70000リクエスト】

色々な人総出演

 2人にとっての思い出の場所巡りツアープラス2人の出会いのきっかけとなった、椿姫のチケット争奪に関するエピソード(横浜の海に飛び込んだエピソードの披露など)

 最後はプロポーズ

 その他は作者であるCatさんにお任せ


マ−ブルチョコ様より




Sweet Recollections−1−〜







「マヤさん?」
そう声をかけられ、マヤはハッとした。
「えっ?」
目の前の亜弓を見る。
「どうしたの?さっきから何か考え事?」
朝からずっと上の空のマヤを亜弓は心配するように見つめる。
「・・・う・・ん・・・その・・・新しいお芝居の事を・・・ちょっとね」
歯切れ悪く答え、マヤはテ−ブルの上のアイスコ−ヒーに視線を落とした。
落ち着かぬようにストローでグラスの中の氷を回す。
「どんなお芝居をなさるの?」
亜弓は紅茶を一口啜り、彼女の瞳を見つめた。
「・・・片思いの役」
呟き、マヤはため息をついた。
今回の芝居の役がどうしても自分と重なってしまう部分があり、マヤには苦しかった。
亜弓はマヤの一言で何かを察した。
「・・・私のやる役は年上の男性に強く惹かれるんだけど、その男性は決して振り向いてはくれないの」
口にしながら、マヤの中に速水の姿が浮かぶ。
紅天女の上演権を手にした日、彼は紫の薔薇の人だと言う事を告げてくれた。
その瞬間も思わず好きだと告げそうになったが、結婚を間近に控えた彼には何も告げられなかった。
「・・・そういえば、速水さん婚約を解消したそうね」
亜弓が何となく口にした一言に氷を回す手を止める。
「あまりも突然な事だったから驚いたけど・・・。今日速水さんに会ったらさっぱりとした表情をしていたわ。
きっと、他に想う人でもいたのかしら」
亜弓は意味深げにマヤを見つめた。
”他に想う人”
その一言にマヤの胸が熱くなる。
「さて、そろそろ、私は行くわ」
亜弓はにっこりと微笑み、席を立った。
「今日は久々にマヤさんに会えて良かったわ」
二人はコ−ヒ−シヨップを出ると、店の前で別れた。
マヤは一人歩きながら、速水の言葉を思い出した。

「・・・婚約は解消する事にしたんだ」
紅天女の上演権の事で彼のオフィスを訪れた時、別れ際に彼はそう言った。
「えっ?」
驚いたように聞き返すと、真っ直ぐな瞳が彼女を捉えていた。
「まだいろいろとそれに関してやるべき事がうあるけど・・・、少し俺を待っていてくれないか?」
その言葉の意味をマヤは計りかねた。
一体なぜ、速水は自分に待っていて欲しいなどと告げたのか。

今にも降り出しそうな空を見つめ、マヤは小さくため息をついた。





鷹宮紫織との婚約を解消してから、三ヶ月が過ぎていた。
今回の結婚に関連して行われていた鷹通と大都での共同事業の処理に速水は追われていた。
全ては自分が蒔いた種だと割り切ってはいたが連日の激務に少し疲れを感じた。
自分のオフィスに戻ると、水城に誰もいれないようにと頼み、彼は30分程、休憩をする事にした。
応接セットのソファに体を横たえ、目を閉じる。
瞼を閉じると、マヤの姿が浮かんできた。
もう、一月近く、彼女とは会っていない。
何だか、急に恋しくなってきた。
今の仕事が一段落ついたら、彼女を迎えに行こうと心に決めていた。
今度こそ、好きだと告げるつもりだった。

彼が婚約を解消した理由は、試演で見た彼女の紅天女だった。
一真への気持ちを告げながら、客席の彼に何度となく注がれた一途な瞳に、彼はようやく彼女と自分が同じ想いだったという事に気づいた。
その瞬間、体中が震え、もう自分の気持ちは誤魔化しきれない事を知った。

紫織は婚約解消の彼の言葉に最初は戸惑っていたが、誠意ある彼の言葉に承諾してくれた。
彼女は最後は笑顔で彼に”さよなら”を告げた。
今、偶然パーティなどで顔を合わせても笑って挨拶が交わされるようになっていた。

