紅色の恋−後編−


「えっ!速水さんが交通事故に!」
婚約披露パ−ティ−を終え、マヤの元に突然の知らせが届く。
目の前が一瞬、真っ暗になり、倒れそうになる。
「・・・病院は・・・病院はどこなの!!」
知らせを持ってきた者にマヤは尋常だとは思えない剣幕で詰め寄った。
桜小路はその姿を目にして、胸が苦しかった。
思わず、マヤに”会いに行くな!”と口にしそうだったが、寸前でこらえ、代わりに出た言葉は
「・・・マヤちゃん、行こう」
だった。
桜小路は混乱する彼女を引き連れて、真澄が担ぎこまれた病院に向かった。



「マヤさん・・・」
病院に駆けつけたマヤと桜小路を水城が見つける。
「水城さん、速水さんの容態は」
切迫した様子で詰め寄る。
「・・・意識不明の重体らしい・・・わ」
水城は辛そうに答えた。
「・・・そんな・・・」
水城の言葉に張り詰めていたものが崩れ去り、マヤは意識を失った。




真澄は梅の木々の中にいた。
鮮やかな紅色の花が満開に咲き誇り、幻想的な世界を作り出す。
その中を何かに惹かれるように歩いていた。

”あの日、はじめて谷でおまえを見たとき・・・阿古夜にはすぐわかったのじゃ。おまえがおばばの言うもう一人の魂の片割れだと・・・”

小さな人影が真澄の目の前に現れる。

”年も姿も身分もなく、出会えば互いに惹かれあい、もう半分の自分を求めてやまぬという・・・”

ゆっくりと、その姿に向かって真澄は歩いた。

”はやくひとつになりたくて狂おしいほど相手の魂を乞うると・・・それが恋じゃと・・・”

そこにいたのは幼さがまだ残る少女だった。
瞳には熱き魂が宿り、真澄を真っ直ぐに見つめる。

”名前が過去がなんになろう・・・捨てて下され、名前も過去も、阿古夜だけのものになって下され・・・”

その言葉に胸が苦しくなる。
目の前の少女に対する愛しさが募り、どうしようもなくなる。
たまらなく、そっと手を伸ばすと少女は消え、そこはまた梅の木が広がる空間だった。

「・・・マヤ・・・」
真澄はその少女の名を口にした。





「・・・マヤ・・・マヤ・・・」
意識のない真澄はうわ言のように彼女の名を口にしていた。
ようやく付き添いを許された紫織は真澄の側でその声を聞いていた。
「・・・真澄様・・・そんなに、彼女がいいんですか・・・」
嫉妬で身が切れそうな思いに駆られる。
真澄が彼女の名前を口にする度に、憎悪が増す。
「・・・あんな子にあなたを捕られるものですか!」


「マヤちゃん?」
二日意識のなかった彼女が瞳を開けたのを見ると、桜小路が声をかける。
「・・・桜小路・・・くん・・・」
マヤはなぜか泣いていた。
「私・・・私・・・」
マヤは知ってしまったのだ。

真澄への断ち切れない想いを・・・。
愛しくて、愛しくて仕方がない衝動を・・・。
心にはもうこれ以上嘘をつけない事を・・・。

桜小路はマヤが何を言おうとしていたのか不思議とわかっていた。
彼女の瞳が”違う”と訴えていたから・・・。



「・・・速水さんは・・・どこ?」
病院着を着たままのマヤが病室を抜け出し、廊下にいた水城に聞く。
「・・・マヤちゃん、気づいたの?」
「ねぇ、速水さんは?」
一心ふらんに口にする。
その様子に水城は真澄が移された病室を口にした。
マヤはそれを聞くと、すぐに向かった。

