過去からの贈り物〜前編〜
AUTHOR 涼夜



カツカツカツ・・・・。
規則正しい音を立てて、誰もいない廊下にハイヒールの音がなり響く。
赤毛で小柄な女性は、背筋をピンと伸ばしていつものように出勤時間と同時に自分の
課の扉を開ける。すると、そこには最近ではめっきりと見られなくなっていためずら
しい光景があった。
毎日、毎日遅刻ギリギリに来る相棒の"彼"が、自分の机の上で眠っていたのだ。
「モルダー?」
囁いて近づくが、彼からはなんの反応も無い。それどころか、自分が入って来た事さ
えも気づいていないほど熟睡している。その眠り顔は子供のように大らかで、楽しい
夢でも見ているのだろうか、どこか幸せそうだ。
彼のこんな寝顔を見るのはめずらしかった。最近ではよく眠れないと話していて、い
つも疲れたような表情だったのだが・・・・。この寝顔を見るかぎり、その夢の中は
幸せなのだろう。
彼の寝顔を見つめ続けている自分の顔が、思わずほころびそうになっている事に気づ
いて、スカリーは慌てる。が・・・やっぱり"子供のようだ"と思って優しく微笑んだ。

また調べものでもしていたのだろうか?一つの事に集中すると、他の事には目が入ら
なくなる。それが彼の良い所で、悪い所だ。自分の体の事さえも、気にかけていない
のだから。
だからいつも心配で、胸が押しつぶされそうになる。
"まったく・・・・"きっとこの相棒は、自分がいつも不安と心配に駆られている事な
ど気づいてもいないだろう。心の中で軽いため息をつていてから、彼女は奥の部屋か
らタオルジャケットを持って来た。
「あと二十分だけよ」
そう言って、肩にかけようとした瞬間
「・・・・ジュリア・・・・・」
はっきりと、そう確かにモルダーは寝言で女性の名を呼んだ。
驚いたスカリーは、その場に立ちつくしてしまう。
"ジュリア・・・・?"
一度も聞いた事の無い名前。でもモルダーの表情はおだやかそのもので、それだけで
深い親しみが伝わってきた。
「君か・・・・・スカリー」
寝ていたモルダーに声をかけられて、スカリーは我に戻った。
「おはようモルダー、またここで夜を明かしたの?」
心の動揺を悟られないように、いつもどうりに話しかける。
「ああ・・・・・ちょっと調べたい物があってね」
「今度はなんの事件?」
これからまた何か仕事を頼まれるかというスカリーを横目に
「そういうんじゃないよ」
と、モルダーはどこか寂しそうに微笑んでみせた。一瞬の悲しそうな瞳が、スカリー
をドキリとさせる。
「顔を洗ってくる」
短くそれだけを言うと、そのままスカリーを横切ってモルダーはオフィスから出ていった。
残されたスカリーは、モルダーの寂しそうな瞳とジュリアと言う名の女性が、心に
引っかかってしまった。

冷たい水を顔に浴びながら、モルダーはさっきの懐かしい夢を思い返していた。
"どうして今さら・・・もう何年も忘れていたのに"
鏡に映った自分の顔を見て、そのあまりに情けない顔を、片手で叩く。
"そうじゃない、忘れていたんじゃない・・・・"
モルダーは下を向いて、唇を噛みしめた。
本当は分かっている。今自分が負けそうだから、くじけそうだからあんなにも懐かし
い夢を見たと・・・・。そして、その夢と過去に逃げようとしている事も・・・・・。
「モルダー?」
声をかけてきたのはスカリーだ。オフィスの入り口の所から、彼女はこっちを心配そ
うに見つめている。
「どうした?」
「今スキナー副長官から連絡があって、すぐ来るよう言われたわ」
「分かった、行こう」
「モルダー」
歩き出そうとしたその腕を、スカリーが引き留めた。
「・・・・何?」
不思議そうに聞く僕に、彼女は一瞬瞳を閉じてから口を開いた。
「大丈夫なの・・・?顔色があまりよくないわ」
自分を心配して言ってくれたその一言に、なぜか彼は苛立ちを感じた。
「大丈夫だよ、行こう」
スカリーの手を振り払うような形で、モルダーはそのままエレベーター方へと歩き出す。

