ホテルマリーン―6―







「・・・速水さん・・・」
ベットの中で、マヤは何度も何度も彼の名を呼んだ。
窓から降り注ぐ柔らかな月光に部屋は抱かれていた。
二人の裸体はシーツの波を泳ぎ、空気でさえも間に入る事は許されない程、強く体を重ね合わせた。
快楽の海に幾度も身を沈めあう。
触れ合う肌と肌からは互いの思いが伝わってくる。
マヤは初めて一つになった瞬間、その大きな瞳から涙を流した。
「・・・マヤ・・・」
彼女の顔を愛おしむように見つめ、頬に触れる。
瞳と瞳を重ね口付けを交わす。
彼女は幸せだった。嬉しかった。
瞬間、瞬間に彼への思いが膨れ上がり、今一緒に時を過ごしている事に至福を感じる。
「・・・泣いているのか?」
唇を離し、不安気に彼が口にする。
「・・・幸せなの。とっても幸せだから・・・あなたとこうしている事が・・・だから・・・」
彼女の言葉に胸をギュッと掴まれたような心地になる。
彼も同じだった。
長年思い続けてきた彼女と今こうして肌を合わせている。眩暈がする程の幸福の中に彼はいた。
「・・・まるで、夢を見ているみたいなの。今日、速水さんとまた会う事ができて。そして、私を覚えていてくれた」
笑顔を浮かべ、彼を見つめる。
「・・・忘れる訳ない。君は俺にとってかけがえのない人なのだから」
ギュッと彼女の体を抱きしめる。
「他の事は忘れても君の事なら、忘れない」
彼女の耳元で囁く。
「・・・苦しかった。ずっと、ずっと苦しかった。あなたに会えなくて、あなたの事を好きだと知った時から苦しかった」
彼の瞳を見つめ、胸の中の想いを口にする。
「・・・俺も苦しかった。ずっと、ずっと・・・。君に嫌われていると思ったから。君に大嫌いと言われる度に深く胸が痛んだ」
彼女の顔をじっと見つめ、今までの想いを告げる。
「・・・速水さん・・・」
彼の言葉に瞳を見開く。
「・・・マヤ・・・。ずっと、君を愛していた」
初めて彼の口から、その言葉が告げられる。
マヤは笑みを浮かべた。
「・・・私も、あなたを愛しています」
二人は再び深く唇を合わせ、互いの体を絡ませた。
そして、幾度も幾度も一つになり、快楽を共有した。





             




マヤが眠りについたのは月が朝日に飲まれる頃だった。
速水は目に焼き付けるようにずっと、彼女の寝顔を見つめていた。

「・・・愛している・・・」
そっと囁き彼は眠る彼女の唇を奪った。





速水が消えてから、一日経つ頃、紫織はようやく彼が持っていた鍵がどこのホテルのものかをつきとめた。
そして、ホテルマリーンの扉を開く。
彼女は鍵を強く握り締め、エレベ−タ−に乗り込み、3階のボタンを押す。
不安と苛立ちが彼女の胸を締め付ける。
そして、醜い想像が頭を過ぎる。
あの女優と、速水がベットを共にする姿が・・・。
もし、今からそれを見てしまう事があったら・・・自分はどうするのか。
何度も何度も心の中で問うが答えは出ず、エレベータ−は3階に止まった。




コンコン・・・。

扉を叩くその音にマヤは目を覚ました。
自分が一瞬、どこにいるのかわからず、ぼんやりと宙を眺め、そして次の瞬間全裸だという事に気づいた。
「・・・速水さん・・・!」
ハッとし、起き上がり隣を見ると、もう彼の姿はなかった。

コンコン・・・。

呆然とする頭で昨夜の事を考えようとすると、尚も扉を叩く音がする。
傍にあったバスローブを引っ掛けベットから起き上がると、彼女はドアを開けた。

「・・真澄様はどこ?・・・」
ドアの外に立っていたのは紫織だった。
突然の事に頭の中が白くなる。
紫織はバスローブ姿のマヤの体をじっと見つめた。
そして、バスローブの合わせ目から覗くキスマークに気づく。
速水と目の前の少女の間に思い描いていた事があったのだと確信する。
「・・・あなたは速水さんの婚約者の・・・」
マヤは驚いたように口を開く。
「・・・真澄様はここにいるんでしょ!!隠しても無駄よ」
声を荒げ今にも食いつかんばかりの勢いでマヤに言う。
「泥棒猫!!!一体、あの人に何をしたの!!!」
嫉妬に身を焦がし、紫織は感情のままに言葉を吐いた。
ただならぬ様子に、マヤは何と言ったらいいのかわらず、おろおろとしだす。
「・・・あの・・・確かに、速水さんとは一緒でした。でも、今はいないんです」
マヤの言葉にキッと瞳を見開き、威圧するように睨む。
「・・・真澄様は今は普通の体ではないのよ!!あなた一体何をしたの!!!」
わなわなと震えた声で叫ぶ。
「・・・そこを通しなさい!!!」
無理にマヤの前を横切り紫織は部屋に入った。
広い部屋に置かれたベットには昨夜の余韻が残る。
乱れたシーツを目にし、紫織は怒りに震え、呆然と立ったままのマヤの頬を引っ叩いた。

バシッ!

鈍い痛みをマヤは頬に感じる。
頬を押さえながら、マヤは初めて紫織に対して怒りを感じた。
「帰って下さい!!!速水さんはここにはもういません!!!」
無言でマヤを睨むと、紫織は部屋を出て行った。
一人になり、マヤは気が抜けたようにその場に座り込んだ。

「・・・速水さん・・・速水さん・・・」
涙が浮かぶ。今、彼がここにいない事、紫織が訪れた事に感情が困惑していた。

「・・・マヤさん・・・」
騒ぎを聞きつけ、聖は血相を変えて部屋に入ってきた。
「・・・聖さん・・・速水さんが・・・速水さんがいないの」
聖の姿が涙で霞んで見える。
「・・・申し訳ございませんでした。私がついていながら、あなたに辛い目を合わせてしまった」
ハンカチを取り出し、聖はマヤの頬に流れる涙をそっと拭った。
「・・・真澄様はあなたとの将来を整えるために行かれたのです」
聖は静かにそう告げた。







つづく






【後書き】
この話で今日のアップはラストです。連続アップにお付き合い下さった方、お疲れ様でした。
はぁぁぁ。しかし、ここで終わらせる予定でしたが・・・終わらなかった・・・。
この続きをいつアップするかは・・・今の所未定です。
まぁ、偶にゴミ箱見てみると・・・アップされているかも(笑)
いやぁぁ、しかし、久しぶりに妄想に集中できて楽しかった♪♪

2002.6.2.



【後書き追加】
5話に続き挿絵いれました(笑)しかも・・・18禁スレスレだったりします(笑)(そして似ていない 爆)
この挿絵も例の所にアップしました(笑)どんどん駄作が増えていく(苦笑)
いやぁぁぁ・・・お絵描きにハマルと恐ろしいですねぇぇぇ(笑)
絵なんて描いてないで、早く続きを書け!何て声が聞こえてきそうですが・・・・はははは。すみません(笑)

2002.6.9.
Cat



MENU  BACK   NEXT



本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース