@ 初めてのムフフ・・・の時の二人 A プロポーズ&結婚式に至るまでの二人
B 他、Catさんに一任
どれにしても、甘甘ムードでお願いしたいと切望致します。
一番、読みたいというのは、やはり・・・@の初めてのムフフ・・・でしょう ! (*^_^*)
でも、Aも読みたい〜!!
これは私の趣味なのですが、桜小路くんも優しい性格で好きなんですよ。マッスーもやっぱり素敵
なんですが、彼を上手く絡ませてのお話ができれば嬉しいなあ・・と思います。
個人的には、嫉妬するマッスーが好き(^^;)なので、できればマヤちゃんと桜小路くんとの仲が
意外な方向に行ってしまい、苦悩するマッスーが観たいです。(笑)
この際、紫織さんの件は・・・他に置いておこう・・・かとも思いましたが、そうなるとお話が面白く
ないしストーリーが長くなるので、婚約者という立場はそのままにして・・・。
・・・・と、まあ、こんな設定じゃいけないでしょうか?
綺麗な星空の下でムフフ・・・になる二人もいいか なぁ・・・。想い出の梅の谷にて、
(月影先生は亡くなった後の設定で)星達に祝福される感じの 結ばれるムフフ・・・では如何でしょうか?
(季節的にはもう冬も近いのですが、勿論、季節は梅の 咲く季節の春が宜しいかと。)
先にも書きましたように、どのお話になっても、桜小路くんを重要ポイントにして展開してくれれば
有り難いです。
めぐみ様からのリクエスト
紅色の恋−前編−
紅天女が千秋楽を迎えた日、大年の大女優、月影千草が亡くなったという悲報がマヤの耳に入ってきた。
衣装に身を包んだまま彼女は真澄を見つめる。
「・・・速水さん・・・それは、本当・・・ですか」
舞台が始まる30分前に速水が彼女に知らせを届けに来たのだった。
真澄としては舞台が終わるまで伏せておくつもりだったが、月影千草に何かあれば、どんな時でも構わないから
知らせてくれという彼女との約束を守ったのだった。
「あぁ・・・本当だ・・・」
真澄は真っ直ぐに彼女を見つめていた。
マヤの瞳に困惑が浮かぶ。
「・・・マヤちゃん・・・」
桜小路が今にも倒れそうな彼女をそっと支えた。
こんな時でさえも、彼女を抱きしめられる立場でない事に真澄は軽く唇を噛んだ。
「・・・桜小路くん・・・私は大丈夫よ・・・」
儚い笑みを浮かべ、彼を見つめる。
「・・・速水さん、わざわざ、ありがとうございました。知らせて頂いた事に感謝してます」
真澄の方を振り向き、しっかりとした表情を浮べる。
「舞台があるので、失礼します」
凛とした様子で真澄に一礼すると、マヤは桜小路と一緒に舞台の袖に向かった。
マヤ・・・。
真澄はその様子を胸がしめつけられような想いで見つめていた。
「マヤちゃん、本当に大丈夫?」
舞台の袖にいる彼女に心配そうな瞳を向ける。
「・・・今は大丈夫・・・」
そう言った彼女が痛々しく見える。
「先生に恥ずかしくない演技をしないとね」
明るくそう言い、彼女は舞台に立った。
健気な彼女に思わず、抱きしめそうになったが、桜小路はそんな思いを仕舞いこむように、一真の仮面を被った。
その日のマヤの演技は今までの公演の中で一番のものだった。
演技には鋭さが増し、輝いていた。
観客の心は紅天女という存在、そして、物語に深く囚われていく。
マヤが舞台の上で何かする度に観客の心は揺り動かされた。
紅天女の切ない眼差し、仕草、息を呑む程の美しさに誰もが心打たれ、舞台は幕を閉じた。
幕が下りると、誰もが拍手を忘れ、呆然と夢心地の中にいて、そして、その一分後、ようやく割れる程の拍手、観客全員総立ちという現象を
起こした。
先生・・・観ていてくれましたか・・・。
マヤは終わらない拍手の嵐を聞きながら、月影を思った。
「今日のマヤさん、素敵でしたね」
紫織は車の中で今観た舞台の感想を素直に口にした。
あれほど、忌み嫌っていた北島マヤという存在だったが、今日の舞台はそんな事をも忘れさせた。
「・・・えぇ・・・本当に・・・」
真澄は夢覚めぬ様子で、呟いた。
「真澄様、私も梅の谷に連れて行って頂けませんか?」
紫織は彼の表情を読み取るように口にした。