自分のそんな行動が、彼女を不安にさせ心配をかけると分かっていても、子供ような
態度をとってしまう。
「スカリー・・・・・その、悪かった」
二人だけのエレベーターの中で、モルダーはスカリーに背を向けたまま静かに謝罪の
言葉を口にした。
「気にしてないわ」
簡潔な一言が返ってくる、それが彼女を傷つけた証拠だろう。けれど、今はその瞳を
見る事ができない。モルダーは顔を下に伏せたまま、それ以上口を開こうとはしな
かった。

「モルダー!!」
二人がエレベーターを降りた直後、一人の男性がモルダーの名前を呼びながら走り
寄ってきた。
「ハーレイ!」
すぐにモルダーは笑顔になる。彼の名前はシャンクス・ハーレイ。彼はモルダーが一
番最初にいた凶悪犯罪課の一人で、当時モルダーと一緒に働いていた仲間であり数少
ないの友人の一人だ。
「久しぶりだな」
「ああっ、丁度よかった。実は今君の所へ行こうと思ってたんだ。やぁ、スカリー捜
査官」
「おはよう。ハーレイ捜査官」
声をかけられて、スカリーも笑顔で返事を返す。
「僕の所に?」
聞き返したモルダーを、スカリーがジロリと睨み付けた。
"分かってるよ、スカリー"
心の中でそう返事をして、彼女に歯切れの悪いうなづちを見せる。
「あー・・・実はハーレイ、今スキナー副長官に呼ばれてるんだ。もし急ぎの用じゃ
なかったら、後にしてもらってもいいいかな?」
「ああっ、それは呼び止めてすまない。これを渡しに行こうと思ってたんだ、はい」

