DISCLAIMER:The characters and situations ofthe television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions,No copyright infringement is intended.

TITLE:Dear Angel
SPOILOR:none
AUTHOR:cat
_____________________________________________________

雨が降っていた。
とても冷たく、重たい雨が。
雨が降っていたことだけが、酷く、現実的だった。
僕はまるで夢の中にでもいるようだった。
とても悪い夢の中に。
しかし、現実的に彼女は僕の腕の中で、
冷たくなっていった。
僕はただ、ただ、彼女を抱き締めていた。
夢だと思いたくて、僕は何度も彼女の名を呼んだ。


***一週間後モルダーの部屋***

「モルダー、大丈夫か?」
心配そうな表情をした、スキナーが言った。
「・・・」
僕はスキナーの問いかけに対して何も答えなかった。
「君の有休は一杯たまっているから・・・」
それだけ言うと、スキナーは僕の部屋を出た。
「スカリー・・・」
誰もいなくなった部屋で僕は泣いていた。
まるで子供のように、ただ、ただ・・・泣いていた。

******

ここはどこ?
私は一体どうしてしまったの?
私は気がつくと、真っ白な霧の中にいた。
『やあ、スターバック』
突然、父が私の目の前に現れた。
『迎えに来たよ』
父は私に手を差し出した。
「パパ・・・」
私は父の手を取った。
『ダナ、迷いがあるのね』
突然、父は消え、メリッサが現れた。
『彼が気になるんでしょう?』
メリッサは優しく微笑んだ。
「メリッサ・・・」
『ダナ、悔いを残してはダメよ』
そう言ってメリッサは消えた。
「待って、パパ、メリッサ!!!」
私は消えてしまった二人を探すため、
真っ白な霧の中を走った。どこまでも、どこまでも、走った。
しかし、どこまで行っても二人はいなかった。
「パパ!!!メリッサ!!!」
私の声だけが、空しく霧の中に響き渡った。
私はその場に座り込み、なぜか泣いていた。
『マミー、泣かないで』
霧の中から小さな女の子が現れた。
「・・・エミリー」
私は愛しい娘に抱きついた。
『マミー、もう少し待ってて、後で迎えにいくから』
エミリーがそう言った瞬間、私は意識を失った。


***XF課***

スカリーが次に意識を取り戻したのは、モルダーの
オフィスだった。
夢でも見てたのかしら。
スカリーがそんな事を考えていると、モルダーが
オフィスに入ってきた。
何だかとても疲れた表情をしていた。
「モルダー、私、変な夢を見たわ」
モルダーはスカリーの言葉に何も言わずに
自分の席につき、書類を書いていた。
「モルダー?」
スカリーはいつもと様子の違う、彼を不思議に思い、もう一度彼の名を呼んでみ
た。
しかし、返事はなかった。
「私、何かあなたを怒らせるようなことした?」
スカリーはモルダーの机の前に立って言った。
しかし、彼は彼女を見ようともせず、黙々と仕事をしていた。
「ちょっと、モルダー、何か言ってよ!」
やはりモルダーからは何の反応もなかった。
「モルダー、これはどういう事だ」
スカリーがモルダーの態度に苛ついていると、
凄い剣幕でスキナーがオフィスに入ってきた。
「見てのとおり、辞表です」
モルダーはキッパリとスキナーに言った。
スカリーはモルダーの言葉に戸惑い、彼を呆然と見つめた。
「モルダー、考え直せ、君が辞めてしまったら、
誰がXFを捜査するんだ」
スキナーは宥めるように言った。
「もうXFなんて、僕には関係ありません」
「モルダー、君の情熱はどこにいったんだ?君の妹の
事はどうするんだ?」
「もういいんです!!僕はこれ以上XFには関わりたく
ないんです!!!」
モルダーの表情は真剣だった。
「・・・スカリーか」
スキナーは静かに言った。
「XFなんかに関わらなかったら、彼女は、スカリーは、
死ぬことなんかなかったんです。僕にさえ会わなかったら・・・僕は彼女の人生
を奪ってしまったんだ!!!!」
スカリーはモルダーの叫び声に、目眩がし、倒れそうだった。
「モルダー・・・そうやって自分を責めるのはよせ!!」
スキナーは優しくモルダーの肩に触れた。
「やりかけの雑務が終わり次第、僕はFBIを辞めます」
モルダーは恐ろしく冷静にそう言うと、再び仕事を始めた。
「そうか。君のような優秀な捜査官に去られるのは
痛いが・・・わかった、君の辞表を受理しよう」
スキナーはモルダーの瞳に迷いがないのがわかると、肩を落としながら、オフィ
スを出ていった。
『モルダー』
スカリーはそう言って恐る恐る、モルダーの体に触れて
みた。そして次の瞬間、彼女の手は無常にも、モルダー
の体を通り抜けた。
『まさか、私は・・・死んだの?』
スカリーは信じがたい事実に、焦りと動揺を感じた。


