DISCLAIMER:The characters and situations ofthe television program
"The x-files" arethecreation and property of Chris Carter,
FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
,No copyright infringement is intended.



TITLE:海へ 前編
AUTHOR:cat






引いては押し寄せる波・・・。
青々とした海が一面に広がる。
僕は彼方に広がる地平線を見つめた。


この先はどこへと繋がっているのだろうか・・・。
そして、どこへと流れつくのだろう・・・。


君が逝ってしまってから、どのくらいの歳月が流れたのだろう?
この海の向こうに行けば君に会えるのだろうか・・・。


「ダディ、海が真っ赤だよ」
海へと歩みを進めようとした時、傍らにいる幼い娘が、好奇心に瞳を輝かせた。
僕は優しく娘に微笑みかけた。




             ――――― 海へ ―――――




「スカリ−・・?」
事件捜査中、彼女の様子がいつもと違う事に気づく。
額には冷や汗を浮かべ、その表情は苦しそうだ。


「・・・何でもないわ」
僕にそう言い、彼女は仕事に専念しようとした。
「何でもないって様子じゃないだろう」
彼女の腕を掴み、その表情を覗き込む。
「・・・離して、私は大丈夫よ!」
僕の腕を振り払い、歩き出す。
しかし、次の瞬間、彼女はゆっくりと、倒れた。
「スカリ−!!」
慌てて駆け寄り、彼女を支えた。





「・・・ここは?」
病室のベットの上で、彼女が目を覚ます。
「・・・病院だよ」
ベットの側にある椅子に座り、質問に答える。
「そう」
小さく彼女が頷く。
その表情は、全てを悟りきったように冷静だった。
「・・・どうして、倒れたか・・・知っているみたいだな」
「えぇ」
小さくそう告げ、彼女は窓の方を見つめた。
その横顔に、不安になる。
「・・・スカリ−、話してくれないのか・・・」
掛け布団の上に置かれた彼女の白いに手の上に、自分の手を重ね合わせる。
彼女はゆっくりと僕の方を向き、一言告げた。
「・・・ガンが再発したわ・・・」
その言葉の衝撃に、目の前が真っ暗になる。
体中の力が抜けそうになる。
「・・・そんな・・・だって・・・」
言葉がうまく出てこない。
何かを言おうとしても喉の奥で詰まってしまう。
「・・・チップはもう機能していないわ」
首筋に触れ、僕の疑問に応えるように彼女が言った。
「・・・治る見込みもないそうよ・・・」
冷静なままの彼女が続ける。
その言葉の重さに気が遠くなりそうな程の思いに駆られる。





彼に今日初めて、自分の病の事を告げた。
絶望感がヘ−ゼルの瞳を悲しみの色で染める。
だから、彼に告げなかった。
ただの相棒である彼を必要以上に悲しませたくはなかったから・・・。
しかし、倒れてしまった以上、もう隠しておく訳にはいかない。
私は近い将来、彼よりも先にこの世を離れるのだから・・・。


「・・・そうか。わかった」
長い沈黙の後、彼はそう言い、病室を出て行った。
その後ろ姿は何とも言えない程、痛々しかった。




彼女からの突然の告白は、僕を暗闇の世界へと引きずり込んだ。
泣きたいのに涙が出ない・・・。
こんな事が・・・本当にあるのだと病院からの帰り道思った。
世界は孤独色に染まり、僕一人が置き去りにされたような焦燥感が襲う。
なぜだ?
なぜ僕から彼女を奪う?
どこにもぶつける事ができない怒りが込み上げてくる。


気づけば、通りすがりにぶつかってきた男を殴っていた。




「・・・二週間の停職を命じる」
スキナ−はそう告げ、困ったというように僕を見た。
「モルダ−・・・何をそんなにヤケになっている」
眼鏡を外し、僕を真っ直ぐに見つめた。
その瞳は上司としてのものではなく、父親のような優しさが見えた。


「・・・スカリ−のガンが再発しました」
そう一言、告げ、彼のオフィスを出た。





「スカリ−、調子はどうだね?」
入院してから3日後、スキナ−が病室を訪れた。
「副長官・・・わざわざ・・・すみません」
「近くまで来たついでにね」
彼にしては珍しく少し砕けた表情を浮かべた。
「・・・それで、体の方は?」
心配そうに私を見つめる。
「えぇ、もう大丈夫です。明日には退院できますから・・・」
「・・・そうか」
「あの、モルダ−はどうしています?」
入院した日以来、彼が私の病室を訪れる事がなかったのが気になっていた。
「・・・彼は停職中だ・・・」
その言葉に私は愕然とした。
「なぜ?」
「・・・一般市民と殴り合いのケンカをしてな・・・」
スキナ−は苦笑を浮かべた。





部屋中の電気を消して、カウチに横になっていた。
何もする気になれず、呆然と天井を見つめる。


「ケンカですって!あなたそれでもFBI捜査官なの!?」
「えっ」
その声に驚き、カウチから起き上がった。
薄暗闇の中で、彼女の影がぼんやりと見えた。
「・・・スカリ−・・・どうしてここに?」
「今日退院したのよ・・・。あなたがそんなに情けない人だとは思わなかった」
呆れたような彼女の声が続く。
「死ぬのは私なのよ!なぜあなたがそんなに・・・」
段々、彼女の声が涙で掠れていく。
「・・・スカリ−・・・」
たまらず、彼女を抱き寄せる。
「・・・ごめんなさい・・・あなたを残していく事を許して・・・ごめんなさい・・・」
僕の腕の中で震えるように泣いていた。
僕は一晩中彼女を腕の中に抱きしめていた。
彼女の存在を焼き付けるように・・・。
互いの不安を宥めあうように・・・。





「・・・海が見たいわ・・・」
外が薄っすらと明るくなり始めた時、私を抱きしめる彼に、そう告げた。



海につく頃、朝日が波を照らしていた。
その自然の美しさに、なぜか、涙が込み上げてきそうになる。


「寒くないかい?」
気づかうように彼が私に声を掛ける。
「・・・大丈夫よ・・・」
私たちは寄り添うように真っ白な砂浜に座り、朝の海を見つめていた。
波の音と潮風が心地よく感じられた。
張り詰めていた気持ちが穏やかになっていく・・・。
彼の肩の上に頭を置き、緩やかなこの空間に身を捧げた。




「スカリ−・・・君を愛している・・・」
穏やかそうな彼女の横顔を見つめていたら、ふと、そんな言葉が、口から漏れていた。
それはもう何年も言えなかった言葉だった。


「・・・モルダ−・・・」
突然の僕の告白に驚いたように僕を見つめる。
彼女の表情が険しいものへと変化し始める。
その変化に不安になる。
「・・・すまない。君に負担をかけるような事を言って・・・今、言った事は忘れてくれ」
そう言い、僕は立ち上がって、海を見つめた。





帰りの車の中、私たちは何も言葉を交わさなかった。


”・・・君を愛している・・・”
彼の突然の告白に、私の胸は高鳴った。
ずっと待っていた言葉だったのに・・・彼の気持ちに応える事はできなかった。
私は彼を残して逝ってしまう・・・。
その事だけでも、彼をこんなに苦しめているのに・・・。
彼の気持ちに応えれば・・・私は更なる苦しみを彼に残していってしまう。
本当はすぐにでも、彼の胸の中に飛び込み、思いを伝えたかった。
でも、私は彼より先にこの世から去らなければならない・・・。
気持ちを伝えたいのに伝えらない・・・。
そんな矛盾が心を締め上げた。


「母の家に連れて行ってくれるかしら・・・」
突然、母に会いたくなった。
彼は私の言葉を聞くと、車を母の家へと走らせた。



「ありがとう」
静かに、そう言い、彼女は車から降りた。
彼女に軽く笑ってみせると、僕は車を走らせた。




「ダナ!!・・・何があったの?」
私の顔を見るなり、母は心配そうに言い、私を抱きしめた。
久しぶりに感じる母の温もりに、ずっと抑えていたものが溢れ出す。
私は母の腕の中で泣き崩れていた。
まるで幼い子供のように・・・。


「ダナ・・・落ち着いた?」
私を優しく包み込むように抱きしめながら、母が言った。
「えぇ、ありがとう・・・ママ」
「何があったの?」
「・・・モルダ−に”愛している”と言われたの・・・でも、私には彼の気持ちに応える事が
できなかった」
自分の思い巡らすように、口を開いた。
「なぜ?」
「・・・私は・・・もうすぐ・・・死ぬから・・・」
私の言葉を聞いた時、母の表情が凍りつくのがわかる。
「・・・ダナ・・・」
今度は母が泣く番だった。




「・・・モルダ−・・・停職中じゃないのか」
オフィスにいると、スキナ−がそう言って入ってきた。
「・・・何かをしていないと落ち着かなくて」
苦笑を浮かべた。
「つくづく仕事なしには生きられない男だな、おまえは」
呆れたように、スキナ−が言う。
「・・・それはお互い様でしょ?あなたこそ、何しにここへ?」
「君がここにいると思ってね・・・」
「僕に何か用でも?」
「スカリ−が私に電話してきた・・・君が心配だと」
スカリ−の名にドキッとする。
「・・・そうですか。それで様子を見に?」
「まぁ、そんな所だ。電話の彼女は辛そうだった・・・モルダ−・・・君たちは何があったんだ?」
スキナ−の言葉に海での事を思い出し、切なくなった。
「言ってはならない・・・言葉を言ってしまった・・・それだけです」
そう言い、僕はオフィスを出た。





「ダナ・・・フォックスを愛しているのなら、包み隠さず、自分の気持ちを告げなさい」
母の家で過ごして一週間、母は私にそう告げた。
「ママ・・・でも・・・私は・・・」
「・・・ダナ、あなたはこうして、生きているのよ。限りある命を彼と過ごしなさい。
それがあなたにも、フォックスにも・・・正しい事なのよ」
「・・・でも・・・私は彼より先に逝かなければならないのよ」
「ダナ・・・、彼はそれは十分覚悟の上よ。素直になりなさい。あなたは後悔したまま
人生を終わらせたいの?」
母は宥めるように、私に言った。





「・・・あなたに伝えたい事があるの」
部屋に戻ると、一週間ぶりに見る、彼女の姿があった。
僕はじっと、彼女を見つめた。
「恐いの・・・私、あなたに自分の気持ちをさらけ出すのが・・・恐いのよ」
蒼い瞳は困惑したように、僕を捕らえていた。
「・・・だから、このまま、あなたに自分の気持ちを隠したまま逝こうと思った・・・でも・・・」
僕に近づき、彼女は頬に触れた。
「やっぱり、自分の気持ちを誤魔化したまま、逝きたくはない・・・最後の時が来るまであなたと一緒にいたい・・・」
蒼い瞳には涙が浮かびはじめている。
「・・・スカリ−・・・」
「・・・私も・・・あなたを愛している・・・」
僕の瞳を真っ直ぐに見つめ、彼女はそう告げた。
「・・・スカリ−・・・」
僕は涙で濡れる彼女の唇に触れ、その唇に自分の唇を重ねた。





               
     
                            To be continued.

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