DISCLAIMER:The characters and situations ofthe television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
,No copyright infringement is intended.

TITLE:旅立ち
SPOILOR:none
AUTHOR:cat




君と出会ってからもう6年が経つ。
初めて君に会った時、僕は君の事を頭の堅そうな優等生だと思った。
きっとすぐにやめてしまうだろうと思っていた。
しかし、君はやめなかった。今では君は僕にとってかけがえのない存在だ。
きっと君がいなかったら僕はここまで真実に辿り着く事ができなかっただろう。
君の冷静な目がなければ僕はただのスプーキーで終わっていたかもしれない・・・。

そう、君は僕にとって大切な存在。

君と僕は一緒に真実を探求していくかけがえのない相棒。
君と僕は供に悲しみや、喜びを分かちあえる親友。
君と出会えて本当に僕は幸せなんだ。
だから君との関係を大切にしたい。
君が望まないなら、僕もそれ以上の関係は望まない。
だからずっと僕の側にいてほしい。
君は僕にとって大切な、大切な相棒だから・・・。



*****XF課******************


「モルダー、聞いてるの?」
「えっ、何だい、スカリー?」 
「もういいわ、まあとにかく今日は私、帰るわ」
そう言って、君はいつもより早く帰り支度を始めた。
「何かあるのかい?」
僕の問いかけに一瞬間をおいて、君は答えた。
「別に、何もないわ、ただ今日は疲れてて・・・」
今の間は間違いなく何かあるという感じだ。
そういえば、最近の君はどこか元気がなかった・・・。
「そうか・・・、それじゃあよい週末を、スカリー」
僕はあえて詮索しなかった。気にならないといえば嘘になるが、聞いたところで答えてくれるとは思えないし・・・。
何よりも仕事上の相棒でしかない僕に、それ以上聞く権利はないと思ったから、答えないものを無理に聞くことはしなかった。
「ええ、じゃあ月曜に・・・」
スカリーはそう言うと、オフィスを出て行った。


***スカリーの部屋***

あなたは知っているのだろうか?
私があなたに対して持っている気持ちを・・・。
あなたと仕事をするようになって、もう6年以上が経つ。
この6年で、私の中の信念は何度揺れ動いたことか。
この6年で、何度あなたの強い信念に心動かされたことか。
真実を追い求めるあなたの瞳に、どんなにも心奪われそうになったことだろうか。
時には自分の命さえも投げ出して、私を救ってくれたあなた。
そんなあなただから、私はあなたと対等でいたい。
あなたを救える存在でありたい。
あなたを守れる存在でありたい。
あなたは私にとってかけがえのない存在。
だから私たちの今の関係を大切にしたい。
だから私はこの気持ちを隠さなければならない。
心の底に沈めなければならない。
今の私たちの関係を壊すわけにはいかない。
だから決めたわ、心の整理がつくまであなたとの
距離をおくことを・・・。
スカリーは決心が揺らがないうちに電話に手をのばした。


***XF課月曜日***

「おはよう、スカリー」
僕がオフィスに入ると、いつものように君がいた。
「おはよう、モルダー」
「週末はゆっくり休めたかい?」
「まあね、ところであなたに話があるんだけど・・・」
「何だい?」
僕は自分の席につくと、彼女を見た。
今日の彼女の表情は、どこか影があるように思えた。
「その、急なんだけど、私、以前からある国際的な医療
チームから誘われていて・・・その誘いを受ける事に
したの・・・」
「えっ!?」
僕は彼女の言葉に驚いて、目を大きく見開いていた。
「期間はどのくらいなんだい?」
僕がそう言うと、君は僕から目をそらした。
「・・・その、3ヶ月か、1年か、あるいはそれ以上
になるかもしれない・・・」
君の言葉を聞いた時、僕の心臓は止まりそうになった。
「FBIはどうするんだ?」
「・・・さっきスキナーに休職願いを出してきたわ」
そう言った時の君の瞳は、僕が口を挟む余地など、ないというふうに、僕を睨ん
だように見えた。
「・・・X−FILESはどうするんだ?」
僕は最後の抵抗をした。
「最近、自分が見えないの、だから、自分が見えるようになるまでは、X−FI
LESに関わるのはやめたいのよ。私、医師としての自分を見てみたくなったの
・・・ごめんなさい、モルダー、これ以上はうまく言葉にできない。だから・・・」
君の瞳に迷いはなかった。
「そうか、それで何時から行くんだ」
僕には、君を引き留めることなどできなかった。君の瞳が
本気だということを語っていたから・・・。
「とりあえず準備のために、明日から一週間程現地に
行こうと思っているの」
「そうか・・・頑張ってこいよ、スカリー」
僕はなんとか笑顔を作り、身を切られるような思いで、
心の中とは別の事を口にしていた。
「ありがとう、モルダー、頑張ってくるわ」
君は迷いのない瞳で、力強く微笑んだ。