***モルダーの部屋***

スカリーはモルダーに気づいてもらおうと、いろいろな
事を試みたが、彼の反応は全くなかった。
『ねえ、モルダー、私が見えないの?』
スカリーはモルダーに話しかけてみたが、やはり彼からは
何の反応もなかった。
モルダーは暗い部屋で、カウチに座り、憔悴しきった表情で、天井を漠然と見つ
めていた。
「スカリー・・・」
時おり、そう呟いては、モルダーは涙を流していた。
こんなに沈みきったモルダーを見たのは初めてだった。

******

「スカリー!!スカリー!!行かないでくれ!!!
スカリーーー!!!!」
モルダーの叫び声が部屋に響いていた。
『モルダー、私はここにいるわ、モルダー』
スカリーは、そおっと、寝ているモルダーの額に触れた。
しかし、彼女の手はモルダーの体を透き通ってしまい、
触れることはできなかった。
「スカリー!!スカリー!!」
モルダーは苦しそうに彼女の名を叫んでいた。
『モルダー、私はここよ、ここにいるのに・・・』


***墓地***

「スカリー、また会いに来たよ」
モルダーはスカリーの墓の前に立っていた。
そしてその横で、スカリーは自分の死を現実のものとして感じていた。
『私は、本当に死んでしまったのね・・・』
スカリーは全てに絶望し、その場を逃げるようにして離れた。

******

『ダナ、現実から逃げては駄目よ』
スカリーがあてもなく、さまよっていると、声がした。
声のした方を振り向くと、メリッサが立っていた。
『メリッサ、私はどうすればいいの?』
『あなたの未練を断ち切るのよ、そうすれば、次の世界
に行くことができるわ』
メリッサは優しくスカリーに言った。
『次の世界?それはあの世と呼んでいる世界の事?』
『そうよ、あなたは何らかの強い未練をこの世に残して
いるから、次の世界に行けずにいるの?』
スカリーにはメリッサの話に素直に納得できなかったが、
今まで自分が見てきたことを考えると、信じるしかなかった。
『・・・それで、未練を断ち切るには、どうすればいいの?』
『さあ、それは私にもわからないわ、あなたが死ぬ前に
強く思ったことが未練になっているから、それを思い出す
のよ・・・』
スカリーはメリッサに言われて、死ぬ前の事を
必死で思い出そうとしたが、何も出てはこなかった。
『わからないわ、メリッサ、私はこれからどうすれば
いいの?』
『大丈夫、落ち着いて。何かヒントがあるはずよ』
しかし、スカリーには何の心当たりも浮かばなかった。
『やっぱりわからない、どうして何も思い出せないの?』
『死んでしまうと、生きていた時の記憶は薄れて
しまうのよ。そうだ、ダナ、あなたが死んでからこの世
に戻った時、どこにいたの?』
『えっ、確か・・・モルダーのオフィスにいたような』
『それよ、きっとそこに何かヒントがあるんだわ』
『えー、それじゃあXFに関係があるというの?』
『確かなことは言えないけど、多分そうよ、それじゃあ
ダナ、頑張ってね、私はそろそろ行かないと』
『えっ、メリッサ、待ってよ!』
スカリーがそう言った時、もうすでにメリッサは
消えていた。


