TITLE:Murder−後編−
AUTHOR:cat



「・・・モルダ−」
スカリ−はモルダ−の隣で彼の寝顔を見つめていた。
そして、唇にそっと口付けると彼女はベットを抜け出した。





            ――― Murder 後編 ―――




Trrrrr・・・。Trrrr・・・。


モルダ−の耳に目覚まし時計代わりに、携帯の着信音が響いていた。
「う・・・ん・・・」
モルダ−は枕に顔を伏せたまま、ベット周りを携帯を求め手を泳がせた。


「・・・モルダ−」
「リックだ。至急来てくれ。犯人の身元が割れた」
「わかった」
そう言い、携帯を切ると、彼はベットの上に置いてあったメモを見つけた。


『モルダ−へ


昨夜の事は忘れて、私はあなたのパ−トナ−に戻るわ。
私が女だと言う事もこの事件が解決するまであなたの胸にしまっておいて欲しい
 
                                        ダナ・スカリ−   』




「・・・スカリ−・・・」
モルダ−は静かに彼女の名を呟き、瞳を閉じた。




***FBI 凶悪犯罪課***



「それで、犯人の身元は?」
モルダ−はそう言い、リックを見た。
「あぁ。ロバ−ト・レタ− 29歳。白人男性。逮捕暦6回の常習犯だ。この間スカリ−が遺体からとった歯形が犯
罪者リストと一致したんだ」
リックはロバ−ト・レタ−のファイルをモルダ−に渡した。
「・・・なるほど。医者の息子か・・・プロファイルとも一致するな。それで奴の居所は?」
「今、スカリ−が向かっている」
「・・・スカリ−が?」
「あぁ。捜査官を引き連れて向かった」
「わかった。僕も現場に向かう」
モルダ−はそう言いただちにオフィスを後にした。



******



「気に入ってもらえたかね。お嬢さん」
男は不気味に微笑んだ。
「・・・う・・・ここは・・・」
女が目を覚ますとそこは真っ赤な血で埋め尽くされたバスタブの中だった。
「いや−−−−−!!」
「ふふふふふ。そんなに喜んでもらえて嬉しいよ」
男はバスタブの中に手を入れ血を舐めた。
「さあ。ロバ−ト。君の番だよ」
男はそう微笑み戸口に立つ男を手招きした。




******



「準備はいい?」
スカリ−は現場に着くと、捜査チ−ムに呼びかけた。
「いつでも」
SWATチ−ムのリ−ダ−がそう言ったと同時にスカリ−は玄関のドアを開けた。


「FBIだ!!!!!!」
スカリ−の掛け声で現場は騒然とした。
FBIの捜査チ−ム、SWATチ−ムは銃を構え一斉に家中を捜索した。


そして・・・。


「いたぞ!!!」
その声に全員の緊張が高まる。
スカリ−は捜査官の声を聞きつけバスル−ムに向かった。
「うっ!」
バスル−ムの凄まじさにスカリ−は顔をしかめた。
真っ白な壁はベットリと一面血で塗られ、床には今までの犠牲者たちの首が並べられていた。
そして、バスタブは血で溢れ、全裸の男が浮かんでいた。
スカリ−はゴム手袋をし、バスタブに手を入れ男の生死を探った。
脈はなく、すでに死後硬直が始まっていた。


「くそっ!」
スカリ−は悔しそうに表情を歪めた。




******



「スカリ−・・・これは一体・・・」
一足遅れで現場に到着したモルダ−が言った。


「・・・犯人だと思われる男は首の頚動脈を切り、死亡。死後二日は経っている。凶器は地下室から発見。凶器につ
いている血は被害者の血痕と一致。犯人のコレクションと思われる被害者の首、ならび血液を発見」
スカリ−は全ての感情を閉じ込めたように淡々とモルダ−に言った。