「・・・しかし、いいんですか?私はきっと、慌しくて、あなたの側にいられないと思いますよ」
「・・・いいんです。あなたの側にいられなくても・・・。ただ、梅の谷が見たくなっただけです。私を連れて行くのはお邪魔ですか?」
真澄に寄り添い、じっと、彼の瞳を見つめる。
「・・・紫織さんがそれでいいと言うのなら・・・構いませんが・・・」
「・・・マヤさん、よくいらっしゃいました」
劇団月影のメンバ−と梅の谷を訪れたマヤを源造が出迎えた。
「源造さん、先生は?」
マヤの声に源造は穏やかな笑みを浮べた。
「最後はとてもお幸せそうな表情を浮べてなさいました」
そう言い、月影千草が眠る部屋へをとマヤたちを通した。
「先生・・・」
布団の上で眠ったように目を閉じている月影に誰もがそう口にする。
月影は源造が言った通り穏やかな死に顔を浮べていた。
「さぁ、みなさん、お疲れでしょう。何もないですが、お食事を用意してあります。先生を偲んであちらで思い出話でもしていって下さい」
皆が月影と十分に対面したと思うと、源造はさりげなく進めた。
「えぇ。ありがとうございます」
そう言い、マヤを覗いた他のメンバ−は源造にすすめられるまま部屋を出た。
「・・・マヤさん?」
部屋に一人残る彼女に不思議そうに声をかける。
「源造さん・・・先生の側に今はいたいんです」
彼女の瞳からは涙は見えなかったが、その瞳が誰よりも深く悲しみを感じている事がわかった。
「えぇ。マヤさん。側についていてあげて下さい」
源造はマヤの気持ちを察すると、彼女を一人にさせた。
誰もいなくなり、部屋に月影と二人きりになると、マヤの瞳からは涙が溢れる。
真澄から知らせを聞いて、ずっと堪えていた涙だった。
「速水さん、よく来て下さいました」
紫織を旅館に残し、一人で山寺に現れた真澄に源造が言う。
「・・・この度にはご愁傷様でした。お悔やみ申し上げます」
深々と源造に頭を下げる。
「・・・速水さん、お忙しい中、来て頂き、ありがとうございます。さぁ、どうぞ、お上がりになって下さい」
真澄は源造に進められるままに上がった。
「今、月影の皆さんと演劇協会の方々がいらしてくれているんです」
速水を通しながら、源造が口にする。
「そうですか。月影さんにはお会いできますか?」
「えぇ。もちろん。今、マヤさんが先生といますが、会って行って下さい」
マヤという言葉に今日の舞台での彼女が浮かぶ。
これまでで一番の演技を見せ、涙一つ見えないその仮面は完全なものだった。
「さぁ、こちらのお部屋になります」
「いえ。もう少し後にします。きっと、彼女が誰よりも月影さんといたいと思うから」
今彼女が誰よりも泣きたい事を真澄はわかっていた。
「・・・そうですか。では、あちらで、皆さんとご一緒にどうですか?」
「えぇ。参加させて頂きます」
「月影さんは、これでようやく最愛の人の元に行けたんだな・・・」
宴の席で、誰かがふと口にした。
その言葉に真澄は尾崎一蓮と月影千草の恋を思った。
魂の片割れ・・・か。
静かに盃を口にする。
報われない想いの中にいた二人・・・。
それでも、月影千草は尾崎一蓮から離れられなかった・・・。
俺にとって・・・マヤはそんな存在なんだろうか・・・。
魂が互いを呼び合い、引き合う恋・・・。
それは一体、どれ程のものなのだろうか・・・。
「・・・先生、私、今日演じていてわかったんです。先生がどれだけ尾崎先生の事を想っていたか・・・」
月影を見つめながら口にする。
「紅天女の恋は尾崎先生と、月影先生の恋・・・。天女の切ない恋心は先生の想い・・・」
そう口にした途端、再び涙が頬を伝う。
「・・・だから、先生はずっと、紅天女を守ってきたんですね。尾崎先生とのかけがえのない想いが詰まっているから・・・」
涙に掠れながら呟く。
「先生たちの想い・・・しっかりと、受け継ぎます。私が次の紅天女に必ず引き渡します」
冷たくなった月影の手を握り、心に誓った。
ふと、時計に目をやると、午前3時を指していた。
どうやら酒を飲みながら、少し眠っていた事に真澄は気づいた。
周りを見ると、源造がかけた毛布に身を包み、誰もが眠っていた。