マヤに対しては「待っていて欲しい」とだけしか告げなかった。
はたして彼女はこの言葉の意味を理解してくれたのか?
紅天女に関連して、会う事があっても二人の関係は何も変わっていないような気がする。
ついつい、彼女のする事に相変わらず口を挟みからかってしまう。
真面目な話をしようと思っても、長年の習慣か、そういう雰囲気になっても違う事を口にして、
彼女に「ゲジゲジ」だの「嫌味虫」などと言われてしまうのだ。

「まぁ、いいか。時間はあるしな」
最後に彼女と会った時の事を思い出し、顔中を膨らませて怒る姿に思わず笑みが浮かぶ。
「何がいいんですの?」
彼が口にした一言に誰かが答える。
「えっ」
目を開けると、彼の頭上に水城の顔があった。
「・・・もう、30分経ったのか?」
速水は横になったまま口にした。
「いえ、マヤさんがこの時間に社長とのお約束があったといらしていたので」
その言葉に腕時計を見つめると、午後3時を過ぎていた。
そういえば、今週はマヤと来期の紅天女について話す事になっていた。
あまりの忙しさにその事を予定として水城に伝えるのを忘れていた。
「・・・そうか。そう言えばそうだったな。今週だと思っていたが、今日だった事を忘れていたようだ。
すぐに彼女を通してくれ。それと、濃いコ−ヒーを頼む。彼女にはミルクティ−だ」
そう口にし、ソファから起き上がる。
「かしこまりました。あっ、そうそうこの後に入っている四菱銀行白川副頭取との面会の予定、
先ほど先方から後日にして欲しいというご連絡を頂きました。なので、5時から始まる会議まで
社長の体は空いていますわ」
そう告げると、水城は退室し、すぐにマヤが入ってきた。
彼女の姿を見た瞬間、呼吸が止まりそうなる。
一月ぶりに見る彼女はまた一段と美しくなっている気がする。