そう言って、ハーレイはモルダーに小さな黄色の小包を手渡した。
「僕に?一体誰から・・・・」
箱を裏返し、送り主の名前を見てモルダーは言葉を詰まらせた。
そこには、もう二度と会うことのできない人物の名が書かれていたから・・・・。
「遅くなって悪かった。頼まれたんだ・・・・もし、何かあった時は君に渡してくれ
と」
「そうか・・・・」
モルダーのその瞳が、悲しみに包まれる。
「もう行くよ、モルダー・・・。こんな事になって残念だ。・・・・今度また飲みで
も行こう」
「ああ・・・・ありがとう。ハーレイ」
ハーレイはそのままモルダーの肩を軽く叩いて、歩いて行った。
「モルダー!」
小包を見つめ続けて微動だにしないモルダーの肩を、スカリーが強く揺すった。
「えっ、あっ・・・すまない、行こうか」
その瞳は、さっきスカリーに見せたどこか悲しそうな瞳と同じ物だった。
けれどまたさっきのように、笑顔を作ってスカリーに向ける。もちろん、それに気が
つかない彼女じゃない。でも、そんな顔をされると、何も言えなくなってしまう。
そのまま二人はスキナーのオフィスに向かって歩き出した。
秘書を通して、ノックをかけるのと同時にスキナーのオフィスのドアを開ける。
「おはようモルダー、スカリー」
「おはようございます」
二人はほぼ同時にあいさつし、スキナーに促されて目の前のイスに腰をかけた。
「朝早くから急な呼び出しですまない」
「いえ、何かあったんですか?」
言いにくそうに口を濁らすスキナーに、モルダーがいつもどうり話しかける。
「実は先日から君が願い出ていた休暇届けだが、昨日許可が下りた。明日から一週間
休むといい」
「休暇届け?」
聞き返してきたのはスカリーだ。驚いたようにモルダーを見つめている。
「何んだ・・・?言ってなかったのか、モルダー?」
スカリーの以外な言葉に、スキナーもモルダーに目をやる。
「休暇願いが受理されてから、言おうと思ったんだよ、スカリー。それにたかが一週
間だから、大した事ないだろう?僕だってたまには休みたいのさ、ゆっくりと。それ
に君なら僕がいなくてもりっぱに留守を努めてくれると信じているからね」
「モルダー、あなた・・・・」
何かを言おうとしたが、スカリーは途中で口を閉じた。
モルダーはスカリーとは目を合わせずに、スキナーに顔を向けなおす。
「それだけのために、お呼びになったんですか?もしそうなら、僕はこれで・・・
・」
「いや、待ってくれ」
立ち上がったモルダーを、スキナーが手で制した。
「実は君休暇だが、許可するに当たって一つだけ条件がある」
「・・・・休みを取るのに、条件ですか・・・・」
変な事を言われる前に、さっさと部屋を出ていこうとしたモルダーは、苦笑する。
ただ休暇が許可されただけなら、そう、わざわざ自分をオフィスにまで呼んだりはし
ないだろう。しかも、スカリーも一緒に。
「何んですか・・・・?」
「実はシカゴに行ってもらいたい。スカリー君、君も一緒に」
「私もですか?」
スカリーが訝しげに聞き返す。
「夕べ、シカゴのセントラル・レールにあるFBIアカデミーから連絡があって、教官
が二人飛行機の事故で亡くなったらしい。ただでさえ、教員数が少なくて困っている
らしく、そこで私に電話をしてきた。あそこのアカデーの理事長とは古い友人でな。
代わりものが見つかる一週間でいいから、誰か代理で教官をしてくれないかと・・・
・。一人は医学を心得ている者で、もう一人は心理学専攻の人物がいいらしい。どう
だ?君達にピッタリと思わないか?」
「ち、ちょっと待って下さい。副長官!そんな人物なら他にもいっぱいこの局内には
いるでしょう!どうして僕ら何ですか?しかも、僕は休暇願いなんですよ!?」
「モルダーの言う通りです。事件でも無いのに、本来の自分の業務をおいて、教官な
んて出来ません。それに、何もFBIの人間じゃ無くても大学の人間でいいはずです」
モルダーとスカリーは一気に反論に出たが、スキナーの表情は一行に変わらない。
「そうか・・・ならしょうがないが、休暇願いは取り下げて、正式に辞令をだすとし
よう」
「・・・・職権乱用ですよ。そこまでする意味があるんですか?」
モルダーがあきれたような目でスキナーを見る。
「あるのだよ。個人的な頼みで無理なら命令を下すしかない。なぜなら、向こうが君
たちを指名して来たのだからな」
「指名・・・・?」
モルダーは不思議そうに聞き返した。
「そうだ・・・君の事は確か・・・・」
スキナーは手元のメモをめくる
「ジョシュア・バーバリーと言う人物からだ」
「ジョシュア!?・・・副長官、本当に彼からだったんですか!?」
モルダーはいきおいよく立ち上がった。
「あ、ああ・・・・確かにその名の人物だ。それに、君に自分の名を言ってもらえれ
ば分かるとも言っていたぞ」
「・・・今日の仕事が終わり次第すぐにシカゴに行きます。休暇でも、何んでもかま
いません準備備が出来しだい、明日でもたちます。じゃあ、スカリー」
「モルダー!?ちょっと・・・!!」
スカリーにもスキナーにも目もくれず、モルダーは急いでオフィスから出ていった。

「一体どうしたんだ・・・」
走り去って行ったモルダーの後ろ姿を唖然としたまま見つめていたスキナーは、スカ
リーを向き直った。彼女は眉間にしわを寄せたまま、黙って座っている。
「私は、そんな名の人物は知りません。一体誰が?」
「君は・・・・」
プルルルルー・・・・。言いかけて、スキナーのデスクの電話が鳴った。
彼はスカリーにちょっと待ってくれと、と指で合図してから受話器をとる。
「はい、スキナー・・・・・ああっ、はい、はい・・・そうです、話していた所で
す。そうだ、今隣にいるので変わりましょう」
そう言って、スキナーが受話器をスカリーに向ける。彼女は急な事に一瞬とまどいの
表情を見せたが、すぐに受話器を受け取った。
「はい、変わりました。スカリーです」
ため息まじりに出た電話だったが・・・・。
「・・・・ダナ・・?」
その声を聞いて、驚いたように大きく瞳を開く。そしてスカリーは小さくただ一言つ
ぶやいた。
「・・・・先生・・・・」


