Sweet Recollections−2−〜






「・・・すまない」
電話越しの声が申し訳なさそうに響く。
マヤは小さくため息をついた。
「・・・いいの。気にしないで。速水さんが忙しいのはわかっているつもりだもの」
彼を心配させないように務めて明るい声で振舞う。
今夜は久しぶりに彼と夕食をとる予定だった。
待ち合わせのレストランで待つ事、一時間。
ウェイタ−が彼女の名前を呼んだ。
彼女を待っていたのは速水からの電話だった。
デ−トをすっぽかされるのはこれで5度目。
気づけば、もう一月以上、彼の顔をまともに見ていない。

付き合い始めて、三ヶ月、その間に彼女が彼と会えたのは片手の指程だ。
彼が誰よりも忙しい事は知っているが・・・、やはり寂しくて仕方がない。
本当に彼は自分の事を好きなんだろうか?ついつい、そんな事まで考えてしまう。
「・・・マヤ?」
黙ったままの彼女に電話越しの彼が不安そうに声をかける。
「あっ、はい」
ハッとし、余計な考えから、意識を戻す。
「もう、いいんです。謝らないで。私なら大丈夫だから」
そう呟いた瞬間、指先に塗られたピンクのマニュキュアが目に入った。
今日は速水に会えると思って、ネイルア−トの店で仕上げたものだった。
彼のためにしてきたお洒落が全て無駄になる。
何だか泣きたい気持ちになってくる。
「・・・速水さん、お仕事頑張って下さいね。じゃあ」
涙をこらえながら、そう言い、彼女の方から電話を切った。





「・・・社長?」
速水はそう呼ばれてから、数十秒後やっと気付く。
「えっ・・・あぁ。そうだな。姫川亜弓を使う事に異存はない」
会議に出ていたものは、彼の答えに”?”を浮かべる。
何か不味い事を言ったかと、隣に座る重役を見る。
「社長、その案件については、もう話し合いは終わっています。今はこの案件についてご意見を聞いているのです」
専務の田所はそっと、速水に耳打ちをする。
速水は方眉を上げ、差し出された資料を見た。
「裁量は君たちに任せる」
軽く咳払いをし、そう告げると今日の会議は終了となった。


「・・・心ここにあらずですわね」
「えっ」
社長室でぼんやり、デスクに向かっていると、そんな声がした。
「・・・今日はマヤさんとお約束だったんでしょう?」
水城の言葉に少し驚いたような表情を向ける。
「今日、マヤさんに会ったんです。彼女、久しぶりに社長に会えるって嬉しそうに話していましたわ。
きっと社長のために精一杯お洒落して待っていたんでしょうね」
水城は皮肉たっぷりに速水を見た。
「・・・仕方ないだろう。急に会議が入ってしまったんだ」
そう口にしてみるが、何だか後ろめたい。
「会議はもう終わりましたよ」
意味深に告げ、水城は速水の前にコ−ヒ−を置いた。








「・・・マヤちゃん?」
速水からの電話を切った後、席に戻ると声をかけられる。
「あっ!」
声のした方を見ると、懐かしい顔があった。
「里美さん!!」
もう随分と彼には会っていなかった。
「久しぶりだね」
昔と変わらぬ優しい笑顔を彼は向けた。
「・・・誰かと待ち合わせかい?」
彼女の前の空席を見つめる。
「・・・うん。でも、すっぽかされちゃった」
苦笑を浮かべ、マヤは速水が座るばずだった席を見つめた。
「・・・そうか。だったら、今夜は僕に付き合ってくれないか?」
彼女の横顔があまりにも寂しそうだったので、ついつい、そんな事を口にしてしまう。
「実は僕も人を待っていたんだけど、どうやらすっぽかされたみたいだ」
彼女と同じように苦笑を浮かべる。
マヤは目の前の彼を見つめ、迷わずその誘いに乗る事にした。



