赤 い 薔 薇



赤い薔薇の花言葉/情熱的な恋/愛





もう、何年も君を見つめてきた・・・。
ずっと、君だけを見ていた・・・。
少女から大人へ成長する君を見続けているのが好きだった。
女優として成長していく君をずっと、見てきた・・・。

もう、何年も・・・。

君に憎まれ、嫌われ続け・・・。
それでも、俺は君の側にいたかった。

君は俺にとって手の届かぬ花・・・。
見つめている事しか許されぬ花・・・。
これから先、それは変わる事はない。

自分の気持ちなど口にする気はない。
この想いは許されるものではないから・・・。
俺はただ、そっと、花を愛でるように君を見ていられればいい。
舞台の上の君を・・・。
女優として輝き続ける君を・・・。
人としての君を・・・。

それ以上は望まない・・・。
望んではならない・・・。

手にしてはならない花だから・・・。



「・・・速水さん?」
ぼんやりと、グラスを見つめていると誰かが俺の名を口にする。
声のした方を振り向き、彼女を見る。
「やぁ、ちびちゃん、奇遇だ」
さしさわりのない言葉を向ける。
「えっ、そうですね。本当、奇遇です」
少し戸惑ったように俺を見つめ軽く笑みを浮かべる。
「どうだ?一緒に飲むか?」
俺の問いに一瞬、考えるように沈黙する。
「・・・速水さんがご迷惑ではないのなら・・・」
躊躇いがちに俺を見る。
「迷惑だなんて・・・大女優様と飲めるなんて光栄さ」
予想通り俺の言葉に赤くなる。
「・・・相変わらず、心にも思っていない事口にするんですね」
彼女なりの皮肉を浮かべ、そっと、俺の隣に座る。
「はははは。察しがいいな」
いつも通りの答えを返す。
俺の笑いに少し膨れっ面を浮かべる。
そんな表情がかわいいなんて思ってしまう。
「そういえば、君の舞台を観たよ。とても良かった」
先週観た舞台上の彼女を思い描く。
もう、ちびちゃんなんて呼べない程、艶やかな表情を浮かべる彼女がいた。
「えっ!速水さん観に来てくれたんですか?」
驚いたように瞳を見開く。
「あぁ。俺は君のファンだからね」
素直な言葉を口にする。
「・・・ファンか・・・」
そう呟き、何時の間にか彼女の前に置かれたグラスに瞳を降ろす。
「本当、速水さんには昔からお世話になりっぱなしですね。母を亡くして、舞台に立てなくなった時も、あなたは私を見捨てなかった」
思い出すように口にした彼女の言葉に当時の彼女を思い出す。
俺にいつも真正面からたて突いて、全力で俺を嫌っていた。
何度”大嫌い”と呼ばれたのだろうか・・・。
「ファンだからな・・・。そう簡単には見捨てないさ」
苦笑を浮かべ、煙草を取り出す。
「それに俺の責任でもある。君の母親を亡くしたのは」
自分で口にした言葉に鈍い痛みを感じる。

決して消える事のない罪・・・。

「速水さん、まだ気にしていたんですか?」
意外そうに彼女が俺を見る。
「俺にだって良心はあるからな」
煙を吐き出し、宙に舞う細長い白煙を見つめる。
「そういえば、速水さんあの時、両手を広げて殴るなり蹴るなり好きにしろって・・・言ってくれましたよね。
私、あの時殴れなかった。あなたが憎くて仕方がなかったのに・・・」
「うん?そうだったか?」
「それで、気づいたんです。あなが本当は優しい人だって・・・」
思わぬ彼女の言葉に口にしていた煙草にむせそうになる。
「ははははは。ちびちゃん。もう、酔ったのか?」
誤魔化すように笑い、酒を口にする。
「茶化さないで下さい。私、知ってるんですよ。本当のあなたを」
真剣な瞳で俺を見る。
「あなたはいつも優しかった・・・。私にかける厳しい言葉の裏にはあなたの優しさがこめられていた」

・・・マヤ・・・。

「そんなあたなの本当の姿に気づいて知ったんです。自分の気持ちを・・・」
そう口にすると、彼女の指がテ−ブルの上に置かれたままの俺の手に触れる。

ドキッ・・・。

胸が熱い・・・。
「私、速水さんの事が・・・」
「ちびちゃん!駄目だ!そこから先は言ってはいけない」
遮るように言葉を口にする。
俺の言葉に悲しそうな表情を浮かべる。
「・・・どうしてですか?私の気持ちが迷惑ですか?」
消えそうなか細い声で問い掛ける。
切ない想いで胸がいっぱいになる。