真澄はゆっくりと、起き上がり宴が行われていた部屋を出た。
足は自然に月影が眠っている部屋に向いている。
部屋の前にたどり着き、障子を開けると、泣き疲れたマヤが月影の隣で転寝をしていた。
マヤ・・・。
真澄は自分が着ているス−ツの上着を脱ぎ、彼女の肩にそっとかけた。
瞳の下には涙の跡が見える。
身を切るような想いで涙に耐えていたのだと思うと、胸が痛んだ。
強くなったな・・・。ちびちゃん。
肩にかけた上着ごと彼女を抱きしめる。
柔らかな温もりと、香がした。
マヤは夢を見た。
それは顔のわからない誰かに優しく抱きしめられた穏やかな夢だった。
悲しみの全てを癒してくれるような優しい夢だった。
目を開けると、大きな上着が彼女の肩にかかっていた。
その瞬間、まどろみの中で確かに誰かに抱きしめられていた事を思い出す。
居心地が良すぎて、彼女は何の抵抗もなくその温もりを受け入れていた。
「・・・マヤさん、起きたんですか?」
月影の部屋から出て来た彼女に源造が声をかける。
「えぇ。ごめんなさい。すっかり先生を独占してしまって」
マヤの言葉に源造は穏やかに笑った。
「いいえ。それは私の方ですよ」
源造の言葉にマヤはここに来て、やっと笑顔をみせた。
「あの、そういえば、この上着をかけてもらっていたんだけど・・・源造さんのじゃないわよね」
そう言い、肩にかかっていた高そうな黒のブレザ−を差し出す。
「あぁ。これは速水さんのですよ」
速水さんの・・・。
マヤの胸が高鳴る。
「速水さん、来ていたの?」
「えぇ。昨夜、遅くに・・・。明け方近くに旅館の方へお戻りになりました。きっと、10時からの告別式にはまた来ると思いますよ」
「・・・そう」
源造が言った通り、真澄は告別式に来た。
しかし、その隣には紫織の姿があり、マヤは中々話かけられずにいた。
「・・・マヤちゃん、どうしたの?」
不安そうにどこかを見つめるマヤを心配し、告別式に駆けつけた桜小路が声をかける。
「・・・ううん。何でもないの」
いつもと変わらない表情を桜小路に向ける。
それを見てたまらなくなり、気づけば桜小路はマヤの手を取っていた。
「桜小路くん?」
「マヤちゃん、ちょっと来て」
そう言うと、桜小路はマヤを人気のない所に連れて行った。
「・・・一体、どうしたの?」
桜小路の態度に不安になる。
「・・・君は紅天女で、僕は一真。言ってみれば、僕たちは舞台の上では恋人同士で、パ−トナ−だろ?」
マヤの瞳を見つめながら口にする。
「だから、僕の前では無理はしないで欲しい・・・。泣きたかったら、泣いていいんだよ」
「・・・桜小路くん・・・」
桜小路のマヤを気遣う気持ちに胸が熱くなる。
「・・・ありがとう・・・」
マヤは薄っすらと涙を浮べて、そう告げた。
「あら?マヤさんが見あたりませんわね?」
さっきから、何かを探すような真澄の視線に紫織が知ってか、知らずか、口にする。
「・・・えぇ。みたいですね」
精一杯の平静さを装う。
「あっ、戻って来たみたいですわよ」
紫織の声に視線を彷徨わせると、確かにマヤがいた。
しかし、その隣にいたのは桜小路だった。
二人はしっかりと手を握りあっている。
「本当。ぴったりのカップルですわ。舞台の上の恋が実ったのかしら」
紫織の何気ない一言に胸がチクリとする。
真澄は何も答えず、二人を遠くから見つめていた。
「・・・速水さん・・・あの」
告別式が終わり、帰り際の彼にマヤは思い切って話し掛けた。
幸い周りに人はいなく、真澄とマヤの二人きりだった。
「これ、ありがとうございました」
そう言い、真澄の上着を差し出す。
「あぁ。そうか。寺に置いてきたのだったな」
上着を受け取り、思い出したように口にする。
「・・・とっても暖かかったです。この上着」
マヤはクスリと笑った。
「・・・君はいつのまにそんなに強くなったんだろうな」
マヤを見つめながら、思った事を口にする。
「えっ」
「ずっと、君を見てきたのに・・・。気づかなかった。君がそんなに強くなったなんて」
淋しそうに言う。
「・・・私、強くなんてないです。今だって、本当は泣いてしまいそう。みっとみなく、声を張り上げて・・・」