「・・・そうなの。あいつ、全然人の事わかっていないのよ!」
里美が連れてきた場所は庶民的な居酒屋だった。
マヤは次々と日本酒を空け、一時間もしないうちに完全に酔っ払いとかしていた。
「ねぇ、里美さん、聞いてる!」
普段の大人しい人格からすっかりと変わってしまった彼女を驚いたように里美は見つめていた。
「あぁ。聞いてる。聞いてる」
「今日で5回目なのよ!すっぽかされたのは。今週こそは会えると思って、新しい服買って、靴買って、美容院に行って・・・。
なのに、なのに・・・」
そこまで呟き、マヤは目の前のコップを見つめた。
「・・・私が想うよりも、あの人は私の事想ってくれてないのかな」
今にも泣きそうな表情を浮かべる。
「・・・里美さん、私ってそんなに魅力ない?かわいくない?」
じっと里美を見つめる。
彼女と視線と視線が合い里美はドキッとした。
酒に酔い潤んだ大きな瞳は心をかき乱すには十分な程、艶やかだった。
「・・・私って、そんなに子供っぽい?・・・」
里美を見つめたまま不安そうに言葉を続ける。
「・・・マヤちゃん、今日、あのレストンラで一時間ぐらい待っていたんでしょう?」
彼女から視線を外し、里美はポツリと呟いた。
「えっ?・・・うん。そうだけど。どうして知ってるの?」
「・・・僕、実はマヤちゃんがレストランに入って来た時、帰ろうとしたんだ。でも、君の姿を見かけて・・・。
帰れなくなった」
真っ直ぐに視線を向ける。
「・・・えっ・・・」
さっきまでとは違う真剣な瞳に、胸の奥がざわつく。
「君は女性として十分魅力的だよ。この僕を帰れなくしたんだからね」
クスリと笑い、今度は優しい瞳で彼女を見つめる。
「・・・里美さん・・・」
見つめたままの視線を外す事ができなかった。
しかし・・・突然、胃の奥から何かがこみ上げてくる。
「・・・気持ち悪い・・・」
青白い顔を浮かべ、そう呟く。
「えっ・・・大丈夫!」
里美は慌ててマヤをトイレに連れて行った。




腕時計を見ると、もう午前0時を過ぎていた。
速水はかれこれ30分以上もマヤのマンションの前に佇んでいる。
「・・・遅い・・・一体、どこに行っているんだ」
当然いるはずの彼女の姿がなく、落ち着かない気持ちになっていた。
秒針が進む毎に不安と苛立ちが募る。
水城に言われ、いてもたったもいられなくなり、彼女の部屋の前に来てからずっと不安な気持ちのままだった。
不吉な想像がさっきから頭の中を回る。
ここで帰りを待つべきか、探しに行くべきか迷うが、彼に彼女の行く先なんてわかるはずはなかった。
待つ事がこんなにも苦痛な事だったなんて知らなかった。
いつも、マヤはこんな気持ちで自分を待っているのだろうか。
そう思うと、本当に自分が酷い事をしていたのだと反省させられる。
彼女が好きなら、仕事なんて放り出すべきだったのだ。
長年、思いに思い続けていた彼女がようやく自分の方を向いてくれた。
それはもう、奇跡に近い。
ずっと、憎まれ続け、嫌いと言われ続け・・・やっと、好きだと言ってもらえたのに。
「・・・馬鹿だな・・・俺は・・・」
自分の行動にほとほと呆れ返る。
もう、ため息しか出てこなかった。