PM:7'00
モルダーは今日の仕事を終えるなり、急いでアパートに戻って荷造りを始めた。
明日の朝一でたてるようにと、鞄の中に服や着替えを適当に詰めこみ、荷物をドアに
近くに置く。
脇目もふらず黙々用意するその手は、コートを脱ごうとして、はっ、となって止まっ
た。コートのポケットに、朝ハーリイーから受け取った小さな黄色い小包がはいって
いたからだ。
箱を裏返して、送り主の名を見る。急いで書いたのだろうか、それとも書く時間がな
かったのだろうか、そこには乱雑な文字で"D"とだけ書かれていた。
けれど、モルダーにはそれだけで十分だった。その文字を指でそっとなぞってみる・
・・・愛しそうに・・・・。
そのまま小包を破ろうとした瞬間、部屋の扉がノックされた。
三度だけ、規則正しく扉をノックしている。こんな風に扉を叩くのは・・・・。
「今、行く!」
訪問者に声をかけ、モルダーはカウチから立ち上がった。
箱を開けるタイミングを逃がしてしまった彼は、扉をあける前に近くに置いておいた
着替えの入った鞄に、小包を詰め込んだ。
そして、ゆっくりと部屋の扉を開ける。
「・・・・・やぁ・・・どうしたんだい?」
そこに立っているのは予想どうり、小柄な赤毛のパートナーだった。
「少しいい?」
家に帰らずそのままきたのだろうか・・・。彼女の服装は朝見たままだ。
「どうぞ」
モルダーはスカリーの手を引き寄せるように部屋に促した。
「スキナーから聞いたよ。君も行く事にしたんだって?」
「ええ。私を指名してきた人は、私がまだメディカル・スクールにいた時、三年間助
手をさせてもらい、医学を教えてくれた恩師なのよ」

「なるほど・・・お互い恩のある人間に頼まれると、断れないな」
「・・・・・・そうね」
それだけを言うと、スカリーはモルダーに背中を向けた。
「スカリー・・・?どうした?」
振り向いた彼女の顔は真剣そのものであり、その瞳からは強い意志のような物が感じ
られた。
「・・・・聞きたい事がってきたのよ」
瞬間、モルダーはスカリーが何を自分に聴きに来たのか、分かった。
「スカリー、休暇のことなら・・・」
目をそらすように、体をそむけたモルダーの腕をスカリーが引き留めた。
「モルダー、どうして私を避けてるの?」
「・・・・!!」
彼女の率直な質問に、心がドキリと波打った。
質問に答える事が出来ずに、ただ黙ってスカリーを見つめ返す。
「黙ってるのは、認めてるからなの?」
口調や表情はおだやかだが、スカリーは自分に何もいいわけも説明もしようとしない
モルダーに、怒りをあらわにしている。
「私、あなたの気にさわる事を何かした?ネクタイの柄が変だとか、先週の報告書が
まだだとかそんな事はいつもいってることでしょ?だったら何に対して怒ってる
の??言ってくれないと、分からないわ・・・・もし、それで何かあなたを傷つけた
のだとしたら、ちゃんと謝るから。だけど、こんな風に理由も分からず避けらるなん
て・・・・・・・・・・」
そのままスカリーは言葉を続けずに、下を向いてしまった。
「違う・・・・君のせいじゃないんだ・・・・」
消え入るような声でそれだけを口にする。
確かにここ最近、スカリーを避けていた。目を合わすこと事もなければ、オフィスで
話すことさえせず、帰る時間も残業だと言ってわざわざずらした。
彼女も気づいていたんだろう。だけど、何も言わなかった。
でも、そうじゃない。何も聞けなかっただけなんだ・・・・・・。
そして悩んだすえに、自分に直接聞きにきた。そこにどんな答えが待っていても、理
解し、受け入れるために・・・・。
スカリーをこんな行動に走らせてしまったはモルダーは、どれだけ己の身勝手さで彼
女を傷つけてしまったのか、その重い罪を感じた。だけど、今は彼女を抱きしめてや
れない。
「すまない・・・スカリー・・・・だけど、決して君の責じゃないんだ。これは、僕
の・・・そう、僕の問題なんだ」
「あなたの?」
「ああ」
「モルダー・・・一体どうしたの?力になるから、何でも話して。それとも、話せな
い事なの?」
スカリーがモルダーの手を握りしめた。
「今はまだ・・・・時間が欲しい。でも、シカゴから帰ってきたら、きちんと話すよ
・・・時間をくれ、スカリー・・・」
モルダーの真剣なその瞳に、スカリーはまだ彼が自分自身の悩みに答えが出ていない
事を感じた。
「分かったわ」
小さなため息とともに、彼女は二、三度頷いてみせる。
「・・・・・君のその、理解の深さにはいつも感謝してる」
「だけど、いつも理解があるわけじゃないのよ」
「分かってる・・・・二度としない。すまなかった・・・・・」
握られた手を握りかえしながら、モルダーが囁いた。その顔は、まるで怒られる事を
覚悟してる子供のようだ。
「・・・・・・・じゃ、また明日ね」
困ったような微笑みを見せて、スカリーは静かに部屋から出ていった。
彼女を一度もまともに見ることが出来ずに、モルダーはただ、心の中で"すまない"と
繰り返していた・・・・。

