積年の想い−聖−【後編】



注意:このお話は男性同士の肉体的な絡みが一部登場します。
そのような内容に抵抗のある方は、絶対に読んではいけません!!
気分を害してしまった場合の責任は一切負えません。
その辺を覚悟できた方だけが、お読み下さい。



聖、無事でいてくれ・・・。
俺はおまえを失ったら、どうすればいいんだ・・・。

日本から四時間のフライトを終え、真澄は香港の地を踏んだ。

「・・・速水真澄だな・・・」
空港を出た途端に、黒いス−ツの男が、彼の背後に立った。
緊張感が漂う。
「・・・そうだと、言ったら?」
振り向き、男を見つめる。
腰まである黒い長髪と、サングラスが目に入る。
「一緒に来てもらう」
冷たい声が響く。
速水は男の他にも彼を遠くから見ているものが数人いる事に気づいた。
恐らく、張の部下達が彼を囲っているのだ。

逃げ場はないか・・・。

「・・・Noとは言えないようだな」
真澄の返事に男は手を上げ、合図をする。
すると、黒塗りのベンツがどこからともなく、彼らの前に現れた。
真澄は後部座席に座らされた。
その隣に、サングラスの男が座る。

「俺の部下は無事なんだろうな?」
真澄の問いに男は何も言わなかった。
その沈黙に不安になる。
「・・・おい!まさか!」
珍しく感情的になる。
「・・・静かにしてもらおうか、Mr.速水」
銃をつきつける。
「私は余計なお喋りはあまり好きではない」
「・・・頼む。これだけは答えてくれ、俺の部下は無事なのか?」
懇願するように男を見る。
その表情からはどれだけ部下を心配しているかがわかる。
「・・・同じ事は二度は言わない・・・」
そう言い、引き金を引いた。

バン!

車内には銃声が響き渡っていた。






「そんなに、その男の事が大事か・・・」
鎖に繋がれたままの聖に、張が口にする。
聖は鋭く張を睨んでいた。
肉体的衰弱しているはずなのに、聖の眼光は衰える事はなかった。
「おまえが命を捨てるに値する男なのか?」
張の言葉に聖は口の端を上げた。
「・・・あの方の為なら、私は何だってできる」
揺ぎ無い真っ直ぐな瞳で答える。
「命など惜しくはない。とうの昔に私の命はあの方のものなのだから・・・」
聖の瞳に宿る強い何かを感じる。

「・・・まるで、恋でもしているような瞳だな・・・」

張の言葉に、聖は一瞬、瞳を大きく見開いた。
「ふふふ。面白い男だ。おまえのボスに会うのが楽しみになってきた」






「・・・一体・・・何を・・・」
真澄が瞳を開けると、信じられない事に彼はまだ生きていた。
代わりに撃たれたのは運転席の男だった。
当然の事ながら、車は蛇行運転を始める。
サングラスの男は車のドアを開け、真澄の腕を掴んだ。
後ろに車がいない事と、速度が緩みだした頃合を見計らって、男は速水もろとも、車から飛び降りた。
二人の体が道路に転がり、道路端の茂みに落ちる。
運転手を失ったベンツは対向車とぶつかり、炎上をしていた。

「・・・こっちへ・・・」
呆然としている速水の手を男が掴む。
真澄に有無も言わせず、男は走り出した。





「・・・今夜、おまえボスが香港に来る」
張の言葉に、聖は驚いたように彼を見た。
「・・・そんなに意外か?」
張の言葉に聖は何も答えなかった。

真澄様、どうして・・・。どうして、来てしまったのですか・・・。
私の事なんて、切り捨てて下さればいいのに・・・。
あなたに何かあったら、私は・・・私は・・・。

「・・・心配で堪らないという表情だな」
聖の心を見透かすように見つめる。
「・・・そんなに、彼の事が心配か?」
「あの方に、何かがあったら俺はおまえを殺す!」
張を射抜くように睨む。
激しい殺意が瞳に宿る。
その表情に、張はゾクリとした。
「・・・いい表情だ。聖。俺はおまえのそんな顔が一番好きだ・・・」
聖の端正な顔立ちを辿るように人差し指でなぞる。
「ベットの上のおまえも好きだが、今が一番、感じる」
唇の上に張の長い指が触れる。
その瞬間、聖は抵抗するように彼の指を噛んだ。
「・・・うっ」
張が眉を潜める。
指から血が流れる。
今にも噛み切られてしまいそうだった。
しかし、張は不敵に笑った。
「・・・そそられる男だ・・・殺すには惜しい・・・」
聖の耳元で呟き、空いている方の手で拳を作り、彼の腹に強烈な一撃をくらわした。
その瞬間、聖は苦しそうに口を開け、意識を失った。
張は指を引き抜いた。
指にはくっきりと聖の噛んだ痕が残る。
それを愛しそうに舐める。

