ミラクルカレ−
AUTHOR 井上トロ





「さて、っと・・・。できた!」
久しぶりに公演も休みでまとまった時間ができたので、久しぶりに今日はお手伝いさんたちを休ませて朝からマヤはカレーを作っていた。
「さっきのカレールーの配合・・・。大丈夫よね・・・?」
出来立てのカレーが怪しいまでにぶしゅぶしゅと音を立てて、盛り付けられるのを待っている。
真澄と結婚して1ヶ月。
紆余曲折あった2人だがようやく結ばれ、晴れて「速水マヤ」となった彼女は、真澄のためにカレーを作って待っていた。
 
「おかえりなさい!」
「ただいま。いいにおいがするな・・・」
朝約束したとおり、真澄はいつもより早く帰ってきた。
挨拶もそこそこに、マヤにキスしようとしてきた真澄を必死になってなだめつつ、マヤは厨房に戻った。
「うふふ。自信作よ。今日一日かけてルーから作ったんだから」
マヤがワゴンにカレーとサラダを乗せて運んできた。カレーを温めなおしたのだろう、おいしそうに湯気が立っている。
「お父様は今日出かけてしまったし、お手伝いさんたちは今日は休みにしたの。うふふ。2人でのディナーよ」
「おいしそうだね。早速いだだこう」
真澄は優しい笑顔で微笑んでいる。
「あっ、デザートがない・・・。・・・どうしよう・・・」
真澄はマヤに微笑を向けた。
「デザートは君さ。」
「ま、真澄さんっ!」
「さ、いただこう」
マヤの作ったカレーのディナーが始まった
 
一日の出来事を報告しつつ楽しいディナーが進んでいった。
(なんだか、変な味ね。ルーの配合を間違えたのかしら??)
表面上は、真澄も笑っていた。
(何だ、このカレーは??なんだか・・・気が・・・と・・お・く・・・)
真澄がテーブルの上に突っ伏すようにして倒れこんだ。
「!!真澄さん!!」
駆け寄ろうとするマヤの、視界が天井のゆがみを感じた。
「え・・・?」
マヤも崩れるようにしてその場に倒れこんだ。
 
「マヤさん、大丈夫か?マヤさん!!」
遠くで真澄は体を揺さぶられるのを感じた。
(・・・マヤ、だと??)
真澄はがばりと起き上がる。
「おお、マヤさん。びっくりしたぞ。大丈夫か?」
明らかに義父英介は自分のことをマヤと呼んでいる。
「・・・お義父さんこそ大丈夫ですか?」
「??」
真澄は食事中に倒れてしまったことを思い出した。
「!!お義父さんマヤは??」
「何をいっとるのかね?君がマヤさんではないか??真澄はまた気を失ってしまったが・・・」
(何を言っているんだ、この人は)
英介の腕を振り解き、真澄はマヤのもとに駆け寄った。が、そこには・・・
「な・・・?」
仰向けに倒れていた真澄がそこにいる。
「気がついてまた倒れてしまったのだ。だらしのない奴だ。」
混乱する頭を必死に整理させつつ、英介に尋ねる。
「お、お義父さん・・・。か、鏡はどこでしたか・・・?」
「そこにあるぞ」
真澄は恐る恐る鏡を覗き込んだ。するとそこには、顔をこわばらせ、真っ青になった「マヤ」がいた。
それを見るなり、真澄である「マヤ」はまた夢の世界へと旅立った。
 
「う・・・ん・・・」
目を覚ますと心配そうに「真澄」が看病していた。
「!!」
驚いて真澄は飛び起きる。
「ま、真澄さん・・・」
心配そうな「真澄」が声をかける。
「これは一体、どういうことだ?君は・・・マヤ、か?」
「うん。私、マヤよ。昨日カレーを食べたでしょ?その時真澄さんが倒れて、私も気が遠くなって・・・。
 倒れた時に夢を見たの。向こう側で真澄さんも倒れていて、駆け寄って起こそうとしたらお父様に呼ばれて・・・。
 気がついたらこんな風になっていたの」
しなを作って真澄が答える。女の言葉を作って話をする自分は、見ていて気持ちのいいものではない。
「・・・病院に行こう」
真澄が立ち上がる。足元に違和感を感じ、足元を見るとご丁寧にネグリジェを着せられていた。
「私は青いパジャマだったわよ」
呆然とする真澄にマヤはくすくすと笑いつつ答えた。
 
