DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
,No copyright infringement is intended.

TITLE:ルナシリーズFile No003「涙」
SPOILOR:none
AUTHOR:cat
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 「グレースのプロポーズを受けようと思う」

モルダーは確かに、そう言った。
彼女のプロポーズを受けると・・・。

どうして涙が出るのだろう?
彼の部屋を夢中で出てきた。
まるで、逃げるように。
気づくと、暖かいものが頬を伝っていた。
私はなぜ、泣いているのだろう?


***病室***

「フォックス・・・本気なの?」
僕の言葉に信じられないといった表情をグレースは浮かべ
ていた。
「ああ。本気だ。グレース、僕と結婚してほしい」
僕はグレースの瞳を見つめながら言った。
「・・・嬉しい!!嬉しいわ!!フォックス!!
グレースはそう言って、僕に抱きついてきた。
「こら。怪我人が動いていいのか?」
「このぐらい、大丈夫よ」
グレースは幸せそうな笑みを浮かべた。
その時、ふとスカリーの顔が僕の頭の中に浮かんだ。
僕は無意識の内にグレースを抱き締める腕を、彼女から離
していた。
「・・・フォックス、どうしたの?」
グレースが心配そうに僕を見つめた。
「・・・何でもない。そろそろ局に戻らないと・・・仕事
を残してきたんだ」
僕はグレースを安心させる為、笑顔を浮かべた。

***XF課***

「スカリー、まだいたのかい?」
モルダーは驚いたように、彼の席に座っている私を見つめ
た。
「ええ、まだ報告書が書けてなかったから」
私は彼から視線を逸らし、彼の席から立ち上がった。
「・・・珍しいな、君が・・・」
そう、呟き、彼は自分の席に座った。
私はいつもの自分の席の前に行き、鞄の中に未完成の報告
書を入れた。
「スカリー、帰るのかい?」
「ええ、たった今、書き終わったから。それじゃあ、お先に」
鞄を持って、彼の前を通ろうとした時、彼が私の腕を掴んだ。
「待って」
「・・・モルダー?」
私は驚きの表情で彼を見た。
「・・・君に、話しがあるんだ」
ドキッとするような、真剣な表情で、彼は私を見つめた。

***バー***

「それで、話しって?」
一杯目のカクテルを口にすると、スカリーが呟いた。
僕は久しぶりに彼女とバーにこれた事に思わず、笑みをこ
ぼした。
「な〜に?その笑みは?」
「・・・いや、意味はないさ」
「クスッ。変な人」
彼女はそう言って、微かに口の端を上げた。
「スプーキーだからね」
「バカ」
彼女はそう囁き、さらに笑った。
何だか随分久しぶりに彼女の笑顔を見た気がした。

***公園***

バーを出ると、モルダーが散歩がしたいと言ったので、私
たちは公園の中をゆっくりと歩いた。
「・・・月が綺麗ね」
私は立ち止まって、夜空を見上げた。
最近は彼と二人きりになる事に息苦しさを感じていたのに、
今夜は違った。
彼といる事がとても楽しく、自分の心が素直になれるよう
だった。
今なら、自分の気持ちをモルダーに言える。そんな気持ち
になれた。
「・・・あれ?モルダー?」
気づくと、私の横にいた彼がいなかった。
「ここだよ」
そう言った彼の声が、私の後ろの方から聞こえた。
振り向くと、彼がいた。
とても切なさそうな瞳で、私を見つめる彼が・・・。
「・・・モルダー、何してるの?」
「・・・君を見ていた。もうこんな風に君を見つめられな
いから・・・」
「えっ」
「・・・スカリー。僕はグレースと結婚するよ」
心臓に杭が打ち込まれたような気がした。
ルナとして、聞いていた言葉だったが、やはり衝撃は大き
かった。
「・・・そう。それはおめでとう」
私は全ての感情を隠すように、笑った。
「・・・スカリー」
彼が驚いたように私を見た。
「・・・なぜ、泣いているんだ」
「えっ、泣いている?私は泣いてなんて」
「じゃあ、この涙の訳は?」
モルダーは私に近づき、涙で濡れている頬に触れた。
「・・・泣いてなんて・・・いないわ」
私は頬に置かれた彼の手をはらうと、彼に背を向けた。
「・・・スカリー、なぜ?」
「・・・モルダー、おやすみなさい」
私はそう言うと、彼から逃げるようにして、歩き出した。


***病室***

「・・・ねえ、フォックス、フォックス、聞いてるの?」
ぼんやりとしていると、突然、グレースの声が聞こえて
きた。
「えっ、何の話だっけ?」
「・・・もう、いい」
グレースは呆れたように、僕を見た。
「・・・何かあったの?今日のあなた変よ」
「えっ・・・別に、何も・・・」
「・・・そう。ならいいんだけど」
グレースはなぜか悲しそうに僕を見つめた。