「・・・里美さん、ごめんね。いろいろと迷惑かけちゃって・・・」
タクシ−の後部座席に里美と一緒に座りながら、呟く。
「・・・楽しかったよ。久しぶりにマヤちゃんと会えて」
クスリと笑いマヤを見下ろす。
「・・・私、何か里美さんには甘えてばかりだな。久しぶりに会ったのに。飲みすぎたり、タクシ−で家まで送らせたりして」
すまなそうに里美を見る。
「・・・気にするな。僕とマヤちゃんの仲だろ」
何となく彼が口にしたその一言に、二人の中に付き合っていた頃の記憶が蘇る。
マヤにとって彼は文字通り初恋の人だった。
芝居以外に初めて胸の時めく人だった。
一緒にいる事がとても楽しくて、いつも素直に笑っていられた。
それなのに、今はどうだろ?
同じ恋なのに、速水と会えない事が辛くて仕方がない。
本当は一時も速水とは離れていたくはない。
どうして速水の事を好きになってしまったんだろう。もっと、近くにいる人を好きにならなかったのだろう。
「・・・私、里美さんと付き合っていた頃は楽しくて、笑っていられたなぁぁ。なのに、今は何だか泣いてばかり。
会えない事がこんなに辛いとは思わなかった。毎日でもあの人に会いたくて、会いたくて仕方がないの。
でも、嫌われたくないから、何も言う事ができなくて・・・。あの人はやっぱり、私にとっては遠い人で、
私が想うよりも、想ってはくれなくて・・・何だか、片思いをしていた頃よりも、今の方がずっと辛い・・・」
思わず涙ぐみそうになる。
「・・・ごめんなさい。私、一人で何言っているんだろ」
一人で話していた事に気づき、慌てて里美を見る。
「・・・本当の恋に出逢ったんだね」
里美は少し胸の中が妬ける気がした。
「えっ」
「僕と付き合っていた時はそこまで思ってくれなかっただろ?今の恋の方がずっと重い・・・そうだろ?」
里美の言葉にマヤは何て答えればいいかわからなかった。
「・・・ごめんなさい。私・・・」
「いいんだ。謝らなくて。妬けるけどね」
おどけたように言いマヤを見る。
「昔の恋人として、一つ忠告。少し我がままになれよ。5回もすっぽかされたんだ。
無理な事言ったってバチは当たらないよ」





「・・・速水さん・・・」
そう声をかけられ、顔を上げると、タクシ−から降りてきたマヤがいた。
速水の前を通り過ぎたタクシ−の中には男の影が見えた。
胸が苦しくなる。
「こんな時間まで、どこに行っていたんだ」
彼女に会ったら今夜の事を真っ先に謝るつもりだったのに、全く違う言葉を口にしていた。
「・・・もう、午前1時だぞ。こんな事が週刊誌にでも書かれたどうする?」
嫉妬心と苛立ちが責めるような口調にさせてしまう。
「・・・週刊誌?速水さんはそっちの方が心配なんですね」
約束をすっぽかされた挙句、いきなり、彼に説教され、ムカムカっとした気持ちが胸を占める。
「私がどうしようと、自分で責任はとります。速水さんには関係ない事です」
まだ酒が残っているせいか、強気な言葉を口にしてしまう。
「・・・そうはいかない。君は今は大都芸能のものだ。商品に傷をつける訳にはいかない」
マヤに関係ないと言われ、つい、カッとしてしまい、いつもの口癖を言ってしまう。
速水は自分の言葉にハッとし、しまったと思ったが、もう遅かった。
「・・・商品?そうですか。あなたにとって、私の価値ってそんなものなんですね。わかりました」
彼女の瞳に涙が浮かぶ。
「だったら、商品に手を出さないで下さい!私の事何とも思っていないなら、ハッキリ言って下さい。
無理に私に合わせる事ありませんから」
頬には涙が零れ落ちる。
「馬鹿みたい。私、一人舞い上がって・・・。あなたは私の事、商品としてしか見ていないのに」
彼女の声は涙で震えていた。
「・・・マヤ・・・」
目の前の彼女に言葉を失ってしまう。
「・・・さよなら・・・」
そう告げ、彼に背を向ける。
その瞬間、速水は彼女に走り寄り、背中を抱きしめた。
「・・・行かないでくれ・・・。何とも思っていないなんて悲しい事言わないでくれ。
君の事を商品だなんて思った事は一度もない。そう言わないと自分に歯止めがきかなくなるから・・・気持ちを抑えられないから・・・。
だから、口にしていて・・・。俺はずっと前から君が好きだ。君だけを見ていたんだ。だから・・・行かないでくれ」
精一杯の言葉を口にする。
「・・・君に会いたい気持ちが抑えられなくて、会議が終わってから、ここで待っていた。
その間、ずっとずっと不安だった。いつも待っていてくれている君がいないから。すまない。待つ事がこんなに不安だなんて知らなかった。
もう、これからは何があっても君を優先させるから・・・だから、”さよなら”なんて言わないでくれ」
マヤは何も言わず彼の言葉を聞いていた。
その事が速水を不安にさせる。

「・・・私、今日、里美さんと一緒だったんです」

ようやく口にした彼女の言葉に心臓が固まる。
「里美さんとお酒を飲んで・・・それから・・・」
意味深げに言葉を止めると、振り向き彼を見つめる。
「・・・速水さん、少しは妬いてくれますか?」
彼を試すように見る。
次の瞬間、彼女の唇が塞がれる。
突然のキスにマヤは瞳を見開く。
それはいつものそっと唇と唇を合わせるだけのものとは違った。
息もできぬぼと、深く唇を合わせ、逃れようと抵抗しても彼は離してはくれなかった。
頭の奥が真っ白になる。もう、立ってはいられない。
体を全て彼に預け、成すがまま、されるがままにするしかできなかった。

「・・・妬ける。君が俺以外の男の名前を口にしただけで俺は気が狂いそうになる」

唇を離した彼は、いつもとは違う瞳で彼女を見つめていた。
とても熱く、刺すような瞳にマヤは体中が震えた。
「・・・酒を飲んで・・それから、どうした?里美とはこんな事をしたのか!」
責めるように、彼女の首筋に唇を這わせる。
別人のような彼に怖くなる。
「・・・やめて・・・。速水さん・・・やめて・・・」
苦しそうに何度もそう口にするが、彼はやめなかった。
「・・・やめて・・・里美さんとは何でもないです。ただお酒を飲んだだけです」
予想以上の彼の行動にマヤはぼ−っとしそうな意識を集中させ、何とか口にした。
「・・・本当か?」
ようやく唇を離し、じっと彼女の瞳を見つめる。
「・・・本当です。何もありません。ただ、速水さんの反応がみたかっただけです。
本当に速水さんが私の事好きなのか知りたかったんです」
マヤの言葉に速水はほっとしたように彼女を解放した。その瞬間、体中から力を奪われた彼女が倒れそうになる。
「おっと!」
慌てて、彼女を支えるように抱きしめる。
「・・・すまない」
クスリと笑い、顔中を真っ赤に染めている彼女を見る。
彼女は彼と視線を合わせると更に真っ赤になった。
それが可愛いくて、可笑しくて、いつもの笑い声をあげる。
「もう、誰がこんなにしたと思っているんですか!」
可笑しそうに笑っている彼に責めるような視線を向ける。
「はははは。俺だな。最後まで責任をとるべきか?」
「・・・もう、速水さんなんて・・・大嫌い!」
恥ずかしさを誤魔化すようにいつものセリフを口にすると、スルリと速水の腕から抜ける。
マンションの前に駆け、ドアの前で立ち止まった。
「・・・上がっていきますか?」
チラリと彼の方を向き、恥ずかしそうに口にする。
「あっ、でも、あの・・・変な意味で言ったんじゃないですよ」
ベットに誘っているような自分の言葉にマヤは慌てて弁解しようとする。
「あの、速水さんとはあまり会えないから、久しぶり会えたから、このまま別れたくなくて。いろいろお話ししたくて・・だから・・その・・・」
慌てふためく彼女に更に愛しさを感じる。
「・・・そうだな。コ−ヒ−でも淹れてもらおうか。俺もいろいろと君と話したい事があるしな」
優しい笑みを浮かべ、彼は彼女の隣に立った。


