過去からの贈り物〜追憶 1986年 別れ〜
AUTHOR 涼夜


本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。

「過去からの贈り物〜追憶 1988年 別れ〜」
NAME 涼夜

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離れていた間に見えた自分の心。
彼女との再会は、答えを出すのには十分な時間だった。
苦い一度目の別れから、切ない喜びに満ちた再会。

もうニ度々、離れない....。

あれから一年。
モルダーはFBIアカデミーで、ジュリアはメディカル・スクールに、お互いを取り
巻く環境は違ったが二人は再会してから幸せな日々を過ごしていた。
離れていた間の長い時間が、モルダーの心にジュリアの存在を深く刻み付け、なぜ彼
女が離れたのか、その意味を受け止めた。
自分の心の傷と向かい合い、それを克服すると決めた彼の心にもう迷いは無かった。
モルダ−との六年ぶりの再会に、ジュリアは彼の心の迷いが消えた事を感じ、今度は
素直にその胸の中に飛び込んだ。
「.....愛してるよ、今も.....」
その言葉にジュリアは、離れていた時間にモルダ−が自分自信の心の傷と向かい、想
いが本物になったのだと言う事を悟った。
「私も....」
包み込まれた腕の中で、彼女は声にならない思いを言葉にした。
互いの想いに自信が持てた二人を隔てる物はもう何もなく、約束した"いつか"の再会
を果たして二人は前よりも強い絆で結ばれた。

1987年−冬−
「お帰りなさい」
「....ただいま」
部屋に帰ったモルダ−は、いつもどうり優しい声で迎えられた。
食卓のテーブルにはもう夕飯の準備が出来ており、食欲をそそるその香りと自分の
コートを脱がしてくれる最愛の人の笑顔が、モルダ−の疲れた心を癒していた。
「...どうしたの?」
長い付き合いのジュリアには、モルダ−のかすかな異変を見逃す事は無かった。
「ん....今回も、収穫が無かったんだ。良かったのか、悪かったのか....」

そう言ってモルダーは力なさげに微笑んだ。
二ヶ月前から調査されていた20代女性を狙った連続殺人事件。
犯人は逮捕され、亡くなった被害者達の身元が今日判明した。
「今回はそうかと思ったんだけど、またふりだしだよ」
「モルダ−....」
「でも、ほっとしてるんだ...」
そのまま瞳を伏せたモルダ−の手を、ジュリアが優しく包み込んだ。
そう、妹のサマンサが行方不明になってもう十数年。生きていれば今頃二十代の女性
である。
モルダ−はこの事件にサマンサが巻き込まれているのではないかと捜査中、心配と不
安に駆られていた。
でも、彼がこんな思いになるのは今回に限った事では無かった。
「モルダ−...サマンサは生きてる、絶対に。あなたに会える日をきっと待ってる
わ。あなたが探して出してくれるのを....」
「本当に、そう思う...?」
「あたりまえでしょう」
「うん...そうだね、きっと」
「ええ」
ジュリアは優しく微笑むと、モルダ−をそっと抱き締めた。
「君がいてくれて良かった...本当に」
一人では耐えきれないこの辛さも悲しみも、彼女がいるだけで乗り切れた。
「....お疲れさま」
いつも望んだ言葉をジュリアは欲しい時に自然と与え、それだけでモルダ−の心を満
した。
そしてジュリアも、モルダ−がサマンサを失った事にいつも激しい責任を背負ってい
るのを分かっていたので、彼が傷付いた時や諦めそうになった時は側にいて励まし
た。
「愛してるよ」
「私も愛してるわ」
おどけて悪戯っぽい微笑みを浮かべるジュリアに、モルダ−は自然と笑みがこぼれ
た。
「じゃ、あそこに並んでいるおいそうな料理を食べてまた明日から頑張るよ」
「自信作なんだから、期待してくれていいわよ」
そう言ってキッチンに歩いていくジュリアの後ろ姿を、モルダ−は優しい瞳で見つめ
た。
側にいて自分の心を癒してくれる大切な存在。そして諦め切れない信念。
この二つがあるからこそ、モルダ−は自分は自分を見失いそうなった時、いつも逃げ
ずに前を見つめ続けてこれたのだった。
一日の始まりは彼女の笑顔で始まり、その日は自分の仕事で一日が終わる。
毎日がそんな事の繰り返しだった。
回りから"変人"と言う異名をとってもジュリアだけは何も変わらず、むしろ笑ってい
た。
昔はこの事で彼女から距離をとって離れたが、今はそんな事は考えられなかった。