2人は大都芸能の社長室にいた。水城に一連のことを話すがもちろん信じていない。
病院で、健康診断と偽って受けた検査はもちろん異常なしであった。
「真澄様、ふざけるのもいい加減いなさいませ。今日も会議が5本入っているのですよ」
外見は真澄なのだし、自分たちも信じられないのだから水城に信じろというのも無理な話かもしれない。
「マヤ」はため息をつきつつ、煙草に火をつける。
「!!マヤ、ちゃん・・・??」
水城は信じられないといったふうに「マヤ」をみつめる。
慣れた手つきで「マヤ」が煙草に火をつけおいしそうにすっているのだから無理はない。
「ほ、本当・・・でしたのね・・・。でもいったいなぜ??」
昨晩の出来事を全て整理立てて話をする。カレーを食べて倒れたこと、マヤの夢のこと、起きたら中身が入れ替わっていたこと。
「・・・まるで何かのお話のようですわね。でも、事実なのでございましょう??」
先程の「マヤ」の煙草が効いているらしく、ようやく水城は2人の話を信じてくれた。
「ですが、これからどうなさるおつもりです??できる限り時間の調整をいたしますが、朝一の会議だけは、はずせませんわ」
確かに今日の朝一の会議だけは、外せないことは真澄にもわかっていた。だか
らこそ水城に相談しに来たのだ。
まさか「マヤ」が重役会議に出席することはできない。
いつの間にか席をはずしていた水城が社長室に戻ってきた。
「マヤちゃんこれをつけて。真澄様、今日の書類のコピーですわ。真澄様もこれをつけてください」
2人は水城の言う通りにイヤホンとマイクをつけた。
「会議はモニターを通して、この部屋に映るようにいたします。真澄様はこの部屋からマヤ様に指示を出してください。
 マヤ様に会議に出席していだだきます」
「ええっ!?」
「それしかないだろうな・・・」
真澄はマヤに向き合った。
「大丈夫だ、俺が指示を出す。その通りに言えば大丈夫だよ。君は女優なんだから俺の役を演じてくれれば大丈夫さ」
「マヤ」は「真澄」悪戯っぽくウィンクをした。
 
何とか会議を切り抜け、急きょ体調不良との理由で1週間の休みを取った。
出社しないだけで自宅で仕事をすることにしたのである。
「早く治してくださいませね」と笑いをこらえつつ送り出す水城に、感謝しつつも複雑な気持ちで会社を後にする。
車の中で、何とか元に戻る方法を考える。
昨日のカレーが原因なら、もう一回食べれば元に戻るのではないか?との結論に達し、急いで家に帰る。
急いで厨房に向かったが、すべてがきれいに片付いていた。
真澄はあわてて使用人を呼び止めた。
「あら、マヤさま。昨日のカレー、ですか??ああ、少し残っていましたが片付けました」
「なにっ??」
いつもと口調の違うマヤに、不振げな視線を投げつつ下がっていった。
「私、もう一度カレーを作るわ」
白いレースのエプロンをつけた「真澄」がそこに立っていた。
真澄はその体に似合わないレースのエプロンをつけた自分の姿に、気が遠くなりそうだった。
 
3日間カレー漬けだった。
さすがに「真澄」が料理を作るのもおかしい、ということで、2人で厨房に入り浸っていた。
「本の通りに作っておけばよかったなぁ・・・」
マヤは本日何度目かのため息をつく。最初は、すぐに元に戻るだろう、とたかをくくっていた真澄も焦りの色が見えてきた。
そんな時、英介がいささかうんざりした様子でいった。
「マヤさんのカレーもうまいが、もう3日だぞ」
カレーを食べ続ける理由がわからないので当然である。
「真澄、まだ休めるそうだな」
「はい、お義父さん。後3日ほどですが・・・」
「真澄役」に慣れてきたマヤが答える。
「明日、伊豆にでも行ったらどうだ」
真澄の目の色がぱっと変わる。
「そうですね。たまにはゆっくりさせてもらいますよ」
「本当?なら、1泊してきましょう」
ぎこちない口調で「マヤ」が答えた。
「そうだな、そうしてきなさい。いいな、真澄」
「は、はい」
 
