『学校の怪談』


チャイムがなって、あたらしい朝がはじまります。今日はどんなことがおこるんだろう。みんな、ウキウキでわくわく。

「やぁみんな、おはよう」
「おはようございます!」
「みんな今日も元気だな、よしよし」
「ね、せんせー、聞いて聞いて!」
「んー、どうした?」
「きのうね、わたしたちね、向こうのこうしゃのトイレでね、『花子さん』見ちゃった!!」
「えぇーー!?」
「へぇ、そりゃ怖かったろう」
「うん、もうすっごいこわくて、いそいで走って帰ったよ!きゃーきゃー!って」
「ドアがどかってあいて、手がにゅって出て来るんだから!」
「うんうん、昔からあそこは『出る』って専ら噂だったからなー」
「せんせー、オ、オレ、こないだだれもいねーのにピアノがかってになってるの、聞いた!」
「えぇーー!!?」
「本当か、山本?」
「マジマジ!夕方、わすれモン取りにもどってきた時さ、さぁ帰ろうって時さ、なんか音がして、音楽しつ外からのぞいたら、かってに動いてんの!」
「ほんとー?うそみたい」
「うそじゃねぇって!マジで!」
「さっちゃんたちの話聞いて、くやしくなったんじゃないのー?」
「うそじゃねぇっ!!お前らこそうそなんじゃねぇの!?」
「わたしらはほんとだよー。あいちゃんもゆうかちゃんも見たもん!ねー」
「まぁまぁ。先生はどっちも信じるから。…と言うか実はな、ここだけの話、先生も昔ここで怖い思いしたことあるんだよ」
「えぇーー!!!?」
「先生はこの学校、二十年くらい前に卒業したんだけどな、この学校にいた六年間、五、六回はそんな目に遭ったんだからなー!」
「ほんとー?ちょっと多すぎくないー?」
「ほんともほんとさ。いいか、よく聞けよ。例えば…ホラあれだ。音楽室の裏の図工室。あそこに『モナリザ』って絵が飾ってあるだろ?」
「うんうん、あるある」
「あの変なおばさんだろ?」
「そう、ソレだ。で、あの絵なんだが…一人ぼっちでしばらく見つめてるとな、あの目がなー、急に、ギョロッ!てこっち向くんだよ」
「えぇー!!こわーい!!」
「理科室にある人体模型、アレに追っかけられたりもしたぞ!!」
「えええぇ!!?ほんとにー!?」
「こえー!!」
「あぁ、部屋の中だけだけどな、こっちにゆっくり歩いて来るんだよ。結構速いんだこれが。ガ、ガガ、ガガガガって。あれは泣いたなー」
「せんせ、泣いたのー?かっこわるー!!」
「へやの中だけって、なんでー?」
「いやいや、アレは絶対怖いって。部屋から飛び出したら急に静かになってな、後からこっそり覗いたら…部屋の入り口の辺でバッタリ倒れてたんだ。ほんと、プッツリ糸が切れたみたくな。いいか、あの模型にいたずらするなよ。先生だって、あの人形の内臓でサッカーなんかしなきゃー、あんな思いする事もなかったんだ…」
「せんせーだめじゃん!」
「あー、あの頃は先生もワルだったからなー。とにかくいいか、くれぐれもいたずらするんじゃないぞ。モナリザも一緒な。あと…花子さんに遭っても騒がずに、ゆっくりお辞儀して帰る事。それが一番らしいからな」
「ピアノは?」
「あれは…まぁしょうがないよな。無視だ、ムシ」
「なんか、てきとーだね」
「じゃあさじゃあさせんせー、うちのねーちゃんが言ってたんだけど、『あかずのま』ってなんなの?」
「…『開かずの間』?あぁ、あれか…あれはな…」
「うんうん!!」
「…ヒミツだ」
「ええええ!!?ひきょー!!ひきょー!!」
「なんなんだよー!いーじゃーん!!」
「こればっかりはな…知らない方がいいんだよ。とりあえず、『何があっても絶対に近づくな』とだけ言っておく。いいな、ゼッタイだぞ」
「…はーい。ちぇっ…」