次の日、もう二人はいつもどうりに戻っていた。
少なくとも、モルダーはそうしていた。ここ最近の自分の態度を反省して・・・・。

スカリーも何も言わずいつもどうりに振る舞っていた。彼女は約束どうりシカゴから
戻るまで、自分を避けていたモルダーのその行為を、彼に問いただす気は無かった。

"時間が欲しい"・・・あんな風に辛そうな表情をされて言われたら、何も聞けなく
なってしまう。でも、スカリーはシカゴから戻ったら必ず話すと言うモルダーの言葉
を信じて、何も聞かなかった。
「ねぇ、モルダー。あなたを指名してきた人ジョシュア・バーバリーってどんな人な
の?」
「えっ?」
不意に話しかけられて、モルダーが驚いたようにスカリーを見る。
二人は今、シカゴにあるセントラル・レールFBIアカデミーの中を歩いていた。
正確には、理事長室に案内されているのだが・・・。
「言ってたじゃない?恩のある人間に頼まれると断れないって・・・」
「ああっ、ジョシュアは僕の古い友達なんだ。彼には昔色々と助けてもらって・・・
もう、何年も会ってなかったんだけど、その彼が今回初めて僕に頼みごとなんかして
きたんだよ。だから何にかえても協力しなくちゃいけないと思ったのさ」
モルダーの瞳は懐かしさに満ちている。よほど彼の事を好きなのだろう、ワシントン
にいた時の顔に比べると、全然違う。
ふいにスカリーは、モルダーにこんな顔をさせる人物に興味がわいた。
「あなたが人のことをそんな風に話すなんてめずらしいわね、どんな人なのか会って
みたわ」
「・・・本気かい?スカリー」
モルダーが、はしゃいだような声で聞き返して来た。
「ええ」
「じゃあ紹介するよ!本当にいい奴なんだ、いつか君にも会わせたいと思ったしね。
きっと君も気に入ってくれると思う!」
そう言って、無邪気な少年のような笑顔を向ける。
そんな笑顔を初めて見たスカリーは、まじまじと彼を見つめた。この七年、一緒に
パートナーを組んできて、彼が初めてみせた顔。それは、スカリーが仕事以外で見た
ことのない、もう一人のモルダーだった。
「君ももちろん、紹介してくれるんだろう?」
「えっ?」
話しかけられて我に返ったスカリーは、改めて彼を見た。そこには、もういつもと同
じ表情のモルダーが、こっちを見ている。
「君の恩師に、だよ」
「ええ、あなたが会いたいなら・・・・」
「なら、楽しみだ」
二人の会話が終わるの同時に、長い回廊を抜けて、理事長室へとたどり着いた。