「・・・妬けるてくるよ。おまえ程の男を部下に持つ奴がな・・・」
張は寂しそうな瞳で聖を見つめていた。






「一体、おまえは誰なんだ?何のつもりだ?」
古びたホテルの部屋に連れていかれると、速水は男に向かって言った。
男はゆっくりと、真澄の方を振り向く。

「・・・すみません。真澄様・・・」
聞き覚えのある声に真澄は大きく瞳を見開いた。
「・・・聖・・・聖なのか・・・」
信じられないものでも見るように男を見つめる。
聖はサングラスとカツラを外し、変装を解いた。






「・・・おまえに24時間やろう・・・」
聖が意識を取り戻すと、張が告げる。
「その間にマイクロチップを俺の元へ持って来るんだ」
張の提案に眉を潜める。
「・・・逃げたら?」
「おまえと、おまえのボスを殺す。言っておくが、この狭い香港で俺から逃げる事はできない」
背筋が凍るような冷たい瞳で聖を見る。
「・・・なぜ?俺にそんな事を頼む?」
張の意図が読み取れなかった。
「・・・さあな。俺にもわからん。ただの気まぐれだ・・・」
そう言い、張は聖を縛り付けていた鎖を解いた。
「他には?」
久しぶりに解放された腕をさすりながら、張を見る。

「・・・おまえには俺の部下になってもらう」





真澄の目の前に少しやつれた彼の姿があった。
「よく無事で・・・」
彼の存在を確かめるように強く抱きしめる。
「・・・すみません。真澄様。あなたのお手を煩わせて・・・」
「・・・いいんだ。そんな事。おまえさえ無事なら・・・」
真澄の言葉に胸が熱くなる。

”・・・まるで、恋でもしているような瞳だな・・・”

張の言葉が一瞬、脳裏を掠めた。

恋か・・・。
そうなのかもしれない。俺はこの方をずっと、求めていた。

「・・・真澄様はすぐにお帰り下さい・・・」
聖の言葉に速水は驚いたように彼を見た。
「・・・張が欲しいのは翡翠のペンダントだけです。私が張にペンダントと届けて参ります。ですから、すぐにお帰り下さい・・・」
一瞬、聖が瞳を逸らす。
「・・・おまえはどうする?張にペンダントを届けた後、おまえはどうするんだ」
問い詰めるように聖を見る。
「・・・私の事はご心配なく。大丈夫です」
「大丈夫?一体、何が大丈夫なんだ。聖、それでは答えになっていない!」
言葉を荒げ、熱い瞳で彼を射抜く。
「・・・おまえも一緒だ。一緒に日本に帰るんだ」
真澄の言葉に頭を振る。
「・・・できません」
「できない?なぜだ?」
真澄の視線が聖には痛かった。
彼に背を向け、考えるように窓際に立つ。

「・・・私は、もうあなたの部下ではないからです・・・」

聖が告げた言葉に真澄の胸が凍りつく。
体中を訳のわからない感情が走る。
「・・・張という男の部下になったというのか?」
強く、聖の肩を掴む。
「つ!」
肩に残る傷に響く。
それでも、真澄は掴む手を緩めなかった。
「答えろ。聖!おまえは張の部下になったのか!」
嫉妬に燃えるような瞳で聖を見つめる。
「・・・答えろ!聖!」
今まで見たどんな彼よりも激しかった。
胸が苦しい・・・。
真澄と離れなければならない事がこんなに辛いなんて・・・。