***モルダーの部屋***

その夜は、普段よりもさらに、寝付きが悪かった。
目を閉じると、彼女の、スカリーの姿が浮かび上がって
きて、僕の心をかき乱した。
僕は彼女を止めなかった。力強い光が宿る彼女の瞳が、彼女の決心を、揺るぎな
いものだと語っていたから、僕は何も言えなかった。
それに、これ以上X−FILESに、彼女を縛りつける
理由もなかった。思えば彼女がX−FILESの一番の
被害者かもしれない・・・。僕という人間に関わって
しまったために、彼女は誘拐され、実の姉を殺され、
癌にされ・・・そして、子供の持てない体にされてし
まった。僕は知らないうちに、彼女の女性としての幸せを
奪っていたんだ・・・。これ以上X−FILESに関わって、彼女が不幸になる
のを見たくない。
だから、僕には彼女を引き留める事はできない。
ずっと側にいて欲しいというのは僕の甘えだったんだ。
さよなら、僕の愛しい相棒。
僕はその夜、何度も泣いていた。



***スカリーの部屋***

その夜は寝付けなかった。
目を閉じるとモルダーの事ばかりが浮かんできて、眠る
どころではなかった。
私が医療チームに行くことを話した時、
あなたは私の予想に反して、あっさりと認めてくれた。
それがなんだかショックだった。
あなたにとって私の存在は、私にとっての、あなたの存在
よりも、ずっと小さいのだという事を知った。
この思いの大きさの違いを知って、私の思いは一生あなたには届く事のない思い
だと、あらためて実感させられた。
モルダー、私はもうあなたの所には帰らない。
あなたが私を必要としてくれない限り、私は戻らない。
ーーーー私があなたの側にいていい理由がなければ、
私は、私は・・・。

ドンドンドンドン・・・・。
激しくドアをノックする音がした。
誰が叩いているかはわかっていた。だから、このままベットに入ったまま無視した。
今、彼に会ったら、私はどうしようもなく惨めな女に
なってしまうから・・・。


***XF課***

スカリーのいないオフィスは冷酷な程に殺風景だった。
僕は何の気力もなく、呆然と彼女の使っていた机を眺めていた。
「モルダー捜査官、モルダー!」
僕が彼女のことを考えていると、突然、誰かの声がした。
我に返って部屋を見てみると、彼が僕の前に立っていた。
「スキナー・・・副長官」
「どうした、モルダー、考え事か」
「えっ、その・・・何でもありません。それよりも、
副長官が自ら僕の所に来るとは、何かあったんですか」
「君に聞いておきたいことがあってね」
「何ですか」
「君はX−FILESをどうするつもりだ」
「どうするって、今までどおり、僕は真実を追求
します。これは僕の人生の全てですから」
「そうか・・・、それでは君に新しい相棒を
 つけるとしよう」
「いいえ、僕に相棒は必要ではありません」
「なぜだ?」
「僕の相棒は、スカリーだけですから」
「・・・しかし、スカリーはFBIをやめる気だぞ」
「えっ・・・、休職するだけではないのですか?」
「彼女がさっき私のところに来て、これを出していった」
そう言って、スキナーはスカリーの辞表を僕に渡した。
「そんな、僕は聞いていない・・・」
まるで目の前が真っ暗になったような、喪失感が僕を
襲った。
「結論を出すのは一週間後に彼女が戻ってきてから
ということになっている。それまで君が持っていたまえ」
「副長官、彼女といつ会ったんですか?」
「10分程前だったと思うが・・・」
僕はスキナーのその言葉を聞くと、急いでエントラス
に向かった。

