DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
,No copyright infringement is intended.

TITLE:ルナシリーズFile No 004「片思いの人」
SPOILOR:none
AUTHOR:cat
____________________________________________________



僕は白いタキシードに身を包み、花嫁がバージンロードを
歩いてくるのを見つめていた。
ただ、呆然と、自分の運命を受け入れるように・・・。
不思議と心の中は穏やかだった。
いや、何も感じる事ができないのかも、今の僕には。
心の奥底に全ての感情を沈めた僕には、ただ目の前の
出来事を受け入れるだけだった。




***一週間前・モルダーの部屋***


「・・・何か、夢見てるみたい」
カウチに座っている僕の隣で、幸せそうな表情をした
グレースが言った。
「何がだい?」
「あなたとこうしている事よ」
グレースは僕の肩に頭を乗せた。
「・・・そして、私たちの結婚式までは後、一週間。
私、本当に、今、幸せだわ」
あまりにも無防備な笑みを浮かべる彼女に、僕はなぜか後
ろめたさを感じた。
「・・・グレース。そろそろ送っていくよ」
僕は心の奥底に沈めた思いを隠すように言った。
「今夜は泊まってくって言っちゃだめなの?」
僕の耳元で囁くように、グレースが言った。
「・・・すまない。これからスカリーと仕事の話しを
するんだよ」
「・・・そう。わかったわ」
グレースはそう言うと、カウチから立ち上がった。
「送ってくれなくていいわ。一人で帰れるから・・・」
グレースは何かに覚めたように、冷たく言い捨てた。
「グレース。どうしたんだ?」
ドアノブに手を掛けようとした、彼女の腕を掴んだ。
「・・・何でもないわ。ただ・・・」
グレースは不安げな瞳で僕を見つめ、そして僕に抱きつい
た。
「フォックス。お願い。強く抱き締めて・・・不安なの、
今のこの瞬間が夢のような気がして・・・私の前からあな
たがいなくなってしまいそうで・・・」
「グレース。僕はここにいるよ。ずっと君の側に・・・」
僕はグレースを強く抱き締めた。


***スカリーの部屋***


トントントントン・・・。


いつものように、荒々しくドアをノックする音がした。
私は彼が来た事を知ると、大きく深呼吸し、ドアを開けた。
「やあ、スカリー、遅くなって、ごめん」
ドアを開けると、予想通り彼がいた。
「いいのよ。さあ入って」
私は彼を部屋の中に入れた。



******


「ねえ、モルダー、この部分は報告書にどう書くつもり?」
私たちは共同で出す、事件の報告書を書いていた。
「えーと、そうだなあ。君に任せるよ」
「モルダー、さっきからそればっかりよ」
「えぇ、そうかな。ああ、よし!そこでダンク!!やったーーーー!!!」
彼はTVのバスケットの試合に歓声をあげた。
「・・・モルダー、あなた、やる気あるの?」
私は少し声のトーンをおとして言った。
「えっ・・・もちろん、あるさ」
「じゃあ、TVはおしまい」
私はTVの電源を切った。
「あっ・・・何も消さなくても・・・」
「モルダー」
私は片眉を上げて彼を睨んだ。
「・・・わかったよ、それじゃあ始めますか」
彼はそう言うと、渋々に事件のファイルを開けた。



******


「・・・終わったな」
僕は大きく伸びをして言った。
「ええ、そうね」
少しも疲れが見えない涼しげな表情で、彼女が言った。
「今、何時だい?」
「・・・もうすぐで、午前4時よ」
「予定よりも随分オーバーしたなあ」
「ええ、そうね。誰かさんがTVに夢中になっていたから
じゃないの」
彼女は冷たく言った。
「ハハハハハハ。スカリー、何か棘があるぞ、その言い方。
それじゃあ、僕はそろそろ帰るとしますか」
僕はそう言い、カウチから立ち上がった。
「そう。それじゃあ車まで送るわよ」
彼女もカウチから立ち上がった。
「いや、いいよ。それに、車で来た訳じゃないし」
「えっ、じゃあ、何で来たの?」
「・・・徒歩さ。君に会う前にいろいろと考えたい事が
あってね」
そう、彼女の前で平静さを保つ事は、今の僕にはかなりの
自制心が必要だった。
「えっ」
彼女は驚いたように、僕を見た。
「・・・さて、それじゃあ。僕は行くよ。おやすみ、スカ
リー」
僕は彼女の頬に軽くキスすると、彼女の部屋を出た。


