届かぬ想い




              愛している・・・。愛している・・・。愛している・・・・。
                  
                  心に浮かぶのはこの言葉だけ・・・。
                  彼女の舞台を初めて目にした日から俺の心は彼女に捕まってしまった。
                  40度の熱をだしながら、最後まで演じたあの子の熱い魂を目にして、
                  初めて送った紫の薔薇の花束・・・。
                  今まで誰かのファンになどなる事はなかった。
                  そして、誰かに心惹かれる事など・・・なかった。
                  気づけば頭の先からつま先まで彼女の事を愛していた。
                  冷める事のない俺のただ一度の恋・・・。

                  マヤ、もし君が俺の心を知ったら、君はどうする?
                  君はやはり俺を拒絶するのだろうか・・・。
                  君の母親を殺したこの俺を・・・。





                  速水さん、あなたを愛しています。。。
                  もし、そう言ったら、あなたはどうしますか?
                  きっと、笑って、本気にしてはくれないでしょうね。。。
                  あなたにとって、私はまだ子供・・・。
                  そして、私はずっとあなたに嫌われるような事ばかりを言っていた。
                  最初はあなたの優しさがわからなかった。
                  海のように、深く、私を包むあなたの想いに私は気づかなかった。
                  ただ、ただ、あなたを拒んでいた・・・。
                  本当のあなたを見ようともせずに・・・。
                  あなたから、送られた紫の薔薇の花束。。。
                  私を励まし、元気づけてくれた。

                  速水さん、あなたが好きです・・・。
                  誰よりも・・・。

                  でも、あなたの隣には、もう別の人がいる。
                  私にもう少し、勇気があったら・・・。
                  私がもっと綺麗なら・・・。
                  あなたに相応しい容姿と家柄に生まれていたのなら・・・。

                  時々、こんな事を考えてしまいます。 
                  わかっています。
                  私はあなたに相応しくないと・・・。
                  あなたは舞台の上の私にしか興味がないこともわかっています。




                  もし、俺にもう少し勇気があったら君は振り向いてくれただろうか?
                  11歳年下の君・・・。
                  君は見事紅天女の舞台の上で少女から大人へと変貌した。
                  君に恋するやつは星の数ほどいるだろう。
                  そして、俺もそんな星の数の中の一人・・・。
                  到底、届くことのない俺の君への気持ち・・・。

                  だから、婚約した。
                  全ての感情を押し殺して、仕事の為に、大都の為に・・・。
                  そして、君を忘れる為に・・・。
                  もし許されるなら、俺はずっと影から君に紫の薔薇を送り続けられればいい・・・。
                  俺と君とのただ一つの絆・・・。
                  だから、俺は言わない・・・。
                  自分が紫の薔薇の人とは・・・。
                  たった一つの君との繋がりを手放したくはないから・・・。

                  でも、もう潮時なのかもしれない・・・。
                  大女優になった君にはもう紫の薔薇は必要ない・・・。
                  俺の助けなどもういらない・・・。

                  だから、終わりにしよう・・・。
                  この俺の手で・・・。





                  ”さようなら”

                  紫の薔薇に添えられたメッセ−ジカ−ド・・・。 
                  何がなんだかわからなく、涙が溢れ出た。
                  もう、あなたは私に興味がないの???
                  私とあなたを結ぶただ一つの絆・・・。
                  涙が、涙が・・・とめどなく流れ出す。

                  お願いよ・・・。
                  私の手を放さないで・・・。
                  紫の薔薇があったから、あなたが支えてくれたから、私は舞台の上に立つ事ができた。
                  どんなに辛くても、悲しくても・・・あなたが紫の薔薇を送ってくれたから、私は乗り越えられた。
                  あなたが別の女性と婚約しても耐える事ができた。

                  速水さん・・・。
                  あなたが恋しいです。
                  今すぐ、この花束とカ−ドを持って、あなたの気持ちを聞きに行きたい。
                  そして、この想いを告げられたら・・・。




                  さようなら、マヤ・・・。
                  君の成長を見守る事ができて、俺は幸せだった。
                  一舞台ごとに女優として、君は輝きを増していった。
                  そんな、君を見ているのが大好きだった。

                  でも、もう君だけを見ている事はできない。
                  大都芸能の速水真澄と生きていく俺には許されない行為。
                  すまない・・・。マヤ・・・。
                  もう、君に紫の薔薇は送れない・・・。
                  君への想いを生涯心の奥底に封じ込めて俺は生きていかなければならない。
                  君のためにも・・・。
                  俺のためにも・・・。
                  そうするのが一番いいんだ。

                  さようなら、最愛の人・・・。


                  「速水さん!!」

                  突然、誰かに呼ばれて、俺は意識を現実に戻した。
                  そこには涙を瞳いっぱいに溜めた彼女が立っていた。

                  「・・・マヤ・・・」
                  彼女は涙に震えながら、紫の薔薇の花束を抱えていた。
                  何がなんだかわからず、頭が真っ白になる。