*******

「スカリー!!スカリー!!」
突然、私を呼ぶ声がした。声をした方を振り向くと
血相を変えて、息を切らせている彼がいた。
「モルダー・・・」
彼はゆっくりと私に歩み寄ってきた。
「スカリー、よかった会えて」
ホッとしたような表情で、彼は私を見つめた。
「どうしたの?モルダー」
「君に、言いたいことがあって・・・」
「何?」
私がそう言うと彼は私を抱き締めて、耳元で囁いた。
「戻ってこいよ、必ず、僕のところに戻ってきてくれ、
僕の相棒は君しかいないんだ」
彼の腕にさらに力がこもる。エントラスに
いた人たちの視線は、私とモルダーにあたっていた。
「モルダー、みんな見てるわよ、お願いだから、離して」
私は理性を振り絞って、モルダーから離れようとした。
「君が僕の所に戻ってくると言うまでは、離さない」
「モルダー・・・お願い、離して」
私の中のプライドが『戻る』と言うことを許さなかった。
「やだ」
「モルダー、飛行機の時間に遅れるわ、離して」
「やだ」
「モルダー・・・離して!!!」
私は体中から大声を出した。
彼は私の声に一瞬怯み、腕の力を緩めた。
私はその隙に彼の腕から逃れ、彼を見つめた。
彼の瞳は悲しみに満ちて、どこか正気ではないようだった。
「モルダー、私、行くわ」
私は努めて冷静に言うと、呆然としている彼をおいて
その場から立ち去った。



***モルダーの部屋***

スカリーは僕に『戻る』とは言ってくれなかった。
僕は彼女に見捨てられたのか・・・?
彼女には彼女の人生があるのはわかっている。
このまま彼女がX−FILESから離れた方がいいに
きまっている。彼女が僕から離れるという事はむしろ
喜ばしいことなんだ。だから彼女の新しい門出を
祝福するべきなんだ。理性ではわかっているんだ。
ーーーーしかし、僕は・・・心が狭いんだ。



***ホテルの部屋***

昨日見た、モルダーの悲しみに満ちた表情が、忘れられない。
あんなに苦しそうな表情をした彼を見たのは、初めてだった。
モルダー、あなたは私の事をどう思っているの?
なぜ、そんなに辛そうな顔をするの?
私はあなたにとって、ただの相棒なのに・・・なぜ?
私はどうすればいいの?


***XF課***

スカリーと最後に会った日から、10日が経っていた。
彼女は一週間で戻ると言っていたのに・・・まだ戻って
こなかった。もしかしたらこのまま、彼女とは二度と
会えないのかもしれない。
そんな不吉な考えが、僕を苦しめていた。
「フォックス、顔色悪いわね、大丈夫?」
「えっ、」
我に返ってオフィスを見ると、ダイアナが心配そうに
僕を見ていた。
「ああ、大丈夫だよ、それより今日は何だい?」
スカリーが行ってしまった日から、ダイアナは僕の
ことを心配して、頻繁に僕のところに来ていた。
「ランチでも一緒にどうかな、と思ってきたんだけど」
「そうか、もうそんな時間か・・・悪いけど、今日は
遠慮しとくよ・・・食べる気にならないんだ」
「フォックス、やっぱり何処か調子が悪いんじゃない、
今日はもう帰って休んだら、スキナーには私が言って
おくから・・・」
ダイアナの言う通り、僕は今朝から体調が悪かった。
「ありがとう。それじゃあ君の好意に甘えて、今日は
もう帰るとするよ」
僕は後をダイアナにまかせてオフィスから出た。