「速水さん!」
そう言って、病室に入ると、機械に繋がれた真澄と、マヤに恐ろしい形相を浮べている紫織がいた。
「あなた、何しに来たの?ここは面会謝絶よ」
紫織の言葉を無視して、マヤは真澄のベットに歩み寄った。
「ちょっと、あなた聞いているの!出て行かないなら警備を呼ぶわよ」
「・・・速水さん・・・会いたかった・・・」
マヤの視界に紫織は入っていなかった。
しっかりと真澄の手を握り、顔を寄せる。
「ちょっと、あなた何を・・・」
紫織が取り乱していると、マヤは静かに真澄の唇に自分の唇を重ねた。
「なっ・・・」
その瞬間、堪らず、紫織はマヤの頬を叩き、真澄から引き離した。
それでも、マヤは少しも怯まず、真澄に再び寄り添う。

この子・・・。真澄様しか見えていない・・・。

ヒリヒリと痛む右手を感じながら紫織はマヤの真澄を思う激しい気持ちに何とも言えない敗北を感じた。

マヤは真澄が意識を取り戻すまで、誰の言葉も聞かず、食事も満足にとらず、離れなかった。
どんなに引き離しても、マヤは何度でも真澄の元にいったのだった。
その真っ直ぐな想いに周りのものは唖然とした。

そして、それから一週間・・・。
真澄はようやく目を覚ました。
マヤの姿を見つけると、彼は幸せそうな笑みを浮べた。

真澄が退院してから、一週間後、マヤは誰にも何も告げず、姿を消した。
それは彼女にとっての諦めだった。
マヤは真澄が意識を取り戻した日以来、彼には会っていなかった。
何度も見舞いに行ったが会わせてはもらえなかった。
そんな日々が募り、とうとう、マヤは決心したのだ。

真澄を諦める事を・・・。
手に入らないと認める事を・・・。
そして、永遠に真澄とは会わない事を・・・。



「・・・何?マヤがいなくなった?」
真澄はその知らせを桜小路から聞いていた。
「えぇ・・・。どこを探してもいないんです。マヤちゃん、ずっと速水さんの事で不安定だったから心配なんです」
「・・・俺の事で?」
桜小路の言葉を意外そうに口にする。
「・・・毎日のように速水さんのお見舞いに行って、会わせてはもらえなかったそうです」
桜小路の言葉に真澄は衝撃を受けた。
「・・・マヤは毎日来ていたのか・・・でも、君と婚約したって・・・」
「・・・僕たち、速水さんが意識を取り戻した日に婚約を解消したんです」
「えっ!」
真澄は初めて知る事実に驚いたように彼を見た。
「・・・どうして解消したかは・・・速水さん、わかるでしょう?マヤちゃんが求めているのは僕じゃない・・・。あなたなんです。だから、彼女を見つけられるのも
あなたしかいない・・・」
桜小路は辛そうに表情を歪めた。



「源造さんは先生を愛していたんでしょ?」
梅の谷に着て、3日目、マヤは源造にそう言った。
「えぇ・・・。そうですね。愛していました。だから、ずっと、お側に仕える事ができて幸せでした」
穏やかな表情を浮べる。
「でも、先生の心は尾崎先生にあったんでしょ?」
「もちろんです。私はそれでも構わなかったんです。尾崎一蓮を愛する先生に惹かれたのですから」
切なそうに瞳を細める。
「・・・源造さん・・・」
彼の深い思いに自分の中にある真澄への気持ちと重なる。
そう思うと涙が流れた。
「・・・マヤさん・・・」
源造はそっと、我が子のようにマヤを抱きしめた。
マヤは報われない恋心に涙を流し続けた。


「・・・マヤはいますか?」
真澄が山寺に着いたのはそれから2日後だった。
源造が彼を出迎える。
「えぇ・・・。あなたを想って、ずっと、泣いています」
源造の言葉に胸が千切れそうになる。
「・・・速水さん、ここに来たという事はマヤさんを受け入れるという事なんですね。
で、なければ会わせる訳には行きません」
マヤの父親のような表情を浮べる。
「はい。もちろん。もう自分に嘘をつく事はやめました。今すぐにとはいきませんが、いずれ、彼女とはちゃんとした形を取るつもりです」
「・・・つまり、それは、ご結婚の意志があるという事ですか?」
厳しい表情で真澄見つめる。
「はい」
真澄は真っ直ぐに見つめ、口にした。




「先生、今日はとっても星が綺麗」
梅の谷にある月影の墓に語りかける。
星空を見つめながら、マヤはいつか見た真澄との夜空を思い出した。
「・・・やだ。何を見ても速水さんの事を思い出しちゃう」
薄っすらと浮かぶ、涙を拭う。
「・・・私、こんなに泣き虫だったのかな・・・」

「・・・探したぞ・・・」
マヤの背中に聞き覚えのある声がかかる。
振り向くと、そこには愛しい人がいた。
「・・・どうして・・・」
「・・・君に会いに来た・・・」
優しい表情を浮べる。
「・・・帰って下さい・・・私は、もうあなたとは会わないつもりでここに来ました」
揺れる心を必死で抑え、真澄に背を向ける。
「・・・前にここに来た時、俺はある人から思いを告げられた・・・」
何かを思い出すように話し出す。
「・・・その言葉に俺は応えられなかった。俺には彼女の気持ちを受け入れる資格がなかったからだ」
ゆっくりとマヤに近づく。
「でも、今度は違う」
そう言い、マヤの肩を掴み、自分の方に振り向かせる。
「君を愛している。これが俺の本心だ。ずっと、ずっと、隠してきた気持ちだ」
真澄の言葉にジワリと涙が流れる。
抑えようと、思えば、思う程に・・・。
「・・・ズルイ・・・。今頃になって、どうして・・・そんな・・・やっと、あなたを諦めようと・・・」
マヤの言葉を遮るように、真澄の唇が重なる。
深いキスに息ができなくなる。
気持ちが溢れて何も考えられなくなる。
「・・・そこから先の言葉は言わせない」
唇を放すと、激しい瞳で真澄が彼女を見つめる。
「・・・愛してる」
マヤを草の上に押し倒し、真澄は彼女の身につけているものを剥ぎ取っていった。
愛しさを表現するように、彼女の真っ白な肌に唇を這わせる。
「・・・あっ」
初めて知る感覚にマヤの頬は紅葉し、目まぐるしい快楽に耐えていた。
身体中が火のように熱くなり、胸がギュッと締め付けられるような思いに駆られる。
「・・・速水さんっ・・・」
艶やかな声と表情に、真澄は正気を失いかけていた。
月明かりの下、マヤの身体が熱くなっていくのがわかった。
真っ白な肌には真澄が残したキスマ−クがあらゆる所に浮かぶ。
「・・・綺麗だ・・・」
とうとう、マヤから全ての衣服を剥ぎ取ると、真澄はじっと、彼女を見つめて口にした。
「・・・いや、恥ずかしい・・・」
真澄から視線を外し、露になった体を両手で隠そうとする。
真澄は彼女の両腕を掴み、それを制した。
「・・・いじわる・・・」
恥じ入るようにマヤが言う。
そう言った、彼女の表情に胸を鷲づかみにされ、可愛らしさと、愛しさが溢れる。
「・・・そうさ。俺は意地悪な男だ・・・」
そう言うと、再び唇を動かし、マヤの下腹部に向かって這わせる。
「・・・えっ・・・あぁっ」
突然足の間に触れた温かいものにマヤは驚いたように声をあげた。
彼女を驚かせたものは真澄の舌だった。
「・・・いや。やめて」
羞恥心に身を焦がし、足を閉じようとするが、真澄が許さない。
「・・・舌がいやなのか?」
そう言うと、今度は彼の指が彼女の入り口に入る。
そして、唇は彼女の胸の頂きを含む。
全身を甘い痺れが走る。
「・・・あぁぁっ!」
マヤは堪らず、大きな声をあげた。
彼女の入り口が蜜で溢れると、真澄は自分の着ているものを脱ぎ捨て、彼女と肌を合わせた。
そして、少し、躊躇うようにマヤの入り口に自分自身を挿入しはじめる。
「・・・あっ」
初めて知る痛みに彼女の表情が歪む。
真澄の背中にきつく爪を立て、何とか耐えようとする。
そんな彼女が健気で、真澄は進入をやめようとした。
「・・・もう、終わりなの?」
真澄が離れると、不安そうにマヤが口にする。
「・・・いや。まだ入れていない。だけど、いいんだ。焦る事はない。まだ、君を抱く機会はある。これからゆっくり抱き合っていこう」
マヤを安心させるように口にし、頬に優しくキスをする。
「・・・今、抱かれたい。今、物凄く速水さんが欲しいの」
マヤは素直な気持ちを口にした。
「・・・マヤ・・・。だが、いいのか?俺は君を苦しめたくはない・・・」
「・・・あなたを知りたいの。私と一つになるあなたを感じたいの」
マヤの言葉に真澄の心がかき乱される。
「・・・わかった。いくぞ」
真澄は再び、彼女の中に入った。
今度は深く貫く。
ジワリと彼女が彼を締め上げ、その快楽に酔いしれる。
「・・・んんんっっ」
真澄が腰を動かす度にマヤが耐え切れず軋んだ声をあげる。
最初は痛さを感じたが、段々と快楽に変わり、大きな波に飲み込まれていく。
そして、真澄が彼女の中で大きさを増し、次の瞬間、温かいものがマヤの膣へと注がれ、マヤは絶頂を迎えた。
パタリと、倒れ、荒い呼吸が響く。
二人の視界には鮮やかな星空が入る。