***XF課***

スカリーがXF課に行くと、モルダーが荷物の整理を
していた。
「フォックス、辞めるって、本当なの?」
ダイアナが血相を変えて、オフィスに来た。
「ああ、辞める」
モルダーの表情はダイアナに対しての、いつもの愛想はな
く、冷たい仮面のようだった。
「どうして?フォックス、XFを投げ出すなんて、
あなたらしくないわ」
ダイアナはモルダーに近づき、彼の手を握った。
「僕のことはもうほっといてくれないか」
そう言って、モルダーはダイアナの手を振り払った。
「フォックス・・・」
ダイアナはいつもと違うモルダーの態度に動揺していた。
「悪いけど、出て行ってくれ、一人になりたいんだ」
「死んだ人の事を思ってても、帰ってはこないのよ、
フォックス、現実を見て!」
ダイアナはモルダーを見つめながら言った。
「君に言われなくたって、そんな事はわかってるさ、
でも、こうする以外に僕はどうすることもできないんだ」
モルダーの表情は悲しみに満ちていた。
「フォツクス・・・」
「頼むから出て行ってくれ!!!」
そう怒鳴って、モルダーはダイアナを睨んだ。
ダイアナはモルダーの迫力に圧倒され、オフィスから
出ていった。
モルダーは自分の席に座り、どこか遠くを見つめていた。
「スカリー、君に会いたい」
モルダーの瞳は薄っらと濡れていた。
スカリーはそんなモルダーを見つめて言った。
『モルダー、私はここよ』


***モルダーの部屋***

スカリーが亡くなってからの、モルダーの生活は
荒んでいた。
彼は家に帰ると、まるで死人のように、暗い部屋で漠然
と過ごし、夜中はスカリーの夢でうなされていた。
そして、その苦しさから逃れるように、彼は酒に溺れ
ていった。
スカリーの知っているモルダーとは、まるで別人のように彼はやつれていた。 
『モルダー、こんな生活をしていたら体を壊すわよ』
カウチで眠っているモルダーにスカリーは囁いた。
「スカリー!!スカリー!!!」
今夜もモルダーは悪夢にうなされていた。
『私はここよ、モルダー、どうすれば私の声があなたに
届くの?』
スカリーは涙に瞳を濡らした。
『マミー、泣かないで』
突然、スカリーの前にエミリーが現れた。
『エミリー・・・私を迎えに来たの?』
『ううん、まだよ、マミーはまだここから旅立てない』
エミリーは悲しそうに言った。
『エミリー、教えて、どうすれば私の未練を断ち切れる
の?』
スカリーの言葉を聞くと、エミリーはスカリーの胸を
指した。
『マミーは頭で思い出そおうとしているから、駄目なんだよ、心で、魂で思い出
そおうとしてみて、きっと思い出せるから」
エミリーはそう言って、にっこりと微笑んだ。
『魂で?』
『そう、もう体はないからね、気持ちを集中させるん
だよ、そうすれば彼にもマミーの声が聞こえるよ』
エミリーはそれだけ言うと、消えた。


***XF課***

スカリーは自分がいつも使っていた席に着くと、エミリー
に言われたように、全神経を心に集中させた。
暫くすると、何かがスカリーの心に浮かんできた。
最初はぼやけて、そして時間が経つにつれて、それは
ハッキリと鮮明に浮かび上がってきた。

******

私はモルダーのオフィスにいた。
「スカリー、サマンサがこの事件に絡んでいるらしい
んだ」
モルダーが真剣な表情で言った。
「それは確かなの?」
私はこの時、何かがひっかかっていた。
「ああ、間違いない、確かな情報だ」
モルダーは少し興奮気味だった。