***スキナーのオフィス***

「局に来るのが遅くなってしまい、すみませんでした。副長官」
「ああ、それで決めたのかね、スカリー捜査官」
「はい、FBIを辞めることにしました」
そう言った彼女はとても冷静で、迷いなど全然見えなかった。
「そうか、君のような優秀な人材が辞めてしまうのは
残念だ・・・考え直す余地はないのかね」
スキナーはそう言って彼女を見つめた。
「副長官、申し訳ありませんが、もう決めた事なんです」
彼女は真っ直ぐにスキナー見つめて言った。
「・・・そうか、残念だ。それで何時から本格的に
向こうのチームに参加するんだね」
「一週間後からの予定ですが・・・」
「そうか、それじゃあ、それまでに、私が君の辞職を
認めたサインをした、君の辞表を、モルダーに預けてある
から、私の所に持ってきてもらいたい。言っておくがその辞表以外に、
私はサインするつもりはないからな」
「・・・副長官!?」 
驚きの表情を浮かべている、彼女を優しく見つめると、
スキナーは上司というよりも、父親のような優しい表情を
浮かべて言った。
「どうせ、君の事だ、モルダーに会わずに行って
しまうつもりなのだろう?それではあまりに残酷なのでは
ないのか、君にとっても、モルダーにとっても・・・」
「副長官・・・」
スカリーは、まるでスキナーに心を見透かされている
ようだった。
「これが上司としての私が、君にする最後の命令だ、
スカリー捜査官」
「わかりました、副長官」
スカリーはそう言って、スキナーのオフィスを出た。



***XF課***

スカリーが思い切って、XF課のドアを開けるとモルダーの姿はなく、代わりに、
ダイアナがモルダーの席に座っていた。
「あら、スカリー、FBIを辞めたんじゃないの?」
「まだ辞めていないわ、それより、なぜあなたがここにいるの?」
スカリーの言葉を聞くと、ダイアナは意味ありげに微笑んでから、口を開いた。
「だって、私が今のフォックスのパートナーだから、ここは私のオフィスでもあ
るのよ」
ダイアナの言葉を聞いた時、スカリーは何とも言い表すことのできない、敗北感
を味わっていた。
「・・・そう、それであなたのパートナーは何処にいるの?」
「ああ、彼なら事件の捜査のため、今日から一週間程、
ワシントンを出るって言ってたわ」
「えっ、何処にいったの?」
「今朝、突然、電話で一方的に言われただけだから、
何処に行ったのかはわからないわ、ごめんなさい、
力になれなくて。」
ダイアナは申し訳なさそうに言った。
「そう、それじゃあ、モルダーから連絡があったら、
私のところに、電話するように伝えといてくれないかしら」
スカリーは全ての感情を押し殺して、何とか平静さを
装っていた。
「ええ、わかったわ、フォックスに伝えとくわ」
ダイアナは、愛想のよさそうな笑みを浮かべて言った。
スカリーはこれ以上ダイアナと二人きりでいるのが
辛くなり、XF課のオフィスを出た。
「さよなら、元パートナーさん。悪いけどあなたと
フォックスを会わせるわけにはいかないのよ」
ダイアナはスカリーが閉めたドアを見つめながら
そう呟いていた。



***モルダーの部屋***

体が火に焼かれているように熱かった。
目を閉じていると、暗闇の中で、スカリーは僕を
呼んでいた。彼女を追いかけても、追いかけても、
スカリーとの距離は開いていくばかりで、僕は苦しかった。
「モルダー、大丈夫?」
ふいに優しい女性の声がした。
「スカリーか!」
「そうよ、私よ、まあ、凄い熱じゃない」
そう言って彼女の手は優しく、僕の額に触れた。
「スカリー、もう何処にも行かないでくれ、ずっと
僕の側にいてくれ」
僕は意識が混濁する中、うわごとのように言った。
「ええ、あなたから離れたりしないわ、だから行き
ましょう」
彼女の言葉を聞くと、僕は意識を失った。