******


外はまだ、薄暗く、人の気配は全くなかった。
淡い光を放った月が空に浮かんでいた。
僕はゆっくりと、歩きながら、月を見つめた。


「・・・モルダー、待って!」
後ろから僕を呼ぶ声がした。振り向くと、スカリーが僕に
駆け寄ってきた。
「スカリー、どうしたんだい?」 
「・・・忘れ物よ」
そう言って、スカリーは僕に携帯を渡した。
「あっ・・・全然気づかなかったよ。ありがとう」
僕の言葉を聞くと、スカリーが少し笑った。
「どうしたんだい?」
「別に。わあ、有明の月ね、綺麗」
「一緒に散歩するかい?」
「ええ、そうね」
スカリーは笑顔を浮かべた。
「それじゃあ、行こうか」
「ええ」
僕たちは道をゆっくりと歩き出した。
「気持ちいいわね。朝の空気って」
「ああ、そうだな」
「何か、こういう事って最近感じなかったなあ」
「こういう事って?」
「朝の空気が気持ちいいとか、有明の月が美しいとか、
あなたと・・・」
そこまで言うと、スカリーは言葉を止めた。
「うん?僕と何だい?」
「・・・別に」
「また別にかい?気になるなあ、教えてよ、スカリー」
「・・・何でもない事よ。そういえばグレースとの結婚式
って何時だったかしら?」
スカリーは何かを誤魔化すように言った。
「えっ・・・ああ、後、一週間だよ」
「そう。早いわね。もうそんな時期になるんだ」
そう言うと、スカリーは微笑を浮かべた。
「その笑みは何だい?今度こそ答えてよ」
「えっ、だって、あなたが結婚するなんて・・・一生XF
を追いかけているのかと思っていたから。何か、不思議よ」
「ああ、確かに。僕だって結婚するなんて思わなかったよ。
君以外の人と」
「えっ」
スカリーは立ち止まって、凍り付いたように、僕を見た。
僕は彼女の態度に自分が言ってはいけない事を口にした事
に気づき、ハッとした。
「いや、何でもない。今のは忘れてくれ」
僕はそう言い、少し早足で歩いた。
「・・・モルダー、私、そろそろ帰るわ」
立ち止まったままのスカリーが言った。
「えっ、ああ、そうだな、おやすみ」
僕は立ち止まって彼女の方を向いた。
「・・・おやすみなさい。モルダー」
そう言うと、彼女は僕に背を向けて歩き出した。
その瞬間、胸の奥底に沈めた感情が沸き上がった。
僕は衝動的に、彼女を追いかけ、彼女の肩を掴んだ。
「・・・モルダー?」
スカリーは立ち止まり、不思議そうに僕を見た。
「君にキスしたい」
「えっ」
「知りたいんだ。僕の気持ちを・・・それに、君の気持ち
も知りたい。このキスで、僕たちの関係がどうなるのか
知りたい・・・君とずっと友達でいられるかどうかを・・
・・・知りたいんだ」
僕の彼女に対する精一杯の告白だった。
僕は神に祈るような気持ちで、スカリーを見つめた。
「・・・モルダー、私も知りたいわ」
暫くの沈黙の後、僕の瞳を真っ直ぐに見つめた彼女が微か
に掠れた声で、呟いた。
その瞬間、僕は彼女の唇と僕の唇を、静かに重ねた。
そして、僕たちはまるで愛し合うように、感情の赴くまま
に、深く、長く、唇を重ねていた。


