X−FILESリレ−小説No.1〜No.40.
(連載2001.12.1〜)


AUTHOR:Cat きゃっとの助手様 ひさりん様 きゃっとの妄想さん様 秘密のミナミちゃん様 辰様 らら♪様プ−さん様
櫻子様 み〜ちゃん様 歩々様花梨様 Katia様 さらりん様 までりん様 きらりん様 まりりん様 MC様 海月様 (投稿順)





はぁぁ・・、もうすぐでクリスマスか・・・。

スカリ−はどんよりとした雲を見上げていた。
彼女にとってこの季節は辛い思い出があった。

「スカリ−、ここにいたのか」

局内のカフェテリアで、ぼんやりと窓の外を見つめていた彼女に声がかかる。
その声に現実に引き戻されたように振り向くと、モルダ−がいた。
ヘ−ゼルの瞳を輝かせ手にはXFを抱えている。
スカリ−の中で嫌な予感がした。
モルダ−はスカリ−の了解を得る事なく、彼女の隣に座り、事件のファイルを広げ始める。

本当、XFになると・・・この人、周りが見えていないわよね。

モルダ−の話を聞きながら、ぼんやりとそんな事を思う。
スカリ−は最近、モルダ−と一緒にいる事に息苦しさを感じていた。
彼の事は嫌いではない。
彼女にとって、信頼できるパ−トナ−だ。

しかし、それだけでは済まない感情がいつの間にか生まれていたのだ。

「・・・悪いけど、私、降りるわよ。その事件」
疲れたような表情でモルダ−に言い、スカリ−は静かに席を立った。

「・・・スカリ−?」
去って行く彼女の背中を見つめながら、呟く。
この所、何かが、おかしかった。
言葉にはできないが・・・勘の鋭いモルダ−はそれを肌で感じ取っていた。

何か、怒らせる事したかな・・・。

記憶を辿りながら、小さくため息をつく。

「あら、フォックス!どうしたの?」
カフェテリアにいるモルダ−を見つけ、親し気にダイアナが声をかける。


ぶつぶつと考えいると、僕の思考回路を止める人物がやってきた。
 「ああ…。ダイアナか、久しぶりだね。何か用かい?」

 『フォックス冷たい言い方ねぇ。久々に会ったって言うのに…。座ってかしら?』
ダイアナは笑みをたたえながら言った。


「別に冷たくはないだろう。」
「そう?」
ダイアナはモルダーの前に座るとゆっくりと足をくみ、モルダーの瞳をのぞき込んだ。
「それ、X-FILESね。」
モルダーの手元にあるファイルをさっととると、ダイアナはいかにも興味が
あるようなそぶりをみせて、作りすぎた表情になっている自分に気がつくことなく興味深そうにそのファイルを読み始めた。


また、あの人・・・あの女に捕まっている。

スカリ−はカフェテリアを出て行こうとした直前に、モルダ−の方を振り向いた。
何だか、胸がしめつけられ、落ち着かない気持ちになってくる。
ダイアナの親し気な表情に、モルダ−も心なしか楽しそうにして見える。

ヤダ・・・そんなにくっつかないで・・・。

ギュッと手を握り拳を作りながら、胸の中のチクリとする思いに耐える。
自分以外の女性と一緒にいる所を見るのが嫌だった。
こんな事、小学生ではあるまいし・・・と、理性は言うが、気持ちがついていかない・・・。

全く、モルダ−相手にこんな事を思うなんて・・・自分はどうしてしまったのだろう

考えたくなくて、いつも自分の気持ちに蓋をしてしまう…。

私があの人の隣に立てるのは、そう…仕事のパートナーとしてだけよ。
 ダイアナがいるじゃない。そうでしょ、Dana。自分にそう問い掛けて
気を紛らわせるのが、精一杯・・・。
今日は、らしくないことばかり考えているわね…。

 そう思いながら、エレベータに乗ってオフィスへと向かっていた。



「悪いが、君と組む気はないからな」
ファイルを仕舞いこむと、モルダ−はダイアナを置いて、急いでカフェテリアを出た。

一体、スカリ−どうしたんだ?