***スカリーの部屋***

ダイアナにモルダーのことを頼んでから、もう4日が
経つのに、モルダーからの連絡はなかった。
もしかしたら、もう二度と彼には会えないのかもしれ
ない、という思いが私の心の中をかき乱していた。
モルダー、あなたに会いたい・・・。
離れてみてわかったわ、私がどれほどまでにあなたに惹かれているかということ
が・・・。
あなたから離れようとしたのは、間違いだったのかも
しれない。
でも、もう決めてしまったことを変えることはできない。
モルダー、私たちはこれで二度と会えない、運命なのかもしれない・・・。

*********

「モルダー、助けて!!モルダー!!」
スカリーが僕を呼んでいる。
「スカリー、どこだ!!スカリー!!」
僕は必死で暗闇の中を走りまわっていた。
「モルダー!!モルダー!!」
必死で叫ぶ彼女の声は聞こえるが、あたりは暗闇で
何も見えなかった。
「スカリー!!スカリー!!!」
僕は、焦り、恐怖、絶望、喪失などの感情が渦巻くなか、
必死で理性にしがみつきながら、スカリーを探した。
すると突然、崖の上にいる彼女の姿が見えた。
「スカリー!!!」
僕は力の限り、彼女の名を叫んだ。
彼女も僕に気がついたようで、僕を見つめていた。
「モルダー!!来ないで!お願いだから、来ないで!!」
彼女は僕に向かって、狂ったように叫んでいた。
そして次の瞬間、彼女は深い崖の下に向かって飛び降りた。
「スカリー!!!!!!!」



***スカリーの部屋***

突然、モルダーに呼ばれたような気がして、私はベット
から起き上がった。
しかし、彼はいなかった。
モルダーに会えない不安な思いがこみ上げてきて、
私はたまらなく彼が恋しくなり、衝動的にモルダーの
アパートに向かっていた。



***モルダーの部屋***

やはり、モルダーは、部屋にいなかった。
モルダーの身に何かあったのではないか、という不安が
今度はこみ上げてきていた。
私はその不安を打ち消すために、ダイアナに電話した。
「はい、ファウリーですが」
「私、スカリーだけど」
「どうしたの?何かあったの?」
「その・・・モルダーから、何か連絡なかったか、と思って・・・」
「いいえ、フォックスからは何の連絡もないわ」
「じゃあ、きっと彼の身に何かあったんだわ、早く探さないと・・・」
「・・・大丈夫よ、一週間で戻るって言ってたから」
「でも、4日も経つのに、彼から何の連絡もなく、
まして何処に行っているのかも、わからないんでしょ、
これって、行方不明ってことじゃない・・・今すぐ彼を
探すべきよ」
「・・・いいえ、彼は行方不明ではないわ、彼がどこに
行っているかはわかってるわ」
「えっ・・・、どこに行ったの?」
「言えないわ、彼に強く口止めされているから、
本当は彼からは毎日のように連絡はあるの・・・。
でも、彼はスカリーには言うなって・・・」
「そ、そんな、どうしてモルダーがそんなことを言うの」
「あなたに会いたくないんですって、だから、あなたが
ワシントンを出ていくまでは、戻るつもりはないって
言ってたわ・・・」
「・・・嘘よ、彼がそんなこと言うはずがないわ!!」
「本当よ、あなたは彼の信頼を裏切ったのよ、彼に何の
相談もなく、突然FBIを辞めるとか言い出しといて、
彼が傷つかないとでも思ったの!!」
ダイアナの言う通りだと思った。私は彼に甘えていすぎて
いたのかもしれない・・・。
私は電話を切りカウチに横になった。
モルダーの優しい匂いがした。
目を閉じると、最後にモルダーに会った時のことを
思い出した。彼は悲しみに満ちた、辛そうな表情を
していた。
私は自分のことしか考えていなかった。
そう、ダイアナの言う通り、私は彼の信頼を裏切った。
一番傷つけたくない人を、傷つけた。
私の選択は間違いだった。
しかし、もう後戻りはできない・・・。
私は二日後にはこの街を出ていかなければならない。
後悔の思いで一杯になり、私は声をあげて泣いていた。