「・・・モルダー」
唇を離すと、少し潤んだ瞳のスカリーが言った。
「・・・スカリー、僕たちは本当に友達のままで・・・
いられると思うかい?」
僕の言葉を聞くと、スカリーは背を向けた。
「・・・いられるわ」
彼女の言葉が胸に刺さった気がした。
「・・・スカリー、本当に?」
「・・ええ。モルダー、私たちは・・・ずっと、友達よ」
僕の方を向くと、スカリーは笑顔を浮かべ、言った。
今更ながら、僕の片思いだった事を知ると、心の中が涙
で一杯になった気がした。
「・・・モルダー、どうかしたの?」
「いや、何でもない。それじゃあ、スカリー」
最後の気力を振り絞ってそう言うと、彼女に背を向けて
歩き出した。



***スカリーのアパート前***


「ダナ、やっぱり、フォックスを愛しているのね」
とぼとぼと歩いていると、突然、誰かの声がした。
「・・・グレース」
声のした方を見ると、グレースがアパートの前に立っていた。
「・・・どうして、ここに?」
「フォックスから、あなたの所で仕事をするって聞いたから・・・
ずっとここで、あなたたちを見ていたのよ」
グレースは私を睨んだ。
「・・・さっきの熱いキスも・・・見たわ」
「あれは・・・そんなんじゃないわ。モルダーは私とこれ
から先、友達でいられるか知りたいって・・・」
「それで、キスした訳?」
「ええ、そうよ。そして、私たちは友達でいられるわ」


パシッ!


次の瞬間、私の頬を叩く、乾いた音が響いた。
私は突然の、グレースの平手打ちに呆然とした。


「嘘つき!!」
そう言うと、グレースは私から離れ、道路脇に止めてある
彼女の車に乗り込むと、行ってしまった。



***バー***


「お客さん、飲みすぎじゃないんですか?」
僕が10何杯目かのスコッチを頼むと、バーテンが心配そ
うに言った。
「な〜に、まだ、大丈夫さ。僕は今、最高に幸せなんだよ、
なんて言ったって、明日は結婚式が待ってるんだ
・・・そうさ、僕は幸せなんだよ、きっと」
そう言い捨て、僕は何かを忘れるように酒を仰いだ。
「さぁ、もう一杯くれ」
「その辺でやめたら」
女の声がした。
「えっ!」
声のした方を向くと、鮮やかな金髪と、ドキッとするよう
な美しいプロポーションに、黒いドレスを着た彼女が立っ
ていた。
「・・・ル・・ナ」
「どうしたの?フォックス、あなたらしくない、酔い方よ」
「・・・えっ、そうかい?」
僕はサングラス越しの、彼女の瞳を見つめた。
「出ましょう、少し酔いを覚ました方がいいわ」
そう言うと、ルナはバーを出ていった。
僕はカウンター席から立ち上がると、勘定を済ませ、
ルナの後を追った。



******


外は暗く、冷たい空気が体に刺さるようだった。
僕はバーの外の壁にもたれ、出る時に買った、煙草を口にし、
火をつけた。
次の瞬間、口の中に苦さと、煙が広がった。
フーッと煙を吐き捨て、空を見上げた。
なんだか、月が悲しそうに見えた。


「珍しいわね。あなたが煙草を吸うなんて」
ふいに、ルナの声がした。
「やあ、ルナ」
僕はゆっくりと、ルナの方を向いた。
「酔いは覚めたかしら?」
「さあ、どうかな」
「・・・何があったの?今夜のあなた、違う人みたい」
ルナは心配そうに、僕の頬に触れた。
「・・・大きな失恋をしたからね」
僕は冗談ぽく笑った。
「・・・例のあなたの片思いの人?」
「ああ、そうだ。ずっと、彼女を愛してきた。彼女を見て
きたんだ・・・でも、もうそれも終わりだ。僕は明日結婚
するんだから。それに、彼女に友達でいられるって言われ
たし・・・いい加減忘れないと、スカリーの事は・・・」
「・・・スカリーって、まさか、あなたの片思いの相手?」
微かに震えた声で、ルナが言った。
「ああ、そうだ。君も一度レストランで会ったろ?」
「・・・ええ」
「どうした?」
僕は青白い、彼女の頬に触れた。
「・・・何でもない・・・ただ、ちょっと・・・疲れてるのよ」
「大丈夫かい?」
「ええ、大丈夫よ。そろそろ、私帰るわ」
そう言うと、ルナは僕に背を向けて歩き出した。
僕はじっと、彼女の背中を見つめた。