「・・・どうも、お久しぶりです」
戸惑いがちに彼女が口を開く。
「・・あぁ。ちびちゃん」
視線を彼女に向けたまま応える。
マヤは何だか速水にじっと顔を見つめられている気がして、落ち着かなかった。
「・・・あの、速水さん・・・私の顔に何かついています?」
「えっ・・・あっ、いや」
久々に見る彼女に胸の中がどきまぎとし、らしくもなく歯切れが悪くなる。
「あら、マヤちゃん、立っていないで座ったら。社長、いつまでマヤちゃんを立たせたままなんですか」
速水に言われたものを手に戻ってきた水城は戸口で立ったままのマヤを見て、呆れたように口にした。
「あっ・・・そうだな。すまない。少しぼんやりとしていたもので。ちびちゃん、掛けてくれ」
速水にそう言われ、マヤはおどおどと間に一人ぶんあけて、彼の隣に座る。
「では、ごゆっくりと」
速水の前に紅天女に関する書類とコ−ヒ−、マヤの前にミルクティ−を置くと、水城は社長室を後にした。
二人きりになり、マヤは何だか落ち着かない気持ちになった。
隣の速水を見る事もできず、出されたティ−カップを見つめながら、彼の話を聞く。
速水は事務的に来期の公演予定を話しながら、彼女の様子が何だかよそよそしい事に気づいた。
「・・・ちびちゃん?」
彼女から何の反応もない事についに、話しを止め、声をかける。
その瞬間、彼女はビクッと肩を震わせた。
「どうした?何だか緊張しているように見えるが・・・」
速水の言葉の通り、彼女は緊張していた。いつもは劇場や、稽古場で他に人のいる中で会っていたが、
今日は久しぶりに彼と二人きりなので、心臓がトギドキと速度を上げて鼓動を打ち出してしまったのだ。
顔中が火照り、もう彼の顔を見る事ができない。
「・・・いぇ・・・あの・・・久しぶりに速水さんに会ったので・・・」
もじもじと俯いたまま彼女が答える。
何だかその仕草が可愛いくて、速水はいつもの笑いを浮かべた。
突然の速水の大きな笑い声に驚いて彼を見る。
「酷い!速水さん!そんなに笑わなくても・・・」
と、口にした瞬間、彼の髪にある寝癖が視界に入る。
それが何だか普段の速水のイメ−ジと大きくギャップがあり、マヤも笑い出した。
「・・・うん?何だ?」
可笑しそうに笑う彼女に笑みを止める。
「・・・速水さん・・・寝癖ついてますよ。右側に」
彼女の言葉にさっき横になっていた時のままだった事を思い出す。
「あぁ。。。ちょっと横になっていたんでな」
少し乱れた髪を直すように、髪に触れる。
「・・・お忙しそうですね」
笑いを止め、彼の方を見る。少し彼は痩せたように見えた。
「・・・紅天女の公演は速水さんがおっしゃったようにして下さい。私、興行の事とかよくわからないし。それに速水さんを信じていますから」
笑ったせいか、緊張が幾分解け、そんな言葉がすらすらと彼女の口から出る。
”信じる”彼女が口にしたその一言に速水は嬉しくなる。
「・・・ありがとう」
この上なく優しそうな笑みを彼女に向ける。
その笑顔にマヤは再び動悸が早くなるのを感じた。
「私、そろそろ行きます。速水さん疲れているみたいだし」
まだ会ってから20分も経たぬうちに彼女が席を立とうとする。
速水はその瞬間、彼女の膝の上に頭をのせた。
「えっ」
驚き膝の上の彼を見る。
「・・・そう。君の言う通り少し疲れているんだ。俺の事を少しでも気遣ってくれるなら、少しこのままでいさせてくれ」
そう告げると、速水は瞳を閉じた。
「・・・あの・・・速水さん・・・」
マヤはどうしていいのかわからず、今にも心臓が飛び出してしまいそうだ。
「君は言っただろう?俺が紫の薔薇の人だと告げた時、あなたに恩を返したいって。それが今だ。
少しだけ君に甘えさせてくれ」
彼は再び瞳を開けると、クスリと柔らかい笑顔を浮かべた。
「・・・えっ・・・はい」
視線と視線が合い、思わず返事をしてしまう。
彼は彼女の言葉に安心ししたようにまた瞳を閉じた。
それから、5分、すっ−と彼の静かな寝息が聞こえてくる。
マヤはじっと彼の顔を見つめた。長い睫に細く通った鼻筋、形の良い唇。
こうして見ると、彼は彫刻のように整った綺麗な顔をしている。
穏やかな寝顔を浮かべる彼に愛おしさが募る。
気づくと、マヤは柔らかな彼の髪にそっと触れ、愛おしむように撫でていた。

そして・・・。

「・・・好き・・・」
小さく告げる。
その瞬間、彼の瞳が彼女を捕らえる。
彼と視線が合い、体中が熱くなる。
「・・・あの・・・その・・・」
思わず口にしてしまった言葉を誤魔化そうと口を開くが、何も浮かばない。
速水は慌てふためく彼女に優しい笑みを浮かべた。
「・・・俺もだ」
彼の言葉に心臓が止まりそうになる。
「えっ」
「・・・俺も君が好きだ・・・」
今まで口にできなかった言葉をハッキリと告げる。
マヤは思わぬ言葉に驚き、涙ぐみそうになる。
速水は手を伸ばし、頬に流れる彼女の涙を拭った。
「君が好きだ」
もう一度告げ、彼女に腕を伸ばすと、静かに唇を重ねた。

その日から、二人は思いを通わせ、恋人という関係を築き始めた。


つづく












【後書き】
お待たせ致しました。70000キリリクようやく書き始めました。
今回はプロポ−ズという事で、まずは気持ちが通じるまでの二人をプロロ−グ的に書いてみました。
次回からは恋人同士の二人をマ−ブルチョコ様のリクエストにそって書いていこうと思います♪
基本的には甘い二人を書いていくつもりです♪ふふふ。そして、思い出絡めさせて頂きます(ニヤリ)


2002.6.8.
Cat



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