******

何度も、何度も、僕はスカリーの夢を見ていた。
「あら、フォックス、気がついたの?」
目を開けると見慣れない天井と、ダイアナの心配そう
な顔が見えた。
「・・・ここは?」
「私のアパートよ、あなたの部屋に行ったら、凄い熱を
出していたから、ここに連れてきたの」
「そうか、ありがとう・・・スカリーは戻ってきた?」
「いいえ、まだよ」
「そうか」
「まだ安静にしててよ、あなた4日間も熱を出して、
意識がなかったんですから・・・何か消化のいいものを
作ってくるわ、大人しく寝てるのよ、フォックス」
そう言って、ダイアナは寝室から出て行った。
僕は呆然と天井を眺めていた。



***モルダーの部屋***

どれ位の時間が経ったのだろうか。
外はすっかり明るくなっていた。
私がこの街にいるのも今日と明日の午前中だけ。
このままモルダーに会うことないのだろう。
だったら、せめて、彼の存在を感じることのできる、彼の
部屋にいようと思った。
私は、彼が使っているブランケットに身を包み、ぼんやりと、明け方の空を眺め
ていた。



***ダイアナの部屋***

暫く眠った後、目を覚ますと、部屋は暗闇に包まれていた。
僕は起き上がって部屋の電気をつけた。
壁に掛かっていた時計は、午後7時を少し過ぎていた。
「ダイアナ、ダイアナ」
僕は寝室を出て、部屋中彼女を探したが、彼女の姿は
なかった。
僕は彼女にメモを残して部屋を出た。



***モルダーの部屋***

久しぶりに自分の部屋に帰ってみると、信じられない事に
スカリーが、僕のカウチで気持ち良さそうに眠っていた。
「スカリー」
僕が呼びかけても、彼女の眠りは深いらしく、目覚める
ことはなかった。
僕は彼女に寄り添うように、カウチに横になり、彼女を
抱き締めた。彼女は小さくて、柔らかかった。
彼女の温もりを全身に感じながら、僕は目を閉じた。

******

それが夢なのか、現実なのか、意識がハッキリしない
まどろみの中で、私は人の気配を感じていた。
誰かに優しく抱き締められているような気がした。
そして、誰かの温もりを感じた。
とても気持ちが良かった。
でも、普通の人の体温にしては少し、熱いような・・・。
突然、私の医師としての理性が目覚め、私は目を開けた。
信じられないことに、モルダーが私を抱き締めながら
眠っていた。
「モルダー・・・」
私は久しぶりに見た、モルダーの姿に泣きそうになった。
「フォックス、大丈夫!?」
私がモルダーに会えた喜びに浸っていると、ダイアナが
血相を変えて部屋に入ってきた。
「ダイアナ!?」
私は何とか、モルダーの腕から抜け出すと、立ち上がった。
「スカリー、なぜここにあなたが?」
「モルダーをここで待っていたのよ、それより、これは
どういう事なの?彼、凄い熱じゃない」
私はモルダーの額に触れながら言った。
「彼、5日前から、ずっと熱を出して寝込んでいるの」
「医者には見せたの?」
「ええ、見せたわ、おそらく精神的なものだろうって」
「何ですって!?とにかく救急車を呼んで、ダイアナ、
彼、肺炎を起こしてるわ」