「・・・さよなら、ダナ」
そう呟くと、煙草を捨てて、歩き出した。



***スカリーの部屋***


彼の片思いの相手が”スカリー”だったなんて・・・
思いもよらない、彼の言葉に、私は動揺した。


どうすればいい?
なぜ、こんなに心が乱れるの?
彼の気持ちを知ったから何だというの。
彼は明日結婚するのよ。
それに、決めたはずよ、一生彼のよき相棒でいるって、
彼の親友でいるって。
そう、決めたじゃない・・・ダナ。


私は鏡に移る自分に言い聞かせ、涙を拭いた。


「・・・彼は結婚するのよ・・・私以外の人と」


幾度も、幾度も、私はその言葉を呟いた。



***モルダーの部屋***


部屋に戻るとグレースがいた。
「やあ、グレース」
「フォックス、遅かったわね」
「えっ、あぁ、ちょっとバーで飲んでたから、それより
こんな時間にどうしたんだい?」
僕の言葉を聞くと、グレースは真剣な表情で、僕を見つめ
た。
「・・・グレース?」
「・・・あなたの気持ちを聞きに来たの」
「えっ、僕の気持ち?」
「・・・愛しているんでしょ?彼女を・・・」
僕はグレースの言葉にハッとした。
「一体・・・何の事だい?」
「・・・この間、ダナといるあなたを見たわ・・・そして
キスも・・・」
グレースは悲しそうに、僕を見つめた。
「・・・キスって・・・あれは、君が思っているようなの
じゃ・・・ないんだ。あれは僕にとって、未練を断ち切る
ものだったんだよ・・・」
「未練?」
「ああ、僕は彼女の気持ちが知りたかった・・・だから、
キスをしたんだ。・・・そして、彼女の気持ちを知ったよ、
僕に対して何の恋愛感情もないってね・・・」
「だから何?ダナに気持ちがなかったって、あなたはどうなの?
まだ、彼女を愛しているんでしょ?」
「・・・グレース、確かに、まだスカリーに気持ちがある
事は認める。しかし、彼女の事はもう吹っ切れたんだ。
今の僕は君だけを見ているんだよ」
僕はグレースの頬に触れ、頬に伝わる涙の滴を指で拭った。
「・・・フォックス、本当に信じていいの?」
「ああ。もちろんだよ、グレース」
僕は不安げな彼女を強く抱き締めた。
まるで、自分自身の不安をも拭い去るように、強く、抱き
締めた。


***結婚式当日・教会***



「何かお悩みですかな?」
「えっ」
私が十字架に向かい、祈っていると、声がした。
振り向くと、白髪の神父が立っていた。
「・・・こんなに、朝早くどうされました?」
「えっ・・・その、今日、こちらで、友人の結婚式が
ありまして・・・」
「こんなに朝早くですか?」
「あっ、いいえ・・・式は正午からです」
「フフフ、わかっていますよ。あなたがあまりにも思いつ
めた表情なさっていたから、ジョークを言ったまでです」
神父は軽く笑い、私を見た。
「・・・モルダーさんの結婚式ですね」
「ええ」
「式は6時間後ですよ、どうされました?何か告白がある
なら聞きますよ」
神父は穏和な表情を浮かべた。
「・・・神父様、私は自分がわからなくなってしまいました」
「というと?」
「・・・私には愛する人がいます。でも、その人に私は
自分の気持ちを隠してきました」
「なぜです?」
「・・・彼と対等でいたかった。愛していると告げてしま
うと、自分が気持ちに溺れてしまいそうで、恐かったんで
す。きっと、彼に嫌な自分を見せてしまう。冷静ではない
感情に溺れきった自分を出してしまう・・・だから、私は
・・・」
「・・・その人に強く惹かれているのですね」
「・・・私はそれでも、ずっと、自分の気持ちを誤魔化し
、見て見ぬフリをしてきました。
でも、ある時、知ってしまったんです。彼の気持ちを・・・
そして、自分の本当の気持ちを・・・知ってしまったんです。
こんなにも彼を愛していた事を・・・知ってしまったんです。
もう、自分を抑える事なんて・・・」
「だったら、彼に真実を告げなさい」
「・・・神父様、それは無理です。彼は今日、他の女性と
結婚してしまうから・・・もう、無理なんです」
「・・・まさか、それは・・・」
「はい。そうです。私が愛している人は・・・今日
ここで、式を挙げる人です。神父様、私は罪人でしょうか?
・・・ずっと、自分の心に嘘をついてきた罰なのでしょうか?
それとも、これは神が私を罰したのでしょうか?
神父様、私はどうすれば・・・自分の犯した罪を償えるのでしょう?」