「・・・はい・・・」

聖が告げた瞬間、強く彼の腕を掴む。
「・・・許さない!おまが俺から離れる事なんて許さない!」
聖をベットに押し倒し、荒々しく唇を貪る。
全てを奪いつくすようなキス。
真澄は聖の中に舌を潜り込ませ、彼の舌と絡ませた。
いきなりのキスに聖の体から力が抜ける。
「・・・おまえは俺のものだ!」
彼のシャツを脱がし、胸に唇を這わせ、その頂きをきつく噛む。
聖から甘い吐息が漏れる。
「絶対に許さない!」
彼から服をむしり取り、一気に裸体にする。
その体には拷問の痕が痛々しく残っていた。
腕にはくっきりと鎖の痕が残り、胸には無数の傷とキスマ−クが浮かぶ。
「・・・誰が・・・つけた・・・」
怒りに声を震わせ、聖を見る。
「・・・張か!張がおまえをこんな目に・・・」
そう言い、傷痕を消すようにキスマ−クをつけていく。
「・・・俺が全部、消してやる!」
体中を真澄の唇が泳ぎ、聖の全てを舌で舐める。
聖には彼の行為に抵抗する事はできなかった。

「・・あっ!・・・」

熱い塊が突然、背後から聖を射抜く。
いつの間にか、自分の服を脱ぎ捨てた真澄が、きつく聖を抱きしめていた。
真っ白なシ−ツの上で傷だらけの聖が揺らめく。
裸体と裸体が重なり合うようにしっかりと二人の影が繋がる。
聖の美しい額にきつく皺が刻まれた。
聖の背中に真澄の唇が彷徨い、真澄自身が聖の中を占有する。
動く毎に密着する体と体。心と心。
聖の中で真澄が意志を表すように大きくなる。
二人の結合部から聖の腿を伝い、シ−ツへと甘い蜜が流れ、染める。
激しくベットが揺れだす。

「・・・放さない。おまえは俺のものだ!」

絶頂に達するとともに、そう言い、真澄は聖の中に自身を放った。
聖の中に真澄が注がれる。
熱い蜜が腸の中に流れ込む。
聖は嬉しかった。
初めて真澄と一つになれた事が、彼のものを体内に取り込む事ができた事が・・・。
胸の奥が愛しさで溢れる。

「・・・真澄様・・・」
真澄は聖と繋がったまま、彼の背中を抱きしめていた。
「・・・放さない・・・」
耳元で囁かれた言葉に切なくなる。
泣いてしまいそうだった。
こんなにも彼に求められ、必要とされている事を初めて知った。
別れなければならないという想いが胸を締め付けた。

「・・・放れません。私はずっと、あなたと一緒です・・・」
彼の方を向き、見つめる。
「・・・聖・・・」
真澄は彼の唇を再び、塞いだ。






「・・・何?聖が裏切っただと?」
部下の報告を聞き、張は眉を微かに動かした。
「どうします?探し出しますか?」
部下の言葉に時計に目を向ける。
聖と約束した時間は後、三時間残っていた。
「・・・いや、まだだ。彼が約束の時間までに戻って来なかったら探せ」
張の言葉を聞くと、部下は彼の部屋を出た。

「・・・後、三時間か・・・」
窓の外は陽が沈み、再び夜になろうとしていた。





聖は真澄の寝顔を見つめていた。
愛しそうに頬を撫で、唇を塞ぐ。
それは別れのキスだった。
ここを出れば、もう真澄と会う事はない。
彼はこれから、全く違う世界で生きなければならなかった。

「・・・すみません・・・」
真澄のス−ツから小包みを取り出す。
中身は翡翠のペンダントだった。

「・・・さよなら・・・」
そう告げ、聖は部屋を出た。





「やはり、戻って来たか・・・」
約束の時間丁度に聖が張の前に姿を現す。
「・・・おまえの欲しいがっていたものはコレだろ?」
翡翠のペンダントを手から下げる。
「そうだ。そして、おまえだ。聖」
「真澄様の命の保障はしてもらえるんだろうな」
「あぁ。もちろん。おまえが俺の部下になればだが」
一瞬、真澄の顔が浮かぶ。
聖は強く瞳を閉じた。
「・・・いいだろう。俺はおまえの部下になる」
瞳を見開き、張を見つめる。

「それは約束が違うんじゃないか。聖」

背後から誰かの声がした。
聞き覚えのある声に、まさかという思いが胸に宿る。
「・・誰だ!」
張の声に柱の影から長身の男が現れる。
男の堂々とした様子に、張は彼が速水真澄だと直感した。