*******

「モルダー、意識が戻ったのね」
目を開けるとスカリーがいた。
「どうやら、解熱剤が効いたみたいね」
「ここは?スカリー」
「病院よ、あなた肺炎を起こしかけてたのよ」
スカリーは優しくそう言うと、僕の額に優しく触れた。
「もう、大丈夫よ、何も心配することはないわ、
だから、たくさん睡眠をとってね、モルダー」
スカリーは優しく微笑んだ。
僕はその微笑みを見て、彼女に言わなければならない
ことがあったのを思い出した。
「スカリー、僕は君に戻ってきてほしいと言ったよね、
あれは忘れてくれ」
「モルダー・・・、私がいなくても大丈夫なの?」
スカリーは不安げな表情をして言った。
「いいや、全然大丈夫じゃない、僕は情けないかも
しれないが、君なしではいられないんだ。それだけ僕は
君に惚れているんだよ、スカリー」
僕は彼女の手を力強く握った。
「君が新しい人生を歩むというなら、僕も連れていって
くれないか、ダナ」
「モルダー・・・でも、あなたには・・・」
「もちろん、今すぐにという訳にはいかない・・・。
でも、いつか、僕の今の人生に決着をつけられる日が
来たら、僕と結婚してほしいんだ、ダナ」
「・・・モルダー、そんな・・・」
「お願いだ、一言、僕を待っていると言ってくれ」
僕は神に祈るような気持ちで、彼女を見つめた。
「モルダー、私は知らないうちに、あなたに甘えていたわ、だから、あなたに何
の相談もなく、FBIを辞めたのよ。こんな自分勝手な事をするのよ、私は・・・」
スカリーは涙で声を詰まらせた。
「私は、あなたを傷つけたのよ。そんな私と一緒に人生を歩んでくれるというの?」
スカリーの目からは、幾筋もの涙がこぼれ落ちていた。
僕はその涙を優しく指で拭った。
「自分勝手はお互い様だろ、例え、君が世界一わがままで、僕を何度も傷つけよ
うと・・・僕は君を愛しているんだ、ダナ」
「モルダー」
「ダナ、僕の気持ちが迷惑なら、迷惑だと言ってくれ、
君の本心が知りたいんだよ」
「・・・迷惑だなんて・・・そんなこと・・思ってない
わ・・・私もどんなに強がったって、あなたなしでは
いられないことに、今回離れてみて、初めて気づいたの」
スカリーは僕を真っ直ぐに見つめながら、一言、一言、
確かめるように言った。
「モルダー、あなたが待ってて欲しい、と言ってくれる
なら、私は待つわ・・・何年でも。私もあなたを愛して
いる。ずっと前から・・・」
僕はスカリーの言葉を聞くと、ベットから起き上がり、
彼女を力の限り、抱き締めた。
「モルダー、まだ寝てないと・・・」
「僕は今、世界一幸せで、病気なんてどこかにいって
しまったよ、ダナ」
僕は腕の力を緩めると、スカリーを見つめた。
彼女も僕を見つめていた。
そして、どちらからともなく、自然に、僕たちは深い
口づけを交わしていた。それはまさに、僕たちの新しい
人生の、最初の一歩だった。
「待ってるわ、あなたが来るのを・・・」
長い口づけの後、彼女は僕を見つめながら、静かに言った。
「待っててくれ、ダナ」
僕は再び彼女を抱き締めた。



********

「モルダー、モルダー」
突然、僕を呼ぶ声がした。僕は思い切って目を開けた。
「大丈夫か?」
目を覚ますとスキナーがいた。
「副長官、ここは?」
「病院だ、肺炎を起こしかけて運ばれたんだ」
僕はスキナーの言葉を聞いて、妙に頭の中が
ハッキリとしてきた。
「副長官、スカリーは?スカリーはどこですか?」
「彼女なら、昨日、ワシントンを出たよ」
僕は彼の言葉に、全身の力が抜けた。
「昨日・・・そんな、じゃあ、昨夜会ったスカリーは
やっぱり、夢だったのか・・・」
僕は全てに失望した。
「何を訳のわからないことを言っているんだね」
さっぱりわからないといった表情で、スキナーは僕を見た。
「あぁ、そういえば、スカリーから君が目を覚ましたら渡すように言われていたんだ・・・」
スキナーは一枚の封筒を僕に差し出した。
「それじゃあ、私はこれで失礼するよ」
そう言って、スキナーはドアに向かって歩いた。
「そうだ、モルダー、君は一昨日の夜、入院したんだよ、昨日一日、君は眠っていたんだ、だから一日ずれているかもな」
スキナーはそれだけ言うと部屋から出て行った。
「何の事言っているんだ?」
僕はスキナーの言っている事がさっぱりわからず、とりあえず、封筒を開けた。

「あっ!!」

僕は封筒の中身をみてスキナーが言っていた事を理解した。





                     
                  THE END


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