Happy Valentine Day



「大嫌い!!!!」

そう告げて、思わず彼の前から逃げ出した。

胸が千切れてしまいそうな程苦しかった。

彼が好き。

好きで、好きで堪らない。

こんなに深く愛しい気持ちがあるなんて初めて知った。

でも・・・。

口から出たのは反対の言葉。

本当は違う事を言おうと思ったのに。

もっと素直な言葉を口にしようと思ったのに。

彼が知らない女性と仲良く話しているのを見て、胸が掻きむしられるようだった。

私の知らない表情(かお)をして話している彼が嫌だった。

「・・・子供だな」

わかっている。それが幼い嫉妬だと言う事は。

でも、恋に慣れていない私には我慢できなかった。

だから、彼を前にして言ってしまった。

彼はどう思っただろうか・・・。

少しは傷ついただろうか・・・。

「はぁ」

小さくため息を溢し、手にしていたバックを見つめる。

今日、彼に渡すはずのチョコレート。

昨日一日かけて、作った初めての。

彼の事を思いながら、チョコレートを細かく刻んで、湯せんで溶かして、混ぜて、固めて・・・。
あんなに時間がかかるものだったなんて知らなかった。

ちょっと形は悪くできてしまったけど・・・、彼なら笑顔で食べてくれると思って。
箱に詰めて、一時間かけてラッピングして、彼の事を思いながら書いたカードを添えて、
精一杯の自分のセンスで選んだ可愛いギフトバックに入れたのに・・・、
渡す事ができなかった。

「・・・何してるんだろう」

自分のしてきた事が空しい。

彼だって忙しい仕事の合間を縫って逢う時間を作ってくれたのに。

これから一緒にご飯を食べに行く予定だったのに。

待ち合わせ場所にいた彼は誰かと話していた。

とても髪の長い綺麗な女性だった。

あんな表情知らなかった。彼があんなふうに笑う所見た事なかった。

何だか知らない人のように見えた。

それが哀しかった。嫌だった。

◆◇◆◇◆◇◆

偶然会ったのは幼馴染だった。

マヤとの待ち合わせの為、駅の改札でぼんやりとしていた。

変わらぬ彼女に、懐かしさが込み上げた。

昔と変わらぬ気さくで砕けた彼女は、結婚し子供が二人いると言っていた。

とても幸せそうで、安心した。

「今日は大恋愛中の恋人と待ち合わせかしら?」

おどけたように彼女が口にする。

「テレビ見たわよ。婚約会見でのまーくん、幸せそうだったわ」

その言葉に何だか気恥ずかしくなった。

「まぁ、そんな所だよ」

「彼女に宜しくね。私、大ファンなの。泣かせたらファンとして許さないからね」

そう言い、彼女は立ち去った。

そして、次の瞬間、目にしたのは立ち止まったままのマヤだった。

「やぁ」

彼女の元に駆け、一週間ぶりの再会に胸が躍る。

彼女が好きで、好きで仕方がない。人前でなければ、思いっきり抱き締め、数え切れない程のキスをしている所だ。

しかし、そんな彼女から出た言葉は大きく期待を裏切った。

「大嫌い!!!」

かつてよく言われた言葉。

耳にキーンと響く程の大きな声で告げ、彼女は駆けた。

一体何が何だか良くわからない。俺が何をしたというのだ。

呆気に取られていると、既に人ごみの中へと彼女が消えていた。

「しまった」

我に返り、駆け出す。

とにかく、直ぐに彼女を見つけなければ・・・。

◆◇◆◇◆◇◆

気づくと彼と一度だけ来たスターバックス・コーヒーの前で立ち止まっていた。

「甘いコーヒーが飲みたい」

と言い、彼と来た。

「・・・甘いな」

私の好きなランバ・フラペチーノを飲みながら彼が本当に甘そうな顔をした。

何だか可笑しくて笑いたくなった。

「だって、甘いコーヒーが飲みたかったんだもん」

奥のソファの席に座り、彼と向き合った。

何だかこんな普通のデートが嬉しかった。

「お待ちのお客様どうぞ」

ぼんやりとしている私に声が掛かる。

「えっ」

気づくと私の足は店内に入っていた。

出て行く事も出来ず、慌ててレジの上にあるメニューを見つめる。

「ランバ・フラペチーノのショートを2つ」

悩んでいると、後ろから声がした。

「かしこまりました。赤いランプの下でお待ち下さい」

店員の声をバックに振り向くと、彼がいた。

「・・・速水さん・・・」

思いがけない事に胸が熱くなる。

「探したぞ」

ギュッと手を掴み、引き寄せる。

「お願いだから、急にいなくならないでくれ。どんなに、心配したか・・・」

眉を寄せ、彼が抱き締める。

「・・・心臓が止まってしまいそうだった」

耳元で告げられた言葉に涙が溢れそうになる。

ここがスタバだという事も、人前だという事も関係なくなる。

彼が愛しい。彼が好き・・・。

「・・・ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

何度も何度もそう告げ、彼の腕の中で泣いていた。

◆◇◆◇◆◇◆

「はい。あのこれ・・・」

落ち着くと、もじもじと彼女が可愛らしい紙袋を差し出す。

「あんまり上手には出来なかったけど・・・」

恥ずかしそうに俯く彼女が何とも愛くるしい。

丁寧にされたラッピングを剥がすと、箱が出て来た。

甘い香りが鼻を掠める。

「・・・チョコレート・・・!?

開けるとちょっといびつなハート型のチョコレートが入っていた。

ホワイトチョコで文字も書かれ大好きとあった。

「・・・あのね。今日、バレンタインデーでしょ。だから・・・」

「あぁ、そうか」

彼女に言われて初めて気づく。

元々自分には関係のないイベントだと思ってきた。

愛する人から貰うチョコがこんなに嬉しい物だったとは・・・。

毎年会社の子たちから貰う市販の物とは違い、手作りだった。

「・・・ありがとう。嬉しいよ」

素直な言葉を口にし、一口、口にした。

「・・・味はまあまあ・・・でしょ?」

不安げに彼女が聞く。

口の中に甘い味が広がる。今まで食べたどんな老舗のチョコレートよりも美味しい。

「美味しいよ。とっても美味しい」

そう告げると、彼女はホッとしたように笑みを浮かべる。

あぁ、幸せだ・・・。彼女のこんな表情を見れて。

彼女と一緒にいる事ができて。

「速水さん、大好き。いつも、いつも大好き」

屈託のない笑顔と、共に彼女が口にする。

その言葉にまた胸がじーんと温かくなった。




      

End







【後書き】
どうも皆様お久しぶりです♪今回はValentineのお話を書いてみました♪
一日で書いたので粗末な品ですが・・・(笑)楽しんで頂けたら幸いでございます。

尚、イラストは旦那様に描いてもらいました(赤面)ガラカメの内容100%知りません(笑)

2004.2.14.Cat

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