DISCLAIMER:The characters and situations of the television program "The x-files" are
thecreation and property of Chris Carter,FOX Broadcasting and Ten-Thirteen productions
No copyright infringement is intended.

TITLE:逆行 Part12
SPOILOR:none
AUTHOR:cat
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何が真実なんだろうか?
私はなぜこんなことを・・・。
 
『なぜクライチェックを殺さなかったのです?』
CSMの頭の中に突然アニータの声が響いた。
「・・・奴にはまだ利用価値があるからだ」
『いいえ、あなたはクライチェックを殺したくなかったの
です』
「違う!!」
『私にはあなたの心の中が見えます。あなたの中にはまだ
迷いがある』
「うるさい!!!黙れ!!」
『忘れるのです。ティナ・モルダーの事を』
「・・・彼女の事などもう忘れているさ」
『ならなぜ、フォックス・モルダーを殺さない?』
「奴には利用価値があるから・・・」
『ハハハハハハ!!それは嘘。そうやって自分の心を
偽っているんです』
「違ーーーーーーーう!!!!!」
CSMは体中から声を張り上げた。

***地下9階・手術室***

「さあ、私の要求を聞きなさい!!」
スカリーは手術用ナイフを持つ手に力を込めて叫んだ。
アニータクローンたちは相談するかのようにお互いを
見つめあった。
「・・・わかったわ。あなたの要求を飲むわ」
どこからともなく第三者の声がした。
「誰?」
スカリーは声がした手術室の入り口を見つめた。
「私よ」
そう言って声の主はスカリーに見える位置まで進んだ。
「・・・ダイアナ」
「彼もいるわよ、さあ」
そう言ってダイアナは後ろを向いて、誰かを呼んだ。
そして、ダイアナに呼ばれた人物はゆっくりとスカリーの
前に現れ、彼女を見つめた。
「・・・モルダー」
スカリーは微かに声を震わせて彼の名を口にした。
「・・・スカリー、君を助けに来たよ」
モルダーは微かに瞳を潤ませて、小さくなったスカリーを
見つめた。
スカリーはモルダーの辛そうな瞳をただ黙って見つめ、
涙を流した。
「ダイアナ、僕とスカリーを少し二人きりにしてくれない
か?」
モルダーはダイアナの方を向いて言った。
「・・・いいわ」
ダイアナは少し考えた後にそう言い、クローンたちを連れ
て手術室を出た。

******

スカリーはモルダーと二人きりになると手にしていた
ナイフを下ろした。
「・・・モルダー、何があったの?」
スカリーはどこか悲しみに満ちたモルダーの瞳を見つめ
た。
「何って・・・別に、何もないさ」
モルダーはそう言って、スカリーから視線をそらした。
「嘘、今のあなた何もないって表情じゃない」
スカリーはモルダーの手を握った。
「・・・僕の事はどうだっていい。それより君を元に戻さ
なくては」
モルダーはスカリーの手を離した。
「モルダー、私たちはパートナーでしょ?なぜあなたの苦
しみを隠そうとするの?なぜ私にあなたの心の中を見せて
くれないの」
スカリーの言葉を聞くと、モルダーは彼女とは反対の方を
向き、側にあった手術台の上に軽く腰掛け、頭を抱えた。
そんな彼の背中は酷く傷つき、困惑しているように見えた。
スカリーはためらいがちにモルダーに近づき、小さな体
で、そっと彼の背を抱き締め、瞳を閉じた。
「・・・スカリー」
モルダーは斜め後ろを向き、自分を癒そうとしているスカ
リーの優しさに胸の奥が切なくなった。
 「・・・無理に話せとはいわない。でも、私はあなたの
苦しみを少しで和らげられたらって思うの。あなたが私に
とってかけがえのない・・大切な人だから・・・」
スカリーは少し涙ぐんだ声でそう言うと、さらにきつくモ
ルダーの背中を抱き締めた。
「・・・スカリー、わかった話すよ」
モルダーは何かを決心するかのように話し出した。

******

「要求を飲むって、どういう事なの、ファウリー」
クローンの一人が、厳しい表情で言った。
「言葉通りよ、スカリーを元に戻し、二人を解放する
のよ」
ダイアナはクローンたちを睨んだ。
「計画はどうなる?それに、スカリーを戻すって、
一体どうやって・・・私たちにはできないわ」
「計画は中止にします」
ダイアナは毅然とした態度で言った。
「・・・中止ですって」
クローンたちは怪訝な表情でダイアナを見た。
「たった今、彼からのそのようにしろと、命令があったわ
ああ、それから、スカリーを戻す方法は知っているわ」
ダイアナはそう言い、ポケットからチップを取り出した。
「それは・・・?」
クローンの問いに、ダイアナは笑みを浮かべた。
「あなたたちが欲しがっていた、例のチップよ」
クローンたちはダイアナの言葉に息を飲んだ。
「まさか、それをスカリーに移植するんじゃ・・・」
クローンはそう言ってダイアナを睨んだ。
「ええ、このチップを彼女に移植します」
ダイアナはクローンたちを威圧するかのように睨んだ。
「・・・わかったわ、それじゃあ、チップを貰おうかしら」
クローンはそう言って、ダイアナの前に手を差し出した。
「ええ、これよ」
ダイアナは銀色の小さな容器をクローンに渡した。
「それじゃあ、私たちは準備に取り掛かるわ」
クローンたちはそう言って、エレベータに向かって歩き出
した。

******

「モルダー、CSMに会うべきよ」
モルダーの話を聞き終わったスカリーはそう言って、彼を
見つめた。
「なぜ?君も僕に奴を止めろと言うのか?」
モルダーは責めるように、スカリーを見つめた。
「いいえ、そうじゃない」
優しくそう言うと、スカリーは小さな手でモルダーの頬に
触れた。
「彼の口から真実を聞くのよ、そうすれば何が嘘で、
何が真実かわかるわ」
スカリーは意志の強いしっかりとした眼差しで、モルダー
を見た。
「・・・スカリー」
モルダーは自分の頬に触れている小さな彼女の手を、そっ
と握りしめた。
「・・・僕は、恐いんだ・・・真実を知りすぎて
しまうことが、恐いんだ」
モルダーは不安気な表情を浮かべた。
「モルダー、私があなたの側にいる。あなたに何があろう
と、私はあなたの側にいる。だから・・・」
スカリーは瞳を微かに潤ませ、モルダーを見つめた。
「・・・スカリー」
モルダーもスカリーを見つめた。
そして、二人は強く、長く、相手を愛しむように見つめ
合い、口付けを交わした。

***アニータの部屋***

「・・・例のチップが手に入りました」
アニータクローンはそう言って部屋に入ってきた。
「・・・そうか」
CSMは静かに呟き、煙草を一本手にとった。
「ファウリーが計画は中止だと言っていましたが・・・」
CSMはクローンの言葉に一瞬、怪訝そうな表情を
浮かべた。
「・・・ファウリーがそう言ったのか?」
「はい」
「・・・彼女は今何処にいる?」
「地下9階の第7手術室です」
「・・・彼女をここに連れて来たまえ」
CSMの言葉を聞くと、クローンは部屋を出て行った。

「ダイアナ、君までも私から離れるというのか・・・」
CSMはそう呟き、手にしていた煙草を握り潰した。

***地下9階・手術室***

「・・・ダナ」
唇を離すと、モルダーはそう呟き、愛しそうにスカリーの
髪を撫でた。
「・・・モルダー、私・・・」
スカリーは切なさで胸が一杯になり、言葉を詰まらせた。
「ダナ、何も言わなくてもいい。僕もそうだよ。ずっと、
ずっと、君を・・・」
モルダーはそこまで言うと、二度目のキスをスカリーの
唇にした。今度は愛を語り合うように、優しく、甘く、そ
して激しいキスを。

「・・・スカリー、僕は決めたよ」
静かに唇を離すとモルダーが言った。
「奴に会う、奴に会って真実を確かめる」
スカリーはモルダーの力強い瞳を見つめて、静かに微笑ん
だ。
その次の瞬間、彼女の表情は苦痛に歪んだ。
「スカリー!!」
モルダーは驚き焦った。
「・・・モルダー、・・何・・だか、体が・・体が・・熱
い・・・」
スカリーはそう言うとうずくまった。
モルダーはスカリーの最後の逆行が始まった事を知り、彼
女を抱き抱えて、手術室を出た。

******

「ダイアナ、スカリーが、スカリーが・・・」
焦燥感に顔をひきつらせたモルダーが言った。
「始まったのね」
ただならぬ様子の彼を見て、ダイアナは全てを理解した。
「さあ、こっちよ、地下5階の手術室に用意してあるわ」
ダイアナはそう言って、走った。
モルダーもスカリーを抱き抱え、彼女の跡に続いた。

***地下5階手術室***

手術室にはダイアナが手配した医師や看護婦たちが準備を
して待っていた。

「フォックス、グレインに貰ったチップは?」
モルダーがスカリーを手術台に乗せると、ダイアナが言っ
た。
「・・・ああ、これだ」
モルダーは銀色の小さな容器をポケットから出した。
「それじゃあ、よろしく」
ダイアナはモルダーから容器を受け取ると、医師に渡した。
「お任せ下さい」
容器を受け取ると、医師はダイアナを見つめそう言った。
「フォックス、私たちは外で待ちましょう」
「・・・あぁ」
ダイアナに促されるようにして、モルダーは手術室の扉に
向かった。
「待って下さい、患者があなたを呼んでいます」
医師の一人がモルダーに言った。
モルダーはその言葉を聞いて、手術台に駆け寄った。

「・・・モルダー、真実を・・・恐れないで・・・」
スカリーは混濁する意識の中で、そう呟いた。
「ああ、君に勇気をもらったから、大丈夫さ」
モルダーはスカリーの手を両手で握り、言った。
スカリーはモルダーの言葉を聞くと、安心したような笑み
を浮かべた。
「・・・フォックス、・・愛・・・して・・・る」
そう呟くと、スカリーは意識を失った。
「ダナ、僕も君を愛してる」




To be continued.

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