***教会付近・公園***


少し早めに到着した僕は、心の整理をつけるため、公園の
中を歩いていた。
早朝という事もあって、ジョギングしている人たちが目に
入った。
と、その時、淡いブルーのフォーマルドレスを身につけ、
髪をアップにした彼女が僕の視界に入った。


「・・・スカリー」
僕は彼女の名を呟き、じっと見つめた。
「モルダー」
僕の視線に気づいた彼女が、固まったように僕を見つめた。
まるで、金縛りにでもあったように、動く事も、言葉を口
にする事もできず、僕は彼女の瞳だけを見つめた。
そして、彼女も何も言わず、ただ、僕を見つめていた。
胸の奥がわしづかみにされたような、切なさが全身から、
溢れ出たようだった。
喉の奥が熱く、僕は幾度も”愛している”という言葉を
心の中で、飲み込んでいた。


「・・・おめでとう、モルダー」
先に言葉を発したのは彼女だった。
「スカリー・・・僕は・・・」
心の中の言葉を口にしようとした時、グレースの事が脳裏
を掠めた。
「・・・・・ありがとう、スカリー」
僕はそう言い、彼女を残して、その場を去った。




***控え室***



「・・・綺麗だ」
僕は純白のウェディングドレスを身に纏ったグレースに
抱きつき、耳元で囁いた。まるで、自分の心を誤魔化すよ
うに・・・。
「・・・フォックス」
なぜか、グレースは重たい表情だった。
「グレース・・・どうしたんだい?」
グレースは思いつめたように、僕を見ると、僕から離れ、
窓の外を見つめた。
「私・・・あなたと約束したわよね。結婚してくれたら、
ルナの正体を教えると・・・」
長い沈黙の中で、微かに震えた声でグレースは言った。
「ああ。だが、もういいよ」
「よくないわ!聞いて、お願い!!」
彼女は懇願するように、僕を見つめた。
「・・・グレース。言わなくてもいい。知っているから」
僕は静かに目を閉じ、彼女を見つめた。
「えっ・・・」
驚いたように、彼女は言った。
「・・・ルナの正体は・・・スカリーだろ?」
「どうしてそれを・・・?いつから知ってたの?」
「・・・スカリーとキスした時に不思議と、ルナとスカリーが
同一人物だって・・・思えた」
「フォックス・・・だったら、どうして・・・」
「君と結婚するのかかい?・・・決まってるじゃないか、
君が好きだからだよ・・・好きな女性と結婚する事は当然だろ?」
「・・・フォックス、ありがとう。あなたにそう言ってもらえただけで・・・私は幸せよ」
グレースはどこか悲しげな笑みを浮かべた。
「でも、あなたは、私を一生愛してはくれない・・・・・・悲しい事よ、
自分を一番だと思ってくれない人と結婚する事って・・・」
「・・・えっ」
「・・・いいの。何でもない。忘れて」
そう言うと、グレースは笑みを浮かべた。



******


僕は真っ白なウェディングドレスを身にまとった花嫁を見つめた。
花嫁はゆっくりとバージンロードを歩んだ。
そして、僕の所まで、後、一歩というところで、花嫁はな
ぜか立ち止まり、悲しそうに僕を見つめた。


「・・・フォックス、ごめん」
「えっ」


バンッ!!
僕がグレースの言葉に戸惑っていると、突然、教会の扉が
開き、男が入ってきた。
そして、教会中の人々が唖然としている中、男はグレース
の手を掴み、一気にバージンロードを疾走した。
あまりにも一瞬の出来事に、僕にはその場に立ち尽くす事
しかできなかった。



******


私はとっさにグレースを追いかけていた。
自分でも、なぜそうするのかはわからなかった。


彼らは教会から1キロ程離れたところまで来ると、立ち止
まった。


「・・・グレース、本当にこれでいいのかい?」
グレースを連れ去った男が言った。
「・・・ええ、これでよかったのよ、私にも、フォックス
にも・・・。今日はありがとうね」
グレースはそう言い、男に笑顔を見せると、一人、歩き出
した。
「待って!一体どういう事なの!」
私は隠れていた物陰から出ると、グレースの腕を掴んだ。
「・・・ダナ!」
グレースは凄く驚いた表情で私を見つめた。
「何がどうなっているのか説明して」
「・・・今朝、あなた公園で、フォックスに会ったでしょ?」
「・・・ええ、会ったわ。それが何だって言うの?」
私は冷たく言った。
「その時、私、偶然・・・見つめ合っているあなたたちを
見てしまったの。見てるこっちまで切なくなったわ。そして解ったの。
フォックスは私を愛してはくれない・・・私はフォックスの一番にはなれないって・・・」
「・・・グレース、だからって教会から逃げ出す事は・・・」
「・・・結婚しても彼の心の中からあなたは消えない!
以前はそれでもいいと思ってたわ。でも、やっぱりそんな
の私には耐えられない!!他の人を愛している人と結婚す
るなんて・・・私にはできなかった」
グレースはそう言い、一筋の涙を流した。
「・・・もう二度とフォックスには会わないわ。これ返しといてくれる?」
グレースは鍵を私に渡した。
「・・・そして、あなたにも会わない。さよなら、ダナ」
そう言うと、グレースは私に背を向けて再び、歩き出した。


******


「・・・モルダー、大丈夫?」
一人、教会の参列者席に座ってると、心配そうな、スカリーの声がした。
「・・・やあ」
僕は軽く笑い、彼女を見た。
「ハハハハ。花嫁に逃げられるとは、本当、お笑いだよ」
「・・・モルダー」
「でも、僕はそんなに落ち込んでないんだ」
「えっ」
「・・・グレースが男に連れ去られた瞬間、なぜか、ホッとしたんだよ、僕は」
「・・・モルダー、これ、グレースから」
そう言って、スカリーは鍵を僕の前に差し出した。
「・・・グレースは僕の気持ちを見透かしていたんだ」
僕は鍵を受け取り、見つめた。
「自分の気持ちから逃げてたんだ。ずっと・・・」
そう言い、スカリーを見つめた。
「・・・モルダー、私・・・」


PPPPP・・・。PPPP・・・。


スカリーが何かを言いかけた時、彼女の携帯が鳴った。
「はい。スカリー・・・えっ、はい。わかりました。すぐ
向かいます」
そう言い、スカリーは携帯を切った。
「事件?」
「ええ、そうみたい」
「よし、それじゃあ行くか」
そう言い、僕は椅子から立ち上がった。
「・・・それじゃあ行くかって・・・モルダー、あなたも行くつもり?」
スカリーは驚いたように僕を見た。
「当然!どこにXFが転がっているかわからないしね」
僕は好奇心いっぱいの表情を浮かべた。
「・・・モルダー、あなた結婚しなくて正解よ。これじゃあ奥さんがかわいそうよ」
スカリーは呆れたように言い、笑った。
「そうかも」
僕はそう言い笑みを浮かべた。
「それじゃあ、行きましょうか」
「ああ、行こう」
僕たちはそう言い合い、教会を後にした。




THE END

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース