隣の子が怒られた。アミを忘れたらしい。まったく、アミを持ってなくて、何をどう捕まえる気だよ。ただでさえ、最近の「しりとり」は、賢く、素早くなってきてるっていうのに。 「まー仕方ないって。そこのやつ、今年が初めてなんだろ?大目に見てやれよ」
もうすぐ「ことばさがし」の時間だ。えーと…何時だろう。去年、どうも「しりとり」にやられたらしく、開始時刻は「秋の裏山に太陽が半分隠れる程度の時刻」となっていた。まぁとにかく、この時間から新しい太陽が昇るまでの間、辺り一帯の色んな「ことば」たちが、「ナナシのもり」に集合する。「しりとり」という小さな鳥が、冬眠前に食いだめておこうと、一気に呼び寄せるんだ。僕たちは「ことば」が食べ尽くされないように、こうしてアミを持ち、森へかけて行く。でも、森へ行くのは子どもたちばかりだ。大人はあんまり参加しない。別に「ことば」が食われても、また新しいのを作ればいいんだから大したことじゃないし、逆に現代は「ことば」があふれてるから、減って丁度いいんだって。例えば今、人にお礼を言う時は「ちんかいかい」って言うんだけど、これって結構、恥ずかしい。僕の生まれるより前に食われてしまったらしいけど、昔は何て言ってたんだろう? 裏山に、太陽が丁度半分、隠れた。さぁ、始まりだ! 僕は、タケルだった子と競争しながら「ことば」を捕まえて回った。「しりとり」は、捕まえた「ことば」をお尻から飲み込んでいくんだけど、その最中の「ことば」の頭を掴んで引っ張り出すのもなかなか面白い。アミを忘れた子にそのことを教えてやると、四苦八苦しながらも、いい感じで「ことば」を「しりとり」から横取りしてた。
突然、後ろから悲鳴が聞こえた。振り返ると、さっきの子が「しりとり」に手を噛まれていた。危ない!このままじゃ、あの子の「なまえ」が食われちゃう。僕は急いで助けに行った。そして、なんとか「しりとり」を追っ払うと、その子から、
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