DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen production,
No copyright infringement is intended.

TITLE:エマ
SPOILOR:Travelers
AUTHOR:cat
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いつもと変わらない、ありきたりな日常に彼女は現れた。


***XF課***

「モルダー、私、この報告書をスキナーに出してくるわ」
「ああ、行ってらしゃ〜い」
モルダーはデスクにかじりついたまま、スカリーに声を
かけた。
彼はたまりにたまった事務的な書類書きに朝から
とりかかっていた。
「スカリー、戻ってきたら、少し手伝ってくれる?」
ドアノブに手をかけていた彼女にモルダーは声をかけた。
「ランチおごってくれるなら、考えてもいいわよ」
そう言って、スカリーはオフィスから出ていった。
***局内廊下***
スカリーがスキナーに報告書を提出した後、
廊下を歩いていると、FBIの廊下にいるには不自然な
少女の姿が視界に入ってきた。
「どうしたの?見学ツアーから離れちゃったの?」
スカリーは優しく話しかけると、少女は驚きの表情を浮かべて、しばらくスカリ
ーを見つめた。
スカリーは少女の美しく、純粋で、どこか悲愴的な大きなヘーゼルの瞳に息をの
んだ。
そしてしばらくの沈黙の後、少女がゆっくりと、口を
開いた。
「私、人を探しているんです」
そう答えた少女は、外見から判断して、9、10才位に
見えたが、大人のようなしっかりとした喋り方だった。
スカリーは最近の子はしっかりしてるのね、なんて思い
ながら、少女に話しかけた。
「それで、誰を探しにきたの?」
とスカリーが言った時、彼女を呼ぶモルダーの声がした。
「ここにいたのか、スカリー」
そう言って、モルダーはスカリーに近づいた。
「フォックス!!!!」
モルダーを見た少女が、モルダーにそう言うと、抱きついた。
スカリーは一瞬、何が起きたのか、わからず、呆然と
二人を見ていた。
「・・・エ・・マ・・!?」
モルダーはスカリーよりもさらに、驚いたように、
少女を見つめた。
「モルダー、その子はあなたの知り合いなの?」
スカリーの言葉を聞くと、モルダーは一秒程、真剣な
表情でスカリーを見つめると、ゆっくりと口を開いた。
「・・・その、僕の娘だ」
「!!!!!!」
スカリーはモルダーの言葉に天と地がひっくり返る程の衝撃をうけて、倒れそう
だった。


***XF課***

「モルダー、もう一回説明してくれない」
オフィスに戻ってから、スカリーは何度目かのモルダー
の説明を聞いていた。
「だから、エマは僕が10年程前に結婚していた
時にできた子なんだよ」
モルダーはさっきから同じことをスカリーに、言っていたが、彼女にはあまりに
突然すぎる話だったのか、素直に信じることができなかった。
「モルダー、いつものジョークなんでしょ?」
「これはジョークなんかじゃないんだ、スカリー」
モルダーはどうしたら相棒が信じてくれるのかわからず、
途方にくれていた。
「それじゃあ、あなたは本当に結婚していたの?」
「ああ」
「もしかして、今も既婚者なの?」
「いや、今は独身だよ」
「それって、離婚したって事?」
「ああ」
「それで、あの子は?」
「僕の娘だ」
「・・・・・モルダー、これは悪いジョークだわ」
「スカリー、ジョークなんかじゃないよ、エマは正真正銘僕の娘だ、そんなに疑
うならエマの戸籍を見せようか?」
「フォックス、お腹すいた」
二人の言い合いを黙って聞いていたエマが、話が全然
進展しないのに痺れを切らして言った。
「ああそうか、そろそろランチの時間だからな、
わかったよ、エマ、何か食べに行こう」
「うん、私スパゲッティが食べたい」
エマは嬉しそうにモルダーを見た。
「スカリー、君も来るかい?」
モルダーはスカリーを見た。
「いえ、私は・・・」
「私、フォックスと二人だけでランチとりたい!!」
スカリーの答えを遮るようにエマは言った。
「そうよ、親子水入らずで行ってきたら、私はまだ用事
があるからいいわ、モルダー」
「そうかい、それじゃあ行ってくるよ、この話の続きは戻ってきたら、話すよ、
スカリー」
モルダーはスカリーにそう言うと、エマの手を握って
オフィスから出て行った。
オフィスに一人残されたスカリーは大きなため息を
つき、頭を抱えていた。