俺だって、本当はその先の言葉を聞いてみたい・・・。
でも、駄目なんだ・・・。
それ以上を聞いてしまったら、俺は自分を抑えられない・・・。

「・・・すまない・・・」

喉の奥から搾り出すようにその言葉を口にする。
俺の言葉に彼女の瞳が涙ぐむ。
「・・・少し、酔ったみたい。ごめんなさい。私、余計な事を口にしたみたい」
そう言い、左手の薬指にはめられているプラチナのリングを彼女の指がなぞる。
「・・・奥様、元気ですか?」
彼女の言葉に自分の立場を思い知らされる。
「・・あぁ。かわりないよ」
グラスを一気に空け、答える。
「・・・そうですか」
「ちびちゃん、俺は何があっても君のファンだ。この先これだけは何も変わらない」
宥めるように口にし、彼女を見つめる。
「・・・ファン・・・か。だったら、一つ我侭を言っていいですか?」
何かを覚悟したように俺を見る。
「何だ?」
「・・・薔薇を下さい・・・。ファンだと言うなら、舞台の度にあなたの名前で薔薇を下さい・・・。決して、匿名ではない、速水さん、あなたからの薔薇が欲しい。
あなたが私のファンでいてくれる限り・・・」
その言葉の裏にある切ない想いに思わず、彼女を抱きしめそうになる。
唇をギュッと噛み、彼女に触れそうになった手を下ろす。
「・・・マヤ・・・。わかった。好きなだけ贈ろう。俺からの薔薇を・・・」
俺の言葉に彼女は儚気な笑みを浮かべた。




「わぁ!立派な花ですねぇ」
劇場に届いた真っ赤な薔薇の花束に皆が感嘆の声をあげる。

・・・速水さん・・・。

私が望んだ赤い薔薇・・・。
決して口にする事のできない想いを託した薔薇・・・。

少女だった頃、いつか夢に見ていた。
真っ赤な薔薇の花を抱えて迎えに来てくれる王子様を・・・。
その頃は王子様の隣にはもうお姫様がいるなんて事は思いもしなかった。

「凄いですねぇ。あの速水社長から薔薇をもらうなんて」
スタッフの誰かが口にする。
「フフフ・・・。速水さんは私のファンなのよ」
私に唯一許された言葉。
それ以上は望んではならない・・・関係。
私には女優としてしか彼に愛される事を許されない。
決して、女としては愛されない・・・。

でも、それでもいい・・・。
彼に愛されるのなら・・・どんな形でもいい・・・。
この薔薇があれば私はまた舞台に立つ事ができるから・・・。




「・・・綺麗な薔薇ですね」
ぼんやりとマヤに贈った薔薇の残りを見つめていると、そんな声がした。
「どなたかに差し上げたんですか?」
顔なじみのバ−テンが聞く。
「あぁ」
瞳を細め、薔薇を見つめる。
「情熱的な恋、愛情・・・確かそんな花言葉でしたね」
その言葉にマヤの表情が浮かぶ。
赤い薔薇が欲しいと言った時の表情が・・・。
「・・・そうだ」
瞳を伏せ、ブランデ−を呷る。

決して口にしてはならない想い・・・。
きっと生涯薔薇の意味を口にする事はない・・・。

「贈った相手は恋人ですか?」
バ−テンの言葉に瞳を細める。
「・・・恋人か・・・」
口にした言葉に胸が熱くなる。

ただ、俺にできるのは想い続ける事だけ・・・。
薔薇を贈り続ける事だけ・・・。
静かにそっと、見守り続ける事だけ・・・。

マヤ、いつか君に想いを告げられる日が来るのだろうか・・・。





部屋いっぱいに飾られた赤い薔薇・・・。
あの人が贈り続けてくれるかぎり私の部屋は薔薇で埋まる。
あの人の想いで埋まる。
例え、口にしてもらえなくても、私には赤い薔薇がある。
だから、私は不幸だなんて思いはしない。
あの人はずっと、私の側にいるのだから・・・。
私を見守り続けてくれるのだから・・・。

ねぇ、そうでしょ?速水さん・・・。
そう思っていいでしょ?

幸せなはずなのに、なぜか涙が流れてくる。
薔薇を見るたびに、胸が苦しくて、切なくて・・・。

おかしいな。私、幸せなのに・・・。

いつの間にか、膝を抱えて泣いていた。
あの人の事が愛しくて、恋しくて・・・涙が流れる。

昔よりも涙もろくなっている自分になぜか笑いたくなった。





「まぁ、見事な薔薇・・・」
彼女の舞台を観に行った時に、隣の妻がそう言った。
「・・・あなたが贈ったの?」
”速水真澄”と書かれた文字を見つめ、探るように俺を見る。
「・・・あぁ。彼女のファンだから・・・」
「私も欲しいわ。この薔薇」
ねだるような瞳で口にする。

「・・・悪いが、この薔薇だけは君にはやれない・・・」

俺の言葉に驚いたように眉を潜める。
自分でもそんな事、口にするなんて・・・よほど、余裕がないんだな。
「・・・そう」
妻はそう告げると、それきり何も口にしなかった。
まるで、何かを避けるように。
きっと、彼女は随分前から俺が誰を愛しているのか知っているのだろう。
だから、こういう会話になると途端に口数が減る。

何だか、自分の人生が空しく思える。
愛してもいない女性と会社の為だけに結婚をし、何の意味のない日々を送る。
ただ、そこにあるのは会社の為経済的な利益を得る事だけの人生。
いつの間に、俺の人生はこうなってしまったのだろう・・・。

だから、偶に夢を見る。

両手いっぱの赤い薔薇を抱え、彼女に会いに行く夢を・・・。
ただの男として、愛を告白する事を・・・。

きっと、俺の生涯でそんな事を許される日はない。

俺が速水真澄でいるかぎり、夢を見る事は許されないのだから・・・。

幻想を消すようにクスリと笑う。





「また、速水社長から薔薇が届いていますよ」

その言葉に嬉しくなる。
彼は公演の度に何があろうと薔薇をくれた。
赤一色の薔薇に胸が熱くなる。
傍目から見ればただの公演祝いの薔薇だけど、私にとっては違う。
この薔薇は、彼が私を愛してくれる証。
だから、また、私は頑張れる。
あなたが側にいなくても・・・。




それから、一年、ある訃報が飛び込んで来た。





「・・・今、何て・・・」
突然の事に耳を疑いたくなる。
「・・・今日、速水社長がお亡くなりになりました・・・。交通事故です」
「・・・交通事故・・・」
あまりにもあっけない死・・・。
あの速水さんが逝ってしまうなんて・・・そんな・・・。
目の前が真っ黒になる。
体中から力が抜け、立っていられなくなる。
彼の姿を見かけたのはつい、一週間前だったのに・・・。

「・・・そんな・・」
そう呟き、私は意識を失った。

信じられない、あの人がこの世からいなくなるなんて・・・。
私を置いていってしまうなんて・・・。





「・・・マヤちゃん、よく来てくれたわ」

喪服を来た水城さんが私に話し掛ける。
「社長もきっと、あなたに来てもらえて、喜んでいるわ」
「・・・水城さん、本当に速水さんは亡くなってしまったの?」
彼の遺影を見ても納得がいかずそんな言葉が漏れる。
祭壇に飾られた写真は、ついこの間目にした彼と変わらない。
あの棺の中に本当に彼は眠っているのだろうか・・・。

「・・・あなたは、北島マヤさん」
速水さんの妻である彼女が私に気づく。
「紫織さん・・・本当に、速水さんは・・・」
私の言葉に彼女の瞳が潤む。

パシッという音と、ともに次の瞬間、頬に鋭い痛みが走る。
「よく、ここに来れましたわね!」
その瞳は悲しみと憎しみでいっぱいだった。
「奥様、おやめ下さい!」
水城が間に入り、気が狂ってしまったような彼女を止める。
「・・・離して!!速水を帰して!!あなたさえいなければ、こんな事に、あなたさえ・・・」
子供のように泣き崩れて、うわごとを繰り返していた。


「・・・マヤさん、こちらへ」
何が何だかわからなくなっている時に、誰かにそう言われた。
「・・・あなたは・・・聖さん・・!」
「今、奥様は気が立っています・・・こちらへどうぞ」
そう言われ、連れていかれたのは誰もいない静かな部屋だった。
「ねぇ、聖さん、紫織さんが言っていた事はどういう意味なの?速水さんは一体、どうして事故なんかに・・・」
不安な想いに駆られる。
「・・・それは私にもわかりません。なぜ奥様があのような事をおっしゃったのか・・・」
瞳を伏せ鎮痛な表情を浮かべる。
「・・・ただ、私が聞いたのは、真澄様が乗った車は暴走車と正面衝突を起こし、炎上したと・・・遺体は高温で燃え、骨も残っているかどうかわからない状態だと・・・」
「・・・骨も・・・だなんて・・・」
聖の口から出た生々しい事実にまた目の前が暗くなった。



それから丸3年年、私は舞台に立たなかった。
いや、立てなかった。
もう、私の元に赤い薔薇が届く事はないから・・・。
女優として愛される事はないから・・・。





「お久しぶりですわね」

彼の命日に彼の眠る墓石の前で、そう話し掛けられる。
幾分かやつれた彼の妻が立っていた。
葬儀以来彼女と会う事はなかった。

「・・・赤い薔薇・・・」

私の胸に抱えられている花束を見つめ、呟く。
「速水の最後の言葉は何だったかご存知?」
遠くを見つめるように口にしたその言葉に、首を振る。
「・・・彼が事故に合う、一時間前、私、彼に言いましたの。もう、北島マヤに赤い薔薇を贈らないで欲しいって・・・。
でも、彼はそれだけはできないって言い切った。俺は何があってもこの薔薇だけは贈り続けなければならないって・・・」
瞳を伏せ、墓石を見つめる。
「初めてだった。あの人があんなにハッキリと感情を露にしたのは・・・。よほど、あなたの事を愛していたんですね」
以前とは違う、憎しみではなく、寂しそうな瞳で私を見る。
「私、初めて自分の想いが叶わぬものだと気づきましたの・・・。幼い恋心だったと・・・」
「・・・紫織さん・・・」
「あの人、本当にあなたの舞台が好きだった。あなたの事を話す時はまるで夢物語でも話すように幸せそうな表情を浮かべていた」
そう告げ、真正面に互いの顔を見つめる。
「あなた、随分とお痩せになったわ。私以上に苦しんだんでしょうね。この3年を・・・、速水のいない年月を・・・。舞台に立てない程に・・・」
悲しそうにより華奢な姿になった私を見つめる。
「ごめんなさい。私があの人を奪ってしまった。私があんな事を口にしなければ、あの人は家を飛び出して行く事もなかった・・・」
涙を浮かべ、頭を下げる。
その光景に驚きを表すように私は瞳を見開いた。
「本当にごめんなさい・・・ごめんなさい・・・。私があの人からもっと早く離れていればこんな事にはならなかった・・・」
涙声でそう告げる彼女にいつの間にか涙が流れていた。

速水さん・・・あなたに会いたいです・・・。
あなたに今すぐ会いに行きたい・・・。






3年ぶりに舞台に立った。
もう赤い薔薇は届かないけど・・・。
舞台は私とあの人を繋ぐ唯一の絆・・・。
あの人がいたから、私は女優になる事ができた。
あの人からの深い愛情があったから、私は演じ続ける事ができた。

だから、離れてはいけないと思った。

”君の舞台が好きだ・・・”

アンコ−ルに立った時にふと、そんな言葉が聞こえた気がする。
これから先、舞台に立ち続ける限り、拍手を貰う限り、あの人は私の側にいる。

もう、悲しくはない・・・。
演じている時はあの人の存在を感じていられるから・・・。

「・・・速水さん、観ていてくれましたか・・・」
スッポトライトを浴び、客席を見つめながらそんな言葉を口にした。




「北島さん、お届け物ですよ」
楽屋に戻ると、劇場の人がそう言い、真っ赤な薔薇の花束を抱えていた。

えっ・・・。

それはよく、あの人が送ってくれた品種の薔薇。
「・・・一体、誰から・・・」
呆然と薔薇を見つめる。
「さぁ、背の高い男の人でしたよ。あなたの大ファンだとかって・・・言っていました」
薔薇を渡し、そう告げる。
「・・・あなた、その人に会ったの?」
「えぇ。まだその辺にいらっしゃるかも・・・、つい、先ほどだったんで・・・」
その言葉に薔薇を抱きしめ、楽屋を飛び出した。



偶に、夢を見る。
両手いっぱいの赤い薔薇を抱え、彼女に会いに行く夢を・・・。
ただの男として、愛を告白する事を・・・。
全てを投げ捨て、彼女だけを抱きしめる事を・・・。

「・・・さすがに、直接渡す勇気はなかったな・・・」
苦笑を浮かべ、出口に向かって歩く。
「まぁ、いいか。この次で・・・」
次こそは彼女に薔薇を直接渡そうと心に決める。



「・・・速水さん!!!」
ロビ−に出ると見覚えのある背中が私を捕らえた。
私の言葉に彼が立ち止まる。



愛しい女性の声がした。
久しぶりにそう呼ばれ、ゆっくりと彼女の方を振り向く。
赤い薔薇を抱え、息を切らして俺を見つめている。
あの頃とは何一つ変わらぬ瞳で・・・。
彼女の表情が段々驚きに変わり、涙でぐしゃぐしゃに濡れはじめる。

「・・・マヤ・・・!」
駆け寄り、薔薇ごと彼女をきつく抱きしめる。
ここまで、長かった。
やっと、この手に彼女を抱きしめる事ができた。
「・・・本当に、本当に・・・速水さんなの?」
涙声で彼女が口にする。
「あぁ。俺だ。今はもうその名前は捨てたがな」
「・・・速水さん、会いたかった!!会いたかった!!みんながあなたの事を死んだって言うから・・・、私、私・・・」
「すまない。君と一緒になる為にはこうするしかなかっんだ。全てを捨てて、生きるしかなかったんだ・・・」
力の限り、彼女を抱きしめる。
その存在を確かめるように、もう二度と離れぬように・・・。




そこで、目が覚める。

とても幸せな夢・・・。
彼が強く私を抱きしめてくれる・・・そんな夢・・・。
いつも涙とともに目が覚める。
彼がいなくなってから、もう10年以上が経つ・・・。

いつの間にか、彼の年を追い越していた。
私は今でも女優でいた。
それは、彼が望んだ事だから・・・。
未だに、私の元には薔薇が届くから・・・。
彼が亡くなってからも、一日もかかす事なく、公演の度に赤い薔薇が届く。


「速水様からの遺言です・・・」
彼が亡くなった次の週の舞台で、そう言われ、赤い薔薇を渡された。
手にした瞬間、熱い想いがこみ上げてきた。

”ちびちゃん、よくやったな”
そう言われ、いものようにポンと軽く頭を撫でられた気がした。



「どうして、赤い薔薇をねだったか・・・速水さん、知ってますか?」
いつか、生前の彼にそう尋ねた事があった。

「・・・知ってる・・・」
そう口にし、この上なく優しい表情で私を見つめた彼がいた。
「赤い薔薇の花言葉は・・・情熱的な恋だろ。そして、愛情・・・」
その言葉に瞳を見開き、彼を見つめた。

「・・・俺も君と同じ想いだ。だから、君には薔薇を贈り続ける。何があっても・・・」
初めて、彼からそんな言葉を聞いた。
生涯で初めて・・・本心を口にしてくれた。
嬉しかった・・・、涙がとまらなかった。
彼に愛されていたのだという確信を持つ事ができた。
そして、彼が贈ってくれる薔薇の意味も・・・。



それが、彼との最後の会話だった。


速水さん・・・。

いつか、またあなたに巡り合えたら、今度は私が赤い薔薇をあなたに贈ります・・・。
見上げた空に流れる星にそう告げ、私は歩き始めた。
彼との想いを胸に・・・。
再会を願って・・・。










The End


【後書き(言い訳)】
なんて後味の悪いもの書いているんでしょう(笑)何か書き始めと終わりがかなりズレているような・・・(焦)
それに速水さんを殺してしまったし・・・(真澄様ファンの方すみません)
まぁ、ここで何が書きたかったというと・・・速水さんが亡くなっても、マヤの元にはちゃんと、赤い薔薇が届くという事が書きたかったんです(多分 汗)
死んでも尚、マヤを思い続ける深い深い速水さんの愛を表現したつもりなんですけどね・・・何かわからん文になってしまいましたね(涙)
偶にはこんな変なものが書きたくなるんです(笑)←言い訳にしか聞こえん

こんな駄作につきあって下さった、そこのお心の広いあなた!感謝致します♪

Cat

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