僅かに瞳を潤ませる。
「本当は速水さんから知らせを聞いた時、舞台を放り出して先生の元に行きたかった・・・」
「だが、君はそれをしなかった。そして、最高の演技を見せた。君はもう立派な女優だ」
「・・・女優か・・・」
真澄の言葉に照れくささを感じてマヤははにかんだような笑みを浮べた。
「速水さん、少しお時間ありますか?行きたい所があるんです」
マヤと真澄が訪れたのは梅の谷にあるいつか来た社務所だった。
二人の心にあの晩の思いが過ぎる。
切なくて、苦しくて、それでも、一緒にいられる事ができて、幸せだった一夜・・・。
「覚えていますか?」
マヤの問いに真澄は悲哀を含んだ笑みを浮べた。
「・・・全て、覚えているよ。息も止まる程の美しい梅。冷たい雨。そして、君の体温」
真澄の言葉にマヤの胸に切なさが募る。
「私、あの梅の木で、紅天女の恋について考えていたんです」
マヤは自分が登っていた梅の木を指し示した。
「昨日、舞台で演じていて、ようやくわかりました。どれ程の恋だったか・・・」
真澄をじっと見つめる。
「・・・どれ程、ただ一人の人を愛したか・・・」
瞳を細め、愛しそうに真澄を見る。
その視線に心が大きく揺れる。
「・・・好きです。速水さん・・・」
マヤは思い切って真澄への想いを口にした。
鮮やかに咲き誇る梅の木々とマヤが重なる。
真澄はその言葉を信じられないというふうに聞いていた。
二人の間に沈黙が生まれる。
「・・・何も言わなくていいです。私の気持ちに応えなくていいです。ただ、あなたに聞いてもらいたかったから」
鮮やかな笑みを浮かべ、マヤは梅の木々を見つめた。
本当は今にも泣いてしまいそうだった。
決して報われる事のない思いを口にし、不安で仕方がなかった。
でも、彼女は泣かなかった・・・。
ここで、涙を見せては真澄に負担をかけてしまうから・・・。
「・・・つきあってくれてありがとうございます。そろそろ戻りましょう」
マヤがそう口にした瞬間、真澄に抱きしめられた。
「・・・速水さん?」
腕の中で彼の名を告げる。
「・・・少しこのままで・・・いさせてくれ・・・。全てが幻ではないと思いたいんだ」
搾り出すような声で真澄が口にする。
マヤは真澄に応えるようにしっかりと、彼を抱きしめた。
互いの鼓動がゆっくりと重なり合う。
そして、視線が重なり、どちらからともなく唇を合わせた。
「真澄様、どちらに行っていたんですか?」
寺に戻った真澄に紫織が言う。
「・・・ちょっと、梅の谷に・・・」
そう言い、マヤの方に視線をちらりと向ける。
「マヤちゃん、どこに行っていたの?」
桜小路が紫織と同じ質問をしていた。
「うん。ちょっと・・・ね」
曖昧に答える。
「心配したよ」
桜小路はそう言い、人目もはばからず、マヤを抱きしめた。
真澄の胸がズシリと重くなる。
「真澄様?どうかなさいまして?」
さっきから話し掛けても気のない返事をするばかりの彼に少し苛立ったよう口にする。
「・・・えっ、あっ、いえ。何でも・・・。そろそろ帰りましょう」
マヤの方から視線を放すと、真澄は紫織と一緒に寺を出た。
速水さん・・・。
マヤは桜小路の腕の中で紫織と一緒に寺を出る彼を見つめていた。
月影が亡くなってから三か月。
マヤと真澄は梅の谷を最後に出会う事がなかった。
二人は故意に会おうとしなかった。
マヤはまだ真澄を目の前にして冷静でいられる自信がなかった。
真澄は自分を見失ってしまいそうで怖かった。
婚約者がいる身でありながら、今度こそマヤに会ってしまっては正気ではいられない。
しかし、真澄には彼女の気持ちに応える事はできなかった。
だから、梅の谷で”好き”だと言われても真澄は何も告げなかった。
矛盾した想いの中で真澄は苦しんでいた。
「マヤさん結婚なさるそうよ」
ある日、紫織が真澄に言う。
その言葉に真澄の表情が凍りつく。
「・・・一体、どこでそれを・・・」
真澄の問いかけに紫織は一冊の週刊誌を渡した。
見出しには、紅天女結婚秒読みと大きく書かれていた。
宝石店から一緒に出てくるマヤと桜小路の姿が大きく載っている。
記事には二人は婚約指輪を購入したようだと書いてあった。