"あなたに言った事を覚えてる?自分の信念をいつまでも貫いて欲しいって。だから
回りは関係ない、そうでしょ?"
優しくて強い彼女の告白。それだけで自分の道を突き進めた。
自分の人生にとって何よりも大切な二つで一つの存在。
しかし、どちらかを失う事など考えられなかったモルダーにとって、苦渋の選択を迫
られる日が来た。
"信念"か"愛情"
それでも分かっていたのかもしれない。
心のどこかで....。
理解し、支えていける存在。そこに"愛情"がなければ、それは永遠に続くだろう。

「モルダー、私よ、分かる?」
「.....ジュリア?」
「気がついた?」
「ここ....」
目の前には白い天井、体に繋がれたチューブの数々。そして自分を心配して覗き込む
彼女の少し青白い顔。
それはここ一年で何度も繰り返されている光景だった。
「心配したんだから....」
そしてまた、彼女の瞳が涙で濡れる。
これで何回目だろう。彼女を泣かしてしまうのは....。
「ごめん....」
ただ一言、誤る事しか出来ないけれど。
どんなに心配をかけても命がけで危険に飛び込んでも、それでも彼女の愛情は変わら
なかった。
優しくて暖かく、最後はいつも受け入れ、笑顔で許してくれた。
「愛してるよ....」
この気持ちは決して嘘では無い。
でも、優しく微笑み自分に笑ってくれる顔の裏で、何度君を泣かしたんだろう。

真実に近付けば近付くほど、彼女を傷つけていった。
運命を切り分けるのはほんの一瞬だ。
置いてはいけない。でも、連れてもいけない。明日が分からないこの環境に。
ただ、待っていて欲しかった。
いつでも帰れる場所として....。


1988年−秋−
季節外れの雨が降る日、ドアを開けた僕は荷物をまとめた君を見て、この甘い日々に
終わりが来た事を知った。
彼女は多くを語らなかった。
何があったのか、誰に何を言われたのか....。
でもそこには、どこかで予感していた答えがあった。
激しい痛みが心の中を駆け巡った瞬間、"あの頃"と同じ想いが鮮明に蘇る。
"あの頃"追いかける事を許されなかった僕は、何も出来なかった。
だからこそ、二度と同じ過ちを繰り返さないために、僕は君を追いかけた。
最後の望みをかけて....。
降りしきる雨の中で、静かに君の頬を滴が伝う。
僕には分からなかった。
それが雨なのか、それとも涙なのか・・・。
『さよなら・・・』消え入るような声で囁いて、君は切なく微笑むと僕の元を去っ
た。
雨の下で、一度も振り返らずに歩いて行く迷いないその後ろ姿を、僕はただ、黙って
見送った。
"あの頃"とは違い人を愛する意味を知ってしまった僕は、後悔すると分かってもいて
も、彼女を引き止められなかった。
今でも君の言葉が頭から離れない。

『見つけてね・・・いつか、自分より大切だと想える人を・・・・・」

僕のために、君はその言葉を残して歩いて行った。
それでも幸せだった。君と過ごした時間を思い出すたびに、心が自然と優しくなれ
た。
かけがいのない想いを僕にくれた女性。溢れるほどの温もりで包んでくれた人。

いつか、見つけられるだろうか・・・君以上の人を・・・・。


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....ああ、完結まじかになってきた。
今の所、ほとんどモルとジュリ、揺れるスカの心境って感じですが、後一つ後編を書
き上がげたら
次はシリーズものですな。まっ、続編って形になるんやけど....。
さてさて、では後編書き上げますか(^〜^)/




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<<Catの一言>>
ジュリアとモルのお話深いですねぇぇ。二人の心情が伝わってきましたわ♪この後はスカちゃんとモルの心情を中心に描いてもらいたいです♪

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