〜笑顔がまぶしくて〜
病室の真っ白な壁をバックに、保田さんの笑顔は
何だか寂しそうでした。
でも、その笑顔が私にはまぶしくて……。
「…保田さん……ごめ…ごめんなさい……」
切なくて、切なくて。
切なさが、涙になって頬を伝って――。
「石川……」
前髪をさわっていた保田さんの手が、スッと降り
てきて、涙をぬぐってくれたんです。
「わたし…昨日は、このほっぺたをぶっちゃったん
だね」
そのまま左の頬に手を当てて、保田さんはそう言
いました。
「…痛かった?……」
のぞき込む保田さんの笑顔は、やっぱり寂しそう
で…まぶしくて……。
だから…だから私は、保田さんの瞳を見つめながら、
首を横に振ることしかできなかったんです。
「…保田さん…保田さん…ごめんなさい……」
せっかく保田さんがぬぐってくれたのに、涙が後
から後から出てきて。
保田さんの困った顔が、にじんで見えなくなっちゃっ
た。
(続)
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