「・・・お二人に先を越されてしまいそうですわね」
紫織はクスリと笑った。
「・・・えぇ」
「水城君、ただちにこの記事の信憑性を調べてくれ」
社に戻り、紫織に渡された雑誌を渡す。
「・・・それなら、事実でございます」
水城の言葉に真澄の心臓が凍りつく。
「何!」
凄い剣幕で真澄が水城を見る。
「先程、社長宛てに届きました」
そう言い、水城が手渡したのはマヤと桜小路の婚約披露パ−ティ−の招待状だった。
真澄はグラリと椅子に倒れこんだ。
「・・・そんな・・・」
突然の出来事に気が狂ってしまいそうになる。
つい、三か月前に、自分の事を好きだと言ってくれたマヤが幻のように思えた。
「・・・速水さんに招待状出しておいたよ」
婚約披露パ−ティ−の日に桜小路が口にする。
マヤはその言葉に驚いたように彼を見つめた。
「・・・マヤちゃん、君の好きな人は・・・やっぱり、速水さんなのかい?」
明らかなマヤの動揺に桜小路は悲しそうにマヤを見た。
マヤはその言葉に何も答えず、苦しそうに目を伏せた。
「僕は少し急ぎすぎたのかな。君が僕のプロポ−ズを受けてくれて・・・素直に嬉しくて・・・。
でも、君にはまだ僕と結婚する準備ができていないようだ」
マヤをそっと、抱きしめる。
「君が婚約を解消したいと思うなら、僕は構わない・・・。君から笑顔を奪うのは何よりも辛いから」
淋し気な瞳でマヤを見つめる。
「・・・桜小路くん・・・」
彼の優しさに涙が溢れる。
「・・・泣かないで・・・僕のお姫様」
そう言い、桜小路はそっとマヤの唇の奪った。
この三か月、不安定なマヤを支えていたのは桜小路だった。
桜小路はマヤを大きな優しさでいつでも包んでくれた。
だから、彼と結婚すれば手の届く事のない真澄の事を忘れられると思った。
桜小路と穏やかな家庭を築けると思った。
でも・・・。
マヤの心はまだ揺れていた。
真澄は一人でマヤと桜小路の婚約披露パ−ティ−に来た。
マヤは淡い紫色のドレスに身を包み、幸せそうに桜小路の隣にいた。
綺麗になったな・・・。
遠くからぼんやりと見つめながら、そんな事を思う。
出会った頃の彼女はまだ可憐な少女で、よく自分に食ってかかってきたな・・・と、真澄は苦笑を浮べた。
真澄は全てを諦める為に、来ていた。
自分には手の届かなぬ花だと思い知らせる為にマヤを見つめた。
速水さん・・・。
不意に視線を遠くに向けると、会場の隅に佇む真澄が目に入った。
三か月ぶりに見る彼は少し痩せていた。
感情が昂ぶり涙が流れそうになる。
愛しさが全身をキリリとしめつける。
許されるなら、今すぐに真澄の元に駆け寄って、その広い胸板に抱きしめてもらいたかった。
「・・・マヤちゃん・・・」
桜小路は凍りついたように何かを見つめるマヤを見つめた。
その視線の先には真澄がいた。
嫉妬で身が焦げそうな思いに駆られる。
堪らず、桜小路は招待客の目の前で彼女の唇にキスをした。
その瞬間、会場中から”ヒュ−”という声があがる。
「・・・桜小路君・・・」
唇を解放されると、驚いたように桜小路を見る。
「マヤちゃん。僕だけを見て・・・」
熱い眼差しを浮かべ、桜小路が口にした。
真澄は会場から出て、何かを忘れるように一心に車を走らせた。
それでも頭の中に桜小路と唇を重ねるマヤが浮かぶ。
未練を断ち切る為に行ったのに、マヤを愛する想いは何倍にも膨れ上がる。
アクセルを強く踏み込み、スピ−ドを加速させる。
自分の気持ちから逃げるように・・・。
愛する者を忘れる為に・・・。
そして、真澄の運転する車は突然現れた車と正面衝突をおこした。
薄れ行く意識の中で真澄は愛する人の事を想った。。
つづく
【後書き】
いや・・・ははははは・・・。何か重くなってしまった(冷や汗)
全然甘くないし・・・。
まぁ、何とか後編で逆転いたしますので・・・もう少しお付き合いを(^^;
リクエストをくれためぐみ様、えぇ−ん!ごめんなさい(><)極力めぐみ様のリクエストに沿って書いてるつもりなんですが・・・。
かなりズレてきたような気が・・・。
後編で頑張って修正します!
2001.10.30.
Cat