『明日を渇望する君にとってあの朝日は希望の象徴か』 気味の悪いオレンジ色のスモッグに覆われた、重たい空。 ぐずぐずと朝日が昇ると、見計らったように月がビル群に消えた。 アイツら、俺と顔を合わせるのがよほど面倒臭いと見える。 今日は久し振りに夢を見た。 中学時代にフラレた女の夢。 朝から不機嫌もいい所だ。 昨日買ってきたばかりの缶コーヒーが、もう冷たくなってる。 ムカツク! 「世の中、どうしてこうクズばかりなんだ」 部屋の片隅で、ゴミ箱代わりのバケツが呟いた。 ただじっと大口開けて生きているだけのヤツに、人間社会の何がわかる! 「幸せになりたいか?」 机の上に散らばっていた紙クズが、俺に問う。 お前が幸せにしてくれるってのか?俺を?マジかよ。思い上がりもたいがいにしろ。 お前は所詮何にも成る事の出来なかった、人生の敗北者。バケツの餌に過ぎない。 「幸せになりたいか?なりたかったら、俺を握り締めろ」 うるせえ。 クシャッ。 「よし。ここから、一気にスリーポイントシュートだ」 ヒョイッ。 バスッ。 あっ。入った。 「ナイスシュート」 「ごちそうさま。相変わらずクズばっかだな」 部屋の隅から、二つの声が同時に聞こえてきた。 うるせえ。 時計の針並みの騒音だ。 「人生ってのはそんなモンだよ。小手先の努力で指先程の幸せを手に入れる。その繰り返しだ。それでいいじゃねぇか。」 無機物に説教された。 寝る。俺は寝る。 目覚まし時計を明日の午前十時にセットした。 次に会う太陽はちゃんと俺を見てくれるだろうか。 おやすみ。かけ布団の上に倒れこむ。 サヨウナラ、現実世界。 オハヨウ、かわいい夢。 ッピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピp ガバッ。 バチン。 ヒョイッ。 ガコッ。 二十四時間三十分後にセットされたはずの目覚し時計は、俺が倒れるのを確認すると、間髪入れず、そして情け容赦なく世界を揺るがした。 何故だ。一体何処で間違えた。 溶けかかった脳みそでは何も考えられない。 「相変わらずマヌケだよな、お前」 部屋の片隅へ放られた目覚ましが俺を笑う。 もう嫌だ。 決めた。バイトする。 コイツら全員買い換えてやる。 とっくに止められたガスコンロを睨みつけると、ありったけの大股でゴミ共を飛び越した。 明日のためにその一。 ガチャリ。 ギー。 ッバタン。 部屋の主が見てもかなり怪しげな空気の漂う部屋に、久し振りにいい音が響いた。 外は思ったほど悪くない天気だ。 さて、これからどうするか。 そう言えば近所のコンビニに、最近にしては珍しい黒髪美人がバイトで入っていた気がする。 決まりだ。 途中、雑貨屋の窓に張り付いたくずかごと目覚まし時計を品定めしてから、俺はコンビニへ向かった。 |