午前4時30分。
タンポポの死骸が、畑を埋め尽くしていた。
どうしようもなく救われない気持ちになったとき、意外に冷静でシニカルな自分がいることに気づく。ローテンションだからこそ、そんな自分が現れることを許してしまうのだろう。
シニカルな自分から、シニカルな目を借りる。
色々なものが映り込む。
陽が登るのを拒むように、重く空に居座る雲。
無変化な日常を嘆きながら目覚める犬。
逃げ場のない狭い溝を、抗う術もなく流される水。
道路の真ん中、飛び立つ気のない鳥。
タンポポの死骸。
突然の首刈りだったのだろう。種子を蓄えている者、飛ばす最中だった者、飛ばしきった者、死に顔は様々だ。中には、種子を生み出すことすらままならずに生を失った者もいた。
死骸が濁って見えるのは、
シニカルな目のせいか
世界が濁っているせいか。
それでも、同じ場所から、再び芽吹くだろう。
死してなお残された種子は
首刈りの恐怖に脅かされながらも、生を諦めない。
陽を浴びることを、諦めないのだ。
気づけば、死骸は濁ってなどいなかった。
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