******

次に見えたのはどこかの研究施設だった。
「モルダー、彼女はサマンサじゃないわ!!!」
私は必死に彼を止めようとした。
「モルダー!!出てこい!!出てこないなら、おまえの
代わりにこの女を殺す!!!」
犯人らしき男は銃口をサマンサに向けた。
「モルダー、行っちゃ駄目!!!」
必死で止めようとする私を見つめ、モルダーは私の唇を
奪った。
「スカリー、君を愛しているよ」
唇を離した後、そう囁き、モルダーはその男の前に
出て行った。
「僕はここだ!!!サマンサを離せ!!!」
「ああ、離すよ、その前におまえの命を奪ってからだ!!!」
男は銃口をモルダーに向け、引きがねをひいた。
「駄目!!!!!!!」
私はとっさにモルダーの前に出ていった。
「スカリーーーー!!!!!」
銃声が響き渡り、胸が燃えるように熱かった。
モルダーは次の瞬間、その男を撃った。
私は男がゆっくりと倒れるのを見て、自分も倒れた。
「スカリー!!!」
モルダーは私を抱きかかえ、携帯ですぐに救急車を
呼んだ。
「スカリー!しっかりしろ!!もうすぐで救急車がくる」
モルダーの声を聞きながら、私は遠くなる意識の中で、最後の気力を振り絞って
、モルダーに何か言おうとした。
「・・・・・・・・」
そして私は意識を失った。
「スカリー!!!スカリー!!!」
悲しみに狂ったように、モルダーの声が響いていた。

******

私は断片的に、最後にかかわった事件の記憶を思い出した。しかし、最後に自分
がモルダーに何を言ったかは思い出せなかった。
『なぜ思い出せないの?』
『スターバック、焦るな、真実はそこにある』
スカリーの父親が、スカリーの目の前にあらわれた。
『パパ、私はどうすれば?』
『最後の言葉を思い出すんだ』
彼は力強くそう言うと消えた。


***スカリーの墓の前***

モルダーはほぼ毎日のようにスカリーの墓を訪れて
いた。
「フォックス、また来てくれてたの?」
スカリーの母マーガレットが静かに言った。
久々に見た母の姿は、スカリーの胸を切なくさせた。
「ここにいると少し落ち着くんですよ、スカリーさん」
モルダーは悲しげに微笑んだ。
「ダナもきっと喜んでいるわ」
「スカリーさん、僕はまだ彼女がこの世から消えて
しまったなんて、信じられないんです。ずっと僕の側に
いるような気がして・・・時々、彼女の気配を感じるん
です、今も彼女がいるような気がして・・・」
スカリーはモルダーの言葉を聞いて、ハッとした。
『モルダー、私を感じていてくれたの?』
しかし、モルダーは何も答えなかった。
「フォックス、そういう気持ちわかるわ、でも、もう
ダナはいないのよ」
マーガレットは優しく子供に諭すように言った。
「それはわかっているんです。でも・・・」
「きっと時間があなたの悲しみを癒してくれるでしょう」
「・・・ありがとう、スカリーさん」
モルダーはそう言って去ろうとした。
「待って、フォックス、あなたFBIを辞めたそうね」
「えっ、どうしてそのことを?」
「昨日、スキナーさんがダナのお墓に来てたから・・・」
「そうですか・・・」
「スキナーさんから伝言を頼まれているわ」
「何ですか?」
「いつでもあなたがFBIに戻れるようにしておくと・・・」
「そうですか」
「フォックス、戻る気はないの?」
「ええ、今のところは・・・来月からイギリスに行こう
かと思っているんです。丁度オックスフォードから講師
をしないかというオファーがあったので」
「そう、寂しくなるわね、あなたがいなくなると・・・」
「スカリーさん、今までいろいろとありがとうございました」
モルダーはそう言って墓地を去った。


***モルダーの部屋***

スカリー、どうして、どうして、僕なんかを庇ったんだ。
スカリー、君に会いたい、会いたくて仕方がないんだ。
君の声が聞きたい。
君の美しく、知性に満ちた顔を見たい。
君の赤毛に触れたい。
君の華奢な体を抱き締めたい。
もう一度君に会うことができるなら、僕は何だってする。
だから、僕がこうする事を許してくれ。
モルダーは銃口を自分の頭につけた。
『モルダーーー!!駄目ーーー!!!』
スカリーは彼を止めようと、必死で叫んだ。
彼は無常にも、引きがねをひいた。
それと同時に、スカリーは全神経を集中させ、拳銃を
握った。
次の瞬間、銃声がモルダーの部屋中、響き渡った。
奇跡的に、銃弾はモルダーの頭からわずかにそれて、
壁に命中した。
「・・・スカリー、スカリーなのか?本当に君なのか?」
モルダーはスカリーの方を、信じられないといった表情を浮かべて、見つめてい
た。
『・・・モルダー、私が見えるの?』
スカリーがそう言うと、モルダーは彼女の頬に触れようと
した。しかし、彼の手は彼女の頬を通り抜けてしまった。
二人は触れることのできない、歯痒さと、切なさを
感じた。
「スカリー・・・」
モルダーは愛しそうに目を細めて、スカリーを見つめた。
スカリーも同じように、モルダーを見つめた。

******

「ずっと君の気配を感じていたんだ、まさか本当に
君が僕の側にいたなんて・・・まるで幸せな夢を見ている
ようだ」
モルダーは嬉しそうにスカリーを見つめた。
『ええ、あなたのスプーキーさをずっと見てたわ』
スカリーは冗談ぽく言った。
「君になら、何を見られていたっていいさ」
モルダーは熱っぽい眼差しで、スカリーを見つめた。
その時、スカリーに長年培ってきた理性が働き、彼女は意識的にモルダーから目
を逸らし、話題を変えた。
『ねえ、モルダー、どうしてFBIを辞めたの?』
スカリーの質問にモルダーは一瞬険しい表情を浮かべた。
「全てに絶望したからだよ・・・」
『それじゃあモルダー、彼女はやはりサマンサでは
なかったの?』
「ああ、君の言った通りだったよ、僕が軽率すぎたんだ」
『モルダー、でもいいの?本当にXFを投げ出して
しまって・・・今回は違ったけど、でも、いつかは妹さん
に会える日はきっと来るわ』
「スカリー、君までそんな事を言うのか、もういいんだ、
僕はこうして君と一緒にいられる事ができれば・・・」
『モルダー、現実から逃げないで』
スカリーは必死だった。
「僕が現実から逃げているというのか!!!」
『そうよ!!逃げてるわ!!!』
「・・・スカリー、せっかく会えたのに、やめようこんな話」
モルダーは悲しそうに言った。
『モルダー・・・』

******

その夜のモルダーは安心したかのように、ぐっすりと眠っていた。
『ダナ、未練は断ち切れた』
メリッサが現れた。
『いいえ、益々、未練が増したわ』
『フォックスね』
『ええ、私、どうしても彼にFBIを、XFの捜査を辞めてほしくないの、真実
を見つけるまでは・・・』
『ダナ、彼の心の中に入ってみたらどう?』
『そんなことできるの?』
『彼の体とあなたの体を重ねるのよ』
『でも、通り抜けてしまうわよ』
『そうよ、そこが重要なの、通り抜けてしまう一瞬に、
あなたの心を集中させるのよ、そうすれば彼と一つになる
ことができるわ』
『・・・できるかしら』
『大丈夫、あなたならできるわ』
そう言って、優しく微笑むと、メリッサは消えていった。

******

スカリーは心を集中させ、そして寝ているモルダーの
上にゆっくりと重なっていった。
突然、底のない暗闇の世界が広がった。
スカリーは暗闇の中を、ゆっくりと落ちていった。

******

スカリーが気づくと、暗い海の上に立っていた。
そして、一人の男がその海の中に入っていた。
『モルダーーーー!!!!!』
スカリーはその男に向かって叫んだ。
しかし、全く反応はなかった。
「彼に何を言っても無駄だよ」
突然、スカリーの後ろの方から声がした。
振り向くと、もう一人のモルダーがいた。
「彼は全てに絶望してしまったんだ」
『あなたは?』
「彼の理性さ」
『どうすれば彼を絶望から救えるの?』
「それはわからない」
そう言ってモルダーの理性が消えると、突然、スカリーの
体が暗い海の中に沈んだ。

******

「スカリーーーー!!!!!」
次に見えたのは、スカリーが撃たれるシーンだった。
「スカリー!!スカリーー!!!」
モルダーは狂ったように彼女の名を呼び、彼女を抱き締めていた。モルダーのそ
の姿はとても痛々しかった。
『モルダー、私ならここよ、悲しまないで、モルダー』
スカリーはそう言って彼を抱き締めようとしたが、突然
彼の姿が消え、あたりは真っ暗になり、またしても
スカリーは暗闇の中に沈んでいった。

******

「お姉さん、大丈夫?」
スカリーは少年の声で目が覚めた。
辺りを見渡してみると、そこはモルダーのオフィスだった。
『あなたは誰?』
スカリーはモルダーの席に座っている少年に言った。
「僕?僕はフォックス」
少年は無邪気な笑みを浮かべて、答えた。
『ここで何をしているの?』
「妹を探しているんだ、突然消えてしまったから」
少年は少し寂しそうに言った。
「彼はモルダーの希望だよ」
突然、モルダーの理性がスカリーの側に現れた。
「彼はここから出られなくなってしまったんだ」
『じゃあ、彼をここから出せば、モルダーは現実と向き合えるようになるのね』
「まあそういう事だ、でも、君にできるかな」
そう言ってモルダーの理性は消えた。
『絶対、私は彼を救ってみせるわ』
スカリーはそう強く決意した。

******

『ねえ、フォックス、ここから出ない?』
私は優しく彼に話しかけた。
「それはできないんだ」
『どうしてなの?フォックス』
「彼の絶望が大き過ぎて、出れないんだよ」
『でも、何か方法があるはずよ』
「・・・彼と話し合うしかないよ」
『じゃあ、話し合いに行きましょう』
「・・・ヤダ!!僕はあいつとだけは会いたくない」
『どうして?』
「・・・恐いから、今、あいつに会ったら、きっと僕は
消されてしまう」
『フォックス、あなたはそんなに弱くないわ、勇気をもって、お願い』
スカリーは必死で説得した。
「でも、僕・・・」
フォックスは今にも泣きそうだった。
『ずっと私がついてるわ、あなたが危なくなったら、
私があなたを守るわ、だから、お願い、フォックス』
スカリーの言葉を聞くと、フォックスは暫く黙り込み、
そしてゆっくりと口を開いた。
「・・・わかったよ、ダナ」

