The characters and situations of the television prog
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TITLE:猫だまし
AUTHOR: cat
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「・・・キスしていい？」
「えっ？」
彼の方を見ると、ヘーゼルの瞳がいつもの冗談ではない
ことを告げていた。
「・・・ええと・・・その・・・」
いつもと違う空気に頬が熱くなる。
「うん？」
優しく私を見つめ、彼が一歩近づく。
「・・・あの・・だから・・・」
彼から視線を外す。
鼓動が早くなり、頭の芯がぼーっとなる。
いつもなら、軽口を叩いてかわすのに、なぜか今日は言葉
が出てこない。
「・・・スカリー？」
うつむいている私に、今度は心配そうな声がかけられた。
その声の響きに肩をピクッとさせる。
いつもなら他愛もないジョークですませるのに・・・。
今日の私は違う。
心の奥底に封印していた思いが、彼の一言で崩れ始めてい
た。
「・・・その沈黙はＹＥＳかい？」
軽く笑い彼が言う。
「えっ！」
彼の言葉に思わず顔を上げた。
彼の顔が近づいてくる・・・このままだと本当に・・・。
全身が葛藤に揺れる。
「・・・えっ！」
覚悟を決め、ぎゅっと目を閉じると、唇ではなく鼻に
何かを感じた。
「ははははははは、冗談」
目を開けると、軽く私の鼻を摘み、悪戯っぽく笑っ
ている彼がいた。
ひっかけたわね！！
まんまと彼の冗談にひっかかったことに、苦笑を浮かべ、
彼を睨む。
「・・・もうっ！」
恥ずかしさを隠すために、わざとらしく怒ってみる。
でも、心の中は冗談であった事にホッとしていた。
「・・・はははは、キスすると思った？」
意地悪く彼が言う。
「悪趣味よ、今のジョークは！」
「・・・なぜ？」
「えっ・・・なぜって・・・それは・・・」
彼の言葉に声が詰まる。
「・・・キスしてほしかったから？」
沈黙を破るように彼が言う。
「えっ！」
驚き彼を見つめた瞬間、唇が重なる。
優しく触れる彼の唇の感触に身も心も捕らわれそうなる。
「今のは・・・本気だよ、スカリー」
唇を離すと真っ直ぐに私を捕らえる彼がいた。
見た事のないその熱い瞳に彼への思いを意識する。
体中が大きく鼓動をうっていた。
突然の思いに押し潰されそうになる。
抑えていた気持ちに涙が溢れ出る。
「・・・モルダー・・・私・・・」
涙に詰まる私に彼は再び唇を重ねた。
とても深く、深く・・・。
身も心も一つにとけあうようなキスを・・・。
「スカリー・・・スカリー・・スカリ−・・・」
「う・・ん」
突然、誰かの声が耳に入ってくる。
「・・・風邪ひくよ」
うっすらと目を開けるとモルダーがいた。
「えっ・・・私・・・」
書き途中の報告書が目の前に見える。
「それ、明日にして今日はもう帰れば？」
呆れたように彼が言う。
「ええ・・・そうね・・・」
自分が眠っていた事に気づき、バツの悪い思いに襲われた。
そんな気持ちを隠すように、何事もなかったように報告書
を鞄の中にしまい、帰り支度を始める。
「・・・ふふふ・・・」
不意に彼の抑えた笑い声が聞こえた。
「何？」
片眉を上げ、彼を見る。
「・・・君がオフィスで居眠りするなんて・・・珍しいな
あと思って・・・」
含み笑いをしながら、おかしそうに彼が答える。
「誰かさんが休日の日まで事件持ち込むから、ゆっくり休
めないのよ！」
少しきつく彼を見る。
「はははは。なるほど・・・」
彼は苦笑を浮かべ、少し困ったような表情を浮かべた。
「ところで、スカリー、どんな夢を見ていたんだい？」
「えっ、夢？」
彼の一言で、ぼんやりと夢を見ていた事を思い出す。
「何だか、にやけていたように見えたのは気のせいかな？」
その言葉で夢の中の彼を思い出す。
「・・・にやけてなんか・・・ないわよ」
そう言い捨て、鞄を持ってドアの前に進んだ。
「ふぅ〜ん、どうかな？」
面白そうに彼が言う。
その言葉に、少しムッとして、夢の中で最後まで彼に翻弄
されっぱなしだった事に悔しさが浮かぶ。
「ねぇ、モルダー」
ドアに背を向け、彼を見る。
「うん？」
椅子に座り、ファイルを見つめながら彼が返事をする。
「・・・キスしていい？」
「えっ！？」
驚いたように彼が私を見つめる。
その瞬間、夢の中の彼がしたように唇を重ねた。
「おかえしよ」
唇を離し、呆然と私を見つめる彼にそう言った。
The End