「最後の犠牲者と思われるパトカ−の監視ビデオに写っていた女性も首を切断された姿で
発見。。。浴室にぶらさげられ、首は他の被害者同様コレクションの一部とてして床に並べられていた。。。。」
スカリ−の肩は微かに震えていた。
「・・・スカリ−・・・」
「これからクワンティコに戻り犯人並びに被害者の死因を詳しく検証」
スカリ−はモルダ−と視線を合わせず、そう言い、彼の前を通り過ぎようとした。
「待てよ。スカリ−」
モルダ−は咄嗟に彼女の腕を握った。
「・・・報告書は検死が終わり次第提出する」
スカリ−は尚もモルダ−とは視線を合わせなかった。
その表情は全ての感情を押し殺しているように見えた。


「・・・君は大丈夫なのか・・・」


心配そうに彼女を見つめる。
その問いに彼女は無言で、どこか遠くを見つめていた。
その表情は生気がなく、まるで蝋人形のようだった。


「・・・離して」


スカリ−は小さな声で一言呟いた。
そして、段々彼女の表情が崩れてくる。


「・・・私は・・・姉の敵を取りたかった・・・なのに・・・」


語尾が涙で震えてくる。
「みんな、悪いがスカリ−捜査官と少し二人きりにしてくれ。今回の事件の事で重要な確認をしたい」
モルダ−は周りの捜査官、鑑識、検死官にそう言い放った。
ただちに捜査チ−ムは部屋を出、一瞬でそこは静かな空間へと変わった。
モルダ−はスカリ−と二人きりになると、彼女を抱きしめた。
「・・・スカリ−・・・自分を責めるな・・・」
彼女の短い赤褐色の髪に触れ、耳元で囁く。
「・・・悔しい・・・犯人を無傷で捕まえられなかったことが・・・悔しい・・・」
スカリ−はモルダ−の胸に顔を埋め、涙した。
二人は悲しさを共有するように抱き合っていた。




それから二日後、吸血殺人容疑者死亡の知らせは瞬く間に全米のメディアに流れ、
その衝撃の結末は人々の心に強いインパクトを与えた。
そして、事件は一応の終結とした。




***一週間後・バ−ジニア州・クワンティコ・FBIアカデミ−・スカリ−のオフィス***



「やあ、スカリ−」
彼女がオフィスに戻ると、リックの姿が見えた。
「モルダ−の使いで来た」
「検死報告書か・・・もう少し、待ってくれ」
スカリ−は自分のデスクに座り、言った。
「何かひっかかる点でも?」
「あぁ・・・まあな。時間が経てば経つほど・・・釈然としない部分が・・・浮かぶんだ」
スカリ−はファイルを見つめた。
「・・・というと?」
「僕はまだこの事件は終わってないと思う。この犯人が自殺をするようには見えない」
「でも・・・被害者の血液で書かれた遺書が見つかったんだろ?」
「あぁ。だが・・・何だか匂う。それにロバ−ト・レタ−が犯人だったとは思えない。
少なくても主犯は他にいる」
「なぜ?」
「彼は確かに医者の息子で、一般人よりは医療に詳しかったかもしれない。しかし、彼が医療関係に勤務していたこ
ともメディカル・スク−ルに通っていたという経歴もない。この犯人は医者並の
知識があると思う。だが、彼の家には医学書の一冊でも見あたらなかった」
「なるほどな・・・しかし、それは推測にしかすぎないんじゃないか?彼が医療の知識がないというのは。学校に行
ってなくても、働いてなくても、彼は医者の息子だ。そっと医療を学ぶことだって
できる。本がなかったのは彼に必要がなかったから。必要な知識全て記憶に残してるからとか・・・考えられないか?」
「・・・あぁ。そういう見方も取れる。しかし・・・何かが違うんだ。僕の思い描いていた犯人と」
「・・・スカリ−、可能性を探すのはいいことだと思うが・・・君は少し考えすぎだ。僕はこの事件は
もう終わったと思ってる。少し息抜きでもしたらどうだ?」
「・・・息抜き?」
「あぁ。何だか、君は疲れているように見える。そういう時は息抜きだよ。よかったら、家に来ないか?明日の夜パ
−ティ−開くんだ」
「・・・パ−ティ−か・・・でも・・・」
「君には気分転換が必要だよ。これ僕の家の住所だから、来いよ。きっと楽しめる」
リックはそう言いメモを渡した。
「・・・そうだな。気分転換か・・・」