***XF課***

「・・・それじゃあ、私、先に失礼させてもらうわ」
スカリーはそう言って、帰り支度を始めた。
「あぁ、お疲れ」
僕は手にしていたファイルを見つめたまま言った。
今、彼女の顔をまともに見る勇気がなかったから・・・。

バサバサ・・・。
彼女が僕の机の前を通った時、山積みになっていたファイ
ルが床に落ちた。
「あっ、ごめんなさい」
彼女は慌ててファイルを拾い集めた。
「あっ、いいよ、僕が拾うから・・・」
僕は椅子から立ち上がり、彼女の側に行って、ファイルを
拾った。
「あっ!」
僕たちは同じファイルを拾い、お互いの手に触れた。
そして、視線が重なった。
「・・・ごめんなさい」
そう言って、彼女は僕に触れている手を引っ込めようと
した。
僕は彼女の手を逃すまいと、とっさに彼女の手を掴んだ。
「モルダー!?」
「・・・スカリー、なぜ、君は泣いていたんだ?」
公園で彼女の涙を目にしてから、ずっと心の中にあった
疑問が、僕の口から飛び出していた。
「・・言ったでしょ、私は泣いてなんか・・・ないって」
スカリーは僕の視線から逸らし、微かに震える声で言った。
「なぜ、僕から視線を逸らす!」
「逸らしてなんかないわ!」
「いいや、僕の方を見てない!!」
「見てるわ!!!」
そう叫ぶと、彼女は真っ直ぐに僕を見た。
「・・・私はいつだって、あなたを見ている」
静かにそう言うと、彼女の瞳から、一筋の涙の滴がこぼれ
落ちた。
「これ以上、私にどうしろって・・・言うのよ」
「・・・スカリー、僕は・・・ただ」
その先の言葉が出てこなかった。
彼女の涙に、彼女の瞳に、彼女の表情に僕の胸は一杯にな
り、ただ、彼女を見つめる事しか、僕にはできなかった。
「・・・離して、モルダー、もういいでしょう」
「えっ、あぁ・・・すまなかった」
僕はそう呟くと、彼女の手を解放した。


***スカリーの部屋***

「私はいつだってあなたを見ている」

本心を隠せなかった。
彼の切なげな瞳を見た瞬間、言ってしまった。
ずっと、ずっと隠し通そうと決めた心の一部を、私は
口にしてしまった。

なぜなの、ダナ?

鏡に写る自分に問う。
でも、答えはでず、代わりに悲しそうな自分の顔が写って
いた。

私はどうすればいい?
このまま彼に本心を見せるのか?
必死の思いで隠してきた私の想いたちを・・・。
恋人でいるよりも、彼の頼れるパートナーになりたいと
思った。
恋人でいるよりも、戦友でいたいと望んだ。
彼と一緒にずっと、ずっと未来と戦っていきたいと思った。
だから、私は女として彼に惹かれている自分に気づいた時、
自分の気持ちを心の奥底へと封印しようと思った。
でも、それももう、限界なのかもしれない。

***モルダーの部屋***

僕を見つめて、微かに瞳を潤ませた彼女。
そして、僕を見つめるあの瞳。
僕には彼女の真意がわからない・・・。
彼女の本心は一体、どこにあるのだろうか・・・。

コンコンコン・・・。

ドアをノックする音がした。
時計を見ると、もう午前2時を過ぎていた。

「はい?」
「ハーイ」
ドアを開けると、以外な人物が立っていた。
「・・・ルナ、どうしたんだ、こんな時間に・・・」
ルナは僕の問いかけに、寂しそうに微笑んだ。
「入れてくれる?フォックス」
「ああ、どうぞ」
僕はドアを大きく開き、彼女を中に入れた。


******

気づくと、ルナの姿でモルダーの部屋の前に来ていた。
一体、何をしに来たんだろう?

彼に抱かれに来たんでしょ?、ダナ。

もう一人の自分が答えた。
そう、私は確かに、ダナの姿ではできない事をしにきたのだ。
もう自分の気持ちを抑える事などできなかった。
一度亀裂の入った心の堤防は、崩壊を待つだけだった。
長年せき止められていた想いが、一気に溢れ出す。
彼が欲しくて、彼に抱かれたくて・・・。
自分が一番恐れていた気持ちで、心も頭も一杯になる。
でも、私の中の最後の理性が、ダナとして彼に会う事を
戸惑わせる。
ダナとして彼の前で本心を見せる事をためらわせる。
なぜ?
彼の拒絶が恐いから?
彼に受け入れてもらう自信がないから?
まだ、彼のパートナーでいたいから?

自分がかわいいから?