その夜、二人は離れていた時間を埋めるように一晩中、いろいろな話をしていた。
それは、仕事の事だったり、舞台の事だったり、昔の事だったりなどだ。
二人とも一緒にいる事がとても自然に思え、幸福だった。
「・・・それでね。黒沼先生ったら・・・」
そう言い、ふと、隣の彼を見ると、いつの間にかソファに凭れかかり、眠ってしまったようだった。
「・・・速水さん?」
声をかけてみるが、起きる気配はなく、すっかりと熟睡しているように見えた。
マヤが時計を見ると、もう、午前5時近くになろうとしていた。
「・・・お仕事で疲れているんですよね」
速水の肩に寄りかかり、目を閉じる。
「・・・速水さん、覚えていますか?いつかもこうして一緒に朝まで過ごしましたね。あの梅の谷で・・・」
梅の谷で一晩中過ごしていた事を思い出し、あの頃の気持ちを思い出す。
「・・・私、あの時、初めて速水さんの事を好きだったって気付いたんです。だから、一時でも長くあなたといられて幸せだった。
一晩中、私を抱きしめてくれるあなたを感じる事ができて・・・嬉しかった」
そこまで、一人呟くと、眠っているはずの彼の腕が彼女に触れ、あっという間に彼女を抱きしめた。
マヤは驚いたように瞳を開ける。
「俺はあの夜限りで君を諦めようと思っていた。だから、君に触れている間は苦しかった。胸が痛かった・・・」
眠っていたはずの彼は思いの篭った瞳で彼女を捕らえていた。
「そして、君と離れた後、君の残り香に、君の温もりに恋しさが募った」
二人がけのソフアの上に彼は彼女を押し倒した。
速水の下になり、ドキッとする。
「・・・気が狂ってしまう程・・・君が愛おしくて仕方がなかった。その気持ちは今も変わらない」
そう告げ、彼女の胸に顔を埋める。
「・・・速水さん・・・」
彼の言葉に彼女の中にも愛しいと思う気持ちが溢れる。
マヤは彼の背中に腕を回し、彼を抱きしめた。

暫く、二人はそのまま抱き合い、互いの鼓動に耳を済ませていた。
「・・・知っているか。昔、君と里美が付き合っていた時、どんなに俺が里美に嫉妬していたか」
何かを思い出すように、速水は口にした。
「えっ」
その言葉に驚いたように、速水を見る。
「その頃から、俺は君の事が好きだったんだ」
彼女の胸から顔をあげ、優しい瞳で見つめる。
「・・・そろそろ帰るよ。このまま紳士でいられる自信がないからな」
ソファから起き上がり、苦笑を浮かべる。
マヤもゆっくりと、起き上がり、隣の彼を見る。
「・・・速水さん、覚えていますか?私が里美さんの親衛隊に襲われた時の事。速水さんは助けてくれて、私の顔をハンカチで拭いてくれた。
その時、何だか胸の中がドキドキしていたんです。里美さんと付き合っていたのに」
照れたような表情を彼に向ける。
「・・・他にも沢山、ドキドキした事ありました。初めてあなたと大都劇場ですれ違った時から、ずっと、あなたに会う度に胸の中がドキドキしていた。
でも、子供だったから、その気持ちがわからなかった。それに、速水さんいつも人の事からかうんだもの。
だから、絶対、こいつに時めいているなんて認めるもんか!と、思ってさんざん、速水さんには嫌な態度とってきましたけどね」
速水は大きく瞳を見開き、信じられないというように聞いていた。
「ははははは。俺だけがずっと君を好きなんだと思っていたが・・・、どうやらずっとすれ違っていたんだな」
「みたいですね」
甘えるように彼の肩に寄りかかる。
「でも、良かった。すれ違ったままにならなくて・・・」
「あぁ。本当にそうだな」
微笑み、彼女に視線を向ける。
「・・・さて、じゃあ、ちびちゃん、またな。ちゃんと眠れよ」
マヤの頬にキスを落とすと、速水は今度こそ、彼女の部屋を出た。

「・・ちびちゃんか・・・」
久しぶりにそう呼ばれ、懐かしさを感じる。
マヤは朝までの僅かな時間、速水の夢を見た。
夢の中で、彼にちびちゃんと言われ、いつものようにからかわれ、頬を膨らませて・・・。
でも、とても幸せだった。


















つづく












【後書き】
すみません。まだリクエストの本題に入ってません(苦笑)次からは思い出巡りツア−の予定です(笑)
まぁ、今回はそんな事の前振りという訳で(笑)色々な人総出演。できるのでしょうか(笑)
後、一、二話でこのお話は終わらせる予定です。それまでに何人出せるのだろう(笑)

2002.6.15.

【お詫び】
週一アップの予定が、サ−バのメンテナンスが重なったため、遅くなってしまいました。
お待ち下さった方、本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m
次回からは・・多分(←弱気 笑)週一アップできると思います。

ここまでお付き合い下さりありがとうございました♪

2002.6.18.
Cat




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