「今朝は随分と盛りあがってたみたいですけど…何かあったんですか、先生?」
「あぁ、…子どもらが学校で怖い目にあったって。花子さんとか、ピアノが勝手に鳴るとか」
「あー!私もありましたよそれ!数える度に段数が変わって、四度目は必ず一三段になる『死の十三階段』とか。たしか第一校舎の屋上前だったかしら」
「あ、先生もご経験ありますか。と言うか、ここの生徒だったらほとんどでしょうね。…で、最後に『開かずの間』の事聞かれちゃいまして…それで教えなかったから収拾がつかなくなっちゃったんですよ。まぁ、言っても言わなくても同じでしょうけどね。部屋探しで授業サボったりしなきゃいいんだけど」
「開かずの間…?」
「子どもたちの情報網ってのは全くすごいですよね。一体、どこからどうやって入手したんだか…」
「開かずの間って、何ですか?」
「え、先生ご存知無いんですか?あ、そうか、去年入ってきたばかりですもんね。…あの部屋の事は、この学校出身で、加えて着任して五年以上経っている者にしか教えられないそうなんです。秘密を守れる人間かどうか、それまでに確かめるんですね。まぁ実際の所は、皆さん僕みたく早々と年配の方に教えてもらってるみたいですが」
「そ、そうなんですか?一体、何の部屋……」
「んー、分かりました。お教えしましょう。先生も色々と経験なさってるみたいだし」
「是非、お願いします」
「実は、開かずの間ってのは、学校長専用のスーパーコンピュータルームなんだそうです」
「え?それってどう言う…?」
「簡単に言ってしまえば、この学校で起こるあらゆる心霊現象は、全部校長の仕業、って事になります」
「え…えぇーー!!?」
「シッ、先生、声が大きいですよ。…驚いたでしょう?なんでも初代校長は昔から霊感が強くて、よく色んな体験をしたそうです。でもそのお蔭で、ずっと夢を忘れない大人になる事が出来たって。だから、同じ事を生徒みんなに体験させて、素晴らしい大人になってもらおうって言うのが、この学校を設立したそもそもの動機なんだとか」
「…そんな事が…はぁー」
「先生、昨年の着任式でおっしゃってましたよね。『この学校には思い出がたくさんある、だから、ここでまた過ごせるのはとても嬉しい』って。まんまと初代校長の思惑にはまってしまったわけですよ」
「あっはは、なるほど!やられちゃったなぁ」
「そうそう、それでね。学校開発に当たって一番大変だった事って、何だと思います?」
「え?あー、なんだろう。私がよく怖がった、十三階段じゃないかしら?仕組みがさっぱり分からないもの」
「いえ、何でも『夜毎グランドを徘徊する二ノ宮金次郎像』だったらしいですよ」
「え、あの手首が折れてる?」
「そう。あれだけの重さを制御するのに心底苦労したって言う話です。で、これは本当に固く口を閉ざしておいて頂きたいんですが…いいですか?」
「えぇ、わかりました。…何です?」
「実は、あの金次郎像の手首を折ったの、何を隠そう私なんですよ」
「えっ…」
「いやー、夜中に学校に忍びこんだ時にばったり出くわしちゃって、ギャーギャー暴れてたら、ポキッと、ね…ははは」
「あははは!そうだったんですかー。なんかいいなー、そう言うの」
「よくないですよ!バレたら大変な事になりますからね。当時も…今でも、ね」


「……今の、お聞きに?」
「うむ…まさかこの教師が犯人だったとは…」
「どうなさいます?教師自身も注意はしているみたいですが、いつまた今みたくペラペラと喋られるかしれませんし」
「そうですな…やはり口封じが必要、か」


「ところで、先生?」
「ん、何です?」
「私さっきから思ってたんですが…その部屋って、校長先生は一体どこから出入りしているんです?」
「え?あぁ、開かずの間ですか?いやいや、今の校長だって入り方は知らないんですよ。間取り図によると、どうも第三校舎の一階か、裏の倉庫にそれっぽい隙間が見えるんですが…」
「…え?それってどう言う事です?校長先生が代々受け継いでいるんじゃないんですか?」
「いやだなぁ先生。『こと』を起しているのは今も昔も、『初代校長』ですよー」
「え?え?だって、私が小学生だった時に、丁度初代校長の七回忌を当時の三代目校長が取り仕切ったとかで…って、え?ま、まさか…」
「今でもちゃんと心霊現象は起こってますよ、先生。さっき言いませんでしたっけ?『初代校長は、昔から霊感が強くて、よく色んな体験をした』って…。開かずの間は開かずの間。誰も、入り方どころか場所も分かりません。そんな場所で、スーパーコンピュータは独りでに動いているのか、それとも誰かが動かしているのか、だとしたらそれは一体誰なのか…」
「そ、それってやっぱり…」
「まぁ、そう言う事でしょうね。今やコンピュータ制御なのかどうかも怪しいもんですが。いいじゃないですか、夢があって」
「そ、そうですねー。あはは…」


「ややぁ、ここまで喋られたら最早放っておく訳には参りませんかな」
「うむ。ここは一つ、『コレ』で…」
「成る程、何時ぞやのお礼参りと言う事ですかな?」


「…!?な、なんで!!?」
「え?先生、どうなさったんです?」
「え、えーあー、いや、なんというか…ははは」
「すごい汗ですよ。一体…?」
「ちょっと…そこの…下駄箱の上、見てもらえません?」
「下駄箱?あ、何コレ?…え、これって……あ」
「ご、ごめんなさい…って、言うべきなんでしょうかね…」
「言うべき、でしょうね…。あ、何か小さな紙が挟んでありますよ。えぇっと…『悪戯は程々に』だそうです」
「す、すす、すみませんでしたーー!!!!」


「…あれ、二人してどうしたの?」
「おぉ、君か。ほら、あそこ、見てご覧なさいな」
「ん、あの二人?あぁ、片方は知ってる、覚えてるよ。あんまり僕の胃だか盲腸だかを取り出して蹴り飛ばすもんだから、思わず追いかけちゃったよ。…途中でこけちゃったけど」
「そんな事もしておったのか。全くけしからんですなぁ」
「あはは、いいじゃない。それにしても、あの女の人が持ってるのって、金次郎じいちゃんの手首じゃない?よかったの?」
「あぁ、あの手首を治さず持ち続けておったのは、全てこの時の為だったのだからな。無念は晴らしたぞよ」
「ふむ…あの様子なら、丁重に元の場所…貴方の一部として還してくれるのではないですかな?」
「そのようですな。…さて、そろそろ休むと致しましょうか。理科郎よ、花子を呼んできてくれんか」
「あぁ、花子ちゃんなら、私が呼んできましょう。ついでにモナリザも連れて参りましょうか?床に就く前に、久々に彼女のピアノの腕前を拝見したいのですが」
「あ、それ僕も考えてたんだ、賛成!さっすが校長せんせー、気が合うや」
「わっはっは」

かすかだけれど、とってもあかるいわらい声が、おく上に上がるかいだんの下から聞こえてきました。さぁ、そろそろ、たのしいきゅうしょくの時間です。



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