***凶悪犯罪課***



「まだいたのか?」
リックが遅くにオフィスに行くとモルダ−がいた。
「あぁ・・・家に帰っても誰もいないからな・・・。スカリ−の様子はどうだった?」
「少し疲れたように見えたが・・・多分、大丈夫だと思う」
「そうか」
モルダ−はホッとしたように言った。
「・・・まるで、恋人でも心配しているような顔だな」
モルダ−はリックの言葉にドキッとした。
「はははは。恋人か・・・悪いがおまえが想像するような仲じゃないよ。それに俺はゲイじゃない」
「どうかな・・・聞いたぞ。おまえとスカリ−が現場で抱き合っていたって・・真相はどうなんだ?」
リックはからかうように言った。
「あれは・・・ちょっと慰めてただけだ。彼は僕のパ−トナ−だからな」
「ただのパ−トナ−が男同士抱き合うか?」
「・・・今日はやけにひっかかるな。飲んでるのか?」
「いや。おまえをからかいたいだけだ」
リックはそう言って笑った。
「おまえな・・・」
モルダ−は軽くリックを睨んだ。
「これで・・・事件は終わったと思うか?」
リックは表情を厳しくした。
「あぁ。そう願いたいが・・・今の所。何も出てこないしな」
「そうか。俺ももう事件は終わりだと思う」
「・・・誰かロバ−ト・レタ−犯人説に疑問を持っている者がいるのか?」
「・・・いや。みんな奴が犯人だと思っている。それに現場に残された全ての証拠も一致するしな」
「・・・そうか」




***スカリ−の部屋***



Trrrr・・・。Trrrrr・・・。


スカリ−が横になっているとベットサイドの電話が鳴った。


「スカリ−」
「・・・僕だ」
その声は一週間ぶりに聞く声だった。
「・・・モルダ−・・・何か事件でも?」
「いや、君の声が聞きたくて」
モルダ−のストレ−トな言葉に大きく脈打つ。
「・・・あなたそうやって女を口説くの?」
スカリ−は照れ隠しにそう言った。
「違うよ。僕がどう口説くかは君がよく知ってるだろ?」
その言葉にスカリ−はモルダ−と過ごした夜を思い出した。
あの夜の彼は信じられないほどに優しく、彼女を抱いた。
「・・・もう忘れたわ」
スカリ−は少しきつく言った。
「つれないな・・・」
苦笑交じりにモルダ−が言う。
「まだ私が女だと言うことは内緒にしてくれてるの?」
「あぁ。スキナ−からも釘をさされてるからね」
「そう。ありがとう」
「・・・君、いつ女に戻るつもりだい?」
「この事件が終わったら・・・戻るわ」
「終わる?君はまだ終わったとは思ってないのか?」
モルダ−の声色が真剣なものへと変わる。
「ええ。何かひっかかるの」
「なぜ?」
「・・・よくわからないけど・・・私が想像していた犯人とは違う。こんなにあっさり死ぬとは思えない」
「・・・捜査官としての勘か・・・」
「あなたはどう思うの?」
「僕はもうこれで終わりだと思う」
「なぜ?」
「全ての証拠が彼に結びつくからだ。今の所ロバ−ト・レタ−が犯人ではないと疑える物も出てこないしね」
「・・・確かに・・・そうだけど・・・でも・・・」
「君はこの事件に気持ちを入れすぎて見えなくなっているんじゃないか?」
「確かに個人的感情はある。でも、これは検死官として、捜査官としての私の勘よ・・・きっと、まだ何かあるはず」
「・・・君の思い描く犯人はどういう感じなんだ?」
「用意周到で、この殺人は綿密な計画の上に建てられている。そして何か人とは違う底知れない物を持っていて、簡
単に死ぬような人間じゃない」
「確かに、僕もそう思う。人の裏の裏をかくような奴だと思う。だが、だからこそ、僕らの裏をかいて奴はあっさり
と死んだのではないか?奴にとっての最高の死を演出して・・・結果的に犯人を生きて捕まえられなかったのは・・
・奴の勝利だったと思うんだ」
「・・・確かに・・・でも・・・私の中の何かが違うって言ってる。私はこの勘は無視ではないと思うの・・・だか
ら・・・」
「・・・君には負けるね・・・わかったよ。好きなだけ調べてくれ。でも、終わったら、早く女に戻ってくれよ。僕
は一日も早く君を抱きたい」
モルダ−の言葉に微かにスカリ−の体が熱くなる。
「・・・モルダ−・・・」
「僕がこんなにも心惹かれたのは・・・君だけだよ。ダナ」
囁くような優しい声に、スカリ−の胸はいっぱいになった。




