DISCLAIMER:The characters and situations ofthe television program
"The x-files" arethecreation and property of Chris Carter,
FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
,No copyright infringement is intended.



TITLE:海へ 後編
AUTHOR:cat





自分の生きている証を残すように、私は彼に抱かれた。







     ―――――海へ 後編――――




僕の隣に眠っている彼女は安らかな寝顔を浮かべていた。
その無防備な寝顔に愛しさがこみ上げる。
そして、涙が流れそうになる。
泣いてはいけないと思えば、思う程、涙腺が熱くなる。


彼女と過ごせる時間はどのくらいあるのだろうか?
いくら体を繋げても、互いの気持ちを伝え合っても・・・。
その事に不安になる自分がいる。


ダナ・・・、僕の愛しいダナ・・・。
君は逝ってしまうのか・・・僕一人を残して・・・。


彼女を最初に抱いた時に覚悟していたはずなのに、涙が流れてくる。
抑える事のできない涙が・・・。





頬に何かが伝わる。
その感触に目を開くと、彼の悲しそうな表情があった。
彼の涙が私の頬に落ちる。


「・・・モルダ−」
彼の頬に触れた。
そして彼と瞳と瞳が重なる。
私たちはただじっと見詰め合って、言葉では伝えられない思いを伝え合った。
彼が私をきつく抱きしめる。
私の存在を確かめるように、そして、私も彼をきつく抱きしめ返す。






「ダナ、僕と結婚して欲しい・・・」
公園で仲の良い親子連れを眩しそうに見つめていると、彼が告げた。
「えっ」
突然の言葉に驚き、視線を彼へと向ける。
「・・・モルダ−・・・私は・・・」
何て言ったらいいのか、わからなかった。
もうすぐこの世から去る私に、彼は結婚を申し込んでいる。
「ずっと・・・考えていた。毎夜君の寝顔を見つめながら・・・。どうしたら君と一緒にいられるか」
モルダ−はヘ−ゼルの瞳を微かに潤ませた。
「・・・せめて書類上だけでも・・・永遠に一緒にいられたらって思ったんだ。僕の妻としての
君の名前が残る。そして君の夫としての僕の名前が残る」
「モルダ−・・・」
彼の言葉に目頭が熱くなる。
この人はずっと私の事を考えてくれているのだ。
そして、私を心から愛してくれている。
その思いが十分すぎる程伝わってきて、私は返事の代わりに涙を流していた。
「・・・ダナ、僕じゃ、役不足かい?」
不安気味に彼が口にする。
「・・・ううん。そんな事ない・・・あなたの・・・気持ちが嬉しいの・・・」
涙に声を詰まらせながら、告げた。







「ダナ、これはここでいいのかい?」
結婚した次の日、僕たちは互いのアパ−トを引き払い、新居に越してきた。
「えぇ、そうね。とりあえずそこでいいかな」
「普通は結婚する前に越すんじゃないのか」
引越しの手伝いに来ていたフロヒキ−が呟く。
「中々いい物件が見つからなかったから、仕方ないだろう」
「そこ。早く手を動かす」
スキナ−が横から僕とフロヒキ−に告げた。
「部下の引越しを手伝うなんて、いい上司だよな」
また、ぼそりとフロヒキ−が言った。
「目当てがあるからなんじゃないか」
ラングリ−が面白がるように言う。
「なんだよ、目当てって」
「決まってるじゃないか・・・」
と言ってバイヤ−ズがスカリ−を指し示す。
「なっ、ダナは僕のものだ」
少しムキになって答えた。
僕の反応に男たち3人は大笑いをした。
そして、僕も。
愛する妻がいて、信頼できる友人たちがいる、こんな瞬間がたまらず、楽しかった。






「ダナ、差し入れ持ってきたわよ」
そう言って母が現れた。
今度の家は母の家からも近く、頻繁に行き来ができるようになっていた。
「ありがとう、ママ」
「何か手伝えることはあるかしら?」
「う・・・ん、もう殆ど片付いちゃったから・・・ママは寛いでて」
「ダナ、こっちは終わったよ」
モルダ−はそう言い、男どもを引き連れて現れた。
「ありがとう、皆、さあ、お茶にしましょう」
ママの持ってきてくれたパイと、お茶を用意するため、私は新しいキッチンへと向かった。