彼が今、一番気になっていたのはスカリ−の事だった。
何だか冷たい態度に落ち着かない気持ちになる。
今、彼女を捕まえなければ、一生取り返しのつかなくなってしまうような・・・そんな気持ちに襲われていた。

「あっ!スカリ−!」
モルダ−が彼女の姿を見つけた時、丁度、エレベ−タ−に乗り込んでいた。
彼の声に気付かず、スカリ−はエレベ−タ−の扉を閉じた。
「待って!」
全力で、エレベ−タ−の前に行き、ボタンを押す、すると、再び扉が開いた。

「・・・モルダ−?」
彼がそこにいたのが以外だったのか、驚いたように彼を見つめる。
「・・ハア、ハア・・・置いていくのは酷いんじゃないか?僕たちはパ−トナ−だろ?」
乱れた呼吸を整えながら、スカリ−を真っ直ぐに見つめる。
何だかいつもと違う輝きを放つヘ−ゼルの瞳に脈が僅かに上がる。

「別にあなたを置いていったつもりはないわ。ただ、私はあなたが持ってきたファイルに気が乗らないのよ。
だって、そうでしょ?私たちずっと、答えのない事件ばかり追っていて・・・休みも返上して、ずっと、ずっと追っていて・・・。
もうすぐでクリスマスなのよ?こんな事言うと、捜査官として失格って言われるかも知れないけど・・・
私は、少し休みたいの。クリスマスぐらい、ゆっくりと過ごしたいのよ・・・。今、捜査を始めたら、間違いなくそんな時間はなくなる」

モルダ−はスカリ−の言葉を一言も漏らすまいと、聞き入っていた。
珍しく感情的な表情を浮かべる彼女に、言葉の裏にある想いを受け止めようと考える。
「こんな事、言ってはいけないのはわかっているけど・・・私は、偶には人間らしい生活がしたいのよ」
そう言った瞬間、なぜか彼女の瞳から涙が流れた。

・・・スカリ−・・・。

「やだ、私・・・どうしちゃったのかしら。何だか、今日は変・・・」
そんな自分に驚き、涙を拭おうとすると、雫が落ちた場所にモルダ−の唇が触れた。

「えっ・・・」

モルダ−は彼女の涙にキスをすると、エレベ−タ−の中に飛び込み、ギュッと彼女を抱きしめた。
逞しい腕にすっぽりと収められ、スカリ−は自分の身に起きている事が信じられなく、蒼い海色の瞳をこれ以上ない程、大きく見開かせていた。



「……モルダー、離して。」
スカリーは言葉とは裏腹な自分の鼓動の音が彼に聞こえないように祈った。
「離さなきゃいけない理由がない」
それでもモルダーは決してスカリーを離そうとはしなかった。それどころか、さらに彼女を抱きしめる力を強くする。
モルダーの腕の中で、スカリーは何度ももがいた。しかしそれは彼にとって何でもないものだった。
スカリーの反抗は、彼が彼女を抱きしめる力を強くする事によってすぐにねじ伏せられる。
「理由ならあるわ。男女の捜査官がこういう事をするのは、規定に違反するのよ…」
「そんな規定に僕は同意した覚えがない」
モルダーのあまりに勝手な発言に、スカリーはつい彼の腕の中でため息を漏らす。
「じゃああなたがこんな風にする理由はあるの?」
「あるさ。この君の涙が理由じゃ足りないかい?」
そう言ってモルダーは、彼女の頬にある涙の跡をゆっくりと撫でた。
「やめて…」
それでもスカリーは小さな声で反抗を続けた。


と、その時不意にエレベーターの扉が開いた。

反射的に2人とも開いた扉に視線を走らせる。
そこにはいつものように見てはイケナイもの、いや見たくないものを見てしまい、苦虫をつぶしたような表情のスキナーが立っていた。
彼はエレベーターに乗り込むと、まるでそれが彼の使命でもあるかのように
素早く「閉」ボタンを押す。
狭い空間にはスカリーの羞恥と、モルダーの不惑、
そしてスキナーの疲れがたちこめる。
最初に口を開いたのはスカリーだった。


「何階?」スカリーはボタンを押す用意をしていた
乗り込んだもののこの気まずい雰囲気から逃れたいと思っていたスキナーにはラッキーな言葉だった
迷わず次の階を言い スキナーは さっさと降りた
このあと 二人がどうなろうと 私の知ったこっちゃない
規則は破るためにある  などと堂々と言ってるモルダーのこと
恋愛は御法度なんて 言ったって聞きゃあしないんだ 勝手にやってろ!