                  「・・・どうした?」
                  心を落ち着けるように、煙草を吸い、ようやく、その一言が口をついた。
                  「・・・このカ−ドと一緒に紫の薔薇が届いていたんです」
                  彼女はそう言い、俺に”さようなら”と書かれたカ−ドを渡した。
                  「・・・これが・・・何か?」
                  全ての感情を心から引き離し、何でもない事のように彼女を見た。
                  「・・・どう思いますか?」
                  彼女は涙を拭い、俺を見つめた。
                  「・・・どうって・・・これは、つまり、君との訣別を意味しているのではないか」
                  自分で口にした言葉に胸から血が出た気がした。
                  「・・・これは・・・紫の薔薇の人の本心なんでしょうか?」
                  「・・・それは・・・」
                  マヤの瞳から俺は意識的に視線を逸らした。




                  「・・・なぜ、俺に聞く?」
                  私に背を向け、彼はそう告げた。

                  「・・・あなたが・・・」

                  あなたが紫の薔薇の人だから・・・。

                  残り少ない理性のかけらを集めて、私は言葉を飲み込んだ。
                  「・・マ・・ヤ?」
                  私の言葉にふり向き、不思議そうに見つめる。
                  「速水さんなら、紫の薔薇の人の真意がわかるかな・・・と思って」
                  心に仮面を被せ、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべてみせた。
                  「すみません。突然。何でもないんです」
                  そう言い、彼に背を向けて、ドアに向かった。

                  「・・・なぜ、俺が紫の薔薇の人の真意がわかると思った?」
                  ドアノブに触れた時、突き刺さるような声で彼はそう言った。
                  涙が溢れ出す・・・。
                  心に被せている仮面が外れそうになる。

                  「・・・マヤ・・・なぜだ?」
                  何も言わず扉の方を向いている私に近づき、彼が再度問い詰める。

                  ”あなたが紫の薔薇の人だから・・・。”
                  心の中で告げた言葉を再び心の中で呟いた。

                  「・・・マヤ・・・なぜ?」
                  何も言わない私に痺れを切らしたように、彼は私の肩を掴み、彼の方に向けさせた。
                  彼の顔が歪んで見える。
                  「・・・なぜ、泣く?」
                  驚いたように、彼は私を見つめていた。
                  理性が感情に押し流されそうになる。





                  彼女は何も言わずに泣いていた。
                  抱きしめてしまいたい・・・。
                  このまま何もかも忘れて、彼女を、マヤを、どこかにさらってしまいたい。
                  そんな衝動に俺の心は揺れ動いていた。

                  「・・・なんでもないんです・・・なんでも・・・」
                  彼女は首を大きく左右に振り、そう告げた。
                  「マ・・・ヤ・・・」
                  たまらなく、彼女が愛しく見える。
                  なんでもないはずがない・・・。
                  こんなに辛そうに泣く彼女を見たのは二度目だった。
                  俺は、なんという事をしてしまったのだろうか・・・。
                  きっと、泣かせているのは俺のせい・・・。
                  紫の薔薇のせい・・・。
                  俺は一体、今まで幾度彼女を傷つけたのだろうか・・・。
                  自分が許せなくなる。

                  「・・・速水さん・・・」
                  驚いたように彼女が俺の名を告げ、紫の薔薇の花束を落とした。
                  気づけば、俺は彼女を抱きしめていた。
                  彼女の甘い髪の匂いと、思ってた以上に華奢な身体にドキっとした。
                  彼女を抱きしめたのは初めてではないのに・・・。





                  速水さんの大きな胸と逞しい腕に包まれて、身体中の鼓動が早くなる。

                  なぜ、私を抱きしめてくれるんですか?
                  あなたにとって私はただの女優・・・。
                  決して恋の相手にはなれない・・・。

                  紫の薔薇の人に見捨てられた私を同情してくれるの?

                  「・・・すまない・・・」
                  搾り出すような掠れた声で彼はそう言った。
                  そして、私を抱きしめる腕にさらに、力が入る。
                  彼の鼓動が伝わってくる。
                  「・・・俺はいつも、君に・・・」
                  その先の言葉は聞こえなかった。
                  何を言おうとしたの?
                  いつも私に・・・何?
                  速水さん、言って下さい・・・。その続きを・・・。

                  私を抱きしめる彼を見つめ、心の中で必死に訴えた。

                  「・・・速水・・・さん・・・」
                  そう呟いた瞬間、ゆっくりと彼の唇が私の唇を塞いでいた。
                  甘く、切ない口付け・・・。




                  気づけば、俺はマヤの唇を奪っていた。
                  とても柔らかい彼女の唇の感触・・・。
                  彼女が俺のキスに答え、たどたどしく返してくる。
                  彼女の腕が俺の首に絡まる。
                  全身を突き抜ける甘い感触に、何も考えられなくなる。
                  深くなる口付けに、身も心も奪はれていた。








                                                           〜2〜へ


            後書き
            次はマヤと真澄の濡れ場を書きます(嘘)
            何だか久々にガラかめ熱に襲われて書いてしまいました。2,3年ぶりのガラかめficです(笑)
            ちゃんと完結するように頑張ります。

            では、次回のガラかめficでお会いしましょう♪


                                                              2001.8.3.
                                                                                Cat


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