Rainbow
AUTHOR まゆ


降りしきる雨の中で君を抱きしめた。
濡れそぼつ君を包むように、強く抱きしめた。

「・・・これからは、俺が、君の傘になる・・・」

言わずにはいられなかった。
君の震える肩を、頬を伝うしずくを見たら
このままずっと影から君を見守ろうなんて誓いなど、いつの間にか消し飛んでいた。

足元に転がった傘を拾い上げて君にさしかけた。
小さなピンクの傘の下で君の肩を抱いた。
身をかがめて君の髪にくちづける。
耳元に唇を寄せる。

「・・・愛してる・・・」

傘を打つ雨の音に誘われるまま、君に伝えた真実。
君はこくんと頷いて、また涙をこぼしたね。

「おいで・・・」

君の華奢な背中を軽く押して、歩き出した。
まだ雨はやまない。
だからこれから、ふたりで雨やどりだ。


ふたりとも黙ったまま、エレベーターの階数表示を見上げていた。
左から右へと数字の上をオレンジ色のランプが走る。
「20」の上でランプが止まり、チン、と四角い箱の中に高い音が響いた。

「何、固くなってるんだい?何度も来たことがある場所だろう?」
エレベーターの扉が開いても動かずにいる君にそんな意地悪を言ってみた。
そう、ここで会う君は、いつでも俺を拒絶していたんだっけ・・・。
「おいで・・・俺の部屋へ」
初めて、ここで君と笑顔で向き合えるんだね。


革張りのソファに並んですわって、君の肩を抱いていた。
長い黒髪に指を差し入れて、何度も指の間から髪をこぼした。
時々、髪の香りに顔を埋めて深く吸い込んでみたり、
膝の上に揃えられた君の白い華奢な指を一本ずつさすってみたり。
ただ、君に触れていられることが途方もなく幸せに思えた。

たくさんのことを話した。
夜が更けていくことなどかまわずに、これまでの時間を取り戻すかのように、
俺たちは本当にいろんなことを話した。
初めて会った時のことや、君が出た舞台の数々のこと。
中学生だった君、高校生の頃の君。
ふたりで行った縁日やプラネタリウムのこと。梅の里でのこと。
そして・・・今、君がこんなにもきれいになった、ということも・・・。

ふと、会話が途切れた時、君は俺の肩に頭を預けたまま呟いたね。
「・・・こわいくらい、幸せ・・・」
そのまま君はヒュプノスに抱き取られていった。
俺もまた、そんな君に誘われるように眠ってしまったらしい。


目覚めたら、雨はあがっていた。
一晩、降り続いていたらしく、アスファルトは黒く光り、窓ガラスにも水滴が貼りついている。
左へ目を向ければ、ビルの谷間から、今まさに新しい太陽が顔を覗かせようとしている。
まばゆい光。金色の空。雨に洗われて、空気までが輝いて見えた。
そして、右手へ目線を転じたら・・・。

ビルに切り取られた空いっぱいに、虹がかかっていた。

それはちょっと言葉を失うほどの美しさで、
空の上には神と呼ばれる人が本当にいるのだと、素直に信じたくなるような光景だった。
雨が止んだら、虹が架かった。
俺の心に降り続いていた雨も止んで、今、俺の側には君がいる。
君という消えない虹が・・・。
君が俺に向けて架けてくれた七色の橋を渡って、俺はやっと、君のもとへたどり着けたんだ。

振り向けば、ソファの上に君のあどけない寝顔。
まだ夢の世界を漂っているらしい。
「うーん、速水さん・・・」
小さな寝言のあと、閉じた瞼の端からひとすじこぼれた涙。
どんな夢を見ているのだろう?君はまだ泣いているのか?

もう泣かないで。
君はひとりじゃない。ずっと側にいるよ。君の側にいるよ・・・マヤ。
忘れないで、俺がいること。

君を愛しているんだ・・・。



Music by 〜Rainbow〜
Copyright (C) LUNA

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【後書き】
まゆさん、ご馳走様でした♪とっても切なかった蒼い雨とは変わり、今回は甘いですねぇぇ♪
速水さんの視点がとってもいいです♪”愛している””おいで”の二言に完全にやられました(笑)

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