モルダーはじっと階表示をみつめていたが スキナーが降りて二人きりになると
いきなりスカリーを抱き寄せ 唇を重ねた


はじめは優しく触れるような キスだった
頭の中がぼうっとして 体中の緊張が抜け始めたときだった
不意に 唇をわってモルダーの舌が入り込んできた

「何をするの!」

思いっきりモルダーの胸を押したのと エレベーターのドアが開いてダイアナが乗り込んで来たのが同時だった
目の端に ダイアナを確認したスカリーは今突き放したはずのモルダーの胸に迷わず飛び込んだ
目を剥くダイアナに にっと ほほえんだモルダーは優しくスカリーを
抱きしめて「ちょっとね めまいがするらしいんだ」
とってつけたようなモルダーの言葉に ダイアナは ふん!とこれ見よがしに腕を組み箱の隅に寄りかかった
「そんな 弱い体ではハードな捜査にはついていけないんじゃないの?」
「そう思うだろう 僕も同感だ」
ふふんと ダイアナは鼻で笑った
「だから 今日はこれで業務終了」 
「え?」ダイアナは声に出したが 
スカリーはモルダーの腕の中で声にも出せず事の成り行きに身をまかせるしかなかった  
このままの展開から行くと 家へ送るって言うんじゃないの?
だめよ 今日は寝坊したのであわててきたからベッドの上もキッチンも。。。。
そうよ 花だって枯れたままだったわ 忙しかったのよ
ああ どうしよう。。。

「あなたまで 休むことないでしょ この忙しいのに」
カリカリしながらダイアナが言う
「これから送って帰るんだ 」  

 やっぱり言った。。。。

「そんなの 医者に任せとけばいいのよ!」
「僕の大切なパートナーなんでね ちょうど明日休みだし
 別にすることもないし ついててやろうと思ってね」
 
 うそ! 明日もいるつもり?

スカリーは本当に クラクラとめまいがしてきた


その時 天の助けか、はたまた偶然か、スカリーのセルが鳴り響いた。
飛びつくように、セルにでるスカリー。
「スカリー!!」
「ダナ?」
それは、ここ一年ほど会っていない弟のチャールズだった。
「wow!チャールズ!!どうしたの!?私のセルの番号なんて、どこで聞いたの?」
少しでも自分が今置かれている現実から逃げたいスカリーは、畳み掛けるように電話に話しかけた。
「前に、何か急な用事があったらセルにかける様に、って自分で教えたんじゃないか。忘れたの?
それより、突然帰国することになって、今さっきDCに着いたんだ。ついでだからダナに会おうかと思って。っていうか、今夜泊めてくれない?・・・・」
本来なら、その程度のことで仕事用のセルを使った弟に、叱責のひとつもするところである。
だが、今のスカリーにとってはキスを百回 弟に上げたい気分だ。
「も、もちろん。OKよ!!!!私は、ぜんぜん!平気。今日は仕事を早く切り上げるから、退庁する時にあなたのセルに電話するわね!」



「じゃ そういうことで!」セルを切ってすっきりした スカリーが見たものは
情けない顔をしたモルダーと 憮然とした ダイアナだった
そうだった ここはエレベータの中だった
ダイアナの存在なんて すっかり忘れていた


せまい箱の中で静かに響くブ〜ンという機械音がやけに大きく頭の響き渡る。
どうしよう……。
今にも泣き出しそうな子犬……もとい子犬顔をしたモルダーの腕の中の私は、
どこぞの映画の性悪な魔女(我ながらいい表現だわ)……
ダイアナにすごまれ(怖くなんかないけど)、エレベーターの隅に追い詰められたままこの危機的状況をどう回避しようか必死になって探り続ける。
「……スカリー?」
 落ち着きなく視線を周囲に漂わせている腕の中の愛しい彼女を魔女(ダイアナだって)に渡すまいと果敢に立ち向かおうとするFBIでもNO.1の捜査官モルダーであるが、突然響き渡ったチーン!という扉が開放される音に、3人はとっさに箱の隅へとそれぞれ逃れた。
 賑やかに乗り込んできた職員達に分断されたモルダー達。
 もちろんこの状況を利用しないスカリーではなかった。
 扉の近くにいた彼女は奥の隅で押しつぶされそうなモルダーに一瞬だけ微笑むと身をひるがえすようにしてエレベーターから降りる。
 この階がどこであろうが構わない。
 オフィスへは階段で行こう。
 一人馴染みのない階で取り残されたスカリーは目の前で閉まったエレベーターの扉に向かって小さく溜息をつくと、考える時間が欲しくてゆっくりと非常階段を降りていった。



ぷらぷら歩いてオフィスに戻って来たもののどうやって入ろう
モルダーはとっくに戻っているに違いない
「やあ ごゆっくりだったね。。。」
いつものようにデスクに足を乗せて あの優しい顔で言うだろう

にこやかに笑いながら 冗談ぽく入るか
うつむき加減にしおらしく入るか
泣くのは似合わないし
この際 思い切って告白しちゃうってのは?
キスもしちゃったし 私も大好きだったの。。。って
いや それは ちょっと ここじゃ はずかしい
このまま 帰っちゃうのは? あした休みだし
う〜ん まようなぁ

ドアノブに手をかけたまま シミュレーションを繰り返すスカリーの肩を
ポンと誰かが叩いた

「きゃあっ!」

と、女性らしくも情けない悲鳴を上げて、反射的に首を竦めて振り返ると、こっちの方が驚いたという顔で、モルダーが立っていた。
「な、なに、何してるのよ、こんなとこで!」
「ここは僕のオフィスだと思うんだけど?」
おどけた顔で、からかうようにモルダーは言い返す。
「だ・・・って、あなたエレベーターで降りていったじゃない」
驚きの余韻で、まだ少々どもりぎみにスカリーが的外れな抗議をすると、
「昨日、食い合わせが悪かったみたいでさ、戻る前にトイレに行ってきたんだ」
と、モルダーはスカリーの目の前にクシャクシャのハンカチを広げて見せた。
「とにかく、中に入らないか?」

入る? 

ちょっと待って。。。
それからの展開はまだ考えてないのよっ!

ここで入ってしまったら本当に二人っきりよ
さっきのエレベーターみたいに誰かが乗り込んで来ることもないのよ
一日中誰も来ない密室状態なのよ

急にさっきのキスを思い出して躰が熱くなりそうだった
唇を割って入ってきたモルダーの舌 
あのままだったら絡め合っていたかもしれない
でも エレベーターの中だということが歯止になって冷静になれたのに
ここじゃどうなるか わからないわ

落ち着け 落ち着け 胸に手をあて 動悸を沈めようとするスカリーの肩を
モルダーはそっと押した


モルダ―の手の温度を肩に感じて、スカリーは必要以上に身体が熱くなるのを感じた。
「どうした?」
モルダ―の不思議そうな声が背後から聞こえる。
「な、なにが?」
普通に答えようと思っても思わず声が上ずる。
その上ずった声を隠すようにスカリーは唇の端に笑みをのせた。
そしてわざと時間をかけて振り返りながらモルダ―を見上げる。
しかし、その微笑みはFBIいちの威名をとるプロファイラーの前では
無意味に近いことはスカリーももちろんモルダ―自身も分かっている事だった。


いきなりのキスに
本当なら グーのパンチが飛んできてもおかしくなかったのに 
只 胸を押されただけだったし
ダイアナが来るや否や胸に飛び込んできたのには びっくりした
ダイアナに見せつけるように これ見よがしに抱きついてきたスカリー
それなのに 今また 僕の腕から逃げ出そうとしている
どの君がほんとうなのか?
どっちも君には違いはないが 単に僕を焦らしているのか
聞きたい 知りたい 君の気持ち。。
君の心はどこにある?
言葉にすると 引き返せなくなってしまいそうで怖い。。。
ためらいがちにモルダーの唇が開いた

「スカリー。。。」

スカリーは魅入られたように、モルダ―の唇をただ見つめていた。
その唇が自分の名前を形作る、ほんの数秒が永遠のように思えた。
知らず知らずに自分のまぶたが下がっていくのを、スカリーはまるで
他人事のように感じた。
目を閉じる直前に見たモルダ―は、確かに微笑んでいた気がする・・・。

「モル・・・」

モルダーを呼ぶスカリーの唇をモルダ―が優しくふさぐ。
さっきのキスとはまったく別のキス。
モルダ―はわざとゆっくりとスカリーの唇を味わい・・・


そのキスを深めた。

スカリーは自分に回されたモルダ―の腕の力が強まるのを
どこか遠くで感じるような気がした。
「・・・ん。」
終りは永遠にこないような深い深いキス。
そのキスの甘さに思わずスカリーのひざがガクンと折れた。


これが 君の答え?
何もかも 僕に任せるように躰を預けてくるスカリー
君の重みを そのまま受け止める用意はとっくにできている
これから始まる僕たちの新しい一ページ。。。。。
何もかも僕に任せてくれるね?
愛しいスカリー この腕にこうやって抱きしめることを ずっと夢見てた



モルダー モルダー・・・愛してるわ
ああもう 躰がとろけそう 
ぞくぞくとする甘い痺れが体中に広がって 私が私じゃ無くなりそう
もう立っていられない
モルダー モルダー 支えていて・・・

ねっとりとからみつくモルダーの熱い舌 喘ぐように応えるスカリー
息継ぎを忘れるくらい更に深まるキスに気が遠くなりながら 
力強いモルダーの腕を躰に感じていた



スカリーの躰に腕をまわしたモルダーは 
ワルツを踊るように少しずつ歩を進めた
これからどうしようというのか?
スカリーは殆ど海月状態だ 
ぐにゃりとしなだれかかって全体重を掛けてきている
休ませようにもここはオフィスだし 
椅子に座っていられそうもないし
横になれそうなものは   デスクしかない

何歩か歩くうちにハイヒールが抜けてしまった
スカリーの意識から離れ コロンと転がった


片手でスカリーを抱えたまま扉を開ける。
2人分の隙間が開いているのを薄目を開けて確認すると、
素早く彼女の身体を横抱きにしてオフィスの中に滑り込む。
「キャッ!」という小さな悲鳴が腕の中から聞こえてくるが、
もうこうなったらモルダーにも止められない。
転がっているスカリーのハイヒールもそのままに、足で扉を閉めると
そのまま鍵をかけた。


抱きかかえられたままのスカリーはモルダーが締める扉の音を
意識の端に何気なく聞いていた 

ガチャリと音を立てた鍵の音は
胸の中まで 響いてきたような気がした

胸の奥の深いところにある想い
あなたへの想いが溢れそうになって鍵がかかってるの
あなただけが開けられるのよ

一切を遮断する鍵の音は ふたりっきりであることを物語っていた
もう私たちを邪魔するものは誰もいないわ
もう 逃げたりしない
だから 離さないで

スカリーは スーツのポケットにそっと指を滑らせてセルの電源を切った

チャールズ ごめん!
弟の怒る顔が浮かんで 消えた


モルダ−自身こんな展開になるなんて信じられなかった。
ずっと、ずっと心にブレ−キ−をかけ、彼女をパ−トナ−だと思い込んできた。
決して、男と女にはなるまいと心に誓ってきたのだ。
だが、その誓いも破られ、今、”女の顔”をした彼女が彼を求めているのだ。
抑えていた衝動が欲望へと変わり、体中の血液を熱くする。

「・・・モルダ−・・・」
潤んだ瞳で彼を見つめ、熱っぽい瞳で彼女が見つめる。

コンコンコンコン!!

まさにこれからという時にXF課のドアを執拗に叩く音がした。
二人はそのノックにハッとし、我に返ったように互いを見た。


息をひそめ 只立ちつくすモルダーとスカリー

扉の向こうには痺れを切らした魔女がひとり じっと床を見つめていた
魔女の目の先には スカリーの黒いヒールがコロンと転がっていた
なによ このヒール やけに小さいじゃないの
まあ ダナ・スカリーは背も小さいんだから こんなものね 
ちょっと自分の足と比べてみる
 
ちっ! 私の足は入らないわっ!  魔女は舌打ちした
シンデレラじゃあるまいしどうしてこんなところにあるの?
よほどあわてていたんだわっ
そのくせに 鍵を掛けるなんてどういうことよっ!

ダナ・スカリーが ハイヒールも履かずに帰るなんて絶対信じられないわっ!
それも 片方だけ? 

ああ 今思い出しても腹立たしいわ  何がめまいよ 
モルダーったら すぐにばれそうな嘘をいけしゃあしゃあと言ってくれたわね
私がエレベーターに乗り込むのとダナ・スカリーが胸に飛びとむのと同じだったわ  これ見よがしに抱きついて  ああ悔しいっ! 
それに何よ あんなに元気にセルに出てたし 
エレベータを出るときのあの軽やかな足取り  まったくもう!

「モルダーいないの? 開けなさい! どうして鍵なんか掛けてるの?」
ダイアナが執拗にドアを叩く

「モル。。。」囁くようにスカリーが唇を開くと 首を振ったモルダーがスカリーの唇にそっと人差し指を当てた
そうね と心で返事をし微笑みを返すと 
今度は指の代わりに唇が降りてきたので スカリーはそっと目を閉じた


「査問会にかけるわよっ」
あきらめの悪い魔女が暴れてドアに八つ当たりをしていた
何か固い物でドアを殴ったんだろう ドカッと鈍い音がして
しばらくすると靴音とともに魔女は去って行った

カッカしてるダイアナを想像し 二人とも吹き出しそうになり
重ねていた唇が離れた

「きっと 私のハイヒールで殴ったんだわ 買ったばかりだったのに。。。」
がっくりと肩を落とすスカリーを見て モルダーは笑った
「これから買いに行こう 」
「今から?」
「チャールズが来るんだろう?すっかり忘れてた 帰らないと捜索願が出るぞ」


ドアをあけると・・・・
予想通り踵がとれてしまった黒いハイヒールが転がっていた

ありったけの力でドアを殴ったんだろう
加減を知らない女って怖いわね
それより どうやって 歩いていこう?


「この電話は現在電波の届かないところか、電源を切っているため…」

チャールズは、セルを切った。
さっきから何度も姉に電話しているのだが、全く応答がない。

全く何をしているんだ?ダナは?
暇だ。
所持金ほとんど使い果たしちゃったから、何にもできないんだよなあ。
助けてくれよ。ダナ〜〜(涙)

あーあ。こんな時メリッサがいたら。
あ。なんか思い出したら悲しくなってきた。
死に目に会えなくてごめんよ。メリッサ。

ついでにダナも。癌で死に掛けてた時に見舞いにいけなくて、ごめん。
もしかして、そのときの事、まーだ怒ってるのかなあ。
あの時 ビルはすっごくキレてたもんな。
そりゃダナは はっきりは怒らなかったけど、もしかしたら復讐の機会をうかがってたのかも....。
ダナって「私は全然怒ってないわよ」って顔しながら、陰で怒るんだよな…。



モルダーがしゃがみ込んでハイヒールを拾い上げた
「お姫さま どうぞと言いたいがこれじゃあね。。。」
 モルダーはにっと笑って壊れたハイヒールをスカリーの目の前で振って見せ
 苦笑いするスカリーをひょいと抱き上げた
「なにするの!」
「なにって そのまま歩くつもり?」
「。。。。。」
 片方ハイヒール 片方裸足。。。で歩いている自分の姿を想像してスカリーは
 黙ってしまった


「だろ?とりあえず駐車場まで行かないとね」同じ想像をしたモルダーが言った

「いやよ! 両方裸足の方がましよ!」 
 スカリーはもう片方のハイヒールを脱ぎ捨てた
 だっこされたまま 局内を歩き回るなんてとんでもないわっ!
 何考えてるのよ まったく。。。

「私たち局内でなんて言われてるかしってるの?  あのス。。。」
 言いよどむスカリーの言葉にモルダーが重ねた
「スプーキー夫婦だろ? いいじゃないか 言わせとけよ 
 さっきみたいにめまいがしたことにしとけばいいだろう? スカリー
 君は仮病がうまそうだから。。。」

 スカリーの思惑を先読みしたモルダーが笑いながら言った

「じゃあ 丸太みたいに 担いでいくか? その方がいい?」
 裸足で歩こうが 抱かれようが 担がれようが 噂になることは間違いない
「どっちもいやよ! おろしてよ! 」
 わがままなスカリー
 この二人はこのあとどうやって局からでるんでしょうか?



「ちょっと見てよアレ!」
「モルダーとスカリーじゃん…。やっぱデキてんだな…。」
「さっきもエレベーターでモルダー捜査官をはさんで、ファウリー捜査官と
 スカリー捜査官が睨みあってたらしいわよ…。」
「マジかよ!?」
「あ〜あ…。俺スカリー捜査官のファンなのになぁ〜……。」
「でも、アレって決定的だよな…。」
「ああ。スキナーの髪の毛を抜くようなマネすんなよな…。」
FBI捜査官たちの言う“アレ”とは、モルダーがスカリーを抱いている姿である。
結局スカリーはモルダーにお姫さまだっこをされることになったのだ。
しかし、スカリーはしっかりと目をつぶって気を失った振りをしている。
局内の捜査官たちがどんな目で自分たちを見ているのかを想像すると、
とても目なんて開けていられないと思ったからだ。
そんなスカリーとは対照的に、モルダーの方は、ロイヤルファミリーよろしく
手が空いていれば振り出しそうなほど、愛想を振りまいている。
“ああ…。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい……。”
スカリーは時間なんて止まってしまえばいいのだとおもった。
“ははは。これでダイアナの耳にも僕らの関係が決定的なものなんだって耳に
 入るだろ。スカリーを悩ませる事もなくなるな”
モルダーはご機嫌だった。
そんな二人に、誰かがうしろから声をかけた。

ペンドレルだった。

「モ、モルダー捜査官!?」
モルダーが振り返ると、資料の山を抱えたペンドレルが
目をひんむいて立っていた。
「やあ、ペンドレル。どうしたんだい?
 そんな撃たれて死んだことのあるような顔して……。」 
「“やあ、ペンドレル”じゃないですよ!!」
ペンドレルはモルダーの口調を真似て受け答えた。
「どうなさったんですか、スカリー捜査官はっ!?」
「え?」

モルダーに抱きかかえられたスカリーがピクリと動いた。
“何よ何よ何なのよペンドレル!私を心配してくれるのはありがたいけど、
 モルダーの歩みを止めないでよ!ああ…恥ずかしい……。
 一刻も早く駐車場に行きたいのよぉ〜…!”
 
「スカリーはオフィスで昏倒してね…。今から医務室に連れていくところだよ。
 僕は先を急ぎたいんだが、失礼していいかな?」

モルダーに抱きかかえられたスカリーがピクリピクリと動いた。
“…今何と?モ、モルダー、今なんて言ったの???”
「……分かりました…。スカリー捜査官が目を覚まされたら、僕が心底心配
 してたってお伝えください。」
ペンドレルはまだ何か言いたげな顔をしていたが、スカリーの病状を
思ったのか、ため息をついてそう呟いた。                 「見舞いには来なくていいからな!」
肩を落としてエレベーターに向かうペンドレルに、モルダーがそう叫んだ。                
こうして、様々な捜査官の好奇の目に晒されながらも、2人は医務室に着いた。

「あの〜…。誰かいらっしゃいますか?」
モルダーが扉を開けて中に入るが誰もいないようだ。
「スカリー、もういいよ。」
「どういうことなの?」
スカリーは体を起こすと、モルダーに抗議の視線を向けた。
「僕はもう待てないと思ってね……。」
モルダーのへーゼルの瞳に、いつもとは違う色が宿っている。
彼のその瞳は、スカリーの抗議を吸い込んでしまった。
「この何年もの間、ずっと君への想いを押し殺してきたんだ…。」
「モルダー……。」
スカリーの身体に、さきほどの甘い痺れがよみがえってくる。
「それに、君の家に行って、もしチャールズが来たら大変だろ?」
「……んふふ…。それもそうね……。」

そして2人は再び、お互いの唇を深く重ねた。
スカリーは医務室のベッドに腰掛けると熱っぽい瞳で彼を見つめた。

さあさあ、めくるめくアダルトの世界に突入かぁ!?
それともぉ???



スカリーの瞳がモルダーを捕らえた
モルダーの瞳に自分が映ったのを確認し そっと目を閉じたのが合図だった
肩を抱いていたはずのモルダーの手が 深く開いたブラウスの襟元から
すっと差し込まれた
不意に冷たい手が胸の膨らみに触れ 思わず仰け反るスカリー
医務室の硬いベッドに横たわり モルダーの指先から繰り出される甘い痺れが
体中に広がり始めた頃
廊下をバタバタと走る数人の足音がした

「先生急いでください!ここです ここです」 
大きな声を出しているのは さっき別れたばかりのペンドレルだった
本気で医者を連れてきたらしい

あのお節介野郎 まったく。。。。
モルダーはがっくりしてしまった
さっさと駐車場まで行ってしまえば良かったと思ったが 後の祭りだった
この事態をどうやって避けよう。。。


あわてて 躰を起こすスカリー 
 乱れた髪を手で撫でつけ
 胸元を確認し モルダーを引き寄せてその唇をそっと指でなぞった
「ついてるわ、、、」
 ほらと言うようにうっすらとピンクがかった指先をモルダーに見せた
「言い訳に困るな」モルダーは苦笑いした。

「それより どうする? まだ気絶してたほうがいい?」

「いや 治ったことにしよう あの男に君の躰を触られるなんてとんでもない
 ペンドレルの奴 先生なんて言ってるが
 あいつは2週間前にこの医務局に着たばかりの 若造なんだぞ
 それとも 君は若い奴に見られたいかい?」

「なにバカなこと言ってるの?」ムッとするスカリー
「だろ? じゃ決定だ 」
「どういって言い訳する?」
「治ったけど 今日はもう帰るわとか何とか適当に言っとけよ」

「モルダーがどうしても送るってきかないし、、、、って?」
 上目づかいにモルダーを見るスカリー
「やめろよ またキスしたくなってきた」むくれるモルダー
 困った顔が又可愛くて スカリーはモルダーから目を離さない
「襲うぞ、、、、」戯けてスカリーを襲うマネをするモルダー
 クスクス笑うスカリーだったが二人の世界に浸ってる場合じゃなかった

「もう来るわ」と現実に戻るスカリー
「あいつらを待ってることはない 行くぞ」
 モルダーがスカリーを抱き上げるとスカリーは堂々と彼の首に手を回した
「今度こそ寄り道しないでまっすぐ帰るぞ!」
「靴を買ってからねっ」
 スカリーが微笑んでウィンクするのと同時にドアが開いた


「あの顔見た?」
「豆が鉄砲食らったような顔してたな あいつら」
「息するのも忘れたように突っ立ってたわね」
「君だって開き直って堂々と首に手をまわすもんなぁ」
「だって 落ちるじゃない」
 笑いながらモルダーの首に回した手に力を込めるスカリー
 その指先から伝わる暖かさをモルダーは心地よく感じていた

 呆然と立ちつくすペンドレルや新米医師達を医務室に残し
 スカリーを抱いて堂々と局の駐車場まできたモルダー
 楽しむようにわざとジグザグに歩きながら車に向かうモルダーは
 あまりにも軽いスカリーの躰の重さを愛おしく思っていた
 この躰で同じ職務に就いてるのかと思うと
 もっと抱きしめてやりたいと思って しまうのだった
「こそこそするから余計目立つんだよ 
 堂々としてりゃあ なんにも言われない って事が証明できたろ?」
「だってこれじゃあまるで 言いふらして 歩いてるような ものよ」
「何を言いふらすって?」
「だからあなたとわたしがよ」
「君と僕がどうしたって?」わざと聞き直すモルダー
「もういいわっ!」スカリーはモルダーの胸に顔を埋めた
「僕は一向にかまわないけど 君はいやなの? 」
「だって   」
「だって? なに?」
「恥ずかしいじゃない」
「僕らの恋愛のどこにはずかしいことがある?」
「職務規程に違反してるし それに みんな想像するわ」
「なにを?」
「 ・・・・・   」答えに詰まるスカリー
「やったか やらないかって?」あっさりと言ってのけるモルダー
「やめてよ そんな身も蓋もない言い方」
「じゃどう言えば?言い方をどう変えても 中身はいっしょだよ」
 モルダーの歩く靴音だけが駐車場に響いていた


「そんな事よりも、君は今の状況がわかっているのかい?」
スカリ−を車の中に押し込み、鍵を差込み、エンジンをつけると、モルダ−は
にやりと助手席の彼女を見た。
「・・・えっ・・・」
彼の言葉に思わず、運転席の横顔を見つめる。
その表情はどこか楽しそうで、そして、堪らなくセクシ−に見えた。

長年思い続けていた人・・・。
ずっと、パ−トナ−として生死を共にしてきた。
いつの間にか彼の存在は誰よりも大きくなっていた。
今、その彼と想いが通じたのだ。
彼の目に女として自分が映っている事に、胸の鼓動が早くなる。
呼吸する毎に想いは膨らみ、体中が千切れてしまいそうな程だ。

彼が欲しい。
早く、結ばれてしまいたい・・・。

今まで感じた事のない欲望に、スカリ−は驚いていた。


言葉にはしなかったが 想いは一緒だった
モルダーのなめらかなハンドル裁きで車は走り出した
右手でスカリーの肩を引き寄せようとすると 甘い香りが近づいて
頬にチュッとキスをくれた
「危ないわ。。。前を見てね。。。」
「まだ死ねないな。。。今 僕たちは始まったばかりだからな」
「そうね。。。」
「君を抱くまでは絶対に死ねないな。。。。」モルダーが笑いながら言った
「そうね。。。あなたに抱かれる前には死にたくはないわね」
 自分でもびっくりするような言葉がさらりと出てきた
「スカリー 今日はなんの日だ?」
「え? 今日?」
「あ。。。私の誕生日よ」
「おめでとう スカリー」
「ありがとう モルダー」
「スカリー。。。」
「なに?」
「僕らの記念日にしたいんだけど。。。」
どきどきしてきた
遠回しだけど 彼の言いたいことはわかってる
ずっとそうなりたいと思っていたんだもの
黙ってうなずくスカリーの膝の上に手が伸びてきた
そっと掌を重ねる
今までの想いが モルダーに向かって流れ込んで行くような気がした

「あなたの誕生日までは待てないわ。。。」



つづく





【後書き】
皆様、リレ−に参加下さってありがとうございます♪
まさか、ここまで続けて頂けるとは思っていなかったので嬉しいです♪
この後のモルスカどうなるんでしょう?やっぱり、「ア」な方へ・・・(笑)
ところで、このお話、タイトルがないんです。どなたか、良いタイトルを付けてくれませんか?


2002.2.24.
Cat

本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース