DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions,
No copyright infringement is intended.

TITLE:復讐
SPOILOR:PUSHER
AUTHOR:cat
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女はゆっくりと銃口をモルダーに向けた。
その表情には何のためらいもなかった。
「さあ、その男を殺すのよ」
その言葉を聞いた時、女の瞳に殺気がこもった。
「スカリー!!やめるんだ!!僕がわからないのか!!」
モルダーは別人のようになってしまった相棒に叫んだ。
しかし、スカリーの瞳には以前として殺気がこめられて
いた。
モルダーはどうすることもできずに、静かに瞳を閉じた。
そして、次の瞬間、銃声が響いた。

***XF課2週間前****************

「明日から休暇をとるんだって?」
机に組んだ足をのっけて、すっかりと、くつろいでいる
モルダーが言った。
「そう、明日から一週間よ」
帰り支度を始めていたスカリーは、モルダーの方を向きながら嬉しそうに言った。
「君が一週間も休暇をとるとは珍しいな、彼氏と旅行に
でも行くのかい?」
「まあそうね、そういうことだから邪魔はしないでね」
モルダーはスカリーの言葉にオーバーに驚いた。
「スカリー、彼氏ができたなら僕に一番に紹介するって
約束だろ」
「モルダー、いつそんな約束したのよ」
スカリーは片眉を釣り上げた。
「今からだ」
モルダーは真剣にスカリーを見つめて言った。
「勝手ね、まあ残念ながら旅行に行く相手は女友達
だから、あなたに紹介するような人ではないわ」
スカリーは悪戯ぽっく笑った。
モルダーはスカリーの言葉に内心ほっとしていた。
「スカリー、頼むから僕の心をかき乱すようなことは
言わないでくれよ」
モルダーは冗談ぽく笑った。
「誰が、いつ心をかき乱すって?」
スカリーは呆れたようにモルダーを見た。
「もちろん、僕さ」
モルダーは悪戯ぽっい笑みを浮かべた。
「はいはい、あなたの気持ちはよ〜くわかってるわ、
だから私の休暇を邪魔するようなことはしないでね」
スカリーは小さい子を宥めるように、軽くモルダーをあしらった。
「邪魔って携帯にかけるとかも?」
「別にかけていいわよ、でも、携帯は持っていかないから
電話に出ることはないと思うけど」
スカリーは勝ち誇ったように笑った。
「そうかい、そうかい、わかったよ」
モルダーは降参したというような表情を浮かべた。
「そういうこと、それじゃあ一週間後に会いましょう」
スカリーは嬉しそうにそう言うと、オフィスを出て行った。

***2日後スキナーのオフィス***********

モルダーはスキナーに呼ばれていた。
「副長官、僕に用件とは?」
モルダーは険しい表情を浮かべているスキナーの前に
座った。
「実はな、ピーター・ブライアンが二週間前に死んだ
そうだ」
モルダーはスキナーの言葉に驚き、言葉を失った。
「モルダー、私はブライアン事件のことをよく知らない
んだ。その、もし話すのが苦痛ではなかったら詳しい
話が聞きたい」
スキナーは穏やかな口調で言った。
モルダーは暫くの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「・・・あの事件は僕が入局してまもない頃の事だ」

******

フィラデルフィアで若い女性の連続誘拐事件が起きていた。
犠牲者は3年間で42人。犯人の手がかりは全くなく、捜査は難航していた。僕
は支局からの要請で誘拐事件の捜査チームに加わった。
僕のプロファイルでは、犯人は社会的地位の安定した職業についており、知能も
並外れて高い白人男性、年齢は20代後半から30代前半。
とにかく全ての面に恵まれた環境に育ったが、女性からの愛情にだけは飢えてい
る人物だと推測された。そして僕は犯行は金曜日の新月の晩に集中して行われて
いたことに気づいた。
そのことが事件解決の糸口になり、容疑者が浮かんだ。
容疑者の名前はピーター・ブライアン、職業は精神科医、
年齢26歳、彼の家は代々医者の家系で、恵まれた環境に育っていた。
ピーター・ブライアンは月に一度、新月の晩の金曜日に、女性だけを集めたセミ
ナーを開いていた。
そして、ある金曜の新月の晩に、やっと奴のしっぽを掴む
ことができた。
僕は女性たちを監禁している屋敷をつきとめ、
奴を追い詰めた。
「ブライアン、大人しく降伏しろ!」
僕は奴に銃を向けた。しかし、奴は誘拐した女性を盾
にして逃げようとした。
「おい、FBI!!銃を捨てないと、この女を殺すぞ」
ブライアンは銃を女性に向けた。
僕は仕方なく銃を下ろした。
奴は僕の銃を拾うと、女性を盾にしながら僕から離れ、女性たちを監禁している
部屋に入って行った。
そして、悲劇が起きた。奴が部屋に入ると銃声と女性の
悲鳴が部屋から聞こえてきた。
僕は隠し持っていた銃を握り、その部屋に入った。
部屋の中はまさに地獄だった。壁と床には真っ赤な血が
ペンキで塗ったようにベッタリとついていた。そして10人以上の女性たちが血
の海とかした床に倒れていた。
「ブライアン!!やめるんだ!!!」
僕は再び奴に銃を向けた。
しかし、それでも奴は女性を撃とうとした。
僕は奴の利き腕を撃ったが、奴は銃を反対の手に持ちかえ
女性を打った。
その次の瞬間、僕は奴の頭を撃ち抜いた。
奴は奇跡的に命だけは助かり、植物人間として生き続けた。

******

「42人中生存者はたったの13人だった」
モルダーは悔しさに表情を歪ませた。
「僕が奴を追い詰めた時に撃ってれば、生存者は
もっといたでしょう」
「モルダー・・・君は捜査官としてベストをつくした。
それに奴は死に、事件は終わったんだ」
スキナーは静かにそう言った。

***某郊外にある屋敷***************

「うわ〜!素敵〜!!」
スカリーは屋敷に入るなり、感嘆の悲鳴をあげていた。
「気に入ってくれて嬉しいわ、ダナ」
ブロンドの長い髪をまとった、モデルのように美しい女性
がスカリーを出迎えた。
「招待してくれてありがとう!!シャーリー」
スカリーは満面の笑みを浮かべた。
「こちらこそ、来てもらえてとっても嬉しいわ」
シャーリーは優美な笑みを浮かべた。
「さあ、屋敷を案内するわ、ダナ」

***モルダーの部屋****************

”もう事件は終わった”
スキナーの言った言葉が妙にモルダーの心に
引っかかっていた。
モルダーは再び当時の事件ファイルを漠然と眺めていた。
しかし、自分が何に引っかかっているのかわからず、
モルダーは考えるのをやめ、カウチに横になった。
そして無意識の内にスカリーの携帯に掛けていた。

***ある屋敷の客室****************

Trrrrrr・・・・。
スカリーが寝付けずにいると、どこからともなく携帯の着信音が鳴っていた。
スカリーは音の発信源である、バックの中を覗いてみた。
「やだ」
スカリーは無意識に持ってきてしまった携帯を見つけると呟いた。
携帯はしつこく鳴っていた。スカリーは一瞬電源を切ろう
としたが、着信表示のモルダーという名前を見て、電話
に出た。
「はい、スカリー」
スカリーは声をいつもより低くして、わざと不機嫌そうに
出た。
「驚いたな、携帯は置いていくんじゃなかったのかい?」
モルダーはとても嬉しそうに言った。
「・・・長年の習慣で無意識の内に持ってきてしまった
のよ、それより何かあったの?」
「いや、別に何もないけど・・・ただ君の声が聞きたくて
休暇は順調かい?」
「ええ、素晴らしく楽しいわ」
「そうか、それはよかった」
「モルダー、そっちはどう?」
「相変わらずたまった報告書におわれているよ」
「そう・・・ねえ、モルダー本当に何もなかったの?」
「どうしてそう思うんだい?」
「・・・何だかあなたの声に元気がないような気がして」
モルダーはスカリーの鋭さに改めて感心した。
「・・・ちょっと気になる事件があったんだよ」
「どんな事件?」
「・・・休暇中なんだろ?」
「そうだけど・・・あなたが落ち込む程の事件なんでしょ?気になるわ、話して」
「僕は別に落ち込んでないよ、ただちょっと感傷的に
なっただけさ、事件の内容は君が戻ったらじっくりと
話すよ、それより君の話が聞きたいな」
「えっ、どんな話?」
「例えば君が今何処にいて、どんなホテルに泊まってて、
誰と熱い夜を過ごすとかさ」
モルダーは悪戯っぽく言った。
「モルダー、最後の熱い夜って何よ」
「だから例えばってことさ」
モルダーは笑いながら言った。
「残念ながらそういう相手はいないわ」
「僕だったら、君のような美人ほっとかないのに・・・」
モルダーは囁くように言った。
「・・・モルダー、あなた酔ってるでしょ?」
「えっ、何でだい?」
「だってあなたまるで私を・・・」
スカリーはそこから先の言葉をあえて言わなかった。
「まるで何だい?」
そう言ったモルダーの声はいつもよりも優しく聞こえた。
「別に、何でもないわ」
スカリーはモルダーに戸惑いを感じていたが、表面には
ださないようにしていた。
「スカリー、もし見知らない土地で僕たちが出会ったら、
君と僕は恋に落ちると思うかい?」
「つまり知らない場所で、しかも初対面でってこと?」
「そう、何の肩書きもなくて、ただの男と女として
出会うってこと」
「・・・さあどうかしらね、わからないわ、あなたは
どうなの?」
「僕はどんな状況で出会おうと、間違いなく君に恋すると思うよ」
「・・・モルダー、やっぱり酔っているでしょ?」
「少しね、でも今言ったことは酔った勢いで言ったわけ
じゃないよ、僕は君と離れてみて改めて君に惚れているってことに気づいたんだ」
「・・・モルダー、あなた完全に酔っ払っているわよ、そろそろ寝た方がいいん
じゃない?」
「・・・スカリー、僕は、君を・・・」
モルダーは真剣な声でそう言って、暫く黙った。
「モルダー?どうしたの?」
「何でもないよ、どうやら僕は完全に酔っているようだ、
スカリー、休暇中に邪魔して悪かった、そろそろ電話を
切るよ、それじゃあ、おやすみ」
そう言ってモルダーは電話を切った。
スカリーは携帯を静かに切ると部屋を出た。

***庭園*********************

スカリーはモルダーの言葉に益々眠れなくなり、ふらっと
庭を散歩していた。
”君に惚れている”
「あの言葉はどういうつもりで言ったの?」
スカリーは一輪の薔薇を見つめながら呟いた。
「モルダー・・・どこまでが冗談なの?」
スカリーはモルダーの言葉に動揺していた。
「見事でしょう?」
スカリーが薔薇を見つめていると、後ろから声がした。
「ええ、素晴らしいわ、シャーリー」
スカリーはゆっくりとシャーリーの方を向いた。
「ダナ、眠れないの?」
シャーリーは心配そうに言った。
「ええ、ちょっと考えたいことがあって」
「・・・例の相棒の事?」
スカリーはシャーリーの言葉にドキッとした。
「どうやら図星のようね」
シャーリーは優しく微笑んだ。
「私、時々、自分がわからないの・・・いつもは何でも
ない冗談として聞き流せるのに、冗談として受け止められ
なくなるのよ」
「・・・それは彼の言葉が本気だからじゃないの?」
「えっ、まさか・・・」
スカリーはシャーリーの言葉に、さらに動揺した。
「私もかつて、あなたと同じような思いをしたことが
あるわ。人を真剣に愛すれば愛するほど、自分がわからなくなるものなのよ」
そう言ったシャーリーは悲しそうに薔薇を見つめた。
「この薔薇はね、全て私の弟が植えたものなの」
シャーリーは愛しそうに薔薇に触れた。
「まあ、弟さんは亡くなったの?」
「ええ、銃で撃ち殺されたの」
シャーリーは悲しみに表情を曇らせた。
「そうだったの・・・御悔やみを言うわ」
スカリーはとても悲しそうに言った。
「あなたがそんなに悲しまなくてもいいのよ。ダナ、
あなたのせいで死んだんじゃないんだから・・・」
シャーリーは優しく微笑みスカリーの手を握った。
「弟はあなたの相棒に殺されたのよ」
シャーリーの言葉を聞いた時、突然、スカリーの腕に
鋭い痛みが走った。
スカリーは驚いてシャーリーから離れた。
「大丈夫よ、今は殺しはしないから」
シャーリーは背筋が凍る程の冷たい笑みを浮かべた。
「・・・シャーリー・・一体・・・何・を・・・」
スカリーはそう言うと、意識を失った。
「ダナ、あなたには悪いけど、利用させてもらうわよ」

***10日後スキナーのオフィス**********

スカリーは休暇を過ぎても戻ってこなかった。
モルダーは連日スカリーを探したが、何の手がかりも
掴めなかった。
「副長官、スカリー捜索に進展があったというのは本当
ですか?」
モルダーはスキナーを真っ直ぐに見つめた。
「ああ、スカリーが何処に行っていたかわかった」
「どこです」
「・・・カナダだ」
「じゃあ今すぐ行ってきます」
モルダーはそう言って、スキナーのオフィスから出よう
とした。
「待て、モルダー、カナダに行くことは許可できん」
スキナーは厳しい表情を浮かべた。
「なぜです!!」
モルダーはスキナーを睨んだ。
「いくらFBIでもカナダの管轄で捜査することは
認められてないからだ」
「・・・では個人的にスカリーを捜索するので、休暇
を下さい」
モルダーは真剣な表情でスキナーを見つめた。
スキナーは暫くの沈黙の後、口を開いた。
「いいだろう、但し、休暇扱いだからFBIのIDと
銃は置いていけ、それから向こうで何か問題を起こして
も、私は一切、君を助けることはできんぞ」
「はい、わかりました」
モルダーはそういうと銃とIDを置いて、スキナーの
オフィスを出た。

***カナダ********************

モルダーは目撃者の証言をもとに、ある屋敷に辿り着いた。
その屋敷に着いた途端、モルダーはデジャビュを感じて
いた。
「どうかなさいました?」
モルダーが庭先で立ち止まっていると、女性の声がした。
「いえ、その、何処かでこの屋敷を見たような気がして」
「この屋敷は雑誌にも載りましたからね、きっと
それを見たのでしょう」
女性は優しく微笑んだ。
「あの、実は友人を探しているのですが」
そう言ってモルダーはスカリーの写真を見せた。
「あら、ダナじゃない」
「えっ、知っているんですか?」
「ええ、彼女は三日前までこの屋敷に泊まってましたよ」
「それで、彼女は今何処に?」
「さあ、突然行きたい所があると言って、出て行って
しまったので・・・」
「・・・そうですか」
「でも、アメリカに戻る前にまたこの屋敷に寄ると
言ってましたわ」
「えっ、それじゃあ彼女が現れるまでここに泊めてもらってもいいですか?」
「ええ、別にいいですわよ、部屋なら一杯ありますし、
今、案内させますわ」
そう言って女性は使用人を呼んだ。

***客室*********************

案内された客室はモルダー一人が使うにはあまりにも広かった。
「モルダー様、お荷物はここで宜しいでしょうか?」
この屋敷の執事らしき男が言った。
「ああ、そこでいい」
「それでは私はこれで失礼致します」
「あっ、ちょっと待ってくれ、君に聞きたいことがあるんだ」
「何でございましょうか?」
「僕がさっき、庭で会った女性は誰だい?」
「このお屋敷の主であられます、シャーリー・マクドール
様でございます」
「・・・シャーリー?」
モルダーはシャーリーという名前が妙に引っかかった。
「彼女は一人で住んでいるのかい?」
「申し訳ございませんが、シャーリー様のプライベート
なことはお答えすることができません」
「そうか、それじゃあスカリーの事を話してもらいたいんだが」
「スカリー様ですか、あの方は三日前に出ていかれましたが」
「スカリーが出ていく前、何か変わったこととかなかったかい?」
「何もなかったと思いますが・・・」
「そうか、ありがとう、もういいよ」
「失礼致します」
執事らしき男はそう言って部屋を出て行った。

******

明らかにこの屋敷には何かあると、捜査官としての
モルダーの勘は言っていた。
そこで、モルダーは夜中になってから行動に出ること
にした。

***午前2時過ぎ*****************

モルダーはまずはスカリーが泊まっていた客室に
行ってみた。
スカリーの泊まっていた部屋はモルダーに与えられた
客室と同じ作りになっていた。
部屋中調べてみたが、スカリーがいたという痕跡は何も
出てこなかった。
モルダーは何気なく窓の外を覗いた。
スカリーのいた部屋からは薔薇園が見えた。
モルダーはその光景を見て、何かを思い出した。
そして次の瞬間、モルダーの視界に人影らしきものが見えた。
「・・・スカリー?」
モルダーはすぐに薔薇園に向かった。

***薔薇園********************

近くで見ると薔薇は鮮やかに咲いていた。
モルダーには薔薇たちが何か強い意志を持って咲いて
いるように見えた。
「あら、モルダーさん、どうなさったんですの?」
後ろからシャーリーの声がした。
モルダーが後ろを向くと、シャーリーが立っていた。
「その、スカリーをこの薔薇の中で見たような気がして」
モルダーの言葉を聞くと、シャーリーはぞっとするぐらい
冷たい笑みを浮かべた。
モルダーはその笑みを見た瞬間、ずっとひっかかっていた
ものが何だったのかを理解した。
「シャーリー・マクドール・・・この名はブライアンが
誘拐し、殺害した女性たちの中にあった」
「あら、何のことですの?」
「君の本当の名はシンディー・ブライアン。ピーター・ブライアンの実の姉じゃ
ないのか?」
シャーリーはモルダーの言葉を聞くと、笑い出した。
「やっと思い出したんですわね、私、あなたに気づいて
もらえるように、わざわざピーターが女性たちを監禁して
いたのと同じ造りの屋敷を用意しましたのよ」
「ああ、この薔薇園を見て思い出したよ、さあシンディー
スカリーに会わせてもらおうか」
モルダーは銃をシンディーに向けた。
「いいですわよ、さあダナいらっしゃい」
シンディーがそう言うと、何処からともなくスカリーが
現れた。
「スカリー・・・」
モルダーはスカリーに近づいた。
「スカリー!?」
モルダーはスカリーの様子がおかしいことに気づいた。
「シンディー、スカリーに何をした!!」
モルダーの言葉を聞くと、シンディーは冷笑を浮かべた。
「私は弟が植物人間になってからずっと考えていましたの
どうすればあなたに苦しみを与えられるかを・・・。
答えは簡単、あなたがもっとも信頼している者の手であなたをあの世に送る。こ
れこそ最高の復讐だと思いません?」
シンディーは嬉しそうに言った。
「嬉しいわ、こうして私の計画が実行される日がくる
なんて、さあダナ、その男はあなたの敵よ」
シンディーの言葉を聞くと、スカリーはモルダーに銃を
向けた。
「・・・マインドコントロールか」
モルデーはシンディーを睨みながら言った。
「ええ、そうよ、彼女には強力にかけてあるから絶対に
とけないわ、さあどうする?あなたが助かるには彼女を
その銃で撃つしかないわよ」
そう言うと、シンディーは狂ったように笑った。
「・・・スカリー、僕だ、モルダーだ」
モルダーは必死にスカリーに呼びかけた。しかし、スカリーは何の反応も示さず、
以前として、モルダーに銃を向けていた。
「無駄よ、ダナには私の声以外、何も聞こえないわ、さあ、ダナ、その男の左腕
を撃ちなさい」
シンディーがそう言った次の瞬間、銃声が薔薇園に響いた。
モルダーは左腕をスカリーに撃たれた。
「どう?あなたの大切なバートナーに撃たれる気分は?」
シンディーは意地悪く笑った。
「・・・最高の気分だよ」
モルダーは左腕を抑え、唇を噛みながら言った。
「まだ余裕があるみたいね・・・、ダナ、今度はその男
の足を撃ち抜きなさい」
その言葉を聞くと、銃声は再び薔薇園に響いた。
しかし、今度は右足を軽くかすった程度だった。
「ダナ!!どうしたというの!?」
シンディーは予想外のスカリーの行動に取り乱した。
「スカリー!!!僕がわかるのか?」
モルダーはスカリーに少しずつ近づいた。
スカリーは目に涙を浮かべ、モルダーに銃を向けていた。
「ダナ!!その男を殺しなさい!!!」
シンディーは大声で叫んだ。
「スカリー!!君は強い心の持ち主だ、彼女の言葉に
負けるような君じゃないはずだ」
モルダーはまた一歩スカリーに近づきながら言った。
「その男を殺しなさい!!」
その言葉を聞いてスカリーは銃を撃った。
モルダーは静かに目を閉じた。
「そんな、馬鹿な・・・」
モルダーが再び目を開けると、シンディーが倒れていた。
「ダナ、その男を、殺すのよ」
最後にそう言い残すと、シンディーは目を閉じた。
モルダーはスカリーの腕を掴むと抱き寄せた。
「スカリー・・・」
スカリーは何も言わず、銃口をモルダーの心臓につけた。
「いいさ撃てよ、君に撃たれて死ねるなら、僕は幸せ
だよ、スカリー」
モルダーはそう言って、持っていた銃を捨てた。
スカリーは濡れた瞳でモルダーを見つめた。
「どうした、なぜ泣く・・・」
モルダーはスカリーの頬に流れている涙を指で優しく拭いた。
「スカリー、最後にこれだけは言わせてくれ、僕はずっと
ずっと、君を愛していた。いや、愛しているんだ。スカリー、もう一度生まれ変
わって君に出会えたら、今度こそ君を・・・」
そう言ってモルダーはスカリーの唇を奪った。
スカリーの大きく美しい瞳からは大粒の涙が絶え間なく
流れた。 
そして、スカリーは静かに瞳を閉じると銃を離した。

***一週間後病院*****************

「やあ、スカリー、調子はどうだい?」
モルダーはスカリーの病室に入り、彼女の側に座った。
「もう大丈夫よ、でも・・・」
スカリーはベットから起き上がった。
「でも、何だい?」
「私、操られていた時のこと何も思い出せないの」
「そうか・・・シンディーとは何処で知り合ったんだい」
「確か、私がよく行く喫茶店だったと思ったわ、丁度
その日はとても混んでて、偶然彼女と相席になったの」
「なるほど、それからシンディーと親しくなったという
わけか・・・」
「ええ、彼女とはとても気が合ったわ、でも、それも全て
あなたを殺すための計画だったのね」
「ああ」
「彼女、どうしてそこまでしてあなたに復讐したかったの
かしら」
「・・・多分、弟のピーターを愛していたからだよ。
ブライアン家は代々医者の家系でね、そして彼らの両親
も医者だった、二人とも医者としては名医だったが、親
としては厳格すぎるぐらいに厳しくて、決して暖かい
家庭とは言えなかったんだ」
「それで頼れるのは姉と弟しかなかったのね」
「ああ、弟の方は姉を一人の女性として愛していた」
「シンディーは?」
「シンディーはピーターを弟以上に見ることができなかった。だから、ピーター
から逃げるようにして結婚したんだ。そして心の支えを失ったピーターは姉に似た
女性ばかりを誘拐し、殺した」
「そしてピーターを犯罪者にしてしまったシンディーは
罪の意識を感じて、あなたに復讐したという訳ね」
「ああ、まあそんなところだと思う」
「なるほど、全てはやりばのない愛が起こした、悲劇と
いうわけね」
「愛は凶器にもなるってことだな」
「ねえ、モルダー?」
「何だい?」
「あなたはそこまで人を愛したことある?」
「もちろんあるさ、君を愛しているからね」
「モルダー、また銃で撃たれたいの?」
「君にだったら何度撃たれても構わないよ」
Trrrrr・・・。
モルダーの携帯が鳴った。
「はい、モルダー」
モルダーは一言二言、相づちをうつと、携帯を切った。
「何か事件?」
「いや、スキナーからの呼び出しだよ」
「モルダー、あなたまた報告書出してないでしょ?」
「・・・さてと、そういう訳だから」
モルダーは報告書のことをわざと答えずに、椅子から立ち上がった。
「それじゃあ、また」
そう言ってモルダーはスカリーの頬にキスをし、病室の
ドアに向かった。
「スカリー」
ドアノブを握りながらモルダーはスカリーの方を向いた。
「何?モルダー」
モルダーは暫くスカリーを真剣に見つめ、そして口を開いた。
「愛してるよ、スカリー」
スカリーは一瞬呼吸が止まりそうだった。でも、表面には
出さずに、いつも通りに答えた。
「はいはい、わかったから、早くスキナーの所に行きなさいよ」
スカリーは動揺を隠すため、やれやれといったような態度
をとった。
モルダーは何か言おうとしたが、何も言わずにスカリーに笑顔を向けると病室を
出た。
「・・・愛してるか、全くどこまでが本心なのかしら」
スカリーはモルダーの言葉に苦笑しながら、ふと何かを
思い出した。
「そういえば、前にもモルダーに言われたような・・・」
そう言って、スカリーは自分の唇を触った。
「まさかね、あれは夢よね・・・」
スカリーは唇に触れながら静かに微笑んだ。







THE END

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