「あっ、流れ星・・・」
空に流れ星を見つけ、マヤが口にする。
「・・・ちゃんと、願い事はしたか?」
マヤを抱き寄せ、真澄が言う。
「・・・もちろん」
少し照れたようにマヤが口にする。
「あなたと離れませんように・・・って」
マヤは幸せそうな笑みを浮べた。
真澄はその言葉に胸がいっぱいになり、思わず力強く彼女を抱きしめる。
「・・・そういえば、あの時、速水さんは何をお願いしたの?」
真澄を見つめながら、マヤが思い出したように口にする。
「えっ」
「速水会長を探しに来た時、一緒にこうして星空を見上げたでしょ?あの時、確か、速水さんは”俺の願いはきっと一生叶わない”って・・・」
マヤの言葉に真澄は何かを思い出したように笑った。
「・・・それは・・・」
そっと、マヤの耳に話し掛ける。
その言葉にマヤは満面の笑みを浮べた。




それから半年後、マヤは再び梅の谷に来ていた。
今度は真澄と一緒に。

「・・・先生。私たち、結婚しました」
満面の笑顔で月影の墓石に報告する。
マヤは幸せそうに隣に立つ真澄を見つめた。





                       THE END



【後書き】
何とか・・・書けました。今回、リクエストには”初めてのムフフ”とあったのでそちらを重点にしたしもりです(笑)
本当はリクエストの二番目も絡ませて書く予定だったんですけど・・・話が膨れ上がりすぎて断念しました(苦笑)
だから、ちょっと、前編とズレているかも・・・(冷や汗)
いやぁぁ・・・それにしても野外でのムフフ今回、ガラかめ小説ではCat初めての試みです(笑)
何か、書いてて、一人赤面したりして・・・かなり、怪しかったです(爆)
ちゃんと、ご注文の通り書けたか・・・非常に自信がありませんが・・・。
リクエストをくれためぐみ様、そして、訪問者の皆様、ありがとうございます♪
これからも宜しくお願いします♪


2001.10.30.
Cat




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