なるほど。聖が惚れるだけの男だ・・・。
瞳には強い光が宿っている。
その光を持っているものはめったにいない。

「俺の部下を返してもらいにきた」
張を真っ直ぐに射抜く。
「・・・真澄様、どうして・・・」
信じられないものでも見るように真澄を見る。
「・・・俺がそう簡単に眠ると思うか?おまえの事はよく知っている。だから、その翡翠のペンダントも偽者と摩り替えておいた」
そう言い、本物のペンダントを内ポケットから出す。
「はははははは。Mr.速水、中々悪知恵が回るようだ」
張は高笑いを浮かべた。
「・・・だが、聖を渡す事はできん」
そう言い、銃口を真澄に向ける。
真澄は口の端を上げた。
「生憎、俺もおまえに大事な部下を渡す訳にはいかない」
銃を向けられているのに真澄は汗一つ見せず、平然としていた。
「・・・張!真澄様を撃ったら、俺がおまえを殺す!」
聖が叫ぶ。
「聖、俺にはもう一つ選択肢があるのを忘れていないか?」
不敵に張が微笑む。
「何!?」
「おまえを殺すのは惜しいが、おまえと、速水を撃つというな」
聖に銃口を向ける。
「張!!俺にも選択肢がある」
真澄が阻止するべく叫ぶ。
「何だと?」
真澄の方を向くと、彼は上着を抜いた。
そして、その下からは体中に巻かれた無数の爆弾。
「聖を撃てばおまえも死ぬ事になる。そして、俺を撃てっもだ。俺が倒れれば、その振動で爆薬は作動する事になっている。試してみるか?」
背筋が凍りつくような笑みを浮かべる。
真澄の表情に、いつか聖が中華料理店で、張に向けた表情を思い出した。
あの時も聖は爆弾を盾に自分の身を守ったのだ。

この部下にして、この上司ありか・・・。
似た者同士の二人に何だか可笑しくなってくる。

「俺はマイクロチップ等に興味はない。それに、まだ中身も見ていない。おまえにこれを返す。その代わり、聖を俺に返してもらおう」
真澄の言葉に張は考えるように瞳を閉じた。

手放すしかないようだな・・・。
やっと、見つけた俺の片割れを・・・。

胸の中が締め付けられる。

一人の男にこんなに執着したのは張にとって初めての事だった。
それが、愛なのか、恋なのか。わからない。
ただ、聖が欲しかった。
彼の側は一番安らげたから・・・。

「・・・いいだろう。速水、おまえの取引に応じよう」
瞳を開け彼を見つめる。
その瞳はとても悲しそうだった。

「Mr.速水、俺はおまえが羨ましい・・・」
速水からペンダントを受け取り、告げる。
悲哀の篭る瞳に、真澄はこの男も自分と同じように聖を欲していた事に気づいた。
ただの部下ではなく、一人の人間として聖に惚れているのだ。
真澄は暫く張の瞳を見つめ、何も言わずに聖とともにその場を後にした。








「・・・聖、ずっと、俺の側にいてくれるか?」
搭乗手続きが終わり、空港のロビ−でフライトを待っていると、真澄が口にした。
彼の横顔を見つめる。

俺がついていくのはこの方しかいない・・・。

口元を緩め、微笑を浮かべる。
「・・・私が命を差し出せるのはあなだけです。それは、これから先も何があっても変わらない事実です」
聖の言葉に、真澄は彼を見つめた。
彼の瞳には何の迷いもなかった。

「・・・そうか。ありがとう・・・」
そう告げ、真澄は何もかもを包み込むような笑みを浮かべた。




THE END




【後書き】
期待していた方、ごめんなさい〜(T_T)やっぱり、Catには”や●い”は書けないみたいです(苦笑)
本当はもう、このお話の八割ぐらいを真澄様と聖さんの●●●で埋めたかったんですけど・・・。
駄目です。これが限界です。張とはまだ絡ませる事ができたのに・・・真澄様になると難しい。。。
やっぱり、ストレ−トな真澄様が好きらしいです(笑)

前編から長々と引っ張ってしまって、申し訳ございませんでしたm(_ _)m

ここまで駄作にお付き合い頂き、ありがとうございました。

2002.3.4.
Cat

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