WORLD_5


【死骸の朝】


午前4時30分。

タンポポの死骸が、畑を埋め尽くしていた。

どうしようもなく救われない気持ちになったとき、意外に冷静でシニカルな自分がいることに気づく。ローテンションだからこそ、そんな自分が現れることを許してしまうのだろう。

シニカルな自分から、シニカルな目を借りる。

色々なものが映り込む。


陽が登るのを拒むように、重く空に居座る雲。

無変化な日常を嘆きながら目覚める犬。

逃げ場のない狭い溝を、抗う術もなく流される水。

道路の真ん中、飛び立つ気のない鳥。

タンポポの死骸。


突然の首刈りだったのだろう。種子を蓄えている者、飛ばす最中だった者、飛ばしきった者、死に顔は様々だ。中には、種子を生み出すことすらままならずに生を失った者もいた。


死骸が濁って見えるのは、

シニカルな目のせいか

世界が濁っているせいか。


それでも、同じ場所から、再び芽吹くだろう。

死してなお残された種子は

首刈りの恐怖に脅かされながらも、生を諦めない。

陽を浴びることを、諦めないのだ。


気づけば、死骸は濁ってなどいなかった。




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