朝早くから、耳障りな目覚まし時計が響き起きる時間を告げた。 マヤは気だるそうにゆっくりと体を起こした。 ぼんやりした頭を起こすように、ベットの上で一つ伸びをする。 閉じられたカーテンの奥から、柔らかい日差しが差し込んでくる。 外からはスズメの泣く声が聞こえる。 今日は特別な日。 今日私は結婚するの。 誰よりも愛した人と・・・・。 軽い朝食を取っていると、アパートの前で止まる聞き慣れた車の、 あの人の車の音がした。 それから程なく、玄関のインターフォンが鳴った。 誰かなんて確かめなくても分かる。 高鳴る胸の喜びを早く伝えたくて、慌てて玄関のドアを開ける。 「おはよう、マヤ。よく眠れたかい?」 彼は、笑って話し掛けた。 そして、私を引き寄せて額に軽く唇を寄せる。 「私ね、とっても幸せなの。」 真澄にコーヒーを出しながらマヤは言った。 マヤの顔は眩しい程の笑顔に包まれていた。 しばらく真澄はマヤに見とれていたが、 「マヤ、それは俺のセリフだ。」 少しだけムッとしたように言った。 二人の間に優しい風が吹き抜ける。 言葉なんてもういらないのかもしれない。 こうして、お互い同じ気持ちでいるのだから。 運命に導かれるかのような出会いとすれ違いを経て 今、二人は確かにここにいる。 季節が巡ってゆくのと同じように、変わっていったもの そして変わらなかったものがある。 真澄は腕時計をちらっと覗いて言った。 「そろそろ、行こうか。奥様。」 「まだ、早いわよ。」 気の早い彼の言葉に、照れくさくなり、頬に熱を感じる。 本当はすごく嬉しくなって、涙が一粒零れた。 「泣くのもまだ、早いんじゃないか?」 からかうような口調も彼の優しさ。 だって、すぐに手が伸びてきて涙を攫ってくれる。 そのままぎゅっと抱きしめられる。 「マヤ、ありがとう。君に出会えて俺は幸せだ。 これからもよろしくな。」 真澄は耳元で囁いた。 「ううん。私の方こそ、ありがとうございました。 結婚するんだからもう少し優しくして下さいね。」 本音をちょっとだけ意地悪な言葉で包み込む。 「いつだって優しくしてるじゃないか?」 面白くなさそうに真澄が反発する。 不意に視線が交錯する。 彼女の瞳に引き寄せられるように 気の早い誓いのキスを送った。 早朝の高速道路を一台の車が疾走する。 長年の想いと愛しい人を乗せて。 FIN |
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【Catの一言】
翠さん、ご馳走様です♪今回も甘い内容でとっても好きです♪何だか結婚式当日の二人が浮かんできました♪
月刊ガラカメ終了にジレンマを感じていたCatにはとっても効きました(笑)