私はそんな自分のズルさたちに苦笑をこぼすと、彼の部屋
の扉を叩いた。


******

ルナはカウチに座ると僕がさっきまで、飲んでいたスコッ
チの瓶を持ち、一気に飲み干した。

「もう一瓶持ってくるかい?」
「・・・そうね。これだけじゃ、今夜は酔えそうにないわ」
そう言って、ルナは空の瓶をテーブルに置いた。
「ルナ、一体、何があったんだ?」
「・・・別に。何もないわ。ただ・・・」
「ただ、何?」
「・・・あなたの顔が見たくなっただけよ。あなたこそ、
何かあったって顔してるわよ」
ルナは僕の顔を見ると、そう言って、笑った。
僕は彼女の鋭さにドキッとした。
「さあ、つっ立ってないで一緒に飲も」
ルナは自分の横を叩きながら言った。
「えっ、あぁ」
僕はいつものルナとは違う、妙な明るさに戸惑いながら、
彼女の横に座った。

******

私たちは明け方近くまで酒を酌み交わした。

「なあ、ルナ、君は人を真剣に愛した事があるか?」
彼が何かを思い出したように呟いた。
「えっ」
私は彼の問いに微かに動揺していた。
「あなたはあるの?人を真剣に愛した事?」
私は動揺を隠すように、彼に聞き返した。
「ああ。どうしようもなく・・・愛しいと思う人がいる」
「・・・それって、グレースの事?」
「いや、違う」
「えっ、グレースよりも愛する人がいるの?」
「ああ」
「だったら、どうして・・・」
「グレースと結婚するかか・・・。僕はもう疲れたんだよ
彼女を待つ事に。片思いでいる事に」
そう呟くように言うと、彼はため息をついた。
「・・・彼女の気持ちが全然わからないんだ。僕の事をど
う思っているのか。僕の気持ちを知っているのか。・・・
本当にもう、わからないんだ」
モルダーは苦しそうな表情を浮かべた。
「だったら、その片思いの相手にあなたの気持ちを伝えれ
ばいいじゃない」
彼の言葉がまるで自分の事のように思えて、私は知らない
うちに声を荒げていた。
「・・・それはできない」
「なぜ?」
「彼女を失いたくないから、例え友達としての関係だけで
も彼女の側にいたいんだ。だから・・・」
「今のままでいたいって訳。でも、振り向いてもらえるか
どうかわからないから、グレースと結婚するって訳なの!」
「あぁ、そうだ。それに彼女の気持ちが知りたかった。僕
の事をどう思っているのか・・・」
「それで、彼女は少しでもやきもちをやいてくれた訳?」
「・・・おめでとうって言われたよ」
モルダーはそう言って、自嘲的な笑みを浮かべた。
「当然の結果かな、グレースをだしに使ったんだから」
「そうね。当然よ。それでだしに使った責任を取って、愛
してもいないのに、グレースと結婚する訳ね」
私は皮肉に聞こえるように言った。
「自業自得ね、フォックス」
なぜかモルダーの事が許せず、意地の悪い言葉が私の口か
ら飛び出していた。
「そうさ、君の言う通り、自業自得さ。僕は自分の保身し
か考えないズルい人間だよ!!」
モルダーは自分を責めるように叫んだ。
まるで、彼の心の中の悲鳴を聞いているようだった。
「・・・ても、彼女を心の底から愛しているんだ・・・」
微かに掠れた低い声でそう言うと、彼の瞳から涙の滴が
流れ落ちた。
「・・・フォックス」
私は彼の名を呟くと、カウチから立ち上がった。
「ルナ?」
「・・・帰るわ」
低い声で呟き、私は彼をカウチに残したまま、ドアに向か
って歩いた。
「・・・モルダー、あなた間違ってるわ。グレースにも、
片思いの人にも・・・そして、あなた自身にも・・・」
私はドアの方を見つめながら、静かな声で言った。
「本当に好きなら、伝えるべきよ。手遅れにならないうちに、
愛してるって言うべきよ」
その言葉はまるで自分自身に言っているようだった。
「本当に愛しているなら、ずっと片思いでいる事に耐える
べきよ。だって、愛しているんでしょ?一生に一度の、生
涯の愛だって思える相手なんでしょ?」
私は再び、彼の方を向き、彼のヘーゼルの瞳を見つめた。
「・・・ルナ」
「ごめんなさい。余計な事を言ったわ。それじゃあ、おや
すみなさい」
私は我に返ったように、そう言うと、モルダーの部屋を出た。

******

彼女が出て行った後、僕は窓の外を見つめた。
空は薄く明け、有明の淡い光を放つ月が浮かんでいた。

「・・・一生に一度の、生涯の愛だって、思える相手なん
でしょ?」

ふと、ルナの言葉が僕の心に浮かんだ。

「・・・生涯の愛か・・・」
そう呟き、僕は朝の色に変わっていく月を見つめていた。


THE END

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