***イタリアンレストラン***

モルダーはエマの希望を叶えるべく、手頃なパスタの店
に入り、エマとランチをとった。
「エマ、それで今日はどうしたんだ?」
モルダーはエマが食べ終わるのを見計らって、話を切り出した。
「別に、ただフォックスの顔が見たくなって」
「学校はどうしたんだ?ミシェルは君がここに来ている事を知っているのかい?」
「今は春休み。ミシェル叔母さんにはちゃんと言ってあるから、心配しないで、
フォックス」
「そうか、それでいつまで僕の所にいる気だい?」
「う〜ん、わかんない、春休みが終わるまでかな・・・。
フォックス、私、お仕事の邪魔しちゃった?」
エマは今にも泣きそうな顔でモルダーを見つめた。
「いや、そんな事はないよ、ただ、突然あらわれたから
驚いてるんだよ・・・エマ」
モルダーは愛しそうに優しく目を細めて、エマを見た。
「フォックス、ワシントンの街を散歩したい、おすすめ
の場所に連れて行ってよ」
エマはせがむような眼差しでモルダーを見た。
「わかった、それじゃあ案内するとしよう、僕のかわいい
リトルプリンセスに」
モルダーはエマを連れて、店を出た。
***XF課***
結局モルダーはランチに行ったきり、戻ってこなかった。
スカリーはモルダーのいないオフィスで、徐々にいつもの
冷静さを取り戻し、やっとエマという少女の存在を
現実的に受け止められるようになっていた。
しかし、理解したと同時に何ともいいようのない、怒りと
寂しさを感じていた。
モルダー、どうして今まで話してくれなかったの?
あなたにとって私はただの仕事上のパートナーかもしれない。でも、私にとって
あなたは・・・。
どうして結婚なんかしてたのよ。
どうして子供がいるのよ。
どうして今まで私に言ってくれなかったのよ。
いくら、私と相棒になる前の事だからって・・・そんな
大事な事黙っているなんて酷い、酷すぎるわ、モルダー。
スカリーはわきあがる感情に、瞳を濡らした。


***モルダーの部屋***

モルダーはエマをベットに寝かせると、エマの保護者
であるミシェル・セイナーに電話した。
「はい、セイナーですが」
「やあ、久しぶり、フォックスだけど」
「えっ、フォックス?もしかして、エマ、あなたの所に
行ったの?」
「ああ、そうだ」
「そう、ごめんなさい、迷惑かけて」
「やっぱり、君に言ってきたっていうのは、エマの嘘だったんだな・・・、エマ
と君、何かあったのかい?」
「・・・実はエレンの事で言い合いになって・・・、エマ
がエレンは最低って言い出したから、私、つい、子供相手
に感情てきになっちゃって・・・」
「仕方ないよ、君にとってエレンは最愛の妹なんだから」
「本当、あなたに迷惑をかけてごめんなさい。明日、エマを迎えに行くわ」
「いや、もう少し、エマと一緒にいたいんだ、エマが
自分から君のところに帰りたいって言うまで、僕に預けと
いてくれないか」
「でも、あなたの仕事の邪魔にならないかしら・・・」
「邪魔になるなんてとんでもない・・・、僕はエマと
少しでも一緒にいられて楽しいよ、だからお願いだ、
もう少しエマといさせてくれないか?」
「・・・わかったわ、じゃあエマの事お願いね、フォックス、くれぐれもあの生
意気を甘やかさないでよ」
「ああ、父親として厳しく、しつけるよ」
モルダーの言葉を聞くと、ミシェルは笑った。
「嘘ばっかり、あなたがエマに厳しくできるわけないわ、
まあとにかく、エマをよろしくね」
「ああ、承知してくれてありがとう、ミシェル」
そう言って、モルダーは電話を切った。


***XF課***

次の日、オフィスに行くと、スカリーが酷く疲れた顔で
僕を睨んでいた。僕は昨日、仕事を途中にして、戻らなかった事を思い出した。
「おはよう、スカリー」
恐れを感じながらも、僕はスカリーに思いきって声を
かけてみた。
「おはよう、モルダー」
予想どおり、不機嫌そうにスカリーは言った。
「そういえば、あなたの娘はどうなったのかしら?」
「えっ、エマなら僕のアパートにいるよ」
「いつまでいるの?」
「さあ、春休み中かな」
「じゃあ、それまでワシントンから離れるような事件
にはかかわれないわね」
「まあ、そうなるかな・・・」
「・・・エマの母親ってさぞかし美人なんでしょうね、
エマを見ればわかるわ」
「えっ、ああ、彼女は君のように美人だったよ、そういえば、だんだんエマも母
親に似てきたなあ・・・、そうだ
スカリー、後でエマと彼女に会いにいくんだ、君もこない
か?是非君にも見てもらいたいんだよ、彼女を・・・」
僕がそう言うと、スカリーはしばらく何かに迷ったように
黙りこんでから言った。
「いいわ、私もあなたが選んだ人に会ってみたいわ」


***美術館前***

昼休みになり、モルダーと私はエマと待ち合わせしている
美術館の前に行った。
「やあ、待ったかい、エマ?」
モルダーが凄く優しい目で彼女を見つめて言った。
「今きたところ、それよりも・・・」
そう言って、エマは私を見た。
「こんにちわ、エマ。私はダナよ、昨日会ったわね、
今日は私もご一緒させてもらうわ」
エマは私の言葉を聞くと一瞬不機嫌そうな表情を
うかべた。
「フォックス、早くエレンに会いに行こう」
モルダーの方を向くと不機嫌そうな表情は消えていた。
どうやら、私はあまりエマに好かれていないらしい。
「さて、それじゃあ行くか」
モルダーはそう言うとエマの手を握って、美術館に入って
行った。


***美術館***

美術館の中は平日だけあって、あまり人はいなかった。
モルダーとエマはじっくりと絵を見ていたが、私には
そんな余裕はなく、絵よりも周りにいる人を見ていた。
「スカリー、これがエマの母親のエレンだよ」
ある絵の前に来るとモルダーが言った。
「えっ・・・」
モルダーの言った絵は、とても繊細なタッチでかかれて
いる、天使の姿をしたエマの肖像画だった。
「エマが生まれた時、エレンが描いた最後の作品だ」
モルダーはその絵を愛しそうに見つめながら言った。
「最後の作品って・・・」
私がそう言うと、モルダーは一瞬辛そうな表情を浮かべて
静かに言った。
「エレンは・・・エマを生むと、この絵を残して、この世
から去ったんだ・・・まだ31歳だったよ」
「モルダー・・・」
私は彼の深い悲しみを知り、それ以上何も言えなかった。
「フォックス、泣・・か・ないで・・・、エレンが・・・見て・・い・る・・から」
エマの瞳から幾筋もの涙を流しながら、なんとか声をふりしぼって言った。
「エマ、僕は泣いてないよ、ありがとう心配してくれて」
モルダーは屈んでエマの涙を指で優しく拭きとると、
エマを抱きあげて優しく微笑んだ。
「エマ、この絵はね、成長した君を想像してエレンが、
エマのために描いたんだよ、エレンはエマを世界中で
一番愛していたんだよ」
モルダーの言葉を聞くと、エマはモルダーにしがみつき、
泣いていた。
私は初めてエマが母親を亡くした、まだ9歳の少女だと
いうことを切実に感じていた。


***XF課***

エマをアパートまで送ると僕はオフィスに戻った。
「あら、エマについてあげてればよかったのに・・・」
心配そうな表情を浮かべた僕の相棒が言った。
「僕もそうするつもりだったんだけど、エマが仕事の
邪魔はしたくないって言うから・・・」
僕は自分の席について書類を見つめながら言った。
「エマって、9歳の子にしてはしっかりしすぎてるわ」
スカリーが感心したように言った。
「そうだな、時々エマが9歳だということを忘れるよ、きっと母親に似て賢いんだよ」
「モルダー、エレンの事聞きたいわ」
スカリーはいつになく真剣な瞳で僕を見つめて言った。
「そうだな、君にはちゃんと話しておくべきだな、彼女の事を・・・」


***10年前******************

「お客様、申し訳ありませんがこの絵はもうすでに
買い手がいるんですよ」
僕がたまたま入った個展で、僕はある絵に一目惚れした。
「じゃあその人よりもお金を出しますから、僕に譲って
もらえませんか?」
僕はどうしてもその絵が欲しかった。
「いいえ、そういう訳にはいかないんです」
店員は申し訳なさそうに言った。
「自分で説得しますから、せめて買った人を紹介して
くれませんか」
僕はこの絵の何かに強く惹かれ、諦められなかった。
「どうしたの?」
僕と店員が話していると、エレンの姉のミシェルが
あらわれた。
「お客様がどうしてもこの絵を欲しいとおっしゃってるん
です」
「そうですか、申し訳ありませんが、この絵は売りもの
ではありませんので」
ミシェルが申し訳なさそうに言った。
「なぜです、僕はどうしてもこの絵が欲しいんです」
「実はこの絵を描いた画家が売りたくないと言っているん
です」
「じゃあ、その画家に会わせて下さい、お願いします」
ミシェルは暫く黙って僕を見つめた。
「わかりました、あなたには負けました。丁度これから
その画家に会いに行くんです、一緒に行きますか?」
「はい、連れて行って下さい」
僕はミシェルに連れられて、エレンのアトリエに行った。

******

「エレン、お客さんを連れてきたわ」
「ああ、姉さん。今、手が離せないの、ちょっと待ってて」
エレンは僕たちに背を向けて絵を描いていた。
「ごめんなさいね、あの子絵を描いている時、周りが
見えなくて・・・、さあ、こちらで待っていて下さい」
そう言ってミシェルは僕をソファーの置いてあるリビング
に通した。
「もう少し待ってて下さる、えーと・・・」
「フォックス・モルダーです」
「よろしく、モルダーさん、私はミシェル・セイナー、
ミシェルって読んで下さい」
「僕はモルダーでいいですよ」
僕とミシェルは握手をかわした。
「姉さん、お待たせ、それで話って何?」
そう言いながら、エレ
ンがリビングに入ってきた。
僕は一目でエレンの美しさに心動かされた。
「あら、そちらの方は?」
エレンは長いブラウンの髪を束ねながら言った。
「あなたの、あの絵がどうしても欲しいらしいわよ」
「どうも、フォックス・モルダーです」
僕が手を差し出すと、エレンは僕の手を取らずに言った。
「エレン・セイナーよ、悪いけどあの絵はもう誰に
譲るか決めてあるの」
エレンはどこか憂いのこもった、大きな淡いブルーの瞳で僕を見つめながら言っ
た。
「どうしても駄目ですか?」
「ええ、ごめんなさい、モルダーさん」
僕は彼女の瞳を見て何も言えなくなり、仕方なく諦める
ことにした。
「そうですか、わかりました」
そう言って僕が立ち去ろうとした時、エレンが僕を呼び
とめた。
「あの、モルダーさん、あの絵のどこに惹かれたん
ですか?」
僕はエレンを見つめて言った。
「さあ僕にもよくわからないけど、でも、あの絵を見ていると、誰かを呼んでい
るような気がして・・・うまく言え
ませんが、絵が”待っている”と言っているような気が
して、そういう切実な思いに僕は惹かれたんです」
僕が言い終わってエレンを見ると、彼女が泣いていた。
「何か気に障ること言いました?」
「いいえ、そうじゃないの、まるで彼のような事を
言うから、つい・・・」
エレンは涙を抑えながら言った。
「彼というと・・・?」
僕は日頃の捜査官としての習性で聞いていた。
「3ヶ月前に事故で亡くなった、エレンの婚約者のこと
です」
エレンの代わりにミシェルが答えた。
「じゃあ、まさかあの絵はその婚約者のために描いたん
ですか・・・」
「ええ、彼にあげる予定で描きはじめたんです。でも、
絵の完成よりも先に彼は・・・」
エレンの瞳にはまだ婚約者を失った悲しみに溢れていた。
僕は黙ってエレンを見つめていた。
「ごめんなさいね、モルダーさん、こんなつまらない話
をして・・・なんだかあなたとは初対面だという気が
しなくて」
そう言ってエレンはにっこり微笑んだ。
***1ヶ月後***
僕はエレンの友人として、仕事が終わるとほぼ毎日、
エレンのアトリエに来ていた。
「フォックス、FBIって毎日暇なの?私を心配して
来てくれるは嬉しいけど・・・無理しないで」
エレンが心配そうに言った。
「無理なんかしてないよ、ただ僕は君と一緒にいたい
だけだ。それとも、僕が来るのは君の邪魔になるのかな、
だったら言ってくれ、もう君の邪魔はしないから」
僕がそう言うと、エレンは僕の頬に優しく触れて言った。
僕は息がとまりそうだった。
「邪魔なわけないでしょ?あなたは私の大切な親友なんだから」
僕はエレンの言葉に自分を抑えられなくなり、彼女を
抱き締めて言った。
「エレン、愛してる。君がまだ婚約者を忘れられない
のは知っている。それでも愛してる」
「フォックス・・・」
エレンは驚いた表情で言った。僕はその日、初めて彼女
の唇を奪った。
そしてその日から僕たちは同棲し始め、その一ヶ月後
に結婚した。


**************************

「モルダー、あなた、真剣にエレンを愛してたのね」
僕の話を聞いていたスカリーが、その美しい瞳に
涙を浮かべながら言った。
「今でもあなたの中のエレンは生きているんでしょう?
だから、もういいわ、エレンの話はここまでで、最後まで
話したら、エレンが亡くなった時の悲しみを思い出して
しまうでしょ・・・私なら耐えられないわ」
スカリーは心配そうに僕を見つめた。
「スカリー、僕は大丈夫だよ、もう昔の事だから、
君が聞きたくないなら話さないけど・・・どうする?」
僕は優しく微笑み、スカリーを見つめた。
「それじゃあ、今日美術館で見た、エマの肖像画の事が
聞きたいわ」
「ああ、わかった。エレンがあの絵を描き始めたのは、
エマが生まれてから一ヶ月後だった」

**************************

「エレン、何を描いているんだい?」
「エマよ、エマの10年後を描いているの、きっと見る
ことはできないと思うから・・・」
エレンは先天性の心臓病だった。医者の話では出産など
にはとても耐えられない体だった。
でも、エレンはエマを生む事を選び、出産を乗り越え、
奇跡的に生きていた。
「何言っているんだい、君はエマを出産したのに、
以前と変わらず元気じゃないか、きっと君は10年後も
僕と成長したエマと一緒にいることができるよ、きっと
医者が言ったことは嘘だよ」
僕がそう言うと、エレンは天使のような微笑みを浮かべた。
「10年後のあなたってどうなっているのかしら?」
「もしお腹の出た中年になってたら、君は僕と別れるかい?」
「そうね、別れるかも。あなたこそ私が10年後、
凄い太っていたら、どうする?」
エレンは悪戯っぽく言った。
「僕は君ほど薄情じゃないからね、きっと一緒にいるよ」
僕が少しすねたように言うと、エレンは僕を抱き寄せて
言った。
「私もよ、フォックス、あなたが太ろうが、髪の毛が
なくなろうが愛しているわ、何年経とうと・・・」
「エレン・・・・・、僕はそんなかっこ悪い中年には
なる気はないよ」
僕がそう言うとエレンは笑い出した。
「そうね、あなたはいつまでも素敵だわ、フォックス」

******

「完成したわ、フォックス」
エマの絵を描き始めて2ヶ月後、エレンは嬉しそうに
言った。
「おめでとう、エレン」
僕はエマを抱きながら、その絵を見た。
絵の中には10年後のエマが、まるで生きているかの
ように存在していた。
「私の大切な、大切な娘の姿よ」
エレンは愛しそうにエマを見ながら言った。
「素晴らしいよ、エレン、今にも絵の中から出てきそう
だよ」
「ありがとう、フォックス。私、あなたと出会えて、とても幸せだわ」
そう言ったエレンは、今にもこの世から消えてしまうのではないか、というほど
透明な存在だった。
「エレン!!」
僕は急にエレンは消えてしまうのではないか、という思い
に駆られて、エレンの腕を掴んだ。
「どうしたの?フォックス」
エレンは不思議そうに、僕を見つめた。
「急に、君が消えてしまうような気がして」
「フォックス・・・」
エレンは僕を見つめると、僕の唇に優しくキスをした。
「私なら、ここにいるわ」
唇を離すとエレンは僕にそう言った。
エレンはその日から一週間後、この世を去った。
僕に離婚届けを残して・・・。


****スカリーの部屋***************

モルダーの話からはエレンに対する愛情が痛い程、伝わってきた。
彼の涙は10年経った今でも、渇いていない事を知った。
私は彼の悲しみを癒してあげられる存在にはなれないのだろうか?
そんな事を考えながら、私はベットに横になった。





To be continued.

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