「ダナ、無理はしていない?」
寝る前にふと、彼女の体の事が心配になった。
ここの所、結婚式や、引越しやらで、慌しく過ごしていた。
普通にこなしていても、疲れるのに、まして彼女はガンを抱えている。
それなのに、少しも具合の悪い所も見せず、生き生きと活動していた彼女が無理を
しているような気がした。


「大丈夫よ、モルダ−。私は嬉しいの。あなたとこうして、結婚して、新居に引っ越してきて、
同じベットで眠れることが、嬉しいのよ」
とても穏やかそうに彼女が微笑む。
「無理はするなよ」
「ええ、具合が悪かったら言うわ。今ね、自分でも驚く程、私元気なの。だから大丈夫よ」
そう言い、彼女は僕に口づける。
「ダナ、一つ君に言いたい事があるけど、いいかい?」
唇を離すと彼女を見つめて言った。
「えっ、何?モルダ−?」
「君ももう、モルダ−なんだぞ、何時になったら僕の事ファ−ストネ−ムで呼んで
くれるのかな?」
「えっ、あっ」
僕の言葉を聞くと、彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめ、そして
「・・・フォックス」
と小さな声で僕の名を囁いた。
「ダナ、愛してるよ」
腕の中に彼女を引き寄せ、耳元で囁いた。



それから三ヶ月間、彼女が倒れるまで、僕たちは甘い生活を送った。






「ダディ、海が真っ赤だよ」
娘は僕に好奇心いっぱいの表情を浮かべた。
「ダナ、おいで」
娘を抱き上げ、地平線に沈む太陽を見つめた。
「マミ−はこの海の向こうにいるの?」
幼い、娘の言葉にハッとする。
「おばあちゃんが言ってたよ。マミ−はこの海と一緒だって」
「そうだよ。マミ−はこの海と一緒になったんだ・・・」





「・・・フォックス、私が死んだら、灰を半分、海に投げ入れてくれる?」
海を見つめていると、彼女が静かに言った。
幾分か痩せ衰え、青白いその表情は彼女がこの世にいる時間が後僅かだという事を語っていた。
「ダナ・・・」
涙が溢れた。
「私の心はあなたとずっと一緒よ・・・例え体は離れても」
僕を見つめ、その細い腕で、僕を抱きしめる。
「大丈夫、まだ逝かないわ。あなたと私の子供の誕生を見届けるまでは」
僕と彼女は自分たちの子供を代理母に託した。
僕がどうしても、彼女の子供が欲しかったから、無理を言って彼女に承諾させた。


「私たちの子供誕生まで、後、半年・・・できる事なら自分で妊娠したかった」
「ダナ・・・」
「わかってる。私は子供の生める体じゃないって事は・・・自分で妊娠しなくても
愛する人との子供を持つ事ができる。そんな時代に自分がいる事に感謝しなくちゃね」
彼女はそう言い、儚げな笑みを浮かべた。
「フォックス・・・私の分まで、愛してあげてね。私たちの子を・・・」
蒼い瞳に涙を浮かべ、彼女は言った。
「あぁ、もちろん・・・愛するさ」
力強く、彼女を抱きしめ、静かに流れる波の音に耳を傾けた。



そして、それから半年後、彼女は娘の誕生を見届ける事なく、この世を去った。





「ダディ、泣いているの・・・」
心配そうに僕を見つめる娘に愛しい人の面影がうつる。
赤毛に、蒼い瞳、彼女が僕に残していってくれたものが僕を見つめる。
僕は、強く、娘を抱きしめた。
「ダナ、マミ−はきっと、この海の向こうにいるんだよ・・・。そして、ダナとダディを
見守っていてくれるんだよ」
そう告げ、彼方に広がる地平線を見つめた。




                      
 
                          The End



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