「もう休みもないのに・・・。いいの??」
「むこうでもカレーは食べれるさ」
もう、どうとでもなれ、と思っている真澄であった。
 
一応20歳を過ぎて免許を持っていたので、「マヤ」が運転手を勤め、伊豆の別荘に向かった。
着いた早々、さっそくカレーの準備に取り掛かる。
「今日もやっぱりカレーか・・・」
わかってはいたがうんざりしてしまう真澄であった。
ふと、真澄の中の悪戯心がむくむくと頭を持ち上げてきた。
めったにないチャンスに台所のマヤを眺めつつ、計画を立てていった。
 
「どう??」
食後にマヤが聞いてくる。別段変わりはない。
「また失敗か・・・」
がっくりとうなだれるマヤに真澄は微笑みかける。
「一生このままかなぁ??」
「それもいいが、ちょっと困るな」
一向に戻る気配がないため、のんびりとしていたマヤも焦りの色が濃くなっている。
「もう、寝よう。疲れてしまったよ」
反対する理由もなくマヤもうなずいた。
 
「ふわゎゎゎ・・・」
パジャマに身を包んだ「真澄」と「マヤ」がベッドにもぐりこもうとした。
すると真澄はマヤに馬乗りになった。
驚いたマヤに真澄が覆いかぶさる。
「んっ・・・」
なにせ自分とキスをしているのである。変な気分この上ない。
そこに、真澄が自身に手を伸ばしてきた。
「!!」
自分の体だけあって、扱いには慣れている。
今まで感じたことのない快感にマヤは気が遠くなりそうだった。
「あっ・・・」
たまらず声を上げる。
「自分にしていると思うと、変な気分だな」
くすくすと笑いながら、真澄は手と口でマヤを弄んでいく。
「どんな気分だ?」
そっと口に自身を含み、真澄が聞いてくる。
真澄もマヤが感じていることは容易にわかった。
「自分がどうしたらいいか、自分でやってごらん」
マヤの顔が真っ赤になる。
「言わないとやめてしまうぞ」
めったにないシュチュエーションに真澄もマヤも夢中になっていった。
 
今までに感じたことのない快感に2人は夢中だった。
真澄もマヤも何度果てたかわからない。
時間を忘れ、抱き合う。
いつの間にか2人は眠ってしまっていた。
 
「ん・・・真澄、さん?」
うっすらと真澄の意識も戻ってきた。もう昼近くであった。
「コーヒーでいい??」
マヤがベッドから身を起こす。
「ああ、頼む」
ベッドから「マヤ」が立ち上がった。
「マ、ヤ?」
「なぁに?」
真澄の目が一気に覚める。
目の前にマヤがいる。ということは・・・。
「戻ってるぞ!!」
マヤもようやく自分の姿に気がついた。
「あ、ほんとだ!!やった!!」
昨夜の心地よい疲労も忘れ、二人は抱き合った。
 
「昨日のことが・・・よかったのかしら??」
真澄が運転し、マヤが助手席に乗る。昨日と同じなのだが今日は外見と中身が伴っている。
「一種の幽体離脱、ってやつかしら??」
理由をあれこれと考えるマヤ。
そんなマヤをかわいいと思いつつも、真澄は水城に正直にもどった方法を話そうか、真剣に考えていた。
 
end
 
先日送ったリクエストです。自分のPCを整理していたら書きかけがでてきました。リクエストしておいてすみません。m(_ _)m
catさんのほうがきっともっとすばらしいものになったでしょうね。
絡みがうまくかけませんでした・・・。
駄文ですがよろしかったらもらってやってください。
 
井上トロ



Catの一言
きゃゃゃ!!トロさんも面白いです♪♪Catが書くよりも全然いいです♪
笑いと甘さの加減が美味しいですわ♪♪絡みもふふふ・・・。自分の体を弄ぶ真澄様に萌え萌えですわ(笑)

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