理事長とあいさつをすますと、秘書が簡単に仕事内容を説明し、二人を別々の専用部
屋に案内した。スカリーは医学部の方に、モルダーは心理学部の方へと。そんな離れ
ている距離ではない。
案内された部屋に一歩足を踏みこんで、モルダーは目を丸くした。
「ここを、僕に?」
「ええ、一番日当たりのいい部屋を用意するように言われてましたので、お気に召し
ませんでした?」
「まさか・・・・」
あまりのりっぱな作りに、言葉も出てこない。なんせワシントンにある自分のオフィ
スよりきれいで広いのだから、何より窓もある。
"きっと、スカリーも同じ事を思ってるだろうな・・・・"
モルダーはおかしくなって微笑んだ。
「バーバリー博士からの伝言で、学会が終わりしだい連絡するとの事です」
「そう・・・色々とありがとう」
「いえ、でわこれで失礼します」
出ていく秘書にモルダーは軽く手を振ってから、コートの中の携帯を取り出した。
二、三度目かのコールで、相手が携帯にでる。
「はい、スカリー」
「やぁ、僕だ。部屋を見たかい?驚いて声も出ないよ」
「まったく同感よ。なんせ、窓があるもの」
自分の想像どうりの事をスカリーに言われて、モルダーは思わず吹き出してしまっ
た。
「何?」
「いや、君ならそういうと思ったよ。所で、すぐ講義に行くのかい?」
「いえ、まず話していた恩師にあいさつをしようと思って」
「へぇ・・・・・」
呟くような声に、スカリーは小さく微笑んだ。
「もし、あなたがすぐ講義に行かないなら、紹介するからこっちに来てくれる?」
「すぐ行くよ」
返事を待たずにモルダーは携帯を切って置くと、部屋から出ていった。
しかし、医学部が下の階にあるとは聞いていたが、スカリー部屋の場所を聞いていな
かったため、モルダーは格部屋のプレートを、一つ一つ見ながら探し回るはめになっ
た。
やっとスカリーの部屋を見つけた時には、部屋の中から楽しそうな笑い声が聞こえき
た。
少し開いている扉の向こうから、スカリーの笑顔が見える。
すぐに、モルダーは彼女が話しているが恩師だと分かった。よほど懐かしいのだろ
う、彼女が滅多に見せない笑顔を向けている。
声をかけようか悩んだ末、モルダーは部屋をノックした。
「はい、あら遅かったわね」
スカリーは上機嫌でモルダーをむかい入れる。
「ちょっと迷ったのさ」
肩をすくめてみせて、モルダーは部屋に入った。
部屋の奥には、白衣を着た人物が書類に目を通している。
「リノ、紹介するわ」
スカリーの声に書類を見ていた手が止まり、こっちを振り向いた。
「はじめま・・・・」
振り向いた相手を見て、モルダーの顔から笑顔が消えた。
息が出来ないような感覚に囚われ、凍り付いたように動けないでいるモルダーは、た
だ黙って目の前に立っている"彼女"を見つめた。
「・・・モルダー・・・?」
呟くように、目の前の女性が声をかけてくる。
輝く金髪に、見事な空色のアイス・ブルー・・・・いつも思いでの中で微笑んでいた
その人。
遠い昔・・・そう、ただ一人だと信じた相手・・・・。
「・・・・・・・ジュリア・・・」
消えるよな声で、モルダーは目の前に立っている美しい女性にその名を囁いた・・・・。
そして、12年ぶりに再会した彼女への思いの深さにモルダーは言葉も無く、懐かし
い過去へと歩きはじめて行くのだった・・・・。

                                    続く

======================================

ってな感じで前半終わります(^^;)こんなに時間かけてこんなもんかい!とか思われ
るかもしれませんが、一生懸命やらして頂いたので、よろしくお願いします〜<(_ _)>
これから内容的にはちょっとスカリーが傷ついて行くかも・・・(汗)一応、この中
でシーズン7って事になってます。まだサマンサを見つける前ですね。なんとか、そ
れともリンクして繋げて行きますので、応援の方お願いしますm(_ _)mm(_ _)m


_____________________________________________

<<Catの一言>>
続き待ってましたよぉぉ。前回のお話を頂いてから、とっても楽しみにしておりました。
今回の展開いいですねぇぇ。シカゴでのモルスカ活躍とジュリアとモルがどうなるのか、かなりわくわくしております(笑)
ところで、窓があるのセリフ、かなりツボです(笑)

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