******



「よく来てくれたね」
スカリ−が家のベルを鳴らすとリックが現れた。
「気分転換しに来たよ」
スカリ−は軽く笑い、家の中へと入っていった。
中は広々としており、FBI捜査官が住むには贅沢すぎるほど豪華な作りになっていた。
「立派な家だな」
「・・・父の家を相続したんだ。彼は金持ちだったからね。少しリビングで待っててくれるかい?」
そう言い、リックはスカリ−を三十畳はある広々としたリビングに案内した。
「今、ワインを持ってくるよ」
「あぁ」
相槌をうつと、スカリ−は座りごこちの良さそうなカウチにゆったりと座った。




******



「これは・・・」
モルダ−はふと目にした写真に驚きの表情を浮かべた。
「リック捜査官に頼まれていたものです」
「いつ、できたんだ?」
「えぇ−と持ち込まれた次の日に・・・丁度二週間前ですね」
「・・・二週間前・・・」
「はい。記録ではそうなっています」
「・・・すまないが、この画像もっと詳しく絞り込めないか?」
モルダ−はそう言い、殺された警官のパトカ−に残された監視カメラの写真を渡した。
詳しく分析されたその写真にはロバ−ト・レタ−とは全く似つかない男が写っていた。
彼の胸に嫌な予感がしていた。




******



「・・・パ−ティ−なのに、僕以外は招待していないのか?」
食事の席でスカリ−はずっと気になっていた事を口にした。
「あぁ。実はね。もっと君と話してみたいと思ってたから。パ−ティ−とでも言わないと君は来てくれないだろ?」
リックは照れたように笑った。
「気に障ったかい?もし、嫌なら帰ってもいいだ。ただ僕は君と少し個人的な付き合いがしたい
と思って・・・あぁ、その変な意味じゃないからな・・・言っとくが僕はゲイじゃない」
黙って自分を見つめるスカリ−にリックはさらに言葉をまくし立てた。
「はははははは。何、焦ってるんだよ」
スカリ−はリックのその様子に可笑しくて、笑いを溢した。
「帰らないさ。そう言ってもらえて嬉しいよ」
スカリ−は笑顔を浮かべた。




******



「・・・それで、モルダ−の奴不器用にアイリスにプロポ−ズしたんだよ」
食事が終わり、リックとスカリ−はワインを嗜みながら、リビングで話に花を咲かせていた。
「ヘェェェ・・・モルダ−がね」
スカリ−は全然知らないモルダ−の話が聞けて嬉しそうに表情を緩めた。
「・・・なぁ、一つ聞いていいか?」
リックは少しスカリ−に近づき、真面目な表情で見つめた。
「何?」
「・・・君はモルダ−に惚れているのか?」
突然の言葉に思わず、ワインを溢しそうになる。
「ゴホッ、・・・な、なんだよ、急に・・・」
「いや・・・何だかそんな気がして・・・モルダ−の話をすると、君の表情が変わるから」
「・・・惚れてるというか・・・捜査官として、パ−トナ−として彼を尊敬している。ただそれだけだ」
「もう一つ、質問」
「何?」
「・・・君は本当に男なのか?」
その言葉に思わず、表情が固まる。
「・・・おい、もう酔ったのか・・・俺は男だ」
スカリ−は軽くリックを睨んだ。
すると、リックはじっとスカリ−を見つめ、顔を近づけ、唇を重ねた。
「うんっ!」
突然のディ−プキスに甘い声が漏れる。
「・・・やっぱり、女」
唇を離し、呆然としているスカリ−をリックが見つめる。
「・・・違う・・・俺は・・・」
スカリ−がそう言い、リックから離れようとした時、肩を強く捕まれ、彼女はカウチの上に押し倒された。
「・・・これでも、男だと言うのか」
リックはスカリ−のブラウスを引き裂いた。
すると、さらしに巻かれた白い胸が現れた。
スカリ−は抵抗しようと腕に力を入れた。
しかし、なぜか、力は入らず、それどころか意識が朦朧としてきた。
「・・・一体・・・何を・・・した・・・」
「そろそろ・・・効いてきたようだ」
リックはスカリ−を見つめ軽く笑った。



******



「モルダ−捜査官、画像の処理が終わりました」
それは夜も明けようとした時だった。
モルダ−は厳しい表情を浮かべ、その画像を見つめた。
そこに写っていたのは長身に細身の体型。そして、銀髪に整った顔立ちの男の顔が浮かんだ。
「・・・まさか・・・そんな・・・」
写真の人物にモルダ−は落胆した。


「捜査官を収集して、すぐに、ブラッド・リックを指名手配だ」
モルダ−は僅かに残った理性で、そう告げた。



******



「・・・う・・・ん・・・」
スカリ−が目を覚ますと、そこは薄暗い部屋の中だった。
体中の力という力は抜け、意識は朦朧としていた。
必死でベットの上を転がり、彼女は床に倒れた。
鈍く、痛みが響く。
家具を伝いゆっくりと立ち上がる。
目の前の鏡を見つめると、彼女は真紅のドレスを着せられ、唇には真っ赤なル−ジュが引かれていた。
鏡に写る彼女はまるで別人のように見えた。




******



Trrrr・・・。Trrrrr・・・。


数十回目のコ−ル音の後に、ようやく電話はとられた。


「モルダ−か?」
だが、電話の主は違っていた。
「・・・その声はリック・・・どうして、スカリ−の携帯に・・・」
モルダ−は自分の言葉にハッとした。
「スカリ−は無事なのか!!」
「・・・今の所はね」
「どうしてだ・・・どうして、おまえが・・・」
その後はやるせなさで言葉にならなかった。
「その様子だと・・・ようやく、俺の本性に気づいたみたいだな」
ゾッとするような低い声が響く。
「どこにいる?」
「さあ、どこかな。君にも招待状を出しておいたよ」
「招待状だと・・・」
「言っておくが、そろそろパ−ティ−は終わりでね。時間はあまり残されていないよ」
リックはそう言うと一方的に電話を切った。


「くそっ・・・」
モルダ−は壁を叩いた。




******



「・・・モルダ−捜査官、郵便物が届いています」
スカリ−の行方を捜して、丸一日。オフィスに戻ると、一人の捜査官にそう言われた。
「・・・郵便物・・・まさか・・・」
緊張がいっきに高まる。
差出人の名前はダナ・スカリ−となっていた。
「中身の検査はしたのか?」
「はい。危険物検査は済んでいます」
「そうか」
それを聞くと、モルダ−は手に薄手袋をはめ、慎重に小包を開封した。
中身は割れないように慎重に包装された小瓶に、写真が一枚だった。
「・・・アイリス・・・」
写真に写された女性を見つめ、呟いた。
「どうして・・・アイリスの写真が・・・」
小瓶に目をやると中身は赤ワインのように見えたが・・・開けてみると、明らかに違う匂いが
モルダ−の鼻を掠めた。
「・・・これは・・・血・・・まさか・・・」
モルダ−の脳裏に嫌な考えが浮かぶ。



「至急、これを調べてくれ。どこから郵送されたものか、そして、この瓶の中身は何か・・・」
ラボに急いで行き、モルダ−は険しい表情でそう言った。




******



よろよろとふらつきながらも、スカリ−は必死で壁を伝った。
そして、部屋を出て、廊下の突き当たりに行くと大きな窓があった。
窓の外を覗くと、そこは真っ青な海が広がっていた。


「ここは・・・?」


「・・・気づいたようだね・・・ダナ」
タキシ−ドに身を包み、凛とした姿のリックが彼女の後ろに立っていた。
「・・・ここは、僕と君と、モルダ−の終着点さ」
「あなたが・・・姉を殺したのね」
スカリ−は朦朧としながらも、毅然とリックを睨んだ。
「・・・彼女は美しかったよ・・・君のようにね・・・」
そう言い、じっとスカリ−のドレス姿を眺めた。
「・・・似合うよ。ダナ」
「どういうつもりなの!!」
「・・・僕はね。ダナ。女が嫌いなんだよ」
リックは海を見つめ静かに言った。
「そして、憧れている。だから、彼女たちの血を飲むのさ。彼女たちのようになりたいから。君のようになりたいか
ら・・・」
リックはスカリ−を抱き寄せ、唇を重ねた。
「うっ・・・」
スカリ−の口に鉄くさいものが注がれる。
「・・・君の血の味だよ」
スカリ−から離れるとリックはそう言い、ニヤリと笑った。
それを聞いて、すぐにスカリ−は口の中のものを吐き出した。
白い床に真っ赤な血が広がる。
「眠っている間に少し抜かせてもらったよ」
「・・・どいうつもりなの?あなたの目的は何?」
「・・・目的か・・・それは、もうすぐわかるよ。ダナ」
リックは寂しそうに笑った。




******



「全員ここで待機だ。僕が合図するまで中に入るな」
海辺に立つ屋敷に捜査チ−ムを張らせると、モルダ−はそう言い、一人建物の中へと
入っていった。



「・・・リック、いるんだろ!おまえの招待状は届いたよ!」
屋敷のドアを開け銃を構えると、彼は勝手知る建物の中を進んだ。


「懐かしいだろ?モルダ−」
どこからか、リックの声がする。
「あぁ。あの時のままだ・・・」
その声を探りながら、また一歩とモルダ−は歩みを進めた。
「・・・おまえのためにこの屋敷を用意したんだ」
「スカリ−はどこにいる!!」
「・・・安心しろ。彼女はまだ生きている。君を待っているよ」
「・・・彼女・・・知ってたのか・・・スカリ−が女だって」
「あぁ・・・楽しませてもらったよ」
リックの言葉にモルダ−の体が熱くなる。


「・・・おまえ、スカリ−に何した!!!!!!!!!!」


屋敷中にモルダ−の声が響いた。
「・・・さあ、何かな?」
リックは嬉しそうに笑った。
「彼女に手を出したらおまえの命はないぞ!!」
「ふふふ・・・冷静なおまえがそこまで取り乱すとは・・・本気って訳か。モルダ−そろそろ決着をつけるべきだな。
俺は今、おまえが立っているドアの中に彼女といるよ」
モルダ−はその声を聞くと、素早くドアを開け、中に入った。


「やあ。友よ」


リックはそう言い、目の前のモルダ−に笑みを浮かべた。
「・・・モルダ−・・・」
「・・・スカリ−・・・」
天井に吊るされた巨大な十字架に紅いドレスを着たスカリ−が吊るされていた。
「感動の対面はどうだね」
「今すぐ、スカリ−を下ろせ」
モルダ−は銃をリックに向けた。
「断る」
そう言い、リックは銃をスカリ−に向けた。
「俺の射撃の腕は知っているだろ?モルダ−」
リックの射撃の腕は局内でも五本の指に入るものだった。
「くっ・・・」
きつく唇を噛み、モルダ−はリックを睨んだ。
「・・・ははははは。おまえのその顔・・・好きだよ。ぞくぞくする。もっと見たくなるよ」
そう言うとリックは引き金を引き、天井に吊るされているスカリ−を撃った。


バン!!


銃声は部屋中に響き渡った。


バン!!


続けて、もう一つ銃声が響く。


「・・・好きだよ。おまえのその表情・・・」


頭を撃ち抜かれたリックはそう言い捨て床に倒れた。
モルダ−はすぐにスカリ−の元に駆け寄った。
紅いドレスの上にさにに真っ赤な血がドレスを染めていた。
「・・・スカリ−!!」
「・・・モルダ−・・・」
胸から血を流し、焦点の合わない瞳でスカリ−がモルダ−を見つめる。
モルダ−はスカリ−を下ろすと、床に横にし、頭を膝の上に乗せた。
「スカリ−、しっかりしろ!!今、医療班が来る」
「・・・モルダ−・・・私・・・あなたに・・・言いたいことが・・・」
空ろな瞳でモルダ−を見つめ、血に濡れた手でモルダ−の頬に触れる。
「・・・後で、聞く・・・今は喋るな」
「・・・今、言いたいの・・・あなたを・・・愛しているって・・・」
そう言うと、スカリ−は静かに瞳を閉じた。
「・・・スカリ−・・・しっかりしろ!!スカリ−!!!!!」
モルダ−は動かなくなった彼女に必死で呼びかけた。





******



柔らかい光の中に彼女はいた。
そこは白く、とても心地よかった。
ぼんやりと、していると、心配そうなモルダ−の表情が視界に入った。


「・・・モルダ−・・・」


「スカリ−・・・目覚めたのか・・・」
モルダ−はホッとしたように彼女を見つめた。
「ここは・・・一体・・・」
「病院だよ」
「・・・病院?」
「心臓のすぐ近くを撃たれたんだ。あと1ミリでも弾丸がズレていたら、君は死んでいた」
その言葉を聞いて、少しずつスカリ−の意識がハッキリしてくる。
「・・・リックは?」
「・・・彼は死んだよ。僕が撃った」
モルダ−は少し悲しそうに瞳を潤ませた。
「君の言った通り、真犯人は別にいた・・・君の忠告を聞いて、真剣に捜査を続けていたら
君を危険な目には合わせなかったのに・・・すまない。僕のミスだ」
「・・・モルダ−・・・あなたのせいじゃないわ。私も彼が吸血鬼殺人の真犯人だったなんて気づかなかった・・・
プロファイルとも違ったし・・・」
「いや。そんな事はない・・・彼の家は代々、医者なんだよ。だから、医療関係者というプロファイルは当たってい


た。近くにいすぎて、僕たちは見落としていたんだ」
「・・・どうして、私たちの居場所がわかったの?」
「奴がアイリスの写真を送ってきたからな」
「写真?」
「あぁ。君がいなくなってから直ぐに。あの屋敷は・・・アイリスの遺体が発見された場所なんだ」
モルダ−はそう言い、表情を歪めた。
「・・・モルダ−・・・」
スカリ−はそっとモルダ−の手に触れた。
「彼は・・・女が嫌いだって言っていた。でも、憧れるって・・・だから、血を飲むって」
「遺体を逆さまに吊るしていたのは・・・憎しみの表れだったんだ。そして、首を持ち帰っていたのは異常者の犯行
だと見せる為だ。彼にとっての獲物は血だから」
モルダ−は辛そうにそう言った。
「・・・なぜ、僕は気づかなかったんだ・・・彼は友人だと思っていた。なのに・・・」
「モルダ−、自分を責めないで、あなたのせいじゃないわ」
「・・・スカリ−・・・僕は・・・」
言葉を詰まらせると、モルダ−の瞳からは幾筋もの涙が流れていた。
「・・・モルダ−・・・」
スカリ−は上半身を起こすと、モルダ−を抱きしめた。
「・・・あなたのせいじゃない・・・」
モルダ−はスカリ−の腕の中で泣き崩れた。





***二週間後***



「それで、スカリ−捜査官、体調はどうだね?」


スキナ−は報告書を読み終わると、スカリ−を見た。
彼女は紺のス−ツに身を包み、キリっとした表情を浮かべていた。
「もう大丈夫です。これ、お返しします」
そう言い、デビット・スカリ−と書かれた身分証をスキナ−に渡した。
「・・・そうか。これからどうする?」
「検死官に戻ります」
「そうか」
「副長官には本当、お世話になりました」
「君は優秀な検察官だからね、クワンティコから君を早く返すように言われたよ」
スキナ−は苦笑を浮かべた。
「それでは、失礼します」
そう言い、スカリ−は席を立った。
「スカリ−捜査官」
スカリ−がドアのノブに触れようとすると、スキナ−の声がした。
「なんでしょうか?」
「・・・その、君はやはり女性の姿が一番似合っているよ」
スキナ−は僅かに頬を赤らめた。



***凶悪犯罪課***



「モルダ−主任捜査官はいますか?」


「えっ!あぁっ!!」
その捜査官の声に驚いて、課内の捜査官は皆スカリ−を見つめた。
「・・・まさか・・・スカリ−?」
話し掛けられた捜査官は驚いたように言った。
「えぇ。本当はダナ・スカリ−って名前だけどね。訳あって男性になっていたの」
「・・・という事は・・・今の姿が本当の君?」
「えぇ。そうよ」
課内の捜査官はスカリ−の美しさにぼ−っと彼女を見つめた。


「みんな・・・何やってるんだ」
奥の部屋からそう言ってモルダ−が現れた。
「・・・スカリ−!」
モルダ−も他の捜査官同様、驚いたように彼女を見つめた。
「あなたに、お礼が言いたくて・・・」
「あぁ。そうか。まぁ、こっちへ来てくれ」
そう言い、モルダ−は自分のオフィスに彼女を招き入れた。



「今の君が本当の姿か・・・驚いたよ」
「あら、あなたは女の私を知っているでしょう?なのになんでそんなに驚くの?」
「君の女性捜査官姿は見たことがなかったからね・・・いつもス−ツにネクタイだったし」
「それで、感想としては?」
「・・・綺麗だ」
モルダ−はじっとスカリ−を見つめて言った。
「あなたもステキよ」
スカリ−もじっとモルダ−を見つめた。
そして、二人は顔を近づけ、唇を重ねた。
「このままクワンティコに帰したくないよ」
唇を離すとモルダ−はスカリ−の耳元で囁いた。
「・・・あなたとパ−トナ−組むのはもうたくさんよ」
スカリ−はおどけたように言った。
「そうかな。僕たちは結構上手くいっていたと思うけどね」
「あなたが暴走しなければね」
「イヤ、君が暴走しなければ・・・だろ?」
二人はそう言い、顔を見合わせると笑い合った。


「また、何かあったらいつでもクワンティコに来て、あなたの事件を優先して検死するわ」
「何もなくても行くよ」
スカリ−はモルダ−の言葉に軽く笑った。


「・・・それでは、モルダ−捜査官。お世話になりました」


スカリ−はそう言い、モルダ−の前に手を出した。


「こちらこそ。スカリ−捜査官」


モルダ−はスカリ−の手を強く握った。
二人は暫く、見つめあい、そして、どちらからともなく手を放すと、スカリ−はモルダ−のオフィスを後にした。







                   


                                 The End



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
後書き


終わった−−−!!!
はぁぁ・・・catにとってはここまで長かったです。
どうでした?XF課じゃない二人(笑)
何か普通のFBIって感じがしません?←どんなんだ(笑)
事件ficってやっぱり難しいです。書けないものを無理矢理書いているので、
ハッキリ言って辻褄合わず・・・かなり消化不良気味だったのでは???と思うficです(苦笑)
それから、男性と偽って捜査するなんて・・・きっと大問題です(笑)
しかし、これはfic(笑)
なので、作者の都合のいいようになってます(笑)


ここまで、駄作に付き合ってくれた心の広いあなた!!感謝致します(ペコリ)


以上catでした。



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