******

「モルダーーー!!!話しがある!!!」
フォックスがそう叫ぶと、モルダーの絶望があらわれた。
「何だ・・・」
彼は恐ろしい程冷酷に言った。
「僕はここから出たい」
「駄目だ」
『どうして駄目なの?』
スカリーは真っ直ぐに彼を見つめて言った。
「・・・こいつがスカリーを殺したからだ」
モルダーはフォックスを指した。
「・・・そんな、僕はただ、サマンサに会いたかった
だけなのに・・・」
フォックスは泣きそうだった。
「おまえのその思いのせいで、スカリーは死んだんだ」
モルダーは鋭く、フオックスを睨んだ。
『やめて、フォックスを責めないで!!』
スカリーはフォックスの前に立った。
「なぜだ、スカリー、君はこいつのせいで死んだんだぞ!
なぜ奴を庇う!!!」
『いいえ、違うわ!!彼は私に全てを与えてくれたのよ、
私は彼のおかげで沢山もの、真実を見つけることができた』
「そんなの嘘だーーー!!!彼は君に苦しみしか
与えなかった」
『違うわ、モルダー、私はあなたと共に真実を追いかける
ことができて幸せだったわ、だからお願い、フォックスを
ここから出して、またXFを、真実をおいかけて』
「・・・やめろ!!それ以上言うな!!!」
モルダーの体は薄く透き通り始め、今にも消えそうだった。
『XFは私たちが一緒に時を過ごした軌跡、真実を追い
求めることこそが、私たちの全てだったじゃない、お願い、モルダー、その事を
思い出して!!!』
スカリーは泣きながら、モルダーに訴えた。
「スカリーーーー!!!!!」
そう叫びながら、モルダーは消えた。
「スカリー、ありがとう、僕を救ってくれて」
声のした方を見ると、少年フォックスから今のモルダー
の姿になったモルダーの希望がいた。
『モルダー、XFを、真実を追い求めて・・・』
「ああ、それは君が僕に言った最後の言葉だね、
今、思い出したよ。スカリー、僕は真実を追い求めるよ」
そう言ってモルダーはスカリーの腕を掴み、彼女を抱き寄せて、激しく、深く、
唇を重ねた。

******

『マミー、マミー』
突然エミリーの声がした。
スカリーが意識を取り戻すと、そこはモルダーの部屋
だった。
『エミリー、今度こそ迎えに来たのね』
『マミー、行こう』
エミリーは小さな手を差し出した。
『でも、もう少し待って、モルダーに私、伝えなくては
ならない事があるの、だからお願い』
スカリーはモルダーから、自分が残した最後の言葉を
聞くと、伝えたかった、もう一つの真実を思い出して
いた。
『でもマミー、もう時間ないよ、このままだとマミーは塵になってしまうんだよ

エミリーが心配そうに言った。
『・・・お願い、エミリー、もう少しだけ・・・』
スカリーは真剣な眼差しでエミリーを見つめた。
『わかったよ、マミー、あと少しだけだよ』
『ありがとう、エミリー』
エミリーはスカリーの言葉を聞くと、消えた。

******

『モルダー、モルダー』
僕を呼ぶ声がした。
僕はゆっくりと目を開けた。
「スカリー、どうしたんだい?」
『私、あなたにずっと言いたいことがあったの』
「何だい?」
僕の言葉を聞くと、スカリーは僕の瞳を見つめ、
そして天使のような声で囁いた。
『・・・あなたを愛しているわ』
スカリーは僕に優しく、口付けをした。
その感触は空気のような、不思議で甘い感触だった。
『モルダー、これでお別れよ』
スカリーは唇を離すと、悲しそうに言った。
「・・・スカリー、また次の世で会おう、僕は生まれ
変わっても、きっと君を見つけるから、だから、その時、
会おう」
僕はこみ上げてくる悲しみを堪えながら、笑った。
『モルダー、きっと見つけてね、あなたと来世で
出会えるのを待っているわ』
スカリーはそう言って微笑むと、僕の前から消えた。
「スカリーーーー!!!!!」
僕は思いの限り、彼女の名を呼んでいた。


***一ヶ月後***

「モルダーどうした?」
モルダーはスキナーのオフィスを訪れていた。
「今日は副長官にお願いがあってまいりました」
モルダーの瞳にもう暗い陰はなく、力強い光があった。
「何だね?」
「実はFBIに復職しようと思いまして」
スキナーはモルダーの言葉を聞いて、顔を輝かせた。
「では、XFを続けるのだな」
「はい、僕は真実を追求します!スカリーの分まで」
「そうか・・・」
スキナーは嬉しそうにそう言い、モルダーの復職を許可
した。


***XF課***

僕は再び、このオフィスに来ていた。
このオフィスのどこを見ても、彼女の姿を鮮明に
思い出した。
でも、もう僕は泣かなかった。
彼女と共に探し求めた真実があるから、
僕は悲しくなかった。
「スカリー、来世で会おう」
僕はそう言って、XFのキャビネットを開けた。





THE END

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース