に、閉じた目から涙が一筋こぼれる。 「・・・？お客さん、どうかしましたか？」
こんなときは、ほうっておいて欲しいものなのに
タクシーの運転手が女性に声をかける。 そんな自分を、見られたくなくって 「い、いえ。そこの駅の入り口で止めていただけます？」
滅多に帰宅時、電車なんて乗らないのに
運転手に変に勘ぐられるのが嫌で できるだけ、平然を装い運転手に告げる。 タクシーを降りた後、ホームに降りる階段の途中で
なんだか、足が止まってしまい自分でも何をしたいのか分からない。 『早く行かないと、終電が出てしまうわ・・・』
と、頭では考えていてもなかなか足が進まず、一人階段の途中で立ち止まってしまった。
『お二人の幸せそうなお顔・・・特に、真澄様ったら・・・』
また、一筋、涙が頬を伝う。
「やだ・・・何泣いているのかしら。明日は真澄様とマヤちゃんの結婚式よ。
目がはれたりしたら困るじゃない・・・」 ー２番線、最終電車が参りますー
そうこうして、足が止まったままの水城の耳に届き
いけない、早くいかなくっちゃ！！ 駆け足で階段を下りる。 しまりかかる電車に駆け乗り、ふぅッとため息をつくと
なんだか、無償に昔のことを思い出す。 ・・それは、大都芸能に入り秘書課に配属されたときのこと。
あの頃は、ただただ仕事の鬼と世間でささやかれている 真澄に認めて欲しくってがむしゃらにプライベートまで削って 仕事をこなしてきた。 その結果、真澄からも信頼をよせてもらい他の人が頼まれないような 仕事も任せてもらうようになり社内の人間には 「彼女は社長の片腕だから・・・」と 恐れられるぐらいになっていた。 ・・・けれど。
過去を思い返しても、昨日も今日も、同じ。 毎日毎日、くりかえす日々。 普段はこんなこと、考えたりしないのに、ずっと見守ってきた二人が 結婚するということで感情が高まってしまったのかしら、それだけ―？ 『何いいことないのかしら。。。いやだ、ガラにもなく何言ってるのかしら。』
自分の家の最寄の駅に着き、家までの道のりを
重い足取りでたどる。 家に着いてドアを開け靴を脱ぎ捨てると ベットに倒れこんだ。 「・・・フっーーーーーッ」
大きくため息をつくと
なんだか、いろいろ頭に蘇ってくる。 自分が秘書についた頃は、人間の心なんてないんじゃないのか？なんて思われた真澄。 その真澄がマヤと出会い、だんだん本来の優しい心を取り戻していった。 会社の為ではなくマヤを選び明日、結婚しようという真澄。 『仕事が楽しい！って、思って、真澄様のお手伝いをしているんでしょ？
・・・でも・・・こういう形以外で真澄様のそばにいることは出来ないのかしら・・・』 「いつまでも、ずっとこのままでいれればよかったのに・・・一番近いところにいて仕事を・・・
毎日・・・それだけでよかったのに・・・」 あれ？また、涙が出てくる・・・
だって、考えてることが全部、真澄、真澄、真澄って・・・ フッ、と自嘲的な笑みを洩らし、ベットから立ち上がる。
『あなたの目には、マヤちゃんしかうつってないのにね。。。それを、後押ししてたのも
自分なのに。。。』 ・・・・・一人のものになんてなってしまわないで。このままでいさせて・・・・・
なんだか、ヘンな夜だ。
いつもは、こんなこと考えたりもしないに。 自分の考えていることが、気持ちが、 見えなくなっていく。。。 『どうしたらいいの？』
疲れた頭が問い掛ける。
行く場所を無くしてしまった気持ちが胸の中で 苦しく、詰まらせる。 ハッと、ベットサイドの時計に目をやる。
「もう、こんな時間！！」
・・・・・でも、いいわよね？ 明日になったら、また、同じ日常のくりかえしだから・・・ |
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【Ｃａｔの一言】
ｃｏｃｃｏさん、初投稿ありがとうございました♪切ないですねぇぇ。水城さんの女心が伝わってまいりました・・・。
”一人のものになんてなってしまわないで。このままでいさせて”という箇所が一番